IS・Gear 作:ソルの養子
21世紀末。
人類は「法力」と呼ばれる無限のエネルギーの理論化に成功。
エネルギー問題は一気に解消された。
しかし、人類は叡智は得ても愚かさは捨てられず、そのエネルギー技術は軍事利用されてしまう。
そんな情勢下、「あの男」と呼ばれる人物によってある男は人体実験を施され、初の「生体兵器GEAR」へと改造されてしまう。
時の権力者は次々と「生体兵器GEAR」を量産していき、世界を掌握していった。
通常は意思を持たない生体兵器GEAR。
だが突如、意思を持つ個体が出現。
「ジャスティス」と呼ばれるその個体は他のGEARを統率し、人類に対して宣戦布告した。
GEAR達は瞬く間に人類を駆逐し、人類とGEARによる100年にわたる長き混乱───「聖戦」の時代を迎えた。
聖戦末期。滅亡の危機に瀕していた人類は、対GEAR戦に特価した精鋭部隊「聖騎士団」を結成。
彼らの活躍によって戦局は逆転。
GEARは次第に討伐されていく。
そして2175年。聖騎士団の活躍により、ついに元凶であったジャスティスを討伐、封印。
長きに渡る聖戦は辛くも人類の勝利によって幕を閉じた。
───はずだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ヤバい!入学式から遅れちまう!!」
そう言いながら走るこの男は織斑一夏
今日から新生活、世界中でただ一箇所、ISについて学べる学校、IS学園へと通う事になったのが三ヶ月ほど前。
色々紆余曲折を経て、いよいよ今日は入学式当日なのだ。
「あークソッ!昨日夜更かしして通話なんてするもんじゃあなかった!!」
中学時代の友達と昨日が最後だから、と通話を開いたのは良いものの、変に盛りあがってしまって夜遅くまで起きていたのだ。
「おーい兄ちゃん!急いでんなら乗ってくか?」
そんな一夏にも救いの手は舞い降りる。
人の良さそうな顔の青年がワゴンの運転席から顔を覗かせこちらに呼びかけてくれているのだ。
勿論、そんな魅力的な提案に乗っからない一夏ではなく
「良いんですか!?お願いします!!」
まんまとワゴンに乗ってしまったのが運の尽きだった。
ワゴンの扉を閉めるやいなや自動でドアの鍵がかかる。
「ごめんねぇ、君に恨みがある訳じゃあないんだけどしばらくの間大人しくしててくれるかなぁ?暴れたり騒いだりしなければ危害は加えないって約束するからさ」
人の良さそうな青年の言葉で一夏も気付く。
これは誘拐なのだと。
車は人通りの無い狭い道へと進んでいく。
「あ、あの…ど、どうして俺なんかを…?」
「ん?どうしてだって?君は本当に自分の価値がわかっているのかい?」
IS〈インフィニット・ストラトス〉
それは女性にしか動かせない「筈」の物だった。
しかし一夏は、一夏だけは、何故か男性なのにも関わらずISを動かす事が出来たのだ。
「そうだね…少し昔話をしよう。」
青年はそう言うと話を始める
「むかしむかし、ある所に男がいました。男には兄がおり、男は兄を尊敬していました。ある時、ある物体が開発された事により男女間のパワーバランスが崩れてしまいました。」
「それって…」
ISが発表され、今の世は男卑女尊の風潮だ。
肩身が狭い思いをする男性は沢山いる。
「さて、男の兄は毎日のように繰り返される女性からの嫌がらせに耐えながらも頑張って仕事をこなしていましたが、ある日不幸にも女性の運転する車に撥ねられてしまいました。」
「ま、まさか…」
そこまで聞いて一夏も何かに気付き、顔の色を青くしていく
やめてくれ、やめろ、聞かせないでくれ
その先の結末が自分の想像通りのものだとすれば──
「だったらどうした、クズが」
その声と同時にワゴンの後部座席のドアが剥がれ飛ぶ。
「「は?」」
音と衝撃に意識を奪われた二人は剥がれ飛んだドアの方を見る。
そこに居たのは赤いバイクのような何かに跨る男だった。
筋肉質な体型に赤いジャケットを羽織り黒のインナーを着た男が。
白のジーンズに赤い前垂れ、腰のバックルと額のヘッドギアには何か文字が刻まれている。
額の赤いヘッドギアには「Rock You」
腰の銀のバックルには「FREE」
初めて見るその男に一夏は、そして運転席の青年も、言葉を失った。
「だったらどうしたって言ってんだ、ボケが。それとも何だ?ビビって言葉も出ねえのか?」
「なっ…!何者だお前!!」
狼狽え、声を荒らげる青年を気にも留めず、男は一夏の胸ぐらを掴み男の脚の間に無造作に置いた。
「落ちたら怪我じゃ済まねぇぞ、しっかり掴まっておけ」
「え?あ、は、はい!」
一夏にそれだけ言うと男は車の方を見、
「何者かって聞いてたな?」
右の拳を振り上げ
「元科学者の」
車の助手席側のドアへと叩きつける。
車は壁へと叩きつけられ、運転席では強い衝撃を検知したからかエアバッグが作動していた。
「現教師サマだ。」
第1話
そして太陽は登る
「ちょっ…だ、大丈夫ですか!?」
先程まで誘拐されていたというのに青年の心配をする一夏
「放っておけ、どのみち気絶して聞こえちゃいねぇだろうがな。」
そんな事より、と男がバイクのスロットルを絞りながら左手で一夏の頭を叩く
「テメェは自分の価値がわかってねぇのかボケが!今時の小学生ですら引っかからないような手段で誘拐されやがって…」
「し、仕方ないじゃないですか!い、急いでたんだし…」
「チッ…だったら急がなくていい努力をしろ。」
男の纏う雰囲気がどんどん悪くなっている事に気付いた一夏は(自分のせいだが)話を逸らすことにした
「あ、そ、そういえば名前!名前聞いてませんでした!俺は織斑一夏って言います!」
男は軽く舌打ちをするとただ一言こう言った
「ソルだ」
これが、織斑一夏とソル、ソル=バッドガイの出会いである。
「口を閉じてろ、舌ァ噛むぞ」
「えっ?」
その日、この街の警察には法定速度なんて知らんと言わんばかりの速度のバイクとそれに乗せられた悲鳴をあげる一夏が目撃された事による拉致事件ではないかという通報が多数寄せられたという。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
男、ソルの助力により無事駅に到着した一夏は、なんとかIS学園の入学式に間に合った。
そして、入学式が終わりクラスへと向かう一夏。
しかしそこは
(い、居心地悪い…)
それも当然であろう、周りにいるのは女性、女性、女性だけ、と男は一夏だけなのだから。
もうここで一度寝てしまおうかと思っている所に担任であろう女性教師が入ってくる。
名前はどうやら山田真耶と言うらしくクラスで自己紹介をする流れになっているらしい。
らしいというのは既にこの時意識を半分手放していた事により話の内容が頭に入ってきていないからである。
「──むらくん?織斑一夏君?」
「は、はい!!」
どうやら自己紹介が自分の番まで回ってきていたらしく、それで呼ばれたようだった。
「お、織斑、一夏です!」
それだけ言って席につこうとするが
(な、なんだ…周りから無言の圧を感じる…)
周りの女性は織斑一夏という男性に対して過度な期待をしていた。
それも無理はない。
彼は世界で唯一の男性IS操縦者、自分達よりも遥かに特別な存在なのだ。
故に彼をただの一人の男性として見る人間は少ない。
しかし彼は周りの視線に耐え
「以上です!」
着席した。
「まともな挨拶一つできんのか、馬鹿者。」
パァンという音が響き一夏は頭を抑える。
顔を上げるとそこに居たのは一夏の実の姉、織斑千冬がいた。
「げぇっ!関羽!」
「誰が三国志の英雄だ。」
もう一度パァンという音が響き、教室には静寂が広がる。
千冬が教壇に立ち、生徒達へ向き直り口を開く
「新入生諸君、私が担任の織斑千冬だ。私の仕事は諸君を1年で使い物になるIS操縦者に育てることだ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は十五歳を十六歳までに鍛えぬくことだ。逆らっても構わんが、私の言うことは絶対に聞け。いいな?」
一瞬の空白の後、黄色い悲鳴があがる。
「全く…毎年わざとこういった奴らをクラスに入れているのか…?」
ボヤく千冬の横で真耶が苦笑いをする。
「仕方ありませんよ、織斑先生はあのブリュンヒルデなんですから。」
「全く苦労させてくれる…それより山田先生、もう1人の奴はまだ来てないのか?」
「ああ!そういえば!!」
思い出したように焦った顔をする真耶
その様子を見て額に手を当てやれやれといった様子の千冬
「この期に及んでサボった訳ではあるまいな…」
「そ、そんな事は無いと思いますよ…?た、多分…」
「とりあえず、だ…静まれ馬鹿「やかましいぞボケ共が!!」」
教室の扉を砕くのでは無いかと思う程の勢いで開き入ってくる男がいた。
教室がシンと静まる。
その中でただ1人、彼を見た途端立ち上がり大声を上げる一夏は
「あああっ!!あんたは!!!」
「やかましいっつったのが聞こえなかったのか?焼くぞ?」
「す、すいませんでした…」
ドスの効いた声に気圧されて静かに着席をした。
「悪ィな、遅れた。」
「貴様という奴は…まあいい、自己紹介だけは済ませておけ。」
「ハァ…めんどくせぇ…」
教壇に立ち、生徒全員へと向き直ったソルはただ一言
「授業だけは黙って受けろ。」
千冬とは別の方向への独裁宣言をし、教壇から降りる。
波乱の学園生活の幕が、今上がる
まだミディアムレアなんだがな。