姉に憑依したシスコンは、妹を愛で尽くす   作:百合好きなmerrick

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しばらく続くは続きもの。
起承転結、今宵は承なり。


12話「風邪」

 ──フラン⋯⋯レミリアの部屋にて──

 

 お風呂で倒れたお姉ちゃんを部屋に連れてきた後、すぐさま美鈴を呼んだ。私1人じゃどうすればいいか分からないし、妖精メイドじゃ頼りない。こんな時に頼れる美鈴が居てくれて良かった。

 

「美鈴⋯⋯お姉様、どう⋯⋯?」

 

 ベッドで眠るお姉ちゃんを見ていた美鈴に、心配になって語りかける。

 

「⋯⋯一先ずは大丈夫です。しかし、珍しいですね。吸血鬼が風邪を引くなんて。いえ、ただの風邪でもなさそうですが⋯⋯。かなりの高熱です。人間なら間違いなく死んでいるレベルの」

「えっ!? お、お姉ちゃ⋯⋯お姉様、本当に大丈夫なの!?」

「はい、大丈夫ですよ。お嬢様は吸血鬼ですから。このくらいの熱で死ぬ事はありません。ですが、1つだけ問題があります」

 

 どうしてわざわざ不安な事を言うんだろう⋯⋯。ただでさえ、お姉ちゃんが風邪を引いたってだけでも、とても不安なのに。というか、ただお姉ちゃんが倒れただけでこんなにも不安になるんだ、私って。⋯⋯やっぱり、好きなんだなぁ。

 

「この館には薬がありません。どうやらお嬢様、誰も病気にならないだろうと高を括っていたようですね」

 

 まさかの自業自得。確かに今の今まで私もお姉ちゃんも風邪を引いた事がなかったから、気を抜いてたのは仕方ない。だけど、だからと言って、何も用意しないのはどうなのか。

 

「め、美鈴。人間の薬ってお姉様にも効くかな⋯⋯?」

「恐らくは⋯⋯。ですが、効き目は薄いかと⋯⋯」

「そ、それでも! ⋯⋯何もしないよりはマシだよね? お姉様、今も辛そうだし⋯⋯」

 

 辛そうに顔を赤く染め、息苦しそうに咳をする。今までずっと待ち望んでいた無防備な状態だけど、とても襲う気にはなれない。これ以上、体調を崩せば、一生お姉ちゃんと会えなくなる気がするから。

 

「⋯⋯妹様はお優しいですね。仲睦まじくて嬉しい限りです。ええ、何もしないよりはマシでしょう。効き目が薄いと言っても、効果が全くないわけではないと思いますし。それに、身体の構造自体は人間と差ほど変わらないでしょう。もしかして⋯⋯行くつもりですか?」

「うん。止めないでね、美鈴。ま、止めても行くけど」

「ええ、もちろん⋯⋯止めないですよ。確か、お嬢様の書斎にお金があるはずです。ついこの間、買い物へ行ったそうなので、あまり高い額ではないらしいですが⋯⋯」

 

 さらっとお姉ちゃんの貯金が何処にあるか把握してる美鈴が怖い。だけど、それよりも、前々から思ってた事だけど、お姉ちゃんって何時、何処でお金を調達してるんだろう。お姉ちゃんと一緒に買い物に行った時は欲しい物何でも買ってくれるけど、いつもしてる事務作業だけでそんなに儲かるのかな。よく分からない。

 

「じゃ、行ってくる。美鈴! お姉様をお願いね!」

「はい、お任せくださいっ!」

 

 この場を美鈴に任せ、私はお姉ちゃんの書斎へ向かう。そして、お姉ちゃんのお金を見つけた私は、人間の街へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間の街はいつも通り、大通りは賑わってるが、裏の通りや街の中心から離れるにつれて、不気味なほどに静まり返っている。まるで私の不安や未来をこの街全体で表しているようだけど、今は気にしていられない。何よりも最優先するのはお姉ちゃんの病気に効く薬を見つける事。私の気分次第で暗く見える景色なんて、気にする暇も意味もない。

 

 とにかく薬を買って、急いでお姉ちゃんの元へと戻らないと。

 

「すいません⋯⋯。当店では現在、持ち合わせがなく⋯⋯」

「⋯⋯は?」

 

 そう思って、今の時間に唯一開いてた薬屋に来たけど、予想外の言葉が返ってきた。思わず心の声が出たせいか、店員さんが少しビックリしてた。

 

「あのさ、私のお姉様が! 今、この時間も! 苦しんでるんだけど!?」

「そ、そうは言われましても⋯⋯。流行病の影響で、薬の需要が高まってしまって⋯⋯」

「需要高まっただけで普通全部なくなる? 有り得ないんだけど?」

「あ、あの⋯⋯貴族様の間で特に流行ってるらしくて⋯⋯」

「あー、そゆこと⋯⋯ちっ」

 

 やはり、人間の貴族は虫が好かない。どうせ自分の事だけを考えて薬を買い占めたのかな。あるいは、私と同じように困ってる人に対してマウントを取るためか。価格も自由に設定できるし、恩も売れるし、至れり尽くせりだし。

 

 あ、ちなみに私は全部お姉ちゃんのためにやってるし、人間の貴族とは違うという事で。一応、私達も吸血鬼の間だとそれなりの貴族ではあるらしいけど。

 

「⋯⋯その貴族、何処に居るとか知ってる? それか、ここ以外に開いてる店教えて」

「い、言い難いのですが、誰が買い占めたのかは存じ上げなくて⋯⋯。それに、恐らくですがこの辺りは全て貴族様が買い占めているかと⋯⋯」

「はー、マジか⋯⋯。そっか。ありがと。じゃ、またね」

 

 諦念を覚え、半ば途方に暮れながら、私はその薬屋を後にする。そして──

 

「あっ⋯⋯!」

「へ? うぉっと。だ、大丈夫?」

 

 ──店を出たと同時に、私はある少女とぶつかる。

 

「⋯⋯! た、助けて! 追われてるの!」

「⋯⋯へ?」

 

 その少女⋯⋯紫髪の少女との出会いが、私やお姉ちゃんの運命を変える事になる────

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