姉に憑依したシスコンは、妹を愛で尽くす 作:百合好きなmerrick
今回は起承転結、結末後の話。
姉はどんな時でも、妹が大切なようで⋯⋯。
──フラン⋯⋯紅魔館にて──
「これで一先ずは安心。後はゆっくり、安静にしてれば徐々に良くなるわ」
「⋯⋯うん。ありがとうね、パチュリー」
パチュリーを家に連れ帰った後、彼女はすぐに紅魔館周辺や館の在庫から薬草を集めてきた。それらを使って薬を作り出し、それをお姉ちゃんに飲ませてくれた。飲んですぐに目に見える形でみるみる回復していき、今では熱も引いて安らかに眠っている。
こんなに無防備な睡眠をとるお姉ちゃんはとても珍しいし、無事治りそうだから、とても良かった。もしこのまま治らないなんて事があれば、私はどうなっていたのか。想像するのは容易い。
「それで? 私はどうするべきかしら? 万が一薬が効かなかった時は私を殺すつもりなんでしょう? なら、逃がしてくれないわよね? 私としてもここ以外に居場所があるとは思えないから、できるならここに居候したいのだけど」
私のイメージが悪過ぎないか。パチュリーの前で人間を殺したせいだろうか。あれは正当防衛だから仕方ないのに。そもそも人間なんて食料でしかないんだし、わざわざ気にする事もないと思うんだけど。
それはそうと、居候か。役に立たないメイドよりかは魔法が使える分、幾分か役に立つだろう。でも、私は主じゃないし、決めれないから答えようがないね。
「殺しはしないよ。勿体ない。むしろ生かして次の薬を作らせる。ちゃんとお姉様に効く薬を、ね。ま、今ではもうその心配はなさそうだけど」
「ふーん⋯⋯意外と良心的ね。で、居候の方はいいのかしら?」
「それはお姉様に聞いて。私に決める権利なんて無いから。それと、上に図書館があるからそこで待ってて。魔女なら本好きでしょ」
「あら、それはどうしてかしら?」
質問されても答えようがない。というか、答えたくない。姉が大好きだから、2人っきりにさせてくれとか、恥ずかしくて絶対に言えない。
「⋯⋯ふん。さ、どうしてだろうね」
「教えてはくれないのね。⋯⋯でも、何となく分かる気がするわ。貴女、見た目以上に分かりやすいから」
「ほえ?」
一体何を言ってるんだろう。そう思ってると、パチュリーはそそくさと扉へと向かった。ようやく話を聞いてくれたのかと思ったけど、どうやらそうではないらしい。含みのある笑顔を見せた。
「
「ん? ⋯⋯あっ!? ちょ、ちょっと貴女⋯⋯!」
「ふふっ。じゃあ、また後でね」
そして、その気味悪い笑顔のまま、部屋を立ち去った。
「⋯⋯あ、あの魔女っ! そ、そう言えばあの時、素の呼び方だったっ⋯⋯! うわっ、恥ずっ! 私恥ずかしっ!? き、記憶とか壊せないかなっ!?」
「⋯⋯フラン?」
「ん? な、に⋯⋯あ、お姉ちゃんっ!」
偶然にも丁度いいタイミングでお姉ちゃんが目覚めてくれた。もう大丈夫そうだから、嬉しくて思わず声を上げてしまいそうだった。いや、実際に声は上げちゃったんだけど。
「もう大丈夫なの!? あ、ごめんね、うるさかった⋯⋯?」
「フラン⋯⋯1人に、しないから⋯⋯」
「え、あ、ちょっ、何やって⋯⋯!?」
寝惚けてるのか虚ろな目で私の腕を掴み、力づくでベッドへと引き込まれる。咄嗟の事で反応も抵抗もできず、気付いたらお姉ちゃんに抱き締められていた。熱は下がったと言っても、その体はいつもより熱を持ってる。そのせいか、とても温かく、眠気を誘われる。
「大丈夫⋯⋯私が⋯⋯守る⋯⋯」
「や、やっぱり寝惚けてる?」
「守るから、安心して⋯⋯ね?」
どうして急にそんな事を言ってくるのか。どうして守るなんて言葉が出てくるのか。分からない。突拍子もない言葉が理解不能で、姉に何が起きてるのか分からない。恐らくは寝惚けてるだけだけど、それでは説明が付かないほど正気だとは思えない。
「お姉ちゃん? どうしたの⋯⋯?」
「ごめんね⋯⋯? あの時⋯⋯すぐに行動できなくて⋯⋯」
「⋯⋯あっ、そういう事⋯⋯」
お姉ちゃんのその言葉でようやく理解できた。お姉ちゃんが今もずっと悔やんでた事、今も尚、許しを乞うてた事を。
「もういいんだよ? あの時に誤解は解けたし、お姉ちゃんの気持ちも今は理解できたから。だからね、もう謝らないで?」
「フラン⋯⋯もう、悲しませないから⋯⋯っ」
お姉ちゃんの腕の力が強まり、更に引き寄せられて抱き締められる。どうやら、私の声は届いてないらしい。夢現に昔の事でも思い出して、幻覚でも見てるのかな。それでも、その言葉が聞けてとても嬉しかった。幸せだった。
「うん⋯⋯ありがとう、お姉ちゃん」
お礼と言わんばかりに抱き締め返す。が、それと同時にお姉ちゃんの力が弱まってしまう。
「フラン⋯⋯⋯⋯」
「あれっ?」
今度は言葉が届いたのか、いつの間にか、幸せそうな笑顔でお姉ちゃんは再び安らかに寝ていた。それを見て、釣られて私も嬉しくなる。言葉がしっかり伝わったのかは分からないが、改めて「言えて良かった」と思える。
「⋯⋯おやすみ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんに自分の思いを伝えれたと確信した私は、その温もりに身を任せ、誘われるまま瞼を閉じた────