姉に憑依したシスコンは、妹を愛で尽くす 作:百合好きなmerrick
バレンタインデーですね。レミフラはどうやら⋯⋯?
──レミリア⋯⋯紅魔館のキッチンにて──
今日は待ちに待ったバレンタイン!
前世の記憶から、バレンタインという日が愛する人にチョコを渡す日だと知ってた私は、その事をそれとなくフランに伝えた。そして、密かに人間の街で材料となるチョコを集め、バレンタインの下準備を終えた私はチョコの制作に取り掛かっていた。
毎日のようにフランの分の料理は作るものの、デザート系は1つも作った事がない。特段作りたいと思った事が無いのもあるが、何よりもフランが自分から求める事が無かったのだ。妹にグロい行為をさせないために料理を引き受けてただけで、それ以外の理由で作ろうとは今まで思わなかった。
だが、今日だけは違う。今日は愛する人にチョコを送る日。なら、作らないわけにはいかない。
「ふぅー⋯⋯。意外と難易度高いわね⋯⋯」
図書館から持ち出した料理本を読みながら、片手で持つフライパンでチョコを溶かしていく。
「ふぁ〜。眠⋯⋯っ」
フランに悟られないように早く起きたせいでちょっと眠い。が、フランの事を思えばこのくらいなんて事は──
「──あっ!? や、やっちゃったぁ⋯⋯」
グラニュー糖を入れるところで、寝惚けて塩を入れてしまった。本当に馬鹿な事をした。あれだけ注意してたはずなのに。夕食と一緒に作ろうと似た容器に入れた塩を置いてた私が馬鹿だった。
「はあ、マジか⋯⋯」
とりあえず、失敗した物をフランには渡せない。気持ちを切り替えて次に挑もう。
そう決意して、再びチョコを調理始めた────
──フラン⋯⋯紅魔館にて──
お姉ちゃんに聞いた話だけど、今日はバレンタインという特別な日らしい。お姉ちゃんからその話をされた時は耳を疑ったが、本で見る限りだとバレンタインという特別な日がある事は確かだった。チョコに関する云々は書いてなかったけど。
それを知った私はお姉ちゃんからチョコを渡される事を想定し、逆にビックリさせようと、昨日1人で街に行ってチョコを買ってきた。本当は手作りチョコを渡したかったんだけど、私は料理した事無いし。下手なチョコを渡すよりは、しっかりしたチョコを渡した方が良いと思ったからだった。
「フラン、ご飯美味しかった?」
「うん、美味しかったよ。いつも通りね」
例の如く、起きてすぐの夕食の後に料理の感想を聞いてきた。いつも美味しいと答えてるのに、心配性なお姉ちゃんだこと。そんな可愛い姉が好きなんだけど。
「そう、良かったわ。⋯⋯ねえ、今日は朝ご飯以外にも用意してる物があるの」
「今は夕方だから朝ご飯じゃなくて夕ご飯ね。で、何? 用意してる物って」
驚かせるためには、知らないという体で話した方が驚きが大きい。要はいつも通りだ。自分を騙して、大好きなお姉ちゃんも騙して。ま、嫌われるよりは遥かにマシだ。騙すという行為に多少は悪い気がするけど。
「じゃーん! バレンタインチョコよ!」
後ろに隠してたチョコを見せびらかす。お姉ちゃん曰くチョコだけど、ガトーショコラにしか見えない。手作り感を出すためにそっちにしたのかな。もしそうならとても嬉しい。
「バレンタイン⋯⋯。ねー、食べていいの?」
「もちろんいいわよ。フランのために作った料理だから」
「じゃ、いただきます」
フォークを突き刺し、取り出した欠片を口に入れる。噛んだ瞬間、甘い香りと味が口全体に広がった。美味しさと最愛の人からのプレゼントという幸せで食が進む。あっという間に平らげた私は、フォークを置いてお姉ちゃんに向き直る。
「⋯⋯うん! 美味しい! ありがと、お姉様」
「ふふっ、良かった。そう言ってもらえると嬉しいわ。最初は失敗しちゃったけど、作った甲斐があった」
「え? 失敗したの? お姉様が?」
お姉様が料理を失敗するなんて珍しい。そう感じて、思わず口に出してしまった。
「ええ、そうよ。意外だった? まあ、失敗は成功のもと。結果的にフランの笑顔が見れたから、私はそれでいいのよ」
「変なお姉様。本当にそれだけでいいの?」
「いいわよ。ただの自己満足だけど、私はそれでいいの」
「⋯⋯悲しい事言うんだね、お姉様って。そんなんじゃこれあげれないなー」
「へっ?」
懐からチョコの小包を取り出し、お姉ちゃんに見えるようにして見せびらかす。それを見たお姉ちゃんは、一瞬だけ固まると、口をぱくぱくさせて動揺していた。まさかこんな顔をするとは思わなかったから、珍しい顔を見れてとても嬉しい。
それと同時に、バレンタインの意味を知ってるせいで、ずっと心臓が鳴って緊張してる。⋯⋯誤解されないように、訂正だけしておくか。
「いつもご飯とか作ってもらってるお礼だよ。あっ。べ、別に愛してるからあげるって意味じゃないからね!?」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯あれ、お姉様? お姉様!?」
あまりの驚きにか、そのまま後ろに倒れてしまった。心配して駆け寄るも、その顔は至福に満ちていた。見たところ傷は無いから、 一先ずは一安心だ。
「ふ、フランからのバレンタイン⋯⋯バレンタイン⋯⋯ふふっ、ふふふふ」
凄く幸せそうな顔だ。私から貰ったチョコ、そんなに嬉しかったのか。万が一にでもそうだったのなら、私も嬉しいな。
「ちょっ、気持ち悪いって。⋯⋯ま、今日だけはいっか。ここに置いとくから、後で感想聞かせてよ。チョコのね」
「ええ⋯⋯! ありがとうね、フラン!」
「⋯⋯気にしないでいいよ。ただのお礼だから」
そう言って、内心ドキドキしながらも、倒れるお姉ちゃんを放って部屋へと戻る。
ちなみに、後日聞いた感想によると「とても美味しかった」らしい────
フランのお姉ちゃん呼びはあくまでも心の中だけ。それもいつか変わりますが、お姉様という呼び方は個人的によそよそしい感じがするので、心の声(本音)だけでも親しく⋯⋯という意味ですね。
次回こそは番外編消化回。
ちなみに何がとは言わないけど経験談です()