可能性の一幕・・・・・あり得た未来・・・・後悔先にたたず   作:雷狼輝刃

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鈴音を飛び越してシャルロットに行きます。

 あんまりアンチになった気がしないけど。

 少なくとも2巻の段階では穴だらけの計画ですしね。
転入前にたぶん殆どバレてたと思います。


 


第2話  フランス代表候補生 シャルロット・デュノアの場合

 

 

 シャルル・デュノア・・・・いやシャルロット・デュノアはIS学園の地下にある特別懲罰房の中で茫然としていた。

 

 (これからどうなるのかな僕?)

 

 父親であるアルベール・デュノアに命じられたまま、性別を偽り男装してIS学園に編入した。

 全てはデュノア社の経営危機を回避するために。男性操縦者の織斑一夏の遺伝子サンプルとその専用機[白式]のデータを手に入れる、その目的を果たす為に。

 

 だがシャルロットはその任務に気がのらなかった。 そもそも、デュノア社の為と言われてもピンとこなかった。殆ど面識の無い実父に、敵愾心を露にする義母、家族の絆を全く感じなかった。赤の他人の為に命懸けで、何かをしろと言われても気概が湧くはずもない、かといって拒否できる状況でもなく、結局流されるまま言われるままに行動したのだ。

 だが結局のところは、その使命感の低さが災いした。

 

 (はーーー、気を抜きすぎたのが、いけなかったのかな。)

 

 一夏と同室となり生活していたが、一夏のあまりの無防備ぶりにシャルロットの警戒心は極限まで下がっていた。 何より性別を偽っての生活はシャルロットの心と体に自身では気づかない程の疲労感を与えていたのだ。

 

 

 

 シャルロットはシャワーを浴びていた。しかし自室のシャワールームの鍵を掛け忘れてしまった。

 そこに一夏が乱入してきたのだ。 そこからシャルロットは自身の事情を一夏に打ち明けた。一夏は特記事項でIS学園に在学している間は大丈夫だと言って励ました。 些か楽観的だと思ったが、シャルロットには何の手立てもなかったので一夏の言う通りにすることにした。  

 ただ不安はあった、一夏が解決手段を何か考えているのだろうかと?  しかし、状況は一変した。

 突然、部屋に千冬が現れてシャルロットと一夏を連れて校舎の一室に連れてこられた。

 部屋に入った瞬間、シャルロットは室内にいた教師に拘束されたのだ。

 

 「フランス代表候補生シャルロット・デュノア。お前をスパイ行為の容疑で拘束する。」

 

 千冬のその言葉に絶望するシャルロット。千冬に食いかかる一夏。

 

 「ま、待ってくれよ千冬姉! シャ、シャルは自分の意思でやっていた訳じゃなく仕方な「黙れ織斑!」えっ?!」

 

 「如何なる事情が有ろうと、デュノアのやろうとしていた行為は国際法に違反する。織斑、お前がそれを庇いだてするならお前も同罪で裁かれるのだぞ!それが如何に周囲の人間に迷惑をかけるのかわかっているのか!」

 

 千冬に一喝される一夏。周囲の人間=千冬に迷惑をかける、それは一夏にとって一番避けたい物だった。そもそも一夏は何故わかったのか気になった。 それがわかったのか千冬は

 

 「元々学園はシャルル・デュノア、いやシャルロット・デュノアに疑いを持っており、常に監視をしていたのだ。それに加えて、織斑。お前の部屋にはハニートラップを警戒して盗聴機と出入り口に監視カメラが設置されていたのだ。」

 

 それを聞き愕然とする一夏。そして最初から疑われていた事を知りショックを受けるシャルロット。

 

 「織斑、お前には明日改めて事情を聞くので明日の授業は出なくていい。。今日のところは自室に戻り部屋からの外出を禁じる。なお、この事は他言無用。口外を禁ずる。わかったな!」

 

 千冬に言われて一夏は部屋を後にする。

そしてシャルロットは専用機を取り上げられ手足を拘束されて地下にある特別懲罰房にいれられた。

 

 

 

 

 

 (結局、織斑君は何の役にもたってくれなかった。)

 

 そもそもシャルロットは以前から一夏の行動に別の意味で危機感を抱いていた。 やたらとボディータッチをしてきたり、裸の付き合いと言っては目の前で素っ裸になるだけではなく、シャルロットにもそれを強要したのだ。

 

 (そもそも織斑君は変だよ!何で勝手にシャワールームに入って来るのかな、いくら同性だと思っていてもノックしたりしてたずねるのが、マナーだよね!)

 

 シャルロットは一夏が、箒や鈴の好意に気づかないのは鈍いのではなく、そもそも女性に興味がないからじゃないかと感じてしまった。

 

 (やっぱり織斑君はそういう趣味の人なんだ。だから、女性と同室にしても大丈夫だと学園は判断していたんだ)

 

 シャルロットの中では既に最初から仕組まれていた罠だと思いはじめていた。

 

 (はーー、何か疲れちゃた。何もかもどうでもいいや。)

 

 シャルロットはそのまま眠りについた。IS学園に来て、ある意味はじめて安眠できた時でもあった。

 

 翌朝、シャルロットは教師に連れられて懲罰房を出て移動した。 移動した先は学園長室だった。

 室内には千冬以外に柔和そうな笑みを浮かべた初老の男性が正面のソファーに座り、その側に同じくらいの年齢の品のいい女性が座っていた。 男性はわからないが、女性はパンフレットに載っていたIS学園の学園長の轡木菊枝。更に二人の背後には上級生らしき二人の生徒が。片方の生徒もパンフレットに載っており生徒会長の更識楯無だ。

 シャルロットはそのまま椅子に座らされる。連れてきた教師は、部屋を出る。

 

 「さて、シャルロット・デュノアさん。全てを話してくれますか?」

 

 菊枝に尋ねられてシャルロットは生い立ちから学園に来るまで、そして学園に来て拘束されるまでの全てを話した。 そして菊枝が口を開く。

 

 「さて、織斑先生。フランス政府から提出された書類に関して何か?」

 

 「書類の方は間違いなくフランス政府が公式に作成したものでした。フランス大統領のサインも本物でした。」

 

 「更識生徒会長、デュノア社の調査は?」

 

 「既に終えてます。デュノア社ですが、確かに第3世代機の開発遅れで経営危機に陥ってはいますが、今日明日どうこうなる状態ではありません。現に第3世代機の開発には着手しています。」

 

  楯無の報告を聞いてシャルロットは驚く。

 

 「それから現在デュノア社では内部紛争が起きようとしています。デュノア社の社長アルベール・デュノアを排除してグループ乗っ取りを企てている一派があります。そして、その標的としてシャルロット・デュノアが狙われていた形跡があります。」

 

 再び驚くシャルロット。

 

 「なるほど、敵を欺く為にはまず娘から、という訳ですか。」

 

 何の事か未だにシャルロットは理解出来なかった。

 

 「フランス政府の女性権利主義者の議員が複数、暗殺一派に協力していた者もいたようです。そしてそれらを排除するためにも大統領はアルベール社長に協力したようです。」

 

 次々に明るみになる事実に混乱するシャルロット。

 

 「さて、更識生徒会長。どうしますか?」

 

 「残念ですが、未遂とは言えスパイ行為を目論んだ彼女を無罪放免とは行きません。ですが、彼女の周囲の環境から考えて情状酌量はあると思います。何より彼女はある意味被害者です。いくら敵の目を欺き、彼女の命を守る為とは言え、スパイ行為を示唆するのは少しやり過ぎだと思います。」

 

 「では、どうしますか?」

 

 「喧嘩両成敗というのはいかがでしょうか?」

 

 「それでいいでしょう。そして彼女の処遇は?」

 

 「とりあえず彼女には戸籍上死んでもらいます。そして此方で用意した新しい戸籍でIS学園を離れて生活してもらいます。」

 

 「ではデュノアさん、貴女に処遇について言い渡します。シャルロット・デュノアは自分の犯そうとしていた行為に思い悩み、苦悩した挙げ句に自殺。ということにします。その上で貴女には新しい戸籍と新しい顔を与えます。IS学園を去り更識家が用意した土地で新たな人生を送ってください。」

 

 突然の話についていけないシャルロット。

 

 「織斑先生はクラスへの説明をお願いします。それから織斑君のアフターケアもお願いします。」

 

 「わかりました。」

 

 そう言って千冬は部屋を出る。

 

 「さて、デュノアさん。事が全て済むまでは此方で用意する部屋の中で生活をしてもらいますが、我慢してくださいね。外部との連絡や外出は出来ませんがテレビはありますし、要望があれば多少の差し入れてはします。」

 

 菊枝がそう言うと楯無が

 

 「虚ちゃん、彼女を例の部屋に連れて行って頂戴。」

 

 「わかりましたお嬢様。」

 

 虚はそう言うと、シャルロットを連れて別の扉から出ていく。まだ、混乱して状況把握が出来ないシャルロットは言われるがまま出ていくのだった。

 

 「それでは更識生徒会長、後はお願いします。私はフランス政府とデュノア社のフォローにまわるのでおもいっきりやってください。」

 

 菊枝の隣にいた男性、IS学園の真の学園長轡木十蔵がそう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 特別懲罰房と違って窓が無いだけで、寮の部屋と遜色の無い部屋に連れてこられたシャルロット。

 漸く状況を飲み込めはじめたシャルロット。

 

 (・・・・・・何か、あっという間だったな。)

 

 怒涛の如く進んだ事態にシャルロットが思い返したのは実父と義母の事だった。 

 楯無達がシャルロットを守る為に、このような事を仕組んだというが、シャルロットには到底信じる事が出来なかった。 仮にそれが真実だとしても、わざわざ男装させた上にスパイ行為を命じるのは、やはりおかしい。

  例え敵の目を欺く為だったとしてもシャルロットへのリスクがあまりにも高過ぎる。 

 

 (もうどうでもいいや、僕・・・・いいや私には関係無いんだし。シャルロット・デュノアは死んで、私は別人になって生きるんだから)

 

 シャルロットの脳裡からは実父と義母、会社の事がもう無くなっていた。 これからの新しい生活の事を考えはじめていた。

 

 (どんなところで暮らすんだろう? )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 共同通信社発信

 

 ○月X日

 IS学園の二人目の男性操縦者として公表されたフランス代表候補生であるシャルル・デュノアさんが自殺したことがわかりました。

 デュノアさんは手紙と映像で遺書を残しており、その内容が注目されております。

 

 

 

 ○月△日

 自殺したシャルル・デュノアさんですが、性別を偽っていた事が判明しました。 また、それを命じたのが実家であるデュノア社の社長であることが判明しました。

 また、この件に関してフランス政府の一部の議員が協力していた事も判明しました。

 

 

 ○月◻日

 デュノア社の一部の役員達が女性権利団体とフランス政府の女性議員達と結託して、デュノア社の社長夫妻並びに自殺したシャルロットさんを暗殺してデュノア社を乗っとる計画をしていた事が判明しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 X月○日

 フランスのISメーカーデュノア社が倒産!

 

 

 

 何処からか飛んできて足下に絡みついた1枚の新聞の記事を一瞥した金髪の少女は、その新聞を取ってクシャクシャと丸めると作業服のポケットに押し込む。

 そして鍬を手に取ると目の前に広がる畑に向かって歩いていく。

 




 
  シャルロット・デュノアのその後

 髪と爪、血液を採集され、遺書となる手紙と映像を撮影する。
      ↓
  自殺を擬装される
      ↓
 事態がある程度落ち着くまで更識本家にて保護される。
      ↓
 整形手術を受けて顔を変える。
      ↓
 新しい戸籍を与えられて、地方に移送される。
      ↓
 山間の小さな集落(更識所有地)で酪農に携わる。
      ↓
 外国人という事で最初は中々馴染めなかったものの、柵が無くなり、生来と明るさを取り戻した事により一気に溶け込む。
      ↓
 周囲の老人達のアイドルとなり、孫との見合いを進められる。
      ↓
 農村留学してきた若者が一目惚れし、そのまま定住し猛アタックする。
      ↓
 猛アタックに押されて若者と結婚

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