更識家の人外   作:佐藤 海

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次回から不定期にさせてもらいます。


第十四話

蒼羅side

 「ねぇねぇ、織斑君転校生の噂聞いた?」

 「転校生この時期に?」

 

 俺が教室に入るとそう話しているのが聞こえた。

 

 それから少しすると

 

 「二組だって専用機持ちがクラス代表になったの、そう簡単に優勝はさせて上げないわよ!!」

 

 元気な声が聞こえてきた。

 

 「鈴?お前、鈴か!」

 「ええ、そうよ!この凰鈴音が二組のクラス代表よ!」

 

 その後もやり取りをしていたがそこに

 

 「おい、凰。貴様、HRの時間だというのによくここで話をしていられるな?」

 

 その声が聞こえると鳳の動きが固まり「ギギギ!」という音がつくような感じで振り向くとそこにはこのクラスの担任の千冬がいた。

 

 「ヒィ!ち、千冬さん」

 

 鳳は千冬に怯え後ずさりする。

 

 「織斑先生だ。さっさと自分のクラスに戻れ、バカ者!」

 「は、はいぃぃぃぃ!!!」

 

 千冬の言葉を受けて猛ダッシュで自分のクラスへと戻っていく鳳であった。

 

 「一夏!あいつとはどういう関係なのだ!」

 「そうですわ!」

 

 篠ノ之とオルコットをはじめとして数人が詰め寄るがそんなことをすれば

 

 「貴様らはそんなに放課後に残りたいのか?ならば放課後に補習をするか」

 

 千冬の言葉に顔を青くし女子達は直ぐに自分の席へと戻っていく。

 

 「全く、学習能力のないバカどもが」

 

 よほどストレスが溜まっているのか言葉遣いがいつも以上に乱暴になっている。今日はもう逆らわない方が良いだろう。クラスの女子達も二度と逆らわないといった表情を浮かべている。

 

数時間が経ち昼食

 俺は誰にも見つからないように自分のクラスを抜けて生徒会室にやってきた。

 

 「入るぞ~」

 「どうぞ~」

 

 中に入ると虚と楯無がいた。今日は楯無と虚に昼食を作ってきて一緒に食べることになっている。

 だが、楯無がなぜかぐったりと机に突っ伏していた。

 

 「楯無どうした?」

 「今日、織斑先生の授業があったんだけどものすごく不機嫌で私が相手に選ばれて死にかけた、お兄ちゃん何か知らない?」

 

 楯無は顔を少し上げ聞いてくる。

 

 「そんなことがあったのか。今日は鳳が教室にやってきてから連続で怒ったからじゃないか?それに、最近忙しそうだからな…だいぶストレスをため込んでいるみたいだぞ?」

 「何をしているのよ!?今日は予定にもない模擬戦を行うっていきなり言い出して私が対戦することになったのよ!!おかげで私がひどい目にあったわ!!!」

 

 涙目でそう訴えられた。

 

 (それにしても、授業中にまで予定を変更して戦うとはよほどストレスが溜まっているみたいだし織斑達の命日も近いかもしれないな)

 

 「それを俺に言われても、簪か詩乃にでも言って自分の分までぶっ飛ばしてきてくれって頼めば?」

 「そう、ね。それで行きましょう!私を怒らせたこと後悔させてやるんだから!」

 

 その頃、ツインテールの彼女は悪寒を感じて身震いしたとか。

 

簪side

 今日は、お姉ちゃんから詩乃と一緒に呼び出されてなぜか中国の代表候補生に当たったら私の分までぶん殴ってと言われた。

 理由を聞いて私自身も納得したけど、織斑先生と戦うなんて死に物狂いだよね。私も詩乃と一緒に戦ったけど死を覚悟したもん。

 強すぎだよ織斑先生。

 

 「かんちゃんどうしたの~?」

 

 隣にいた本音が声を掛けてきた。どうやらかなり考え事をしていたようでもう少しで部屋につくところだ。詩乃はお姉ちゃんとの話の後に用があるからと別れた。

 

 「何でもないよ、お姉ちゃんとの話を思い出していただけ」

 「そうなの~?」

 「うん、大丈夫だよ」

 

 私は本音にそう言い前を向く。

 

 「一夏のバカ!!!女の子との約束を覚えていないなんて最低よ!!!」

 

 そんな声が聞こえると。一つの扉から一人の女子が出てきた。

 

 「本音、あれって」

 「あれ~?あの子、中国の代表候補生だよ~」

 

 本音が教えてくれた。

 

 「そう、でも関係ないからスルーしようか」

 

 何だか面倒そうな感じがしたからそう言う。

 

 「何見てんのよあんたたち?!」

 「大声で部屋から出てきたらみんな見るでしょ?」

 「ぐっ!うるさいわね!今あたしはむしゃくしゃしているのよ!」

 「それが何?」

 

 私はそう言うしかなかった。怒りで頭が冷静じゃないのだろう。ということは

 

 「何ですって!?」

 

 ほら、やっぱりそう言ってくる。

 

 「・・・・・・」

 

 私たちはしばらく睨み合う。

 

 「まぁいいわ!一夏!覚えておきなさいよ!」

 

 先に目を逸らし織斑君の部屋に向かって廊下で叫びその場をさっさと離れる中国の代表候補生。

 

 

 私たちは部屋に戻ってきた。

 

 「なにあれ?大して強くもなさそうなのに偉そうでムカついたんだけど?」

 

 私はNDCでの訓練である程度は相手の実力をある程度は測れるようにはなっている。

 

 「そうだね~」

 「はぁ、彼女のことは後回しにして問題は詩乃だね。間違いなく一番の強敵になる」

 「うん私もそう思うよ~」

「負けられないから織斑先生に鍛えてもらうように頼んだんだもん」

 

 そう言いつつ私は織斑先生との会話を思い出す。

 

 『失礼します。織斑先生は居ますか?』

 『更識妹どうした?』

 『私に稽古をつけてください』

 『ほう、だが私は一組の担任なのだが』

 『でも、誰も教えてもらうように頼んできていないんですよね。誰もいないならつけてください』

 

 私はその辺を既に調べておりそう言う。

 

 『はぁ、確かにそうだが。そこまでしてなぜ私に拘る?お前の兄もいるだろう?』

 『詩乃はおそらくお兄ちゃんに教えを乞いに行ったと思うから。詩乃の戦い方ならお兄ちゃんの方が私も良いと思います。同じ武器を使っていますし』

 『なるほど確かにな。良いだろうだが、私の特訓は生半可なものではないぞ?』

 

 織斑先生が挑発するように言ってくる。

 

 『望ところです。それに・・・・・・』

 『それに?』

 『どっちに頼んでも生半可ではないんでしょう?』

 

 そう聞くと織斑先生はキョトンとする。

 

 『それもそうだな。ならば、明日の朝から始める今日はゆっくり休めよ』

 『はい』

 

 織斑先生は直ぐに復帰しそう言い私は返事をした後、職員室を後にした。

 

 「詩乃に勝つために。それから、クラスの人たちにも協力してもらうように頼まないと」

 「うわ~かんちゃんやる気MAXだよ~」

 

詩乃side

 私は簪たちと別れてからある人を探していた。

 

 「ボス」

 

 人気のない屋上で横になっている私のボス 蒼羅様に会いに来た。

 私はボスの部下で一番の新参者だ。

 

 「詩乃どうした?」

 「ボス、私は簪に負けたくありません」

 「そうか」

 「ですが、今のままでは簪に負けそうな予感がしています」

 「ほう、その心は」

 「簪はおそらく織斑先生から教えを乞うでしょう」

 「なるほどな。それならお前が負ける可能性も出てくるわな」

 

 どこか面白そうにそう言うボス。

 

 「楽しそうですね」

 「おう、妹と妹分の対決楽しみに決まっているだろう」

 「ボス。私はあなたの」

 

 私はその先を言おうとするがその前に

 

 「俺はいや俺たちはお前に新しい道を歩んでほしいと思っているんだがな」

 

 その言葉に私は苦笑した。

 

 「無理ですね。私はボスたちとともに生きることを望みます」

 「そうか」

 

 ボスは何処か悲しそうな声を出す。

 

 「明日の朝から始める。早く戻りな」

 「はい」

 

 私はそのまま屋上を後にする。

 

蒼羅side

 「大変そうだな?」

 

 詩乃が屋上を後にして数分後千冬が現れ声を掛けてきた。

 

 「お互いにな」

 「やはり詩乃は・・・・・・」

 「ああ、困った連中だよ。部下にしてくれなんて」

 「ふっ、それもそうだな。だが・・・・・・」

 「ああ、あいつらの目を見ると断れないんだよな」

 「あいつらは一夏たちとは違いちゃんと覚悟がある」

 「そうだな・・・・・・」

 

 俺たちの間にしばらくの沈黙が続いた。

 

 「早く寮に戻れよ」

 「ああ、千冬も無理はするなよ」

 

 千冬に言われ俺は起き上がり寮に戻る。千冬はまだ仕事が残っているのか職員室の方へと向かって行く。

 


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