更識家の人外   作:佐藤 海

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第五話

蒼羅side

 「蒼羅!頼む勉強を教えてくれ!」

 

 織斑が休み時間にやってきて挨拶もなしに開口一番に言ってきたのがそれである。

 それだけ、焦っているといるのだろう。それでも、最低限の礼儀は弁えるべきであろう。

 

 「断る。俺は放課後することがある。それと、初対面なのにいきなり名前で呼ぶな」

 「いいだろ、別に。それにここには男は二人しかいないんだぜ!仲良くやろうぜ!」

 

 織斑はそう言ってなおも詰め寄ってくる。

 

 「はぁ、俺にはそんなこと関係ないしこの学園には知り合いがいるから別に不自由はないし気まずくもない」

 

 俺は普段からなぜか女子たちしか周りにいないからこのぐらい何ともないのだ。

 

 「ちょっとよろしくて」

 「へ?」

 「・・・・・・はぁ」

 

 俺と織斑が話していると金髪の女子が声を掛けてきた。織斑は気の抜けた返事を俺は面倒さを感じてため息を吐いた。

 

 「聞いていますの?」

 「ああ、聞こえているけど?何かようか?」

 「聞いているけど」

 「まぁ、なんですの!この私が話しかけているというのにその態度!」

 

 (年上に対してその態度のお前がそれを言うのか?)

 

俺は今すぐ消したい衝動にかられたが何とか我慢した。

 

 「いや、君が誰だか知らないし」

 「な!?知らない!?入試主席のこの私を!?」

 「おう、知らん」

 

 織斑と金髪女子が会話をしていくが俺はさして、興味がないので名前以外は全部無視した。

 

 「あなた!あなたも試験官を倒しましたの!」

 「ああ」

 「あ、ありえませんわ、私だけだと聞きましたのに」

 

 オルコットはかなり驚いている。

 

(初心者が乗って倒して驚くのは理解できる。だが、そこまで倒したことをよく自慢できるな、専用機を使っているはずだから負けることなどないだろう)

 

 実のところ彼女のことは知っているイギリス代表候補生のセシリア・オルコット。彼女が専用機を持っていることもそして、専用機で試験官と戦ったことも。

ちなみに千冬から聞いたことだが簪とアイツ(・・・)は目立ちたくないからと訓練機を使って手を抜いて負けたのを千冬に知られ非公式試合として千冬と対戦することになり二対一で専用機を使い大バトルの果てに二人とも負けたそうだ。

 

 「女子だけっていうオチじゃないのか?」

 

 織斑が余計なことを言う。こういうのには黙っていればいいだろうに。

 

 「ふ「キーンコーンカーンコーン」くっ!後でまた来ますわ!逃げないことですわね!」

 

 オルコットはチャイムが鳴ったことに悔しそうにしながら捨て台詞を吐いて席に戻っていった。

 

 「織斑、お前も戻れ」

 「あ、ああ」

 

 織斑もようやく戻っていった。

 

 「さて、この時間では授業を始める前にクラス代表を決める。クラス代表とはその名の通りクラスの代表であり、今月下旬に行われるクラス対抗戦への出場、後は教師の手伝いなどだ。自薦他薦は問わないが一年間変更はないから真剣(・・)に選べよ。それから他薦されたものに拒否権はない。誰かいないか」

 「はい!織斑君が良いと思います!」

 「私も!」

 「私は更篠君が良いと思います!」

 「私も!」

 

 俺と織斑を推す声が大多数だった。

 

 「お前た「納得いきませんわ!」ピキピキ」

 

 千冬が話そうとしたときそれに被せるようにオルコットが抗議してきた。千冬の血管が浮かび上がったのは気のせいではないだろう。

 

 「興味本位でクラス代表に男を推薦するなど納得いきませんわ!それに、ただでさえ極東の島国で後進的な国に来ることでさえ耐えがたい苦痛だというのに!クラス代表に男を推すなど納得いきませんわ!」

 

 オルコットの言葉にクラスの日本人が彼女に抗議の視線を向けているが気づいていないようだ。

 言い過ぎなければ正論であろう言葉も言い過ぎの為あまり意味をなしてない。何より敵を増やすだけである。

 

 「オルコ「そっちだってメシマズランキングで何年連覇だよ!」ピキピキピキ」

 

 千冬が話そうとすると今度は自分の弟が遮った。そのため、さらに血管が浮かび上がっているようだ。

 

 (千冬の奴、今日は厄日だな~)

 

 俺は呑気にそんなことを考えていた。

 

 「な!私の祖国を侮辱しますの!」

 「先に侮辱したのはそっちだろ!」

 

 (これ、どこの小学生の喧嘩だよ。バカなのか、というより千冬に気づいてやれよ。可哀そうに)

 

 千冬からだんだんと黒いオーラが出始めているが誰も気づいていないようだ。本音を見ると若干震えているのが目に留まった。

 

(本音は気づいているようだな、震えている。後で、慰めてやろう)

 

 俺は一人でこの後のことを考える。

 

 「蒼羅、お前からもなんとか言ってやれよ!」

 

 織斑が俺の方に話を振ってきた。ちょうどいいから気づかせてやろうと思い俺は話す。

 

 「お前らさ、俺から言えるのはただ一つだ。いい加減に教壇に目を向けろ」

 

 俺がそう言うと本音以外が教壇を向くとようやく気付いたのか途端に顔色を真っ青にした。

 

 「オルコット、織斑貴様ら何の権限があって私の話を遮るのだ?それに、小娘ども私は真剣に考えろと言ったはずだが?お前たちからは男だからという理由で推薦しているようにしか見えんぞ?」

 

 どす黒いオーラを纏いながらいつもより低い声で話す千冬。

 

 「あ、あ、あ、あ、」

 「こ、こここれは」

 「「「・・・・・・ガクガク!!!」」」

 「この大バカ者どもが!!!」

 

 織斑とオルコットはもうすでに言葉が出ないようだ。千冬の最後の気迫にクラス中の女子達も本音が何とか耐えている以外は皆気を失っている。

 

 (さすがにそろそろ止めるか)

 

 「織斑先生」

 「更篠、なんだ」

 「それ以上は色々大変なのでやめた方が良いでしょう。それと、俺、織斑、オルコットで対戦してクラス代表を決めた方が早いでしょう」

 

 俺は千冬を諫めると同時にクラス代表を決めるのに提案する。

 

 「・・・・・・ふぅ、そうだな。一週間後にクラス代表決定戦を行う更篠、織斑、オルコットの三人は準備するように!授業はこれまで」

 

 そう言って、千冬は気を失っている山田先生を連れて教室を後にした。

 


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