更識家の人外   作:佐藤 海

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第六話

蒼羅side

 「本音大丈夫か?」

 「蒼兄、怖がっだよ゛~」

 

 俺は震えている本音に近づき声を掛けると滅多に泣くところを見せない本音が涙声で抱き着いてきた。

 

 「はいはい、大丈夫だからな」

 

 本音を抱きしめて慰める。まぁ、かなり怖いだろうな、俺以外が未だに放心状態だし。

 

放課後

 結果的に今日はほとんど授業にならなかった。だが、そんなことは知らんという態度で千冬は授業を進める。

まぁ、面白半分で他薦したバカどもに対して優しくするほど千冬は優しくないし俺も慰めてやる義理はない。

結局、自業自得なのだから。

 

 「本音」

 

 俺は本音に優しく語りかける。

 

 「蒼兄~?」

 

 まだ、本調子ではないだろうがだいぶ回復してきたようだ。

 

 「今日は生徒会室に楯無と虚は居るのか?」

 「うん」

 「そうか、なら会いに行こうか」

 

 本音は頷いた。

 

 「じゃあ、まずは簪の所に行ってだな、簪は何組だ?」

 「かんちゃんは四組だよ」

 「それじゃ、行くか」

 「うん」

 

 俺たちは放心しているクラスメートを置いて四組に向かう。

 

 「更篠、どこかに行くところか?」

 

 廊下の途中で千冬がやってきた。

 

 「ああ、四組に」

 「妹の所か」

 「まぁな」

 

 俺と千冬が話していると後ろから誰かが出てきた。

 

 「主、本音」

 

 後ろから現れたのは湊だった。

 

 「うわっ!?お姉ちゃん!」

 

 本音はかなり驚いていた。

 

 「そんなに驚かなくてもいいではないですか本音、傷つきますよ」

 「湊、急に現れたらだれでもびっくりするだろう?」

 「そうですか?」

 「ああ、そうだよ」

 「そうだよ~」

 

 そう言いながら本音は湊に抱き着く。湊は本音を抱きしめて撫でている。

 

 「えへへへ」

 

 本音は嬉しそうに笑い先程まで怖がっていたのが噓みたいになった。

 

 「簪様の所へ?」

 

 本音を撫でながら湊が聞いてきた。

 

 「ああ、簪を連れて生徒会室に行くつもりだ。まだ、大丈夫なら先に行っといてくれ」

 「わかりました。それと、今日からどうやら入寮となったようですので主の荷物をお持ちしました」

 「そうなのか?」

 

 俺は千冬に聞く。

 

 「ああ、政府から話があった。これが部屋の鍵だ」

 「ああ、わかった」

 「はぁ、今から苦労が絶えんな」

 

 千冬は今日のことを思い出しのかため息を吐いた。

 

 「そうかもな。そういえば千冬、お前の後輩はどうした?」

 

 俺が山田先生について聞くと

 

 「ああ、真耶か。職員室で休んでいろと言って休ませてきた」

 「疲れている原因は、お前が怒ったオーラのせいじゃないのか」

 

 そう言うと千冬は目を逸らすだけだった。

 

 「千冬、そろそろ教室にいる織斑君が待っているんではないですか?」

 「そうだったな。また明日な、遅れるなよ」

 「ああ」

 

 千冬は湊にそう言われ別れの挨拶をした後、教室へと戻っていった。

 

 「では、主、本音後で」

 「ああ」

 「後でねぇ~」

 

 湊とも別れ四組へと向かう。

 

簪side

 今日、私はお兄ちゃんに久しぶりに会えると思ってほとんどの授業は上の空だったが、授業の途中に大きな叫び声が聞こえてきて私も含めてクラスの子たちも驚いていた。後は一組がなぜか放心状態だった、とか聞き。初日からよくわからない日になった。

 

 「簪?」

 

 私に声を掛けてきたのは水色の髪をした女性、朝田詩乃さん中学からの同級生で私と同じ日本の代表候補生でありそして、ライバルでもある。三組のクラス代表だ。

 ちなみに四組のクラス代表は私になった。

 

 「どうしたの?」

 「いや、あんたのことを何人かが話したそうにしているわよ」

 

 そう言われ周りを見回してみるとクラスメート数人が興味津々と言った表情でこちらを見てきた。

 

 「え、え、」

 

 お兄ちゃんのことが気になっていた私は周りのことに全然気づいていなかったため恥ずかしくなり顔が赤くなっていく。

 

 コンコン

 

 「失礼するよ。更識簪は居るかな?」

 

 そう言って入ってきたのは私の大好きなお兄ちゃんだった。

 

蒼羅side

 「随分簪は人気があるのか注目されているな」

 「かんちゃんは日本の代表候補生の中でももう一人の代表候補生と一緒に並んでとても人気なんだよ~」

 「そうなのか?まぁ、確かに贔屓目に見なくても可愛いが。それよりも、さすがに可哀想だからそろそろ行くか」

 

 俺はそう言って教室のドアをノックする。

 

 コンコン

 

「失礼するよ。更識簪は居るかな?」

 「え!二人目の男性IS操縦者が何でこんな所に!」

 「それより、更識さんを呼んでいるよ!?知り合いなの!」

 

 クラス中が一気に盛り上がった。

 

 「え、えっと、あの」

 

 簪は更に顔を紅潮させていた。

 

 「すまないけど。簪が恥ずかしがっているから今日の所はその辺にしてもらえないかな。時間はこれから沢山あるんだから」

 「は、はい!すみません。あの、でも」

 「俺は簪とは苗字が違うが兄妹なんだ。それで、簪を呼びに来た」

 

 俺は優しく語りかける。

 

 「そ、そうなんですか!わ、わかりました!」

 「簪、生徒会室に行くぞ」

 「う、うん。あ、詩乃また明日ね」

 「ええ」

 

 俺は簪を連れて教室を出て、本音と合流し生徒会室へと向かう。

 




ソードアート・オンラインの朝田詩乃『ガンゲイル・オンライン』の時のシノンを朝田詩乃として登場させました。

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