やっとここまできた感じですね。
次回が終わったらようやく原作突入です!
ちなみに、次回のあとがきに主人公のプロフィール載せる予定なのでお楽しみに!
ではどうぞ!
『楽しめよ。人生は一度きり………
死んだら終わりだぜ?』
「ふう」
「……終わったのか?」
黒歌は額の汗を拭う。
「うん。外傷はなかったけど、かなり危険な状態だった。たぶん毒ガスかなんかを吸ったんだと思う」
「毒ガス………ね」
仁は静かに教会へと視線を向ける。
この少年、恐らく木場祐斗だと思われる少年は、そちらの方から来たのだろう。
まるで、逃げるように。
少年が何か悪いことをしたとしても、毒ガスなんかを真っ当な教会が使うだろうか?
恐らく否だろう。
そこから導き出される答えはただ一つ。
あの教会は、何らかの不当な行いをしているのだろう。
例えば、人体実験とか。
「うっ………がはっごほっ!」
どうやら少年が目を覚ましたようだ。
ガスのせいか、少し咳き込んでいる。
「大丈夫?」
仁は少年の対応を黒歌に任せることにしたのか、少し離れたところで見ている。
「あなた……は?」
まだ苦しいのか、所々息詰まっている。
「私は黒歌。で、あっちでムッツリしてるのが桜満仁。二人ともあの教会とは無関係にゃん」
「誰がムッツリだ」
どうやら黒歌もあの教会が真っ当なものではないと気づいていたらしい。
「で、お前は?」
「……木場祐斗……です。……さっき教会と言ってましたが、あなた達はあそこで何があったか知っているんですか?」
どうやら当たりらしい。
少年が黒歌の言った教会というワードに食らいついた。
「ううん。私たちも、今あなたを見つけたばかりだから」
「……あそこでは、ある計画が行われていたんです。『聖剣計画』……それがその計画の名前です」
「聖剣計画……いったいどんなことをしていたの?」
「聖剣を扱える因子を持つものを育てる。そういう計画だと聞いています。………そして、僕を含めた同志達は『失敗作』と言われ、殺されました」
黒歌は息を呑む。
ただ失敗作というだけで死ななければならないなど、明らかに間違っている。
どこぞの聖人の言葉を借りるわけではないが、完璧な人間などいないのだ。
だからこそ人間は、自身の不十分な面を人間関係で補っている。
「お前の同志の死因は、毒ガスで良いんだな?」
「……はい。いきなりマスクをつけた人たちが部屋に入ってきて、『お前達は失敗作だ。殺さなければならない』と。そんな中、同志達は僕を必死にに逃がしてくれて、でも僕は……僕は……」
少年、木場祐斗は体を震わせる。
そうとうショックだったのだろう。
「……っ!まずいな」
「どうしたの仁?」
唐突に仁が教会の方を睨む。
すると、十人前後の人間がこちらにやって来るのが見えた。
見えたといっても、仁の異常な視力があったからだ。
実質、あちらはまだ仁たちに気づいていないらしい。
まだそれなりに時間はあるようだ。
「どうやら、教会側はまだお前に用があるらしいぞ?」
「そんな!?早く逃げないと……」
『いたぞ!森のなかに人影を確認、包囲せよ!』
「思ったより早いな」
黒歌が木場を抱えようとしたとき、あちらが仁たちを捉えた。
改めてみると、全員武装しているらしい。
さすがの仁でも、十人相手に二人抱えて逃げるのは少し難しいだろう。
「逃げて……ください」
仁がその考えに至ったとき、木場がそう呟いた。
「え?でも!」
「逃げてください!あいつらが狙っているのは僕です。僕が残れば、二人は逃げられる!」
どうやら本気のようだ。
目を見ればわかる。
「そんな事……ねぇ仁!仁なら、私たち二人を抱えて走れるでしょ!?」
黒歌が、すがり付くような目で仁を見上げる。
しかし、それに対する答えはつい先程出たばかりだ。
「さすがに難しいぞ。それに、何故そんなにそいつにこだわる?本人が良いって言ってるなら、そういてやればいいだろ」
「っ!そんな言い方って……」
同情……なのだろうか。
黒歌は、木場と自分の立場を重ね合わせているのだろう。
両親を失い、信じていた主に裏切られ、唯一の肉親である妹も守れなかった黒歌。
自分達は選ばれたと信じていたのに失敗作だと切り捨てられ、他の奴らに守られて生き延びた木場。
形は違えど、どちらも不幸で済まされるような人生ではない。
しかし、それだけだ。
直接的な繋がりなんて何もないのだ。
仁は、それでも助けようとする黒歌が理解できなかった。
『包囲完了!対象を確認!』
「っ!?」
どうやら、揉めている間に囲まれてしまったらしい。
文字通り八方塞がりだ。
「じゃあ、何で?」
「……………」
『対象を木場祐斗と断定!これより排除行動に映る!』
三人を囲んでいた男達は、銃口をこちらへと向ける。
「何で、私を助けたの?」
「……………」
『射てーーーーー!!』
「何で、あなたは………」
男達は一斉に引き金を引く。
黒歌の疑問は虚しくも銃声にかき消された。
しかし、この男にだけは届いていた。
「そんなの、決まってるだろう」
まるで時間を置き去りにしてきたような感覚。
銃弾も、空から降る雪も何もかもが遅く感じる。
そんな中、仁は黒歌へと向かってポツリと呟く。
「お前が求めたからだ。この世界に、お前自身の運命に抗うことを………」
刹那、三人がいた所の
『なっ、外し……グハッ!?』
そう、そこにはすでに三人は居なかった。
そしてそれを確認した男の胴体が真っ二つに斬れる。
いや、ずれるといった方が正しいだろう。
その男の後ろには、《刀》のヴォイドを手にした仁と、その後ろに踞る黒歌と木場の姿があった。
そう、仁はあの一瞬で黒歌のヴォイドを取り出し空間をずらすことで避けた。
「俺は安っぽい同情で他人を助けるほどできた人間じゃない。あそこでお前が求めなければ、俺はお前を見殺しにしていたさ」
「え?」
「そこの違いだよ。お前は求めたが、そいつはただ絶望しているだけだ。だから俺はそいつの人生に同情はしても、助けたいなんて気には全くなれない」
『う、射て!射てーーーーー!!』
男達はさらに三人へと銃を射つ。
仁はそれを、魔方陣のようなもので防ぐ。
「なぁ、木場祐斗」
「っ!?」
「何故お前は生き残った?」
「……え?」
「なぜ、同志の中でお前だけが生き延びた?きっと他にもいただろう。まだ、生きたいと願ってたやつが」
「っ!?……それは………」
木場は考える。
なぜ、自分だったのかと。
きっと皆、自分の生きた理由もわからないまま、死ぬ理由さえ理解できないまま死んでいった。
そんな中、なぜ自分だったのかと。
答えはでない。
でも、木場の胸には一つだけ確かな物があった。
それは……聖剣が憎いという思い。
「僕は………僕は、聖剣を壊すために生き残った。聖剣計画なんてくだらないものを考えたやつを殺すために生き残った。同志たちの無念を晴らすために生き残った。僕は………この世界に復讐するために生き残った!」
それを聞いて、仁は苦笑いをもらす。
どうやら彼が望んだ答えは少し違うらしい。
「良い覚悟だが、少し間違えてるな。………なぁ、木場祐斗。その生き方は楽しいか?」
「え?」
「楽しめよ。人生は一度きり、死んだら終わりだぜ?」
「わ、わかってます!だから同志たちの……」
「だから違うんだよ。お前がこの世界に抗うために必要なのは、そんなちっぽけな復讐何かじゃない」
「じゃあ、いったい何が必要なんですか!」
「それはな………」
仁は刀を横に薙ぎ、近くにいた者の首を落とす。
男達は混乱し、銃弾の嵐に僅かな隙ができた。
「生きることだよ」
仁は、木場の胸元へと手を伸ばした。
活動報告でも書きましたが、クリスマスにやる番外編で仁と黒歌が箱庭に行きます。
それにしてもこの主人公、なかなかキャラが定まらないorz
作者も少なからず困ってます。
次回もなるべく早く投稿できるよう頑張ります!