原作にはまだ入れなかったorz
ではどうぞ。
『やっぱ女に歳は聞くものじゃないな………
物理的に痛い目を見る』
side《???》
………あぁ
ここは何処だ?
真っ暗だ、どこに何があるのかさっぱりわからない。
それどころか、体の感覚すら何もわからない。
不思議な、しかし不快ではない浮遊感が体を覆っているのがわかる。
指先一つ動かせない。
ここは何だ?
なぜ俺はここにいる?
いや、それ以前に………俺は誰だ?
………恐い。
嫌だっ……誰かっ!
誰かここから出してくれ!
この暗闇から……何もないここからっ!
俺を出してくれっ!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
side《仁》
目が覚めると、黒歌と視線があった。
というか、目の前に黒歌の顔があった。
あと数センチで触れてしまいそうなほど近くに。
「……おはよう、仁。キスしてあげようか?」
「おはよう、黒歌。遠慮しておくよ」
朝っぱらからこのラヴコールはさすがにきついので流しておく。
すると、黒歌が不満そうに唸りだす。
「むー……つれないにゃー。朝御飯は出来てるから、早く来てねー」
黒歌はそう言い、俺の部屋から退出していく。
「……はぁ。まったくあの色情猫は。……それに、今日もあの夢か」
俺はこの世界に来てから、決まってある夢を見るようになった。
何もない空間で体も動かせず、最後には自分自身のことさえも思い出せなくなる夢だ。
もちろん、目を覚ませば全て思い出せるが、じわじわと我を忘れていくあの感覚は、俺でさえも恐いと感じる。
そんな悪夢を毎晩見ているわけだ。
……もしこれがあの自称女神の悪戯とかなら今すぐぶっ飛ばしてやりたい。
さて、そんなことよりも今現在の状況を確認するとしよう。
あの後、俺と黒歌はヴォイドの力で日本を目指した。
やはりというか何というか、あそこは日本ではなかったらしい。
そんなわけで俺たちは日本に上陸(?)したわけだ。
さて、そんな俺たちはまず何をしたのか。
家を買ったのだ。
自称女神のおかけで金は結構あったため、安いものだが一軒家を買うことができた。
そんなこんなでこっちに来てから一週間が経過したわけだが……一つ問題ができてしまった。
黒歌がウザくなったのだ。
いや、出会ったときと比べて自然になったと言うべきかもしれないが、しかし朝から晩まであのテンションで絡んでくるのはやめて欲しい。
でもまぁあれなんだろう。
元気が一番!とか言うやつだ。
俺には無いものだからわからんが、きっと良いことなんだろ。
さて、着替えも終わったし飯を食べにいこうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「遅い!待ちくたびれたにゃー」
「あー、悪い悪い。悪かったから早く飯にしよう」
居間の方に降りてきた仁を迎えたのは黒歌の罵倒だった。
のだが、仁はまったく気にした様子もなくさっさと座る。
ちなみにこの家、全体的には小さいが二階まであって風呂やトイレも完備しているため、二人で過ごすには申し分ない。
「むぅー……まぁいいや。それじゃ、いただきます!」
「……いただきます」
ちなみに朝食のメニューは白米、豆腐とネギの味噌汁、焼き魚、卵焼き、ほうれん草のお浸しと純和風だった。
流石は猫又、日本の妖怪だ。
「どぉ……かな?」
仁が黙々と食べるのを見て不安になる黒歌。
「ん?普通にうまいぞ」
「……そっか」
えへへと微笑む黒歌。
やはり作った側としては美味しいと言ってもらえると嬉しいのだろう。
「あ、そういえば………。ねえねえ仁!今朝、隣のおばあさんからお饅頭貰っちゃった!」
「隣?……あぁ、多恵ばあさんか」
仁は基本的に、ご近所付き合いは黒歌に任せている。
別にコミュニケーションを取れないわけではないが、そのぶっきらぼうな態度はあまり向いていないのだ。
そんな仁が唯一知り合いなのが隣に住んでいる人物、多恵ばあさんだ。
「そう!本当に多恵さんは優しいよねぇ。あんなおおらかな女性になりたいにぁ~」
ポカポカとした笑顔で理想の女性像を語る黒歌。
しかし、ここで仁がよけいな思考をしてしまった。
そう、本当によけいな………。
「……なぁ黒歌」
「ん?どうしたの?」
「悪魔や妖怪って歳をとっても見た目は変わらないよな」
「え?……うん、そうだけど。それがどうしたの?」
「いや、黒歌って本当は何歳「シャラップ!!!!」危なっ!?急に湯呑みを投げるなっ……て、黒歌?」
仁のデリカシーの欠片もない発言に体を震わせ怒る黒歌。
その顔は、見るものに本能的恐怖を植え付けるような笑みに染まっていたわけで……
「仁のバカ!アホ!無頓着!この朴念仁!」
「ちょっ!?落ち着ゲフッ!?」
私はまだ見た目通りの年齢だにゃっ!
そんな叫びを後に、黒歌は猫の姿になり家を飛び出してしまった。
仁の反応速度を上回るスピードでしゃもじを投げたのはあえて触れないでおこう。
「痛つつ。なんつー豪速球……球じゃねぇか。……にしても、やっぱ女に歳は聞くものじゃないな。物理的に痛い目を見る」
もしも誰かがその場にいたのならこう突っ込むだろう。
それは違うだろう!と。
「まぁいいや。黒歌も行っちまったし、俺も散策に行くとするか」
仁は食器等を片付けて、日課である散策に出るのだった。
………ぶっちゃけ、仕事をする必要がないので基本ニートである仁にとって、散策は日課というより日常である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あら、仁ちゃん?」
「ん?……多恵ばあさん、ちゃん付けしないでくれとあんなに言っただろ」
家を出た仁がまずあったのは、件の多恵ばあさんだった。
買い物袋を持った姿から、スーパーにでも行くのだろうと予想できる。
「ふふっ、仁ちゃんは仁ちゃんよ?それより、何処かに行くのかしら?」
口に手をあて上品に笑う多恵ばあさん。
実はこの人、六十歳はいってるはずなのだが、見た目は三十代くらいといった超人だ。
仁が波紋でも使えるのかと本気で思ったくらいだ。
「はぁ、もう諦めたよ。……散策に行こうと思ってる。今日は神社あたりに」
「神社……ねぇ」
「ん?何かあるのか?」
神社という言葉に多恵ばあさんは首をかしげる。
というより、何かに悩んでいるようだ。
「いえ、とくに何があるわけでもないのだけど……仁ちゃんならお願いしてもいいかしらね?」
「わけがわからないが……多恵ばあさんのお願いなら、聞ける範囲でなら聞こう」
「ふふっ、ありがとう。それじゃあお願いしようかしら」
しかし、仁はこの後とてつもなく後悔することになる。
なぜこんなことに関わってしまったのかと。
自身の不幸体質を呪うことになる。
この話は次回で終わらせ、その次からようやく原作に入る予定です。
長かったorz
それでは、また次回。