ようやくの投稿ですね。
今回も戦闘は一切ないので悪しからず。
では、どうぞ!
『休んだっていい、遠回りしたっていい。でも………
逃げるのだけはダメだ』
「ここか」
仁は今、多恵ばあさんのお願いを聞くために近所にある神社まで来ていた。
仁の家から歩いて二、三分のところにある。
「まったく……多恵ばあさんのお願いというから何かと思えば、この俺に
そう、ぶっちゃけ仁のコミュニケーション能力は皆無といってもいいだろう。
いや、会話等が出来ないわけではないが、そのぶっきらぼうな態度はご近所付き合いなどには100%向いていない。
では何故、仁はこのお願いを聞いたのか。
もちろん、最初は全力で否定していた。
自分には無理だ、と。
しかし、多恵ばあさんの次の一言で仁が動くことになる。
『う~ん、困ったわねぇ。……もしも受けてくれたら、黒歌ちゃんと仲直りする方法を教えようと思ったのに……本当に残念ね』
何で知っているのか。
恐らく、ヤケクソになった黒歌が多恵ばあさんの家に転がり込んだからだろう。
仁が散策に出ている一方で、黒歌はほとんどの時間を多恵ばあさんと過ごしている。
そのため仲が良く、何かある度にそうしているのだ。
「……はぁ、とりあえず行ってみるか」
重々しい足を一歩、また一歩と動かすその後ろ姿は、これからラスボスに挑む勇者さながらだったとこれを見ていた人が後に語ったそうだ。
どうやら仁にとって、このお願いはそこまでの難易度を要したらしい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「止まって」
「……なんだ?」
階段を半分まで登ったところで、背後から呼び止められる。
どうやら少女のようだ。
ちなみに、仁は気配に気づいていたので驚いたりはしない。
「そのまま答えて。あなたは何?ここに何の用?」
どうやら警戒されているようだ。
しかし心当たりはまるでないのでスルーしておく。
「……
多恵ばあさんのお願いの内容について詳しく触れていなかったのでここで語ろう。
初めの方でもいったと思うが、簡単にまとめるならこの神社に住んでる少女を慰めろとのこと。
どうにも訳ありらしく、他人とあまり関わろうとしないらしい。
「用事?……あんな化け物に何の用なの?」
「化け物?……どういうことか教えてもらえるか?」
すると、少女の声が止まる。
何かを考えているようだ。
少しして、少女はポツリポツリと話し出す。
「どうもこうも、化け物なのよ。そう……汚らわしいカラスの羽を持ったおぞましい化け物。この世に産まれて来るべきではなかった存在」
それはまるで、自分に言い聞かせているように聞こえる。
しかし、この中には貴重な情報がいくつか含まれていた。
『カラス』
仁がまずその言葉から連想したのは堕天使だった。
このハイスクールD×Dという世界にとって必要不可欠なものの一つ。
物語の軸となる三大勢力のひとつだ。
「二度は言わないわ。今すぐここを離れて、今後一切関わらないで」
「……なぁ、お前さ」
ここでようやく、仁は口を開いた。
「化け物の定義って知ってるか?」
「……え?」
仁が放ったその言葉があまりにも予想外だったのか、少女は今まで纏っていた殺気を一瞬にして散らした。
それを確認した仁は、そのまま話を続ける。
「いいか?化け物ってのは何も感じられないやつらの事を言うんだよ。うまい飯を食ってもうまいと感じず、他人の命を奪っても平然と立ち尽くし、目の前で人が死のうと笑ってられるやつら。そんなやつらを総じて化け物と呼ぶ。……ここに住んでる娘は、目の前で親が殺されても何も感じないようなやつなのか?」
「っ!?そんなわけっ!……そんなわけ……ない……でしょ……」
実は、仁は多恵ばあさんからこの少女についての身の上話を少しだけ聞かされていたのだ。
なんでも、数年前に事故で母親を失ったらしい。
さらにそのせいで父親との仲も険悪になっているとか。
今思えば、その事故とやらにはあきらかにオカルトが絡んでいるのだろう。
例えば、その娘の両親のどちらかが堕天使だったとか。
「……悔しかったの」
「………」
「お母様が目の前で殺されたのに、自分は何もできなくて……あの人が来たのが、全部が
終わった後で……何もかもが悔しかったのっ!」
「……それでいいだろ」
「え?」
「そう思えるのなら、お前は化け物なんかじゃない。それに、『産まれて来るべきではなかった』なんて、その母親に対する侮辱以外のなにものでもないだろ?……まぁ、俺は母親の愛なんて知らないがな」
孤児院育ちの仁からしてみれば、家族の愛なんてくだらないとしか思えないのだろう。
でも、そんな仁だからこそ言えることがあった。
生きていることへの侮辱とは、同時にその存在を産みだし育てたものへと侮辱でもあるのだと。
「あっ……私は……」
その事にようやく気づいたのか、少女が膝から崩れ落ちる。
「そんな……私が一番お母様を……」
「……いいか、ガキ。休んだっていい、遠回りしたっていい。でも、逃げるのだけはダメだ。自分自身から逃げるな」
そう言って仁は振り向く。
そしてようやく見えた少女は……
「……は?」
ハイスクールD×Dにおける主要人物の一人、姫島朱乃その人だった。
仁が驚くのも無理はない。
ちなみに、現在巫女服姿である。
しかし、いやだからこそ。
仁は一刻も早くこの場からおさらばしたかった。
これ以上原作組に関わるとろくなことにならない気がしてしかたないのだ。
「……あの」
仁が急ぎ足で階段を下ると、少女の真横で呼び止められる。
「……なんだ?」
「あ、えっと……帰るんですか?」
「まぁ、用事は済んだしな」
「……また、会えますか?」
「……さぁな。まぁ、お前が良い子でいたら案外、サンタさんあたりが合わせてくれるかもな」
「ふふっ……ありがとうございます。あの、私……姫島朱乃って言います」
「……そうか」
こうして仁はまた、急ぎ足で階段を下るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
side《朱乃》
いったい、彼は何だったのだろうか?
早足で階段を下りていく彼の背中を、私はただ眺めていた。
「……あっ、名前」
そういえば、彼の名前を聞いていなかった。
その考えに至ったのは、彼が見えなくなってからだった。
「……不思議な人だった」
なんだろう。
例えるのなら……そう、雪のような人だ。
言葉遣いや雰囲気はとても冷たいけど、彼の側にいるとなぜか暖かいと思ってしまう。
ゆらゆらと漂っていて、少しずつ私の中に積もっていくような、そんな感じだった。
「ふふっ、どうやら振り切れたみたいね」
「っ!?……たっ多恵さん」
いつの間にか、多恵さんが背後に立っていた。
腕に下げた買い物袋から、スーパーに行っていたのだと一目でわかる。
この人は、ここに引っ越してきたばかりの頃から私にかまってくれる。
他人を寄せ付けなかった私に、初めて話しかけてくれた人だった。
「あら、もしかして仁ちゃんの……あの子の事が気になるの?」
「っ!?」
図星だった。
なぜか、今の私の頭は彼にまた会えるのかという不安で一杯だったのだ。
自分でもわからないくらいに。
「大丈夫よ。彼の家、すぐそこだから」
「……え?」
「ふふっ、よかったら案内しましょうか?」
このとき、私はなぜかこう思っていた。
『彼なら、私の人生を変えてくれるのではないか?』
と。
だからこそ、私には断る理由が全くなかった。
「お願いします」
多恵さんが、優しく微笑んだ。
あぁ、きっと……私は変われるのだろう。
まさかの朱乃さんがヒロイン入りしましたね。
えっと、まぁ朱乃さんにもグレていた時期があるのかな?
とか思って書いたため、言葉遣いが違うと思います。
てかぶっちゃけ違いますね。
さてさて、次回からはようやく原作に突入です!
お楽しみに!