サマポケ短編小説集   作:トミー@サマポケ

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サマポケ短編SS(節分編)

 

 

 

 

 

 

 しろはと恋人同士になってからというもの、俺は連休のたびに、鳥白島を訪れていた。

 

 これは、そんなある冬の鳥白島の話。

 

 

 

 

 俺がやってきたのは、二月の頭。一年で一番寒さが厳しい時期だった。

 

 この島は比較的温暖な場所にあるからか、めったに雪も降らないけど、それでも冬だ。寒い。朝は特に冷える。

 

「うう、寒い」

 

 俺は布団からやっとのことで起き出すと、素早く着替えを済ませて、洗面所へと向かう。

 

 滞在中にお世話になっている加藤家は、いかんせん建物が古い。しっかりふすまを閉めているはずなのに、どこからともなく隙間風が入ってくる。

 

 暖房らしい暖房と言えば、居間のコタツくらいのものだった。

 

「鏡子さん、おはようございます」

 

「おはよう、羽依里君」

 

 居間に顔を出すと、家主の鏡子さんがコタツでお茶を飲みながら、テレビを見ていた。

 

「羽依里、やっと起きたの?」

 

 そして、台所からしろはが顔を覗かせる。

 

「おはよう、しろは」

 

「うん、おはよう。お腹、空いてる?」

 

「もちろん」

 

「もうすぐ朝ごはんできるから、待ってて」

 

 しろははそう言って、台所の方に戻ってしまった。すぐに味噌汁のいい匂いが漂ってくる。

 

 俺が島に滞在している間、しろはは毎朝こうして朝食を作りに加藤家に来てくれている。

 

「しろはちゃん、すっかり通い妻だね。私、お邪魔かな」

 

 鏡子さんがしろはには聞こえないような声で言う。

 

「家主さんがそんなこと言わないでください」

 

「はい、お待ちどうさま」

 

 その時、しろはが朝食を持ってきてくれる。

 

「おお、今日も豪華だ」

 

 今日の朝食は炊きたてのごはんに白菜と大根の味噌汁、生みたての卵と、島で獲れた海苔の佃煮、メインはカレイの一夜干しだった。

 

 しろはは食堂を経営しているだけあって、料理の腕はピカイチだった。

 

 朝からこれだけのものを食べられるなんて、俺は幸せ者だ。

 

「しろは、いつもありがとうな」

 

「別にいいよ。私も食べるし、鏡子さんにもお世話になってるだからお礼をしないと」

 

「いつもごちそうになってごめんね、しろはちゃん」

 

 そう言って苦笑いを浮かべるのは鏡子さん。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「うん。めしあがれ」

 

 俺が来ている時は、朝ごはんを三人一緒に食べることになっている。多少は鏡子さんの偏食も治ってきていると思いたい。

 

 

 

 

「それじゃ、お邪魔しました」

 

 一緒の朝食を終えると、しろはは帰ってしまった。もう少しゆっくりしていけばいいのに。

 

 朝食後、しばらくテレビを見ていたけど、正直暇だった。鏡子さんもどこかに出かけてしまったみたいだし。

 

「駄菓子屋にでも行ってみようかな」

 

 そう思い立った俺は、部屋にかけておいたコートを着込んで、駄菓子屋へと向かった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「くーださーいな」

 

「あ、いらっしゃーい」

 

 ガラス戸を開けて店内へ入ると、蒼が笑顔で迎えてくれた。

 

「あれ? あんた、また来てたの」

 

「ああ。今週もしろはに会いに来たんだ」

 

「相変わらず仲が良いわねー」

 

 蒼にそう茶化されながら、店内を見渡す。特に商品が変わっている様子もない。変わっている所と言えば、カウンターに近い場所に小さなストーブが出されていてるくらいだ。

 

「うう、入ったんなら、早く戸を閉めなさいよ。寒いじゃない!」

 

「おっと、悪い」

 

 ガラガラとガラス戸を閉めてから、俺もストーブに手をかざして、冷えた指先を温める。

 

「今日は誰も来てないのか」

 

 今日は確か、日曜日のはずだけど。

 

「寒いしねー」

 

 もっともな話だった。

 

 ちらっと、ガラス戸越しにアイスクリームケースに目をやる。

 

 木の板で蓋がされていた。当然、アイスも売っていない。

 

「そういえばしろは、冬の間はスイカバーが手に入らないとか言ってたっけ」

 

 確か、夏の間に買いだめしておいて、それを少しずつ切り崩して食べているらしい。

 

 おじーちゃんがいない時に、こっそりとコタツに入って食べるスイカバーが最高なの。とか言っていた気がする。

 

「ねぇ羽依里、コーヒーでも入れたげよっか?」

 

 そんなことを考えていると、カウンター越しに蒼に声をかけられた。

 

「え、いいのか」

 

「100万円よ」

 

「あ、金は取るのね」

 

「当然よ。この時期はかき氷が売れない分、貴重な収入源なんだから」

 

「それじゃ、一杯貰うよ」

 

 そう言って蒼に100円を渡す。

 

「99万9900円足りないわよ?」

 

「春になったらイナリで払うよ」

 

「了解。ちょっと待っててね」

 

 いつものやりとりをした後、蒼はカウンターの裏から粉末コーヒーを取り出して、スプーンですくってマグカップに入れる。

 

 思いっきりインスタントコーヒーだった。

 

 あれで100円か……。

 

「あ、練乳入れる?」

 

「なんだって?」

 

 つい聞き返してしまった。クリープの間違いじゃないんだろうか。

 

「意外とおいしーのよ?」

 

 ストーブの上に乗っていたヤカンを取って、カップにお湯を注ぎながら、笑顔で言ってくる。

 

「いや、美味しそうだけど……じゃあ、頼むよ」

 

「追加料金10円」

 

 誘惑に負けて、入れてもらうことにした。

 

 練乳入れてるとき、ちらっと見えたけど、普通にイチゴにかけたりする、赤いチューブの練乳だった。

 

「なあ、その練乳ってもしかしなくても」

 

「ほら、夏の間は使うけど、どうしても余っちゃうじゃない?」

 

 それはそうだけど、賞味期限とか大丈夫なんだろうか。

 

「はい、おまたせー」

 

 蒼からコーヒーを受け取って、座敷の入り口に座って飲む。なんというか、至福の一時だった。

 

 練乳入りのコーヒーは、クリープ入りとはまた違った、濃厚なおいしさだった。

 

「……なんだこれ?」

 

 そして店の隅に置かれた、ある商品が目につく。

 

「なにって、節分豆よ」

 

「あ、そう言えばもうそんな時期か」

 

 考えてみたら、今日がその日だった。すっかり忘れてしまっていた。

 

「懐かしいな、これ」

 

 節分豆と、紙製のお面がセットになっていた。これも随分久しぶりに見る。

 

「懐かしいわよねー。小さい頃はよく、おとーさんに向かって藍と二人で豆を投げてたわ。鬼は外―って」

 

 想像すると微笑ましい。小さい時、誰もが通る道だった。

 

「くーださーいな」

 

 コーヒーを飲みながら、蒼とそんな話をしていると、のみきがやってきた。

 

「むう。ここにも天善たちは来てないか」

 

 寒いからだろうか、全身がすっぽり入るコートに、赤いフードを被っていた。まるで赤ずきんちゃんだった。

 

「のみき、どうしたんだ?」

 

「ああ、鷹原も島に来ていたんだな」

 

「実は今日、小学校の体育館を解放して、低学年や就学前の子供たちと節分イベントをやる予定になっているんだが」

 

 ああ、学校ではよくそう言う行事をやるよな。

 

 日曜日だけど、このイベントのために学校を空けているんだろうか。

 

「一つ問題が生じてしまってな」

 

「え、問題?」

 

「毎年通例として、役所の人間が鬼役をするんだが……」

 

「え、学校の先生じゃなくて、役所の職員?」

 

「ああ、島の小学校だからな。先生の数も少ないし、忙しい。そこで、役所の人間がやっていたわけだ」

 

 役所の人間は忙しくないのだろうか。そんな疑問が浮かんだけど、深く考えないことにした。

 

「鬼役をするはずだった職員が、全員インフルエンザでダウンしてしまったらしくてな。急遽、鬼役を探さなければならなくなった」

 

 今はどうしてもインフルエンザが流行る時期だし、しょうがないよな。

 

「朝から探してはいるんだが、まだ足りなくてな。鷹原。ここで会ったのも何かの縁だと思って、手伝ってくれないか」

 

「え、俺?」

 

「いい経験にはなると思うぞ」

 

 確かに滅多にない経験だろうけど……。

 

「……わかった。手伝うよ」

 

「ありがとう。私の身長だと鬼の着ぐるみを着ることができないからな。助かるぞ」

 

 のみきは安堵の表情を見せる。

 

「ところで、鬼役は後何人必要なんだ?」

 

「既に一人は見つけている。それに鷹原が入ってくれたから、後2人だな」

 

「2人か……なあ蒼」

 

 呼びかけながらカウンターの方を見ると、もぬけの殻だった。どうやら逃げられたらしい。

 

 これは、やっぱり良一と天善を見つけないといけない流れらしい。

 

「イベントの開始は14時からだ。まだ余裕はあるぞ」

 

 それでも、早く動くに越したことはないだろう。

 

「よし。まずは天善たちを探そう」

 

「探すあてがあるのか?」

 

「一応な。よし、行こう」

 

 俺はマグカップをカウンターに置いて、のみきと一緒に駄菓子屋を後にした。うう、寒い。

 

 

 

 

 そしてやってきたのは、例の秘密基地だ。

 

 季節こそ変わっているけど、良一と天善なら常にここで遊んでいるだろうと思った。

 

「おーい、良一、天善」

 

 扉を開けて、中に声をかけてみるが、人の気配はなかった。隙間風の寒々しい音だけが聞こえる。

 

「あれ、いないのか」

 

「どうやらハズレのようだな。次の場所に行こう」

 

「いや、ちょっと待ってくれ」

 

 のみきを制止し、俺は入り口付近に置いてあった古いストーブに手をかざしてみる。まだ少し温かい。

 

 ということは、さっきまで使っていたということになる。そして、秘密基地から別の場所へ通じる道は、さっき俺たちが通ってきた道だけだ。

 

「ということは、遠くに行ってないか、あるいは……」

 

 俺は秘密基地の中をぐるっと見渡してみる。普段は出しっぱなしになっているはずの卓球台がたたまれ、隅の方に置いてあった。

 

「あそこかな」

 

 俺は目星を付けると、大きく息を吸い込む。

 

「マッチトゥ、加納!」

 

「シャアァァァーーー!」

 

 折りたたまれた卓球台の裏から、天善が飛び出してきた。

 

「裸祭り。んんーーー!」

 

「パーーージ! んん、パーーージ!」

 

 そして同じ場所から良一も裸になって飛び出してきた。直後、のみきに水鉄砲で撃たれていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

「なぁ良一、真冬に裸になって寒くないのか?」

 

「寒いに決まってるだろ!」

 

 本当に勢いで脱いでしまったらしい。

 

 良一はいそいそと服を着込んで、ストーブにあたって温まっていた。

 

「それで、お前たちに頼みがある」

 

 のみきがさっそく、二人に鬼役を依頼していた。この状況では、断ることはできなさそうだった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 その後、俺たちは早めに昼食を済ませ、12時頃に小学校にやってきた。

 

 目的は衣装合わせと、打ち合わせだった。

 

「あれ、羽依里?」

 

 驚いたのは、その場にしろはが居たことだった。

 

「もしかして、のみきが見つけた最初の鬼役って」

 

「うん、私。のみきの頼みだし、断れなくて」

 

 しろはがそういう役をやるなんて珍しいとは思ったけど、着ぐるみを着るんだし、なんとかなるだろう。

 

 

「ああ、少年団の皆さん。今日はすみません」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 その時、担当の先生らしい人がやってきて、俺たちに声をかけてきた。代表してのみきが対応してくれる。

 

「実は、問題が生じてしまいまして」

 

 先生が困ったような顔をしていた。新しい問題って何だろう。

 

「今日使うはずの鬼の着ぐるみをチェックしていたんですが……どうも古すぎて、使えるのが一着だけだったんです」

 

「そ、そうですか」

 

 のみきも平然を装っているが、明らかに動揺している。

 

 かといって、今からだと別の衣装を用意している時間もない。どうしたものか。

 

「その、一応女性用の衣装も、あるにはあるのですが」

 

「え、女性用?」

 

 俺たちが悩んでいると、先生が申し訳なさそうに袋を持ってきた。

 

 袋の中を覗き込むと、中にはトラ柄のビキニみたいな衣装が入っていた。

 

「まるで鬼娘だな。ダーリン、好きだっちゃ。とか言いそうだ」

 

「先代の校長が用意させた衣装らしいのですが、正直なところ、不評なんですよね」

 

 それはそうだろう。寒い体育館で、好き好んでこの格好はしたくはないだろうし。

 

「これ、女性用って言ってたよな……なぁ、しろは」

 

「……無理無理無理無理!」

 

 しろはは全力で首を横に振っていた。そりゃ嫌だろうな。

 

 俺の知りうる中で、これを着てくれそうなのは鴎くらいかな。今は島にいないけど。

 

 とりあえず、女性用の衣装は片付けてもらった。

 

「……」

 

 何も言わないけど、しろはがすがるような目で俺を見ていた。この様子だと、着ぐるみはしろはで確定だろう。

 

 問題は俺たち男三人分の衣装だった。

 

「よし、それなら俺にいい案があるぜ」

 

 そう一声上げたのは良一。

 

「不安しかないが、言ってみろ」

 

「ボディペイントで、俺たちの身体に鬼の衣装を描く」

 

 確かに、男ならその手段が一番手っ取り早いかもしれない。

 

「時間もないし、それが一番手っ取り早いかもしれないな。先生、この学校に余っている絵の具はないか?」

 

「絵の具なら、確か図画工作室にたくさんありますよ。ぜひ使ってください」

 

 のみきの問いに対し、先生がすぐに答えてくれた。

 

「え、まじでやるの?」

 

 なんか、すごい方向に話が進んでいる。

 

「羽依里、他に手段があるのか?」

 

「いや、ない……けど……」

 

「なら、それで決まりだろう。先生。図画工作室に案内してくれ」

 

 

 

 

 図画工作室に案内された後、俺たちは二手に分かれて自分たちの体に鬼のボディペイントを施すことになった。

 

「よし、俺は黒鬼にしてくれ」

 

「任せておけ」

 

 天善が良一にボディペイントを施していた。墨汁を塗りたくっていたけど、大丈夫なんだろうか。

 

「羽依里は赤鬼だね」

 

 俺にはしろはがついてくれ、ハケで俺の身体に朱色を塗ってくれていた。

 

 慣れているのか、手際はいいのだけど……その、すごくくすぐったい。

 

「もう。動いちゃ駄目だよ。今、細かい所なんだから」

 

 しろはは思いっきり顔を近づけて、胸板の辺りを塗ってくれてる。その……しろは。吐息が。

 

「だから、動かないで」

 

 本人は全然気づいてないみたいだから、いいけど。

 

 最後にトラ柄のパンツと角付きのカツラを用意してもらって、準備完了だ。

 

 その後、俺たちは体育館へ移動。ステージの裏で待機する。

 

 事前の説明によると、ステージ上で先生が合図をしたら俺たちが飛び出して、階段を下りてしばらく子供たちの間を歩き回ればいいらしい。

 

 頃合いを見て、同じ先生がまた合図をするので、そのタイミングで俺たちは体育館の入口から表に逃げて行けばいいらしい。その後は福の神が登場して、子供たちに福豆とお菓子を配る手はずになっている。

 

「さすがに緊張するな」

 

 そう言うのは天善。良一にやってもらったんだろう。全身緑色に塗られていた。緑鬼の格好をしていた。

 

「気をつけろよ。この島の子供は容赦ないからな」

 

 黒鬼の良一は墨汁をを塗りたくって全身真っ黒だった。正直、かなりの迫力だった。

 

「まぁ、合法的に裸になれるんだから、最高だけどな」

 

 でも、相手が子供とはいえ、裸に直接豆をぶつけられたら痛そうだ。

 

「羽依里、大丈夫?」

 

 青鬼の着ぐるみを着たしろはが心配そうに声をかけてくれた。

 

「まぁ、大丈夫だと思うけど」

 

 ステージ上では先生が節分の日の謂れを説明していて、子供たちには節分用の豆が配られていた。そろそろ出番も近い。

 

「それでは、鬼の皆さんに登場してもらいましょう!」

 

 ステージ上でそう声が上がった。

 

「それじゃ四人とも、よろしく頼むぞ」

 

 最後にのみきに見送られる形で、俺たち四人はステージ脇から躍り出た。

 

「ガオーーー!」

 

「チョレーーーイ!」

 

「くけーーーー! くえっけぇーー!」

 

「パーーージ!」

 

 俺たちは適当な雄たけびをあげながら、一列に並んで子供たちの間を練り歩く。

 

「おにはーそと! ふくはーうち!」

 

「おにはーそと! ふくはーうち!」

 

 その間、四方八方から豆が飛んでくる。これはすごい。ボディペイントだから、本当に痛い。

 

「うりゃーー!」

 

「くらえーー!」

 

「ぎゃあ! いてててて!」

 

 少し離れたところで、黒鬼の良一が集中砲火を浴びていた。子供たちも全力で退治しに来るもんな。

 

 そして、唯一着ぐるみのしろはは余裕みたいだった。さすがに着ぐるみを通してダメージは無いだろう。

 

「チョレーーーイ!」

 

 天善はスポンジの金棒で豆を撃ち返していた。あれも条件反射なんだろうな。

 

 ちなみに、撃ち返された豆のほとんどは黒鬼に当たっていた。万一にも子供たちに怪我をさせないように、あえて狙ってるんだろう。

 

 

 やがて先生から終了の合図がされた。俺たちは適当にやられた演技をしながら、出口へ向かって走った。

 

 入れ替わりに二人の福の神が体育館に入っていった。すれ違いざまに見えたそれは、まさかの紬と静久だった。

 

 

 

「皆さん、ありがとうございました」

 

 イベントが終了した後、先生からお礼を言われ、お礼として全員が少しずつ福豆をもらい、その場は解散となった。

 

 

 

「豆まき、大盛況だったみたい。よかったね」

 

「そうだな」

 

 のみきたちと別れ、しろはと二人で住宅地へ向かって歩いていた。

 

 ちなみに、しろはは髪の色と同じ白いコートを着て、黒いマフラーを巻いていた。

 

「それにしても、しろはが鬼役をするなんて思わなかったな」

 

「のみきが最初、おじーちゃんに頼みに来たの」

 

 確かにあの人なら、着ぐるみ着なくても良いレベルで鬼役がピッタリだけど。

 

「逆に子供たちが恐くて泣いちゃいそうだったら。私が引き受けたの」

 

「そういうことだったのか」

 

「うん」

 

「……そうだ。帰ったら、私たちも豆まきしなきゃ」

 

 しろはが手に持った福豆を見ながら、そう呟いていた。

 

「そうだな。一緒にやるか?」

 

「いいね。でも、鬼役がいないよ?」

 

「しろはのじーさんにでも頼むか」

 

 しろはが頼んだら、やってくれそうな気がする。

 

 ……俺が投げた豆は、逆に投げ返されそうだけど。

 

 ……冬の鳥白島の日常は、今日もこうして過ぎていった。

 

 

 

サマポケ短編SS(節分編)・完

 




サマポケ短編SS(節分編)・あとがき



おはこんばんちわ。トミー@サマポケです。
今回は勢いに任せて、短編で季節ネタを書いてみました。節分です。豆まき。懐かしいです。
鳥白島の冬を描写するのは初めてなので、なかなかに苦労しました。雪は降らなそうですしね。

これとは別に書いている小説『Summer Pockets #2』との繋がりは考えていないので、別作品と思って読んでいただけると幸いです。
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