サマポケ短編小説集   作:トミー@サマポケ

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鳥白島米騒動(米の日SS)

 

 

 

 

 

 ……朝目が覚めると、家中に香ばしい匂いが充満していた。

 

「え、何だこの匂い」

 

 布団をはねのけると、俺は身支度もそこそこに、匂いの発生源と思われる場所へと向かった。

 

「あ、鷹原さん、おはようございます」

 

 台所に飛び込んでみると、案の定、うみちゃんがチャーハンを作っていた。でも、何故か今日はしろはの姿もある。

 

「おはよう、羽依里」

 

「あれ? 今日はしろはも来てるのか?」

 

「うん。今日は大事な日だから」

 

 しろははそう言いながらも、一心不乱にチャーハンを作っていた。大事な日? なんだろう。

 

「しろはさん、こっちのチャーハンは完成しました!」

 

「うん。それじゃ、こっちの紙皿に移してラップをかけておいて」

 

「わかりました! もう少しで100人分のチャーハンが完成しますね!」

 

 え、100人分?

 

 言われて見てみると、台所のテーブルの上にはものすごい数のチャーハンが小分けにされて置かれていた。これ、どうするんだろう。

 

「なぁしろは、今日はお祭りでもあるのか?」

 

 全く状況が飲み込めなくて、おれはしろはにそう尋ねる。

 

「……お祭りなんて楽しいものじゃないよ」

 

 そうなんだ。朝食にこれだけの量のチャーハンを作る意味がわからないし、てっきり何かイベントでもあるのかと思ったんだけど。

 

「……今から始まるのはね。どっちかというと戦争」

 

「え、戦争!?」

 

「そうだよ。ほら、私たちはチャーハン連合なんだから、出撃の準備をするよ」

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 ……その後、しろはとうみちゃん誘われるがまま、大量のチャーハンを持って役所へと移動した。

 

 役所についてみると、普段は殺風景なその場所に大勢の島民が集まっていた。他にも、真っ白い四本足のテントが無数に立っていた。なんだろうあれ。

 

「ここだよ。ここが私たちの陣地」

 

 そんな人波をかき分けて進んでいると、しろはは『鳴瀬しろは様』と名札が置かれたテントの前でその足を止める。

 

「ここで、このチャーハンを売るのか?」

 

 陣地って言葉が気になったけど、なんだかんだで色々なお店が出ているみたいだし、やっぱりお祭りみたいだ。

 

「売るんじゃありません! 食べていただくんです!」

 

「そうだよ。食べていただくの」

 

 他のお店に視線を送りながら何の気なしに言うと、二人がそう噛みついてきた。ええ、なんで怒るの。

 

「いいから、チャーハンを並べるのを手伝って。今日は皆が敵なんだから、うかつな発言しちゃ駄目だよ」

 

「わ、わかった。わかったよ」

 

 しろはに気圧される。すごく怖い。今から何が始まるんだろう。

 

 

 

 

『……出店者の皆様にお知らせがある』

 

 運んできたチャーハンを全て並べ終えたところで、近くの放送塔からボリューム控えめにのみきの声が聞こえた。

 

『今から15分後、午前9時より、第四回鳥白島お米フェスティバルを開始する。各店舗の出展者は準備を整え、配置につくように』

 

「……お米フェスティバル?」

 

 ようやくこのイベントの名前を知った気がする。言われてみれば、周りの店舗もカレーにおにぎりといった、お米を扱った出店ばかりな気がした。

 

『参加者の分かってはいると思うが、一応ルール説明をする』

 

 のみきがそう続けていた。俺はルールなんて知らない。教えて教えて。

 

『今回提供されるお米を使った料理の数々は全て無料だ。ただし、最後に一番美味しかった料理に一票を投じること。投票券は各出店のところに置いてあるので、忘れずに受け取るように』

 

 ……なるほど。しろはが仰々しいことを言うから困惑していたけど、つまりは最近よく耳にする食フェスってやつだ。ラーメンとかパンとか、同じカテゴリーの料理を出すお店を集めて、食事を楽しんでもらいながら優勝チームを決める。なかなか盛況みたいで、全国各地で似たようなイベントが開催されているらしいけど、鳥白島にもあったんだ。

 

『投票受付時間はイベント開始直後から、終了時刻である14時までだ。組織票や不正票は発見次第、私自らが制裁を下すからそのつもりでいろ』

 

 そう考える間にも、のみきの説明は続く。そういえば、しろはが青色の紙の束を持っていた気がする。あれが投票用紙かな。

 

「うみちゃん、最終確認をしよう」

 

「はい! 今年も勝って、四連覇達成ですよ!」

 

 放送を聞いてすぐ、しろはたちは打ち合わせを始めた。一方で俺には声がかからなかったし、ちょっと会場を見て回ることにしよう。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「あ、タカハラさんです!」

 

「あれ、紬?」

 

「パイリ君も米フェスに参加していたのね」

 

 特段いい匂いがしているテントの中に、紬と静久がいた。二人も出店をやっていたのか。

 

「二人は何の料理を出す予定なんだ?」

 

 一応聞いてみる。このスパイシーな香りで大体わかるけど。

 

「カレーよ。鳥白島名物、チキンホワイトカレー」

 

 静久がそう言って、大きな鍋からお玉でカレーをすくって見せてくれる。食欲をそそる香りが一層強くなった気がする。

 

「へぇ。鶏肉を使ったカレーなのか。美味しそうだな」

 

「あら、鶏肉は入っていないわ。シーフードよ」

 

「ええ、なにそれ」

 

 何て紛らわしい名前だろう。おまけに白くもないし。匂いはすごくおいしそうだけど。

 

「このカレーは、シズクのおじーさまの得意料理だったらしいです! シズクは、それを復活させたんですよ!」

 

「そうなの。このカレーで今年こそ大会制覇を狙うわ。打倒チャーハンよ!」

 

「カレー軍、いざシュツジンです!」

 

 二人は揃って拳を振り上げて、笑顔だった。

 

 しろはたち曰く、この島ではやっぱりチャーハンが強いみたいだけど、この二人ならやってくれるかもしれない。

 

「それじゃ二人とも、頑張ってくれな」

 

「ええ。パイリ君もイベントが始まったらぜひ食べに来てね」

 

 朝の流れから、俺はチャーハン連合に組み込まれてしまってるみたいだけど、カレー軍も応援したい。

 

 俺は二人に軽く手を振った後、自分のテントに戻ることにした。

 

 

 

 

「……鷹原さんから、裏切りの匂いがします!」

 

「羽依里、浮気は駄目だよ」

 

 しろはたちのテントに戻るや否や、そんなことを言われた。

 

「カレー臭です! カレー臭がしますよ!」

 

 うみちゃんが騒ぎ立てる。確かにあれだけの匂いを放つ鍋の近くで静久と話していたから、カレー臭がうつっていても不思議はないけど。なぜか心に刺さる。

 

「チャーハンに匂いがうつったら台無しだから、羽依里はどこか行ってて」

 

「えぇ……」

 

 次に、しろはに冷めた目でそう言われてしまった。地味に傷つくけど、本当に近くにいてほしくないみたいだし、ここはこの場を離れよう。

 

 

 

 

『……それでは、第四回お米フェスティバル、開幕でーーーす!』

 

 追い出されるようにチャーハン連合のテントから離れた直後、そんな放送が鳴り響いた。いつの間にか、司会がのみきじゃなくなってた。あの声、青年団の人かな。

 

「さて、俺はどうしようかな」

 

 最初はしろはを手伝うつもりだったけど、近づくなとまで言われてしまったし。ひとまず、祭りの雰囲気を楽しむことにしよう。

 

「おーい、のみき姉の屋台行ってみよーぜー」

 

「わたしはカレーがいいかなー」

 

 適当に歩いていると、何人もの子供たちが通り過ぎていった。きっと朝ごはんも食べずにやってきたんだろう。出店そのものはそこまで多くはないけど、観光客らしい人たちの姿も見えるし。なかなかに盛り上がっているみたいだ。

 

「あ、羽依里じゃない」

 

「こんなところにいるなんて意外ですね」

 

 そんな様子を眺めていたら、背後から声をかけられた。この声は空門姉妹だろう。

 

「てっきり、羽依里さんはしろはちゃんの手伝いをしているものと思ったんですが」

 

「まぁ、色々あってさ……」

 

 苦笑いを浮かべながら振り返ると、二人は両手におにぎりを持っていた。

 

「あれ、二人とも、それ何?」

 

「わたしたち、おにぎり・おむすび同盟の一員なので。美希ちゃんから頼まれて、駄菓子屋のおばーちゃんが漬けた梅干し入りおにぎりを配っていたんです」

 

「識の考えたサザエおむすびや、山菜おむすびもあるわよー」

 

 おにぎり・おむすび同盟? チャーハン連合、カレー軍に続く、第三の勢力なのかな。

 

「実は朝ごはん食べてなくてさ。そのサザエおにぎり、一つもらえる?」

 

「サザエおむすびね。いいわよー。投票よろしくねー」

 

 満面の笑みを浮かべる蒼から、サザエおむすびを受け取ろうと近づいた……その瞬間。

 

「……蒼ちゃん、下がってください! 羽依里さんからカレー臭がします!」

 

「ええっ、うそ!?」

 

 二人は何かに感づいたように、数歩後ずさる。え、何で逃げるの。

 

「それ以上近づかないでください! まさか、羽依里さんがカレー軍だとは思いませんでした!」

 

 藍は蒼をその背に庇いながら、汚いものでも見るような目で俺を見てきた。反応がしろはにそっくりなんだけど、どういうこと?

 

「蒼ちゃん、逃げますよ!」

 

「う、うん!」

 

 俺が困惑している間に、二人は足早に人波に消えていった。ああ、朝ごはんが……!

 

 

 

 

「……はぁ。サザエおむすび、食べたかったんだけど」

 

 俺は空腹に耐えながら、人混みを縫って会場の中を歩く。さっきの騒動以後、心なしか周囲の視線が痛い気がする。

 

「よう、羽依里」

 

 ……その時、前方から良一が歩いてきた。今日は珍しく服を着ている。

 

「聞いたぜ。お前もカレー軍に入ったんだろ? やっぱ、カレーは男の料理だしな!」

 

 ばしばしとご機嫌に俺の肩を叩いてくる。そんな良一はカレーを食べていた。

 

「お前以前、チャーハンは男の料理とか言ってなかったか?」

 

「いやー、このカレーも久しぶりに食ったら、うまくてよー」

 

 そう言いながら、カレーの器に乗せたサザエおむすびを崩して、カレーと合わせながら食べていた。確かにシーフード同士だし、相性は良さそうだけど。

 

「そういえば、天善は来てないのか?」

 

 幸せそうにサザエカレーを食べる良一に、そう聞いてみた。

 

「水織先輩のカレーを7皿食べたところで、気を失っていたな」

 

「ああ……」

 

 山のように積み重なった器を前に、テーブルに突っ伏して気絶している天善が目に浮かぶようだった。憧れの人の作ったカレーだし、良い所を見せたくなる気持ちもわかるけど。

 

「徳田も頑張ってたぜー。あいつは3皿だったけどよ」

 

 どうやら、島の男性陣の多くはカレー軍に属しているらしい。それにしても、そんな話をしているとカレーが食べたくなってきた。

 

 俺も静久のチキンホワイトカレーを食べに行こうかな……。

 

「……お前達、止まれ」

 

 そんなことを考えていた矢先、少し先にあるテントから声をかけられた。見ると、そのテントの奥で水鉄砲を構えるのみきの姿が見えた。

 

「お前達、カレー軍だな。匂うぞ」

 

 一睨みされた俺たちは、思わず両手を上げる。確かに良一はカレーを食べているし、匂うだろうけど。

 

「ここをおにぎり・おむすび同盟の本陣と知っての狼藉か?」

 

 言われてみれば、のみきの前には大量のおにぎりが並べられていた。結構な数が残っているし、苦戦しているみたいだけど。

 

「は、羽依里! 後は任せた!」

 

 その時、良一が脱兎のごとく逃げだした。さすがに無茶だと思っていたら、直後にのみきの水鉄砲で撃ち抜かれて、悶絶していた。

 

「……なぁ、空門姉妹もそうだったけどさ。どうして近付いちゃ駄目なんだ?」

 

 俺は両手を上げたまま、のみきにそう聞いてみる。

 

「匂いがうつるからだ!」

 

 取り付く島もない。それにしても、皆してすごく排他的だった。カレー軍だろうがチャーハン連合だろうが、自分たちの料理の美味しさを伝えて寝返ってもらおうって考えは浮かばないんだろうか。

 

「俺、カレー臭がするかもだけどさ。そっちのおにぎりを食べてみたいんだ!」

 

 全力でそう言ってみたけど、シュコン。と水鉄砲のポンプを動かす音が返ってきた。警告のつもりだろう。これは動けない。

 

「うう、同じお米を使った料理だし、仲良くすればいいのに……」

 

 俺は思わずそう口にして、天を仰いだ。同時に腹の虫が鳴く。腹が減って、まともな思考が浮かばない。

 

「……羽依里くん、その考え方には僕も賛同するぜ」

 

 ……その時、のみきがいるテントの奥から識が現れ、静かに口を開く。

 

「おむすびもおにぎりも、味は淡泊なものさ。正直、味ではチャーハンに敵わないし、匂いでもカレーには敵わない。食べてさえもらえれば、その素晴らしさを分かってもらえるはずなのにさ」

 

 識はそう言いながら、サザエおむすびを一つ、俺に手渡してくれる。俺は思わず、それにかじりついていた。うん。優しい磯の香りが口いっぱいに広がる。美味しい。

 

「ほら、のみき先輩も武器を下ろしてくれ。おむすびが好きな人に、悪い奴はいないぜ?」

 

「あ、ああ」

 

 識に促されて、のみきが構えていた水鉄砲をしまう。それを見て、俺も胸をなでおろす。

 

「そして、僕は考えたんだ。最強のチャーハン連合を倒すには、カレー軍と手を組む必要があるとね」

 

 どうやら識は他の皆と違い、穏健派らしい。チャーハン連合を倒したいという目的こそあるみたいだけど、ずいぶんと態度が柔らかい。

 

「識、奇策だとは思うが、さすがに無理な話だと思うぞ。いくら水織先輩でも……」

 

「……あのさ、カレー軍と協力するのなら、俺に考えがあるんだけど」

 

 俺はのみきの言葉を遮るように、識にそう告げる。

 

「羽依里くん、本当かい!?」

 

「ああ。俺の作戦は……」

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 ……その後、俺たちは大量のおにぎりとおむすびを持って、カレー軍の本部……静久と紬のいるテントへとやってきていた。

 

「……話は分かったわ。チャーハン連合に勝つために、私たちと協力したいのね?」

 

「ああ。よろしくお願いするよ! この通りだ!」

 

 識はそう言って頭を下げる。同時に、手に持っていたおにぎりとおむすびを、まるで献上品のように差し出す。

 

「識ちゃん、頭を上げてちょうだい。私も紬も、協力するのは全然かまわないわ」

 

「そうですよ!」

 

 二人とも少し困ったような顔をしながらそう言っていた。

 

「加納君や徳田君も頑張ってくれているのだけど、なかなかカレーを食べてくれる人がいなくてね」

 

 皆の反応を見ると、カレーは妙に嫌われている感じだし。かつてこの島で、カレーとチャーハンを巡って大きな争いでも起こったんだろうか。

 

「それで協力と言っても、具体的にどうするの?」

 

「それなんだけどさ……」

 

 そこで俺は打倒チャーハン連合の秘策について、静久たちに打ち明ける。

 

「……つまり、カレーに使うごはんをおにぎりとおむすびにすればいいのね?」

 

「ああ。サザエおむすびや、タコ飯のおにぎりとかあるし、同じシーフードを使った静久のカレーに合うと思うんだ」

 

 俺が思いついた風に話しているけど、ヒントをくれたのはサザエカレーを食べていた良一だ。これなら味の相乗効果も期待できるし、見た目も目を引くはずだ。

 

「でも……そうなった場合、その後の投票はどうするの?」

 

「あ、そっか……」

 

 そこで静久がそう口にする。確かに、一人が投票できる料理は一品までだし、カレーとおむすび両方に投票してもらうわけにもいかない。それこそ二重投票になってしまうし。

 

「それだけど、投票券は全てカレー軍に投票してもらって構わないぜ。カレー軍がチャーハン連合に勝利してくれるのなら、僕達はわき役に徹する覚悟さ」

 

 俺が悩んでいると、識がそう宣言していた。

 

「識、本当にそれでいいのか?」

 

「構わないぜ? おむすびは、お結び。人と人とを結ぶ食べ物だからね」

 

 そう言って笑った。よし、識がそう言うのなら、俺たちはそれに従うだけだ。

 

 

 

 

 ……その後、サザエおむすびにカレーをかけた、チキンホワイトカレー(鬼)が考案され、島民の皆に配られ始めた。

 

 時間はちょうどお昼時。これからが一番票が動く時間帯だ。

 

「まさか、カレー軍と協力することになるとはねー」

 

「本当ですね。でもこれ、おいしそうです」

 

 いつの間にかこっちにやってきていた空門姉妹が、両手にカレーと投票券を持って配り歩いてくれている。

 

 その変わった見た目が目を引いてか、とりあえず食べてみようという人もちらほら出てきているみたいだ。

 

「これ、おいしー!」

 

 すごく通る声がすると思ったら、鴎がスーツケースに座ってカレーを食べていた。いつの間に島にやってきていたんだろう。

 

「堀田ちゃんも食べよう! まるでサザエが生きてるみたいだよ!」

 

「……おいおい。それは言い過ぎ」

 

 鴎は声が大きいし、良い宣伝になってると思いたい。あれだけ絶賛されていると、逆にサクラと思われないか不安だけど。

 

「懐かしいカレーがあると聞いてな。ひとつもらおう」

 

「ぼくもカレー食べたい!」

 

 チャーハンを超える香りに加え、見た目のインパクトもあるせいか、カレー軍のテントに人だかりができていた。チャーハンとカレーの両方を持って、食べ比べている人もいる。これは、もしかしていけるかもしれない。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

『それでは、投票結果を発表します!』

 

 14時を過ぎ、熱気が過ぎ去った役所前に青年団の女性の声が響く。俺たちはその先の言葉を、固唾をのんで待っていた。

 

『第四回鳥白島お米フェスティバル! 優勝は……カレー軍です!』

 

「「やったーーー!」」

 

 俺たちは思わず大きく両手を突き上げ、歓声をあげて喜びを爆発させていた。

 

「シズク、やりました!」

 

「ええ。まさか、優勝できるなんてね」

 

「やったよ羽依里くん! まさか、チャーハンに勝てるなんて思わなかった!」

 

 紬と静久が抱き合う一方で、識も俺に抱きつく勢いだった。それほど嬉しかったんだろう。

 

「チャーハン連合を止めることができたのは、島の歴史から見れば小さな出来事かもしれない。でも、要はきっかけが大事なんだ。きっかけさえあれば、後は自然と物事は流れていく。今後、カレーチャーハンやチャーハンおむすびが生まれるかもしれないね」

 

 まさか、島の歴史と比較されるとは思わなかったけど、識の言葉には妙に説得力があった。

 

 

 

 

 ……その後、詳細な投票数が発表された。それによると、本当に僅差での勝利だったみたいだ。

 

「「ううう……」」

 

 一方、そんな歓喜の輪から外れる位置で、しろはとうみちゃんはがっくりと膝をついていた。

 

「……そんな。チャーハンが負けるなんて」

 

「チャーハンは調理して時間が経つと、油が回ってしまう。今回はそこが欠点となって、後半の票が伸びなかった。うみちゃん、反省しよう」

 

「はい……」

 

 しろははため息交じりに敗因を語っていた。どうしよう。二人の背中がすごく物悲しく見える。

 

「しろは、そのさ……」

 

「ありがとう! 勝てたのはパイリ君のアイデアのおかげよ!」

 

「どわぁ!? スーパーむごっほ!?」

 

 そんな二人にかける言葉を探していたら、静久に思いっきり抱きつかれた。これはその、色々とやばい。柔らかい。

 

「……そう。羽依里が助言したんだ。ずっとカレー臭がしてたし、たばかったな……!」

 

 そんな俺の様子を見ながら、しろはがものすごい目で俺を見ていた。別にたばかる気は無かったんだけど。カレー臭言わないで。

 

「水織さん、来年は負けないから……! もっと敵を、カレーを研究しないと……!」

 

 ……負けたのがよっぽど悔しかったんだろう。しろははそれから一週間もの間、毎日カレーを作り続けたわけなんだけど、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

―――鳥白島米騒動・完




あとがき
皆様、こんにちは。トミーです。
今回は八月十八日の米の日にちなんで、こんなSSを思いついてしまいました。ほとんど勢いです。
若干静久√寄りですかね?カレー臭で笑っていただければ嬉しいです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!
感想等いただけると、泣いて喜びます!
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