「……のみき、俺と結婚してくれ!」
「りょ、良一……お前、本気か!?」
「ああ、俺は本気だぜ!」
そ、そんなバラの花束なんて用意して。死ぬほど似合わないぞ。
「もう一度言うぜ! のみき、俺と結婚してくれ!」
「え、あ、その……わ、私は……!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「む……?」
……うっすらと目を開けると、見慣れたアパートの天井が見えた。
「……しまった。うたた寝をしていたのか」
私はコタツに入ったまま上体を起こし、小さく伸びをする。
……しかし、随分懐かしい夢を見た。あれからもう、もう10年近くになるのか。
私は壁に掛けられた写真を見る。これは去年の夏、家族でキャンプに行ったときに撮ったのものだ。
その写真には私と良一に加えて、男の子と女の子が写っている。
私たちの間で輝くような笑顔でピースサインをしているその子たちは、男女だが同じ顔。そう。私たちの初めての子供は、双子だった。
兄は良太、妹が美雪。どちらも私と良一の名前からそれぞれ一文字とった。
良太はもう、日に日に父親にそっくりになってきている。誰が見ても良一の子供だとわかるだろう。
そして体力が有り余っている、やんちゃボウズだ。最近は行動範囲を島中に広げたらしく、冒険と称して鴎と一緒に遊び歩いているそうだ。迷惑をかけていなければいいが。
一方、美雪は瞳こそ良一と同じ色だが、髪色はがっつりと私のを受け継いでいる。
性格は私と違って少しおっとりだが、良くお手伝いもしてくれる。母親の私が言うのもなんだが、なかなかのしっかり者だ。
とりわけこの二人、双子なのに容姿も性格も全く似ていない。
そんな話を蒼にしたら、笑いながら男女の双子は似ないということを教えてくれた。同じく双子の蒼にそう言われると、なるほどと納得してしまった。
「……おっと。もうこんな時間か」
……写真を眺めながら思い出に浸っていたその時、壁に掛けられた時計が17時を知らせた。
そろそろ夕飯の支度をしなくては。なにせ、今日は我が家の誕生日だからな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おかーさん、ただいまー!」
「ただいまー! かーちゃん!」
「ああ、美雪、良太、おかえり」
台所に立って夕飯の支度をしていると、玄関扉が開いて子供たちが帰ってきた。今日も寒いが、元気に外で遊んでいたらしい。
「かーちゃん、はらへったー!」
帰宅と同時に洗面所に手を洗いに行った妹とは裏腹に、良太は居間へと駆けこんできた。
「今日はごちそうの予定だから、もう少し我慢しろ。それより、帰ったらまずは手洗いとうがいだぞ」
「えー、今日は誕生日なんだし、いいじゃんー」
「駄目だ。そんなことを言っていると、良太の唐揚げが一つ少なくなるかもしれないぞ?」
「げー、それはいやだ!」
私がそう伝えると、良太は血相を変えて洗面所に走っていった。あれくらいの子だと食べ物を取引材料にするとすんなりと言うことを聞くと、しろはから教わった。
「さすが、効果覿面のようだな」
その背中を見送った後、私は手元の天ぷら鍋に視線を戻す。
先も言ったが、今日の夕飯は皆の好物、鶏の唐揚げだ。昼間のうちに下準備は終えて、後は衣をつけて揚げるだけの状態にしてある。島で肉は貴重品だが、今日くらい良いだろう。提供してくれた鳴瀬翁に感謝だ。
ケーキの方も、良一が仕事終わりに通販代行で届いたものを持って帰ってくれる手はずになっているし……。
「おかーさん、手伝うよー」
調理を続けながらそんなことを考えていると、手を洗い終わった美雪が台所にやってきた。
「ありがとう。それじゃ、もうすぐおとーさんも帰ってくると思うから、美雪はお風呂を沸かしてくれないか?」
「わかったー」
そう告げると、まだまだ短いポニーテールを揺らしながら、ぱたぱたと風呂場の方へと駆けていった。
いつかは料理を手伝わせてやりたいが、今日は油を使っている。さすがに危ないから、また今度だな。
「かーちゃん、手、洗ってきた! ぴかぴかだぜ!」
美雪と入れ違いになって戻ってきた良太が、笑顔でこっちに両手を広げてくる。確かに綺麗になっている。
「それでかーちゃん、このからあげ、一つ食べていい?」
「さも当然のように言うんじゃない。まーだーだ」
今にも涎を垂らしそうな顔で揚げたての唐揚げを覗き込んでいた良太を一喝する。
「それよりお手伝いをしてくれ。料理を盛りつけるお皿を出すんだ」
「えー」
「いいから手伝うんだ。このままだと、おかーさんは料理に集中できず、せっかくの唐揚げが焦げてしまうぞ」
「そ、それはいやだ! かーちゃん、からあげから目をはなすなよ!」
そう脅しをかけると、良太は水屋を開けてお皿を選び始めた。なんだかんだで手伝ってくれる辺り、成長したと思う。
……ちなみに、そんな二人の誕生日は今日、2月5日だ。
ちょうど私と良一の誕生日の中間に当たるので、毎年この日を家族の誕生日として、一緒にお祝いをすることにしている。
つまり、今日この日は私たち三谷家にとって、特別な一日というわけだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「帰ったぜー!」
……ちょうど料理が完成するタイミングを見計らったかのように、良一が仕事から帰ってきた。
彼は島の漁師として、毎日海に出ている。我が家の大黒柱だ。
「とーちゃん、おかえりー!」
そしてその声を聞くなり、良太は玄関に走っていった。
「おとーさん、おかえりなさい」
「おかえり、良一」
少し遅れて、私と美雪も良一を出迎えにいく。
「おーう! 今日はお土産があるぜー」
玄関に出ると、良一は両手に小さな箱を四つも持っていた。そしてその腰辺りに、良太が思いっきり抱きついている。
「こら良太、帰ったばかりの良一に飛びつくなとあれほど……! 海水で汚れているから、毎回洗うのが大変なんだぞ!」
「まぁ、一緒に風呂入ればいいじゃねーか!」
「いいじゃねーか!」
私は憤慨するが、そう言って父子揃って笑う。本当に笑った顔がそっくりだ。
「よーし、それじゃ良太、さっそく入ろうぜ!」
「おー!」
「おとーさん、まだお風呂わいてないよ?」
「もうお湯は入れてんだろ? なら、身体洗ってるうちに溜まるさ」
今にも駆けだしそうな父と兄を見て、今日のお風呂担当の美雪がそう言うが、二人は気にも留めない様子だ。
「そうだ。母さんに美雪、これを運んでおいてくれ」
そして良一はそう言って、器用に持っていた箱を私と美雪に手渡してきた。もしかしなくても、頼んでいた誕生日ケーキなんだろうが……。
「ところで良一、どうして誕生日ケーキが四つもあるんだ?」
「俺が通販代行したやつを受け取りに駄菓子屋に行ったらよ。蒼たちがくれたんだ」
「そうなのか? それにしても、こんなにたくさん……」
「どうも、手作りケーキみたいだぜ。蒼と藍、それにしろはも手伝ってくれたらしいし、断るのも悪くてよ」
良太を連れだって脱衣所に向かいながら、そう笑っていた。よもや、ケーキが四つになるとは。四人同時の誕生会だから、ケーキが四つあっても問題はないのだが……。
「……とーちゃん、あれやろう!」
「いいぜー。とーちゃんに続け! んんーーーパーーーージ!」
「パーーージ!」
……美雪と一緒にケーキを居間へと運びながら、しばらくは子供たちのおやつはケーキで決まりだな……とか考えていると、脱衣所からそんな声が聞こえた。
脱衣所だから文句は言えんが……良一の特性はしっかりと受け継がれていて、母親としては悩みの種だぞ。せめて、脱いだ服は洗濯籠に入れておいてくれ……。
「……楽しそう」
その時、美雪がぽそりと言っていた。女の子なんだから、頼むからそっちには目覚めないでほしい。
「み、美雪はおかーさんと一緒に入ろうな」
「う、うん」
一瞬妙な想像をしてしまって、私は思わず美雪の肩を抱きながらそう伝える。
「おかーさん、また指でっぽうやってみせてー」
「え? ああ、また見せてやろう。美雪はあれが本当に好きだな」
前に一緒にお風呂に入った時、指を使った水鉄砲を見せてやったのだが……美雪はそれがえらく気に入っているらしく、よくせがんでくる。
「……なんか、血がさわぐの」
「な、なに……?」
美雪にはまだ早いと思って水鉄砲には触らせていないのだが、まさか指鉄砲に類似点を見出したのか?
確かに、両手を密着させて親指のところの穴から勢いよく水を出すギミック、あれを水鉄砲で再現できれば、これまでとは全く違った機構が……。
「って、何を考えているんだ私は!」
「……おかーさん?」
「いや、なんでもないぞ。それより、二人が風呂から出る前に誕生会の準備を済ませてしまおう。美雪、手伝ってくれるな?」
「うん!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
……良一と良太が風呂から出た後、さっそく誕生会が始まった。
もらったケーキを開封してみると、一つ一つに私たち四人の顔が描かれていた。どうして四つあるのか不思議に思っていたが、そういう理由だったのか。
「すっげー!」
「この絵のタッチはしろはだな。さすが上手だ」
色とりどりのクリームで、しっかりと描き分けられている。これは見事だ。
「並べてみると、まさに家族って感じだな。今度、しろはたちにお礼を言っておかねーと」
そんな感想を言いながら、それぞれの顔のケーキに歳の数だけロウソクを立てる。
そして良一と手分けしてロウソクに火を灯した後、部屋の明かりを消す。
「……今年も家族でこの日を迎えられて、俺は幸せだぜ! 皆、誕生日おめでとう!」
「「……おとーさん、おかーさん、誕生日おめでと―――!」」
「ありがとう。三人とも、誕生日おめでとう」
四人が四人、それぞれお祝いの言葉を発してからロウソクの火を吹き消す。
余所から見ると不思議な光景に見えるかもしれないが、我が家ではこれが普通だ。
……そして明かりをつけると、良一が上半身裸になっていた。こいつ、いつの間に。
「こら良一、暗闇に紛れて脱ぐな」
「いいじゃねーかよ! 誕生日だしよ!」
「駄目だ。早く服を着ろ」
まったく、良太と同じようなことを言う。教育に悪いから止めてほしい。
「とーちゃん、かーちゃん、これ、オレからのプレゼント!」
そしてケーキを堪能した後、お互いにプレゼントを交換する。良太は私と良一の似顔絵をプレゼントしてくれた。鉄板なんだろうが、これはこれで嬉しいものだな。良太、絵の才能あるんじゃないのか。
「わたしからはこれ!」
続く美雪からは手作りのお守りだった。最近、紬のところに遊びに行っているという話を聞いていたが、もしかしてこれを作っていたのか。
「二人とも、ありがとうな!」
「ありがとう。大切にするぞ」
子供たちからのプレゼントを受け取った後、私たちもお返しとばかりに二人にプレゼントを渡す。
「良太にはこれだ。改めて、誕生日おめでとう」
「いやったーーー! そーがんきょーーー!」
良太は受け取ったプレゼントの包みをすぐに開けて、喜びを爆発させていた。この子へのプレゼントは、以前から欲しがっていた双眼鏡だ。
「りょーた、それでなに見るの?」
「へへー、これで海を見るんだ!」
「そんなことしなくても、海なんてどこからでも見えるじゃない」
「ちっちっち。それだけじゃないぜ! これで、沖にいるとーちゃんを探すんだ! とーちゃんが魚をとるところ、見たいし!」
「おおー、それならとーちゃんも、いつも良太に見られてると思って頑張らねーとな!」
余程嬉しかったのか、良一は良太の肩に手を回しながら笑顔だった。
……正直、浜辺から良一の乗る船が見えるかは微妙な所だが、あれだけ喜んでもらえるとプレゼントした甲斐があるというものだ。
「そして、美雪にはこれだ。誕生日おめでとう」
私はそう言いながら、ワニの形をした髪留めを手渡す。
「おかーさん、ありがとー!」
「…しかし、本当にこんなもので良かったのか?」
品物こそ新しいが、この髪留めは私が学生時代につけていたのと同じものだ。正直、そこまで新しいデザインではない。
というのも、以前一緒にアルバムをめくっていたら、この髪留めをつけている私の写真を見て、美雪が同じものを欲しがったんだ。
普段、あまり物を欲しがらない子なので珍しく思いつつも、蒼に頼んで探してもらったというわけだ。
「これ、どうつけるの?」
「ワニの口の裏に留め具があるから、そこに髪の毛を通して、こうして、こうだ」
私は昔を思い出しながら、美雪の頭に髪留めをつけてあげる。
「……よし。これでいいぞ。鏡で見てみろ」
そして手鏡を取り出して、その姿を映し出す。良く似合っていた。
「おお、子供の頃の母さんにそっくりだな」
「そうか? 美雪のほうが美人に見えるがな」
「へへー」
思わずそう口にする私たちに、美雪ははにかむような笑顔を返してくれた。
親ばかと言われるかもしれないが、この笑顔を見るために日々頑張っていると言っても過言ではない。
「よーし、それじゃ、そろそろ飯にしようぜ。せっかくの料理が冷めちまう」
「ああ、今日は腕によりをかけた。たくさん食べてもらえると嬉しい」
「よーし、食うぞ! いただきます!」
「いっただきまーす!」
その良一の言葉を待っていたように、良太が一番に唐揚げへと箸を伸ばす。
「あ、一番大きいの! ずるいー!」
「一番大きいのはとーちゃんも狙ってたんだぞ!」
直後、良一と美雪も良太に続く。さすが、唐揚げは大人気みたいだ。
「こ、こら! 行儀が悪いぞ! 足りなくなったらまた揚げるから、落ち着いて食べろ! 良太はトマトもちゃんと食べるように!」
「えー、トマトきらいなのに-!」
「文句を言うな! そんなことを言うと、明日から毎食トマトをつけるぞ!」
「ひぇー!」
……そんな風にありふれた会話を楽しみながら、賑やかな誕生会は過ぎていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……子供たちはもう寝てしまったようだな」
「ああ、あれだけはしゃいでたらな」
誕生会が終わってしばらくすると、子供たちはすぐに寝息を立て始めた。
隣の部屋で眠る子供たちを見ながら、私と良一はコタツに入って向かい合い、二人だけの僅かな時間を過ごす。
音量を下げたテレビを一緒に見ながら雑談をし、みかんを食べる。特に何もないのだが、私はそんな時間が好きだった。
「……のみき、これ」
その時、唐突に良一が小さな箱を私の前に置いた。
「なんだこれは?」
「何って、誕生日プレゼントだよ」
「い、今渡すのか?」
「だってよー。子供らの前で渡すの、恥ずかしくてさ」
「なにを今更な……」
「……のみき、誕生日おめでとう」
「あ、ああ。ありがとう……」
私は受け取った小箱を、浮足立つ気持ちで開ける。中には真珠のイヤリングが入っていた。
まさか、こんなサプライズを用意してくれるとは思わなかった。もしかして、通販代行でこっそり注文していたのか?
「その……私だけ一方的にもらってしまってすまない。今日は家族の誕生日なのだから、私からも何かお返しをするべきなのだが」
「気にするなよ。俺の本当の誕生日はまだ先だしな。今度の休み、家族でキャンプに行ってくれたら、それが俺にとって最高のプレゼントだ」
「……お前は本当にキャンプが好きだな」
「正確にはテントが、だな。俺はレンタルテント屋を始める夢、諦めたわけじゃないぜ?」
気恥ずかしさからか、さらりと話題を変えた良一に苦笑しながらも、私も話を合わせる。
「そういや、天善から聞いた話によると、島の西にいい物件があるらしい。一階は古い倉庫、二階が住居になってる。のみきも、そろそろ広い家が欲しいだろ?」
「そ、それはそうだが……」
私たちが結婚当初から住んでいるこのアパート……元々は役所の社員寮だが、確かに家族四人で暮らすには狭くなってきている。子供たちもそろそろ自分の部屋が欲しい年頃だろう。
「そこで、さっきの住宅だ。一階を改装してレンタルテント屋にしてよ、俺たちは二階に住むんだ。そうすれば、俺はレンタルテント屋をやれる。のみきたちは広い家に住める。一石二鳥だと思わないか?」
瞳を輝かせながらそんな話をする。良一は昔から本当に変わっていないな。
……ちなみに、良一は二人きりの時だけ、私のことを『のみき』と呼ぶ。皆の前では『俺の嫁』や『カミさん』、子供たちの前では『母さん』と呼ぶのが普通になってきているから、どことなく懐かしい気持ちになる。
「お前の熱意は十分に伝わっているから、その件はまだ保留だ。私も子供たちが学校を卒業するまでは母親としての務めを全うしたい」
良一の夢も理解しているが、事業を興すためにはそれなりの資金がいる。残念ながら、現状良一の稼ぎだけではそこまでの貯蓄も期待できないし、ゆくゆく私も復職し、共働きをする必要があるだろう。
「……そっか。三谷家の肝っ玉母さんにそう言われちゃ、無下にもできねーな。ならその時が来るまで、俺も一層頑張ることにするぜ」
冗談なのか本気なのか、良一はそう言いながら湯飲みに残っていたお茶を飲み干す。
「……ちょっと待て。肝っ玉母さんだと? 私は外でそんな風に呼ばれているのか?」
「ああ、時々、良太を追いかけて住宅地を走り回ってるだろ? 皆それを見てるみたいだぜ」
あ、あれはその、良太がイタズラをするからだ……先日も出掛けようとしたら、私の靴の中にカエルのおもちゃを入れてあったし……。
「ま、俺は悪い気はしねーけどな。肝っ玉母さん」
そう言ってニヤリと笑う。お世辞ではなく、心からそう思っている顔だ。
「……肝っ玉母さん……か。ところで、私はきちんと母親をやれているだろうか」
「……どうした。藪から棒に」
私の表情が少し曇ったのに気がついたんだろうか。良一は声のトーンを落としながら、そう聞いてきた。
「時々不安になるんだ。私は自分の両親を知らない。つまり、親の子供への接し方というものがわからないんだ」
「馬鹿、俺はガキの頃から親父に散々殴られて育ったけど、今は例え躾のためでも自分の子供に手を上げようとはこれっぽっちも思わない。子供へ接し方なんて、俺だって手探りだ」
「そう、か。お前もか……」
「ああ。だからよ、これからも一緒に頑張っていこうぜ。親も子供と一緒に成長していくもんだしな」
「……そうだな。変なことを聞いてすまなかった。これからもよろしく頼む」
「ああ、こちらこそよろしくな」
そう言ってどちらともなく笑い合う。やはり、私はこの人と一緒になって良かった。
「……ちなみに、最後のセリフは先輩パパの羽依里からの受け売りだ」
……人がせっかく感動していたのに。良一はあっけらかんとそう言って、残っていたみかんをひと房、口に放り込んだ。
「さて、明日も早いし、寝るとするかな」
「こら、きちんと歯磨きをしろ。また虫歯になって、良太と一緒に歯医者へ行く羽目になるぞ」
「そ、それはまずい。あそこの歯医者、痛いんだよな」
以前痛い思いをしたのを思い出したんだろうか。良一は片方の頬を押さえる仕草をしながら、洗面所へと向かっていった。
ーー私がこの島にやってきて、二十数年。
お父さん、お母さん。私はこの鳥白島で、今日も幸せに過ごしています。
~あとがき~
おはこんばんちわ。トミーです。
去年に引き続き、今年も良一とのみきの誕生日SSを書こうと思い立ったのですが、書いているうちにのみき√の内容を織り交ぜた、アフター的なお話になってしまいました。家庭を知らなかったのみきが築いた、幸せな家庭のお話です。りょみき、良いですよね。
一般に言う誕生日SSとは少し違うテイストになってしまいましたが、家族の誕生日SSとして楽しんで頂けると嬉しいです。