サマポケ短編小説集   作:トミー@サマポケ

5 / 16
鳥白島の日常(寄合編)

 

 

 

 ある日。いつものように連休を利用して鳥白島を訪れていた俺は、加藤家で遅めの朝食を済ませて、まったりとした時間を過ごしていた。

 

 今日は鏡子さんもいないし、もう少ししたら、しろはに会いに行こうかな……。

 

「ごめんくださーい」

 

 そんなことを考えていると、玄関から声がした。誰だろう。

 

「あれ、のみき?」

 

 玄関に出てみると、そこにはのみきが立っていた。

 

「やはり来ていたか。鷹原、ちょっと一緒に役所まで来てもらえるか?」

 

「え、役所?」

 

 なんだろう。何か呼び出されるようなことをした覚えはないけど。

 

「良いから来てくれ」

 

 のみきは笑顔だけど、手に持ったハイドログラディエーター改の銃口は俺に向けられていた。俺は思わず両手をあげる。

 

「一応聞きたいんだけど、俺に拒否権は……?」

 

「悪いが、ない」

 

「えっと、今日はしろはと会う約束があって……」

 

「安心しろ。しろはも役所にいる。お連れしろ」

 

 何をどう安心していいのかわからないけど、直後にのみきの背後から妙なサングラスをかけた二人組がやってきて、俺は羽交い絞めにされる。

 

 一応変装しているみたいだったけど、どうみても良一と天善だった。

 

「放してくれーーー!」

 

 俺は為す術なく、役所へと連行されていった……。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「うう、なんでこんな目に……」

 

 俺は役所の二階、会議室のような部屋に連れてこられていた。

 

 今日は本来なら、しろはと二人っきりで過ごすはずだったのに。

 

「皆、朝から集まってもらってすまないな」

 

 ホワイトボードを前にして、のみきが全員の顔を見渡す。

 

 そこには俺とのみきの他に、しろはと蒼、紬に静久、良一に天善。そして偶然島に来ていたらしい鴎と、見知ったメンバーが揃っていた。

 

「実は先日、鳥白島の明日を考える会というものが開かれてな」

 

「え、なにそれ」

 

「簡単に言うと、観光客誘致のために様々なイベントを考える寄合だな」

 

 そんな寄合もあるのか。確かに島だと目新しいイベントでもしない限り、持続的な観光客確保は難しいかもしれないしな。

 

「そこで島おこしのために、最近流行りのご当地ヒーローものをやってみないかという意見が出たんだ」

 

「ほう、ご当地ヒーロー」

 

 のみきの話によると、どうやら鴎の母親の会社がスポンサーをしてくれるらしく、衣装代を含め、50万円の予算が出ているらしい。

 

「しかし、ご当地ヒーローと言われても、御年配方はその辺りに疎くてな。結局、我々少年団に丸投げされてしまったんだ」

 

 確かに最近、至る所でご当地ヒーローやご当地マスコットを作ったという話を聞く。その手のキャラクターの人気投票まで行われてるらしいし。

 

「というわけで、何か意見を出してほしい」

 

「その前に、一ついいかな」

 

「鷹原、どうした?」

 

「なんで俺は当たり前のようにここに呼ばれているんだ?」

 

「鷹原は既に、鳥白島少年団の特別団員だ。寄合で了解も得ているぞ」

 

 寄合の前に、本人の了解を取って欲しいんだけど。

 

「さて、疑問も解決したところで、何か意見を出してほしい」

 

 全然解決してないけど……これは何を言っても無駄みたいだ。

 

「そうだなぁ……」

 

 半強制とはいえ、ここに来た以上、俺も考えを巡らせる。

 

 ご当地ヒーローってことは、その地元の特色を含んだものじゃないといけないはずだ。

 

 そして、メインターゲットは子供ということになる。

 

 鳥白島をアピールできて、子供に人気が出そうなもの……?

 

「……提案だが、卓球戦隊ピンポンジャーとかどうだろう」

 

 第一声を上げたのは天善だった。

 

「……天善くんなら、そう言うと思ったよ」

 

 さっそく反応したしろはは、呆れ顔だった。

 

「その名前だと、間違いなく卓球だよな」

 

「ああ。この島だと、それしかないだろう」

 

「この島って伝統的に卓球が強いとか……ないよな」

 

「ないわねー」

 

 蒼は苦笑いを浮かべている。予想はしていたけど、皆の反応はなんとも微妙だった。

 

 でもこういうのは、想像力が大事だと思う。

 

 というわけで、俺は想像してみる。

 

 

 

「卓球戦隊! ピンポンジャー!」

 

「ピンポンブラック!」

 

「ピンポンゴールド!」

 

「ピ、ピンポンホワイト!」

 

「ピ、ピンポンブルー!」

 

 何故か俺の脳内に鴎、紬、しろは、蒼の四人が出てきて、派手な衣装を着てラケットを構えていた。

 

 鴎と紬はノリノリだった。逆に、しろはと蒼はめちゃくちゃ恥ずかしがっていた。

 

 でも、この中で卓球をさせたら、しろはが一番強そうなんだけど。

 

 というか、言い出しっぺの天善が出てこなかった。勝手なイメージだけど、モニターの前で腕組みして座っている、司令官みたいな感じがする。

 

 

 

「とりあえず、候補として挙げておこう」

 

 のみきは皆の反応を見ながらも、ホワイトボードにピンポンジャーの名前を記していく。

 

「何か、他に意見はないか?」

 

「はい!」

 

 天善に続いたのは、紬だった。

 

「パリングルス戦隊はどうでしょーか」

 

 色とりどりのパリングルスを持って戦う姿がイメージできた。サワークリームオニオンビームとか、うす塩ボンバーとかで戦うんだろうか。

 

「でも、パリングルス戦隊って語呂が悪くない?」

 

 そこで蒼がツッコミを入れる。確かに、なんとなく語呂が悪くて言いにくい。

 

「紬、それならワタアメ戦隊とか良いんじゃない?」

 

 紬の隣に座っている静久から、そう提案されていた。

 

「おおー、確かにゴロが良いです!」

 

 ワタアメ戦隊。すごいふわふわな感じでいいかもしれない。風に吹かれたり水に濡れたりしたら、あっという間にやられてしまいそうだけど。

 

「おっぱい戦隊も語呂が良いわね」

 

 いや静久、語呂は良いけど深夜枠になりそうだからやめて。

 

「パリングルス戦隊に、ワタアメ戦隊に、おっぱい戦隊だな……」

 

 のみきは出た意見を、ホワイトボードに片っ端から書き記していく。

 

 なんとかストーミングとかいうやつだっけ。一旦、その場から出た全ての意見を集める手法だ。

 

「他に意見はあるか?」

 

「鳥白戦隊、カモメンジャーは?」

 

 そう言ったのは鴎。島の名前も入ってるし、ある意味スポンサーの名前も入ってるし、良いかもしれない。

 

 俺はまた想像してみる。

 

 

 

「カモメンブラック! うけーーー!」

 

「カモメンゴールド! むぎぎーー!」

 

「か、カモメンホワイト……」

 

「か、カモメメンブルー!」

 

 脳内では、また鴎と紬がやる気満々だった。他の二人は笑顔が引きつっていた。

 

 全員が鳥のようなコスチュームを着ていた。まるで昔の科学忍者隊みたいだった。鳥白忍法・火の鳥!

 

 

 

「カモメンジャー……と」

 

 のみきは淡々とホワイトボードに書き綴っていた。

 

「そうだ。鳥と言えば、羽依里が主役の話とか作ってみない?」

 

「え、俺?」

 

 しろはがそう言う。なんで鳥と俺が関係するんだろう。

 

「そうよねー。だって羽依里、島に来始めたばかりの頃、自分のことを傷ついた渡り鳥って言ってたじゃない?」

 

「うぐっ。その話は忘れてくれ」

 

 蒼に笑顔で古傷をえぐられた。

 

「じゃあ……さしずめ戦隊?」

 

「ぐああ」

 

 さらに、その古傷に塩を塗りこまれる。本当にやめて。

 

「さしずめ戦隊……と」

 

 のみきも、淡々と書かないで。

 

 

 

 

 ……その後も話し合いが続いた。

 

 大方の案が出尽くした後、個々の内容について具体的な議論が交わされる。

 

 でも、ホワイトボードに書かれていた案は、衣装代がネックになったり、設定的に無理があったり、ご当地感が無いなどの理由で、結局そのほとんどがボツになってしまった。

 

 

 

 気が付けば、話し合いを始めてから結構な時間が経過していた。時計を見ると14時を回っている。当然、全員お昼も食べてない。

 

「……そうだ、最近流行りの魔法少女ものはどうだろう」

 

 疲労がピークに達したのか、のみきが壊れていた。

 

「それならのみき、ハイドロ少女みらくる☆みきちゃんとかどう……ぶっ!?」

 

 軽はずみな発言をした良一が至近距離のハイドロ砲で吹き飛ばされていた。あーあ。部屋の中水浸しなんだけど。

 

「そうだ。鰤キュアというのはどうだろう」

 

 ブリキュア。

 

 のみきが笑顔で言う。そうとう疲れた笑顔だった。

 

 島特産の魚をモチーフにしてるんだろうけど、色々とカオスだった。

 

 というか、版権的に問題はないんだろうか。

 

「男のメンバーも出したりすれば、問題ないんじゃないか?」

 

 大ありだと思うけど。というか、もはや魔法少女でもなんでもない気もする。

 

 とりあえず、想像してみる。

 

 

 

「キュアブラック!」

 

「キュアゴールド!」

 

「キュアホワイト! れいだーん!」

 

「キュ、キュアブルー!」

 

 例によって、俺の脳内では鴎と紬はノリノリだった。蒼は相変わらず恥ずかしそうにしていたけど、今回に限っては、しろはもノリノリだった。なんでだろう。

 

 でもこのメンバーだけだと、強敵が現れた時が不安だ。ここは頼れるおねーさんタイプの人が欲しいよな。普段は包容力のある先輩で、ピンチになったら変身して一緒に戦ってくれそうな人……。

 

「キュアオッパーイ!」

 

 ……やっぱりやめよう。これまた色々と公序良俗に引っかかりそうだ。

 

 あ。そういえば、男のメンバーもいるんだっけ。

 

 えーっと。

 

 俺は必死に想像力を膨らませてみる。

 

「キュアパーーージ!」

 

 ……おぞましいものを想像してしまった。

 

 

 

「羽依里、大丈夫? 顔が青いよ?」

 

「だ、大丈夫だ」

 

 想像によって受けたダメージが顔に出ていたのか、しろはが心配そうな顔をしている。

 

 

 

 

「……さすがに、今日だけでは決まりそうにないな。各自で案を持ち帰って、また後日話し合うことにしよう」

 

「「さ、さんせーい!」」

 

 更に一時間ほど議論を重ねたが、結局ご当地ヒーローの案は最後までまとまらず、次の寄合へと持ち越しとなってしまった。

 

 この島の寄合が長引くのは知っていたけど、まさか朝から夕方近くまでかかるなんて。

 

 うう、もう少ししたら船が来る時間じゃないか……。せっかくの休日が……。

 

 こうして、鳥白島の日常は今日も過ぎていった。

 

 

 

 

 そして後日、実家にのみきから連絡が来た。

 

 それによると、鳥白島のご当地ヒーローは『鳥白戦隊・チャーハンマン』に決まったらしい。

 

 中華鍋に乗って空を飛び、様々な具材を武器にして、全国のご飯ものと戦うらしい。

 

 なんというか、色々と想像通りだった。誰が案を出したのか知らないけど、チャーハンは万能なんです! とかいう声が聞こえてきそうだった。

 

 

 

 

鳥白島の日常(寄合編)・完




あとがき
えーっと、まずはごめんなさい。しろは役の小原好美さんがプリキュア役に抜擢されたのをきっかけにして、勢いで書いてしまいました。
ファンの方、気分を悪くされたら本当にごめんなさい(特にキュアパージ)。

鳥白島の寄合って長引いてるイメージがあるんですけど、中身はこんな感じなのかなーとか、想像して書きました。
また新しいネタが降ってきたら書きます。最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。