私もは今ここ、ベルンの酒場にやって来ていた。
ここは、街から少し離れた寂れた場所であった。
民衆、特に底辺の労働者が飲みに来るのが多い場所であろう。
単に酒を飲みに来たわけではない。情報を集めるためだ。
最も身近な情報は、こういう民衆の中から出てくるものであろう。
特に酒場には裏の部分の話が多く出てくるものだ。
アナーキンも連れてきているが、だいたい1習慣ほどでこの酒場の人気者となった。
より情報収集が楽に成るだろう。
そんな事でテーブルにかけているとある男が来た。
???「相席よろしいか?」
「どうぞ、満席ですからね。良い機会ですし、お名前をお聞きしたい。」
???「アドルフ、アドルフ・ヒトラーだ。」
「良いお名前ですね。私は、オビワン・ケノービです。気軽にケノービとでも呼んでください。」
ヒトラー「東洋人に見えない風貌だな。それに何故ケノービなんだ?」
「それはですね、私の名前を言うとき必ず《ケノービ》
と呼ばれてしまうからです。」
ヒトラー「それだけか。」
「それだけです。それと、この顔は、私の先祖にこちらの人がいたらしく、それがこのように表に出ているのです。」
ヒトラー「まあ、そうだろうな。」
「欧州の人では珍しいですね肉を注文しないんですか?」
ヒトラー「私は、菜食主義者だからね。おかしいかな?」
「いえ、とんでもない。」
ヒトラー「ところであの子は君の息子かね?」
「まあ、養子ですがね。」
ヒトラー「君は何の仕事を?」
「私は、建築家と言ったところです。
欧州の建物に興味があったので勉強がてら観光でもしようかと思いまして。」
ヒトラー「観光しながら?建築を舐めていないか?いや、そちらには好きこそ物の上手なれ。
という諺があったか。
私も、建築士なんだよ。本当なら画家になりたかったがね。」
「何故画家に成らなかったのですか?」
ヒトラー「ここ最近景気が悪くてね。
特に風景画は、今の流行りじゃないから。
売れないのさ挿し絵くらいしかね。
幸い私は、学があったから建築士の方へ行ったが、今も絵は描いているよ。」
「一度見てみたいものですね。」
ヒトラー「犬は大丈夫ですか?」
「えぇ、アニーも大丈夫ですよ。」
ヒトラー「そうかなら是非来てくれ。来月なら仕事も一段落するからいつでも来て下さい。」
「ありがとうございます。是非いかせてもらいます。」
この男、前世で見たアドルフ・ヒトラーの若い頃の写真にそっくりだ。
おまけに名前まで。
こっちでは建築士になったのか。
元々学校を中退しなければ入れたみたいだから、そうなるだろうな。
それにそこそこ有名人の様だ。良い人脈になりそうだな。
こちらに来てから早4ヶ月シスの音沙汰はない。
暇を見つけては孤児院を回っているが、未だにデクレチャフの消息は掴めず。
まるで何者かに運命を操られているようだ。
また、あの存在か?フォースと拮抗していてデクレチャフの気配が押し込められているのか、気配が感じられない。
地道な作業になりそうだ。
アドルフ・ヒトラー
有名なあの人の生まれ変わり。
前世の記憶を持っており自らが独裁者であったことを今でも懐かしむ傍ら、前世で中退した学校を卒業後建築士としての道を歩んだ。
嘗ての行いについては反省はしておらず、国民の願いを叶えるために必要だったと今でも考えを変えることはない。
やはり演説が上手く社会の有方や上流階級の人間に対する不満などを回りに簡単に伝える能力を持つ。
現在の帝国に対しては強かったドイツの面影を見ているため好意的である。
しかし、社会福祉政策などを行うように帝国内での抗議活動をしており、帝国の秘密警察に眼をつけられている。本人も承知の上である。
エヴァ・ブラウンとはこの世界で結婚をした。
後に20世紀最高の風景画家といわれ非常に立体的で透き通る水の表現。現実を当時の写真以上に描くその絵が生涯売れることはなかった。
人物画に対してはエヴァを完璧に描きたいがために上達したと自著に記している。
また、203魔導大隊司令官ターニャ・デクレチャフと書かれた絵が一枚のみ鉛筆描きでスケッチされている。そのあどけない少女の姿が真実なのかそれとも幻を描いたのかは、今のところ分かっていない。全ては極東の国が知っている。