side黒帯
あの模擬戦から数ヵ月の月日が流れた。
奈緒は、あの敗戦から見違えるように成長していった。彼女はジェダイに向いているだろう。だけれども未だに実戦を行っていない。既に本国に着任してから一年が経過していた。
来月から、私とパダワンは欧州の方へ、具体的に言えば欧州の帝国へと派遣になる。既に戦争が始まっている戦地への派遣は、私としても初めてとなる。戦争当事国だった時には戦地へと赴いたが、この大戦まで完全な戦争というものに出会うことはなかった。
そんな中、私はジェダイ評議会に出頭するように命令された。
評議の間で私は、12人のジェダイマスターたちに囲まれている。
「それで、要件はいったいなんでしょうか?これから私は欧州へ行く準備をしなければなりません。手短にお願いします。」
開眼が私の言葉を聞き喋りだした。
「では、単刀直入に言おう。君をナイトの称号からマスタークラスへと、昇格することとなった。まずは、おめでとう。」
昇格?私が何故ならば昇格するのだろうか。私よりも教え方が上手いやつなど五万といるだろう。まあ、深く考えないようにしよう。どうせ、外交権の強化だろう。
「そうですか、では拝命いたします。」
side開眼
彼を昇格させようと言い始めたのは私ではない。私としてはまだ彼の昇格は、早いのではないのだろうか。と思っている。彼自身実力は本物だ。しかし、最近特にここ数ヵ月かれは、人間味が薄くなって来ているように感じている。
まるで、何かを悟ったように警戒し、集中力が上がっている。現在欧州は、妙な雰囲気を漂わせる存在が確認され始めている。その存在は我々に接触するとき、必ずといって良いほど自分のことを『神』と自称するものだ。
彼は、その存在を我々が観測し始める遥か前に知り得ていた可能性が高い。彼の言動は何かから我々を含めた何かを守るために動いているといっても過言ではない。
その事から全体の意見として、彼を手助けしようと言う考えを元に、外交特権の強化と権力の強化を付与するために彼をマスタークラスへ昇格することとなった。
「この昇格の意味君はわかっているかな?今回の欧州への派遣は非公式のものではない。公式のものだ。従って君が多くのものに侮られてはならない。そう考えた上、君の活躍も踏まえて君にマスタークラスを与える。」
終始無言だな。彼らしいな、昔はもっと喋る奴だったんだがなぁ。
「欧州での仕事頑張って欲しい。早いところ戦争を終わらせるために、彼らに援軍の派兵すら行わねばならなくなってしまう。全ては君の腕にかかっている。」
side幸
「ただいま」
あの人が帰って来た。ここ数ヵ月海外に行っていないからか、新鮮味は微塵もないけれど安心する。
「お帰りなさい。今日はおめでとう」
「うん?何が?」
「何って昇格したんでしょ?マスタークラスに。」
「何で知ってるんだ?」
「雪が教えてくれたの。昔から昇格することに興味無さそうだったけど、今もないのね。本当に羨ましい。」
昔から昇格に興味無さそうにしてるけど、あなたは本当に凄いんだよ?まるで自分には合わないなんて顔してるけど。
「そんな良いものじゃないさ。欧州にいくから発言件の強化だろうさ。」
「それでも、マスターは、マスターよ。私は、ナイトにすら慣れなかったけど、あなたはマスター。」
「恨んでるのか?」
「ううん。恨んでなんかない。私は今幸せなの。だから、死なないでね。絶対に帰って来て、家は子供達は必ず私が守るから。」
「わかったよ。必ず帰ってくる。君のために。」