原作との、キャラクターの口調や設定の相違は、ご指摘いただけると感謝です。
しかし、作者の力不足で、口調の再現率は高くならないかもしれません。申し訳ありません。
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《士郎が砂漠に放り出される数十分前》
「立香ちゃん、マシュ。よく聞いてほしい」
マシュがブリーフィングに合流した後、考え込んでいたロマンがようやく口を開いた。
「どうしたの?ロマン」
「新しいサーヴァントを召喚しよう」
「ドクター…私では力不足でしょうか…」
マシュが悲しそうに俯いてしまった。
それを見た私は、思わずロマンを訝し気な目で睨みつけてしまう。
なにもこんなタイミングで言わなくてもいいじゃないか…。
「そ、そうじゃない。マシュの体調も回復直後で、加えて、人理定礎評価EXの特異点だ。ここは、マシュの負担を少しでも減らすべきだと思う」
なるほど、マシュを落ち込ませた罪は重いが、ロマンの言うことにも一理ある。
「それには私も賛成だ。いくら万能の天才である私が同行すると言っても、人理定礎評価EXは未知の領域だ。ここは安全にいこう」
どこからともなく現れたダ・ヴィンチちゃんもロマンの意見に賛成のようだ。
「私も賛成。マシュだけに無理はさせられないよ」
マシュを信頼していないわけではないものの、今までとは少し状況が違う。ここは、二人の意見に従ったほうが良さそうだ。
「先輩…。先輩が言うなら…」
口では、そういうものの、顔は不満気だ。
少し恥ずかしいけど、私の正直な意見を伝えよう。
「あのね、マシュ。私が一番信頼してるのはマシュだからね」
「先輩……はいっ!」
マシュは、一瞬驚いたような表情になったが、すぐにそれは花が咲くような笑顔に変わった。本当に可愛い後輩だ。
私は私で、顔が熱くてしょうがないが…。
「今日も百合の花が咲き乱れてるねぇ」
「レオナルド、あれは既にカルデアの宝だよ」
「今日も気持ち悪いなー、ロマ二は」
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「聖晶石を触媒にして…と」
カルデアの召喚室に入り、いつもの手順で召喚の準備を進める。
詠唱は、再契約の時以外は無くてもいいはずなので、触媒を指定の場所に置き、召喚が始まった。
バチバチと音を立てながら、サークル上を魔力の塊同士が付いては離れを繰り返す。
魔力の塊は、やがて結び付き、魔力の渦へと姿を変える。
魔力の渦は螺旋を描き、眩い光が召喚室を満たす。
眩い光が収まり、人影が姿を現した。
「問おう。あなたが私のマスターか……この台詞も、この格好も久しぶりですね。……ああ、混乱させてしまいましたか。こちらの話です。」
___ハッ、あまりに綺麗な人で呼吸が止まってしまっていた。
「あの、マスターの藤丸立香です。よろしくお願いします」
「そう緊張しないで、リツカ。
セイバーのアルトリア・ペンドラゴンです。こちらこそよろしくお願いします」
う、緊張してるのが見破られてしまった…。
でも、優しそうな人で良かった。
「それにしても、まさか手放したはずの聖剣があるとは…湖の婦人に礼を言いに行かなくては…」
「どうかしましたか?」
「いえ___それよりもそのように堅い口調ではなく、もっと楽な口調で話してください」
「わかりま___うん、わかったよ」
「はい。それで、お願いします」
「改めてよろしく、アルトリア」
「ええ、よろしくお願いします。リツカ」
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「……ここまで来れば大丈夫でしょう」
銀色の腕を持つ騎士と共に逃げ込んだ先は、荒野だった。
彼は、地形の変化があまりに急激過ぎることに、違和感を覚えた。
彼自身、様々な国を渡り歩くこともあったが、こんなことは初めてだった。
「さっきは、ありがとう。助かった」
「いえ、無事でなによりです。それにしても、どうしてあのような場所に?」
「………実は、道に迷ってさ」
「それは災難でしたね…。……この辺りは危険です、私が案内しましょう。どこを目指しているのですか?」
会ったばかりの彼に、この時代の人間ではないことを説明してもしょうがないだろう。
少し返答に時間がかかってしまったが、信じてもらえたようだ。
「あー…いや、人を探してるんだ。そうだ、肩くらいまでの金髪で、綺麗な碧色の目をした、白いワンピースを着た女の子なんだけど、見かけなかったか?」
「ワンピース…が、どのようなものかわかりませんが、聖都の民ではないでしょうか?」
「聖都?」
「ええ、山の民や砂の民とは、髪や瞳の色が異なりますから」
「山の民とか砂の民って言うのは?」
「え、どちらかから来たのでは無いのですか?」
「あー…俺の住んでたところは少し特殊でさ…」
「……なるほど、事情があるのですね。ならば、あえて問い正そうとは思いません」
察されてしまった…。
しかし、話のわかる相手で助かった。
「…すまん、助かる」
「先ほどの質問にお答えしましょう。
山の民というのは、"山の翁"を中心に、山岳地帯に身を潜めて暮らす民のことです。
砂の民というのは、先ほどの砂漠を治める"大神殿の王"の臣民たちのことです。
そして、聖都の民というのは…あらゆる異民族、異教徒を受け入れる、完全完璧な理想都市の民…らしいです」
…?
聖都の民だけ、妙に歯切れが悪かったような気はしたものの、大まかには理解ができた。
「いきなり地形が変わったと思ったら住んでる人間まで違うのか…。とりあえず俺は、その聖都って場所に行ってみようかな」
「…お待ちください、今の聖都は危険です」
「…?」
「私もあまり詳しい事情は知りませんが、難民を受け入れる前に聖抜という儀式があるそうです」
「その儀式がなにか?」
「曰く___永劫無垢なる人間の選定と、選ばれなかった者たちへの粛清と聞きます」
彼には、なんとなく予想がついていた。
何の代価もない、理想の都市など存在しない。
それは、長い旅でよくわかっていた。
「___そうか」
「悪いことは言いません、聖都に向かうのは控えるべきかと」
「それなら、尚更行かなくちゃな」
「は?」
銀の腕を持つ騎士は、困惑の声を上げる。
___が、彼は構わずに続ける。
「___もしも救える命があるなら、救う」
擦り切れ、磨耗し、それでも捨てられなかった彼の
夢に追いつこうと、旅が終わろうと、世界が変わろうとも、その生き方は変わらない。
「…………どうしても、行くのですか」
___彼の根底に眠るものを察した。
どうにも歪んで見えたそれも、果たさなければならないものがある同士。騎士も無理に止めようとは、どうしても思えなかった。
答えはわかっている。
しかし、それでも聞かずにはいられなかった。
「ああ___止めても無駄だぞ」
「………はあ、かくいう私も聖都に向かう旅の途中です。それに、ここで放り出すのは、騎士の名折れ。何かの縁です、私も共に行きましょう」
もちろん、使命が最優先。
しかし、彼には、ストッパーが必要だと騎士は思うのだ。
救うと言えば、彼は本当にやってのけるだろう。
___自分の命以外は。
「それは助かる。___そうだ、俺は衛宮士郎。あんたは?」
「私のことは、ルキウスと。よろしくお願いします、士郎殿」
「仰々しいな、士郎でいいよ」
騎士のあまりの態度に、彼は思わず苦笑を浮かべてしまった。
「はい、それでは士郎と」
「改めてよろしく、ルキウス」
「ええ、それでは聖都に向かいましょうか」
かくして、二人は互いの目的を果たすべく聖都へと向かった。
きっと長い旅になる。言葉には、出さずとも二人ともそれを理解していた。
今回の話は、二人分の出会いとしました。
次の話からは、士郎視点とセイバー視点、たまに立香視点に分けてやって行く予定です。
あくまで予定なので、あまり期待はしないでください。