どこかバグった神聖円卓領域キャメロット   作:ひらいず

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前話では、評価、感想ありがとうございます。
意外にも高評価をいただけているようで、とても励みになります。


レイシフト

___レイシフト先は、エルサレム。かの聖書にも名前の出るような有名な都市だった()()()

 

「ここは…?」

 

……常に突風が吹き荒れ、突風が砂を巻き上げ、先も見渡せないような場所をはたして都市と言えるのだろうか。

 

「マスター!こちらへ!」

 

少し大きい岩陰からマシュの声が聞こえた。

条件反射でマシュの元に駆けつける。

 

「ここがエルサレムなの…?」

 

「これがエルサレムであるものかーーー!一面の砂嵐だーーー!」

 

マシュと岩陰に居たらしいダ・ヴィンチちゃんからツッコミが飛んできた。

良かった、エルサレムが砂に呑まれたわけではなさそうだ。

というか、この岩陰って…大きな動物の骨…?

 

「って、そんなことよりロマンとの通信は?」

 

「……カルデアとの通信、安定しません。ドクターも対応してくださってると思うのですが…」

 

砂嵐のせいか、それともEXが伊達じゃないのか。

まあ、大事なときにカルデアとの通信が途切れるのは、いつものことか。

 

「全然違う時代に飛ばした不始末をロマニに着けさせなきゃ……うん?…時代が違う?ちょっと計測器で…っと」

 

ダヴィンチちゃんが、なにやら取り出した計測器でなにかを測り出した。

___と、その時フォウが雄叫びをあげた。

 

「フォウ、フォーウ!」

 

「どうしたのフォウく…っ!」

 

砂嵐で接近に気付かなかった!

咄嗟に距離をとり、マシュに発見を知らせる。

 

「マシュ!敵影発見!鎧の騎士が三体!」

 

「…っ!せんぱい!」

 

マシュの反応も速かった。

風除けに使用していた盾を即座に持ち替え、鎧の騎士に向かって構える。

しかし、そんなマシュには目もくれず、鎧の騎士は的確に立香を追い詰める。

 

「くっ…!」

 

砂地でいきなり動いたせいで、思わず足を取られてしまう。

鎧の騎士は、体勢を崩した立香に向かって、機械的に剣を振り下ろす。

___が、剣は立香に触れることはなく、軌跡を描きながら宙を舞った。

 

「___ハァッ!」

 

剣を吹き飛ばされ、怯んだ騎士に対して、英雄は、すかさず次の斬撃を叩きつけた。

鎧の騎士は、不可視の剣との間合いを掴みきれず、重い衝撃を胸に受け、後方に吹き飛ばされた。

 

突然の乱入者に残った騎士たちは反応し、咄嗟に盾を構えるが、英雄はそれを大きく上回る速度で、不可視の剣を叩きつける。

盾は、その役割を果たすことなく、砕けてしまう。

 

そして、間髪入れずに放たれた斬撃に、鎧の騎士たちは反応することができなかった。

 

その英雄は、鎧の騎士たちを目にも留まらぬ速さで制圧した。

それはまるで、一陣の風のように。

 

鎧の騎士たちは目的を達成することなく、撤退を余儀なくされた。

 

「無事ですか、リツカ」

 

「大丈夫だよ。ありがとう、アルトリア!」

 

「いえ、少し離れたところに転送されたようで…御身を危険に晒しましたね。申し訳ありません…」

 

「ううん、無事だったんだから何の問題もないよ」

 

本心からそう思ったが、アルトリアがあまりに落ち込んでいるので、無理やり話題を変えることにした。

 

「追い打ちには行かなくていいからね?」

 

「ええ、これ以上痛めつけなくとも、彼方に戦意は無いはずですから」

 

冗談のつもりで言ったのに、敵意があれば、遠慮なく追い打ちに向かいそうな口ぶりだ。

好戦的すぎる姿勢に思わず、笑ってしまった。

 

「___先輩!無事でしたか!?」

 

「あ、マシュ!アルトリアが守ってくれたから大丈夫だよ」

 

「アルトリアさん…先輩が危ないところをありがとうございます。私では…間に合いませんでした…」

 

良かった、見たところマシュにも怪我はない。

しかし、マシュは肝心なときに動けなかった自分を責め、俯いてしまった。

 

「そんなこと___」

 

ない、と言いかけて、アルトリアに手で制されてしまう。

 

「マシュ、顔を上げて。私はリツカの剣で、貴女はリツカの盾だ。貴女が俯いてしまっては、守れるものも守れなくなってしまう。

___さあ、前を向いて。その盾は敵を倒すためではなく、自らの大切なものを守るために在るのです」

 

そう言い放つアルトリアは、凛としていて、その在り方は美しかった。

私が狼狽えてどうする。マシュに大丈夫と胸を張って言えるように、私がもっとしっかりしなければ。

 

「アルトリアさん……はい!マシュ・キリエライト、改めて先輩を守る決意を固めました!」

 

「その意気です。…ああ、やはり貴女には笑顔がよく似合う」

 

「……は、はい」

 

フッ、とアルトリアの表情が緩み、マシュを褒める。

その姿に、マシュは…思わず見惚れてしまっていたようだった。

 

他人(わたし)の後輩を口説かないでくださーい」

 

…むう…面白くない。

マシュの笑顔が可愛いなんて、私が一番よくわかっているんだから。

 

「え、えぇ!?アルトリアさん口説いていたんですか!?」

 

「……私には、心に決めた相手が居ますので」

 

さっきのように冷静に切り替えしてはいるが、口元が緩んでいる。

私はとても優しいので、指摘してあげることにしましたまる

 

「アルトリア、口元緩んでるよ」

 

「っ!………つ、つい…お見苦しいところをお見せしました…」

 

おやおや、まあまあ!

頬を染め、そっぼを向くのが妙に乙女チックだ。

いつも気を張って凛としているように見えたアルトリアも、今はもう年相応の女の子のようで、可愛らしいギャップだ。

 

 

 

「あのー、そろそろいいかい?」

 

「……ダ・ヴィンチちゃん?……あ!ごめん!すっかり忘れてた!」

 

「稀代の天才に対して、すごいこと言うねキミ」

 

私のあんまりな物言いに苦笑していたダ・ヴィンチちゃんだったが、それはそれとして、と仕切り直した。

 

「私の計測器が正しければ、西に水源がある。というか、都市があるようだし、そこに移動しよう。立香ちゃんも休みたいだろう?」

 

「え?私?……まだ大丈夫そうだけど」

 

「ダメですよ、先輩。唇はカサカサ、顔色は真っ青で、乙女にあるまじき顔をしてます」

 

………う。マシュに言われると心に刺さる…。

 

「マシュの言う通りです。リツカ、無理はよくありません。自分の現状を把握するのも大事な能力の一つです」

 

「…うぅ…わかったよ…確かにちょっと息苦しいかも…」

 

「…やっぱりね、魔力濃度が濃過ぎるんだ。これを着けるといい」

 

そういって、ダ・ヴィンチちゃんから手渡されたはゴツゴツして、ダイビングとかで使いそうな…そう…。

 

「………酸素ボンベ?」

 

「うん。急ごしらえで作った魔力遮断ボンベだよ。ここの大気は…人間にはちょっとキツイ」

 

「確かにこれは…リツカの生きている時代とは比べものにならないほどの魔力濃度ですね…」

 

「なに、遠慮することはない。その為の私だからね!でも、ありがとうの言葉は嬉しいのでジャンジャン言ってくれたまえ!」

 

早速魔力遮断ボンベを着けてみることにした。

………なるほど、大分呼吸が楽になった…。

魔力濃度っていうのは、案外バカにならないらしい。

 

「ありがとう!ダ・ヴィンチちゃん!」

 

「ああ、また困ったことがあればドンドン言うといい!なんせ私は万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチなのだから!」

 

ダ・ヴィンチちゃんは不敵な笑みを浮かべて、そう言った。

これからも頼りにさせてもらおう。

 

 

 

 

***

 

 

 

「……あれは…?」

 

先陣を切って歩いていたアルトリアが立ち止まった。

呟いた声が砂嵐の中でも、いやにはっきりと聞こえた。

 

「どうしたの?アルトリア?」

 

「…大きな建物の周囲を無数の影が徘徊しています」

 

「大きな建物…きっとそれが神殿だろう。その周囲を徘徊する影…?」

 

ダ・ヴィンチちゃんが考え込んでしまった。

と同時に上空から、バサッバサッ、と大きな羽の音が聞こえた。

 

「___全身がビリビリする___何か、異質なものがやってきます!マスター!」

 

「___ッ!リツカ!離れて!」

 

アルトリアの声と同時に巨大なナニカが砂を巻き上げ、滑空してきた。

 

「な___!あの羽の音とシルエットはまさか___!立香ちゃん!様子見は無しだ!次の相手は文句なしの強敵だぞ!」

 

 

 

巨大なナニカは、名乗りをあげるように___或いは、王の領域を侵犯した愚か者を罰するように咆哮をあげた。

 

「…スフィンクス…!?」

 

ここがエルサレムだとするのなら、絶対に存在するはずのない神獣に呆気を取られてしまう。

 

「スフィンクス!戦闘態勢に入りました!」

 

マシュは盾を構え、ダ・ヴィンチちゃんは杖をとる。

アルトリアは、すでに準備を終え___勇猛果敢に攻め込んだ。

 

「ハァッ___!」

 

不可視の剣も神獣には、視えているかのように防がれる。

アルトリアの剣ですら、神獣の爪には易々と弾かれてしまう。

 

「フッ…!」

 

神獣がアルトリアに気を取られている隙を突き、マシュも攻め込む。

しかし、外皮も硬く、大したダメージを与えられていないようだ。

 

アルトリアが斬りつけ、防がれ、後退する。

神獣は、後退した隙を突き、襲いかかる。

それをマシュが盾で防ぎ、今度はマシュが攻め込む。

お互いに一進一退の攻防だ。

 

そして一番の救いは、アルトリアとマシュの立ち回りが良かったことだった。二人のコンビネーションは初めて組んだとは思えないほどに洗練されていた。お互いがカバーし合い、神獣も攻めあぐねいているようだった。

 

 

そして___

 

 

「二人とも、見せ場を取って悪いけど、少し離れていたまえ」

 

「東方の三博士、北欧の大神、知恵の果実___。我が叡智、我が万能は、あらゆる叡智を凌駕する! 」

 

「___万能の人(ウォモ・ウニヴェルサーレ)!!」

 

 

右腕の籠手から放たれた光弾は、

神獣に触れると同時に爆裂し、眩いほどの閃光を放ちながら、神獣の外皮を食い破ることに成功した。

神獣は、絶叫をあげ、霧のように消えていった___。

 

 

「他にも追加で説明したいところだけど、後にするとしよう!今はとにかくこの場から離れることが先決だ!」

 

「巨大生物は撃破できたのでは…?」

 

「そういう風に見えるだけさ。目をこすったら回復する…というほど軽いダメージではないが、時間が経てば必ず回復する」

 

「じゃあ早く神殿の方に向かおう!」

 

ならば、早く移動するべきだろうと思い、神殿の方に歩きだそうとするが…。

 

「残念ながら、神殿の周囲を徘徊する影もスフィンクスだろう。ここまで来てなんだけど、別の避難場所を見つけよう」

 

「……あの中に飛び込むのは自殺行為です。撤退しましょう。リツカ、まだ歩けますか?」

 

「うん、大丈夫だよ。アルトリア」

 

「そうですか、辛かったらいつでも言ってください。私が抱えて歩きます」

 

「そ、それはちょっと…」

 

 

 

___こうして、第六特異点での初めての戦闘は終わりを告げ、人理修復が幕を開けた。

 

 




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