ガ・ボー&ガ・ジャルグ誕生日記念SS置き場   作:ロゼ@ファンキル勢

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女神の翼を刻まれた少女のお話

 三国を代表する三人の斬ル姫とアルマスらによる会談が行なわれている同時刻。トレイセーマ軍の陣地、その一角にある天幕の中で、虹輝をまとう斬ル姫――ガ・ジャルグが、桃色の髪を三つ編みにした斬ル姫に詰め寄っていた。

 

「あの子は本当に無事なのよね!?」

「静かにしてください。先ほども伝えた通り、識別系統L・一五……ガ・ボーの容態は安定してます」

 

 三つ編みの斬ル姫――ミストルティンは呆れの眼差しで言葉を放つ。それもそのはず、ガ・ジャルグがガ・ボーの安否を尋ねるのはこれで三度目だったからだ。

 

「私に尋ねるよりも、彼女が眠るテントに行くほうが早いと思いますけど」

「それは、もちろんそうだけど……」

 

 口ごもるガ・ジャルグ。そんな彼女に向けて、ミストルティンは目を細めながら言葉を繋げていく。

 

「十三議会が秘密裏に用いていた伝令役、とのことでしたが……こうして表に姿を見せた以上、もう自分の存在を隠す必要はありませんよね? 姉妹なのですから、会いに行けばいいじゃないですか。それとも、」

 

 一拍。

 

「――怖いんですか? 妹に会うのが」

「ッ、どうして……」

 

 ガ・ジャルグが息を呑み、ミストルティンはため息を吐く。

 

「わかりやすいですね」

「……何か、言いたいことでもあるわけ?」

「いいえ、別に?」

 

 さらりとガ・ジャルグの言葉をいなすミストルティン。幽玄の美を湛えたロングスカートを翻し、背を向けながら言葉を続ける。

 

「あなたの事情に興味はありません。強いて言えば、彼女の暴走は私たちにとっても頭痛の種でしたから、それが解消されてほしいとは思っています」

「……、……」

 

 冷かかな口調に、ガ・ジャルグは閉口することしかできなかった。

 

 

 「……はぁ。完全な存在になったなんて言っても、あの子が絡むとやっぱりこうなっちゃうわよね……」

 

 ミストルティンの天幕を出たガ・ジャルグは、つかの間の休息を取っているトレイセーマの兵や斬ル姫たちを流し見しながら、どこへ向かうでもなく一人で歩いていた。

 

 そんな彼女に声をかける女性がひとり。

 

「まぁ、ガ・ジャルグ……どうしたのですか? こんなところで」

「あなたは――シャルウル」

 

 声のほうへと振り向いたガ・ジャルグは、視界にひとりの斬ル姫の姿を認めた。波打つ黒髪と深い海にも似た穏やかさを湛えた美女、シャルウル・獣刻・ティアマト。トレイセーマ共和国の斬ル姫の教育係であり、暗部に所属していたガ・ジャルグの存在を知っていた数少ない人物でもある。

 

「別に、なんでもないわ!」

「ふふっ、私の前でくらい強がらなくても良いのですよ? 久しぶりに会ったのですから、話をしましょう」

「話なんて……話すことなんて、わたしには何も……」

 

 言いよどむガ・ジャルグに聖母のような微笑みを向けながら、シャルウルはその手を取る。

 

「私は知っていますよ。あなたが妹にとっての完璧な姉で在れるように、つねに努力をし続けてきたことを。完全とも言うべき力を得ながらも、心に迷いを抱えて苦しんでいることを、ええ、よく知っています」

 

 しばし逡巡の表情を浮かべていたガ・ジャルグが、やがて苦笑とともにため息を吐き出す。

 

「はぁ……あなたには敵わないわね。そう、私はずっとあの子の期待を裏切らない姉でいられるよう、努力し続けてきた。あの子の前ではずっと完璧な姿を見せ続けてきた。でも……そんな私の存在が、結果としてあの子を苦しめた。あの子に劣等感を植え付けてしまった……」

「ええ、そうですね。不幸なすれ違いが起きてしまいました」

「……今のあの子は、自分を不出来な偽物だと思っている。出来損ないで不完全な存在だから、私を殺してその力を取り込むことで完全な存在になり、本物になることができる……そんな風に思い込んでいる」

「強すぎる愛は、ときに心を歪めてしまいますからね……」

「そこまであの子を追い詰めてしまったことが悔しいし、悲しい。あの子が私を殺しにくれば、どちらかが死ぬことになるから怖い……それが今の私の本音よ」

「なるほど、なるほど。悔しさと、悲しさと、怖さ……いろんな感情が混ざり合っているのですね」

 

 キュッと唇を結ぶガ・ジャルグの髪を撫でるシャルウル。見た目こそ違うものの、それはまるで母が娘をあやしているかのようだった。

 

「ごめんなさい、シャルウル。会わなきゃいけないのはわかっているの。会って、決着をつけなきゃいけないのはわかっているけど……」

「――別に、無理に会わなくても良いと思いますよ?」

「……え?」

 

 シャルウルの言葉は、ガ・ジャルグにとって予想外の一言だった。

 

「だ、だって、わたしには姉としての責任があって、あの子を正しく導かなきゃいけなくて……そうしなきゃあの子は救われないし、今後のトレイセーマの軍事行動にも支障が――」

「でも、今はまだ会うのが怖くて辛いのでしょう? それならまだ会うべきではないと思います。たとえば、そう――ガ・ボーがあなたを殺しに来ても、彼女を傷つけることなく制するだけの力を身につけてから会いに行く、とか」

「あっ……」

「完全な力を手に入れたとは言え、まだまだあなたは高みを目指せます。だからこそ、ガ・ボーがどれだけ暴れても制することができる力を身につけましょう。そのときのあなたは、きっと恐れることなく彼女の想いを受け止められるようになっているはずですよ」

 

 その言葉は、優しい水となってガ・ジャルグの心に安らぎをもたらした。

 

「今よりも高みを目指す……」

「カシウス様に背を押されたとは言え、あなたは自分の意志でガ・ボーを救うために戦場へと降り立った……これは以前のあなたには見られなかった行動です。つまり、あなたはちゃんと前に足を踏み出しているのです」

「前に、踏み出せた……」

「はい。実力も、心も今より強くなって、それからガ・ボーを迎えに行きましょう。ガ・ボーの暴走に関しては、今後は私がしっかりと目を配るようにしますし。何より、今もし二人が出会って何かの被害が出てしまえば、そちらのほうがトレイセーマにとっての不利益になりますから」

「……そっか。うん、そうよね。わたしがあの子の想いを受け止められるくらい、今よりもっと強くなればいいのよね。それに、トレイセーマの不利益になるようなことはできないし」

「そうです、そうです」

 

 ニコニコと微笑むシャルウルの言葉を受けて、ガ・ジャルグは晴れやかな表情を浮かべる。そして、強い決意をその目に宿す。

 

「ええ、良いわ。やってやろうじゃない。イーリスの完全なる力を完璧に使いこなせるよう、わたしはさらなる高みを目指すわ。とりあえず鍛錬をしなきゃね。ありがと、シャルウル」

「はい、がんばってください。応援していますよ、ガ・ジャルグ」

 

 鍛錬へと向かうガ・ジャルグの背を見送りながら、シャルウルは穏やかな表情をそのままに、小さな吐息をこぼす。

 

「これでガ・ジャルグも当面は憂いなく十全の力を発揮してくれるでしょう。ガ・ボーは傷が深いから当分は戦線復帰できませんし、軍事行動を乱すこともない。今回の決戦が終わったあとで再びガ・ジャルグに暗部に戻ってもらえば、ガ・ボーとガ・ジャルグが偶発的に出会うこともないですし……あとはガ・ボーを上手く宥めることができれば問題はありませんね」

 

 シャルウルに悪意があるわけではない。トレイセーマの斬ル姫たちに等しく慈愛を持っていることも事実だ。彼女にとってはトレイセーマという国こそが至上であり、国の利益と斬ル姫たちの心、その両方に沿うよう行動しているにすぎない。

 

 だが、彼女の言葉によって姉妹の邂逅が遠のいたこともまた事実。果たして、二槍一対の姉妹が出会う日は来るのだろうか?

 

 少女たちを真の幸福へと導くマスターは、未だ現れない。




二次創作は難しいですね(白目)

3つ目の話はボーちゃんと姉様が決闘する感じにはなるんだろうけど、ロスラグ編の着地点がどうなるのかっていうのが見えて来なきゃ書きづらい。あと未だにどういう再会が一番良いのか悩んでる。

基本的に斬ル姫たちは霊装支配から解放されなきゃ幸せになれないと思うんだけど、これ、ストーリー的に今後はどうなるのかなぁ……キャラクエ時には霊装支配から解放されてるっぽいけど、どういう流れでそうなるのかしら。

とりあえず最後の一文にいろいろな気持ちを込めました。幾ら記憶失ってる言うても、ギアハックされて戦いに駆り出されてる姫たちをガンスルーするようなやつはマスターじゃない(暴言)
ボーちゃんを置いて逃げたことは未だに許してないからな!
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