三ノ輪白銀は異質な勇者である   作:璃空埜

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どうも、璃空埜です。

何だか久しぶりの連日投稿!
そして、本日は銀ちゃんの誕生日!!
と、言うわけもあり本日は何気に初めて……(か?)書いたSSもこの後すぐに投稿させていただきますのでそちらもご覧ください!

そして、戰月 大和様 ☆9評価及びご感想、ありがとうございます!!

それでは本編どうぞ!!!


第捌話    もう一度、勇者として

ーーーーーーーーーー郡 千景の章

 

乃木さんから渡された端末を確認したり、樹海化した世界を見渡したりして時間を潰してしばらく……

 

「んん…………?」

「……起きたかしら?」

 

少し身動ぎした後、白銀くんが目元を擦りながらむくりと半身を起こす。そのまま少しぼーっと辺りを見回してから私の方へ顔を向け……

 

「……千景、俺どんくらい寝てた?」

「だいたい1時間半くらいね」

「……大分……寝てたんだな」

「それだけ疲れてた……ということよ」

 

軽く溜め息をつきながら頭の後ろを掻こうとした白銀くんだったけど……ここでようやく私の服の袖をつかんでいることに気づいた。

 

「……あ~…………悪い……」

「…………気にしてないわ」

 

そして、流れるのはなんとも言えない微妙な空気……。珍しく白銀くんも少しだけ頬を赤くしてそっぽを向いてるけど……それは私も同じだと思う。

……やっぱりこの前、白銀くんのお母さんに言われたことが少なからず影響してる…………だって今までこんな空気になったことなんてなかったし…………

 

「ち、ちか……」「せつ……」

 

しかも話しかけるタイミングまでも被ってしまう始末……

 

「……こほん。それで……俺が寝ている間に何かあったか?」

 

一瞬だけちょっと苦い顔をした白銀くんだったけどすぐに切り替えてくれる。

こういうときこそ、彼の切り替えの速さがとても助かるわ…………。あのままの空気でずるずると長引くのは流石に…………ね。

 

「特に何も」

「そ……か。にしても、これ……一体なんなんだ?」

「……ここは神樹様が作り出した結界の中よ。樹海化……と呼ばれてるわ」

「樹海化……?」

「そう。私がいた時代と同じなら人類を守るための最後の盾……でも……」

 

何で樹海化しているの……?この時代は結城さんが決死の覚悟で天の神との戦いを終わらせて、天の神が攻め混むことなんてないはず。……かといってシャドウバーテックスは…………

 

「千景」

「あっと……ごめんなさい。それで……」

「……前世でもこの光景を見たってことでいいんだよな」

「……ええ…………」

「それって…………バーテックスって奴と戦ってたとき……なのか?」

「っ!?知って……っ!」

「いや、名前と……シャドウバーテックスを命名するとき、結城の嬢ちゃんが真っ先にポロッて言ったもんだから……あいつらが勇者やってたときの敵だったぐらいの認識しかねぇ」

「……時々あなたが恐ろしく思えてくるわ…………」

「だが、あくまでそれだけだよ。…………まさかこんな大がかりなもんまで引っ張り出して相手してたなんて考えられっかよ」

 

そう言いながらここから見える景色を少し悲しそうに眺めていた白銀くんだったが……。

 

「……?」

「どうしたの?」

「いや……あそこだけ何か違うくねぇか?」

「…………?…………あ」

 

何かに気づいた白銀くんが指差した先……樹海化しても存在感のある姿のまま佇むその麓……そこだけなぜか周りの樹海でもなく現世にあるものでもない、別の何かがなんとなく見えて……

 

「…………いや……あれってまさか…………っ!千景、行くぞっ!」

「え?きゃっ……!」

 

少しそれを眺めていた白銀くんが何かに気付いたのか、突然変身して私を抱え……って!ま、まって!

 

「しっしし白銀くん!?」

「お小言は後で受ける!」

「いや……ちょっ…………」

 

私の言葉も聞かずその場所に向かって一直線に駆け抜けていく白銀くん。途中、根っこから根っこに飛び移った時、少しだけ痛そうに顔をしかめたけどそれに構うことなく移動を続ける。

………一体、どうしたのかしら。………ここまで慌てるというか、余裕がなくなって必死になる白銀くんも珍しい。いつもならこういうときでも私や……ほんの少しは自分のことを考えるはずなんだけども今はそんなことを気にする……気にしてる余裕すらもなくしてるみたい…………。

 

「……一体……どうしたのよ…………」

 

小さく呟いた私の言葉は近くにいるはずの白銀くんに届くことはなく……少しして件の場所に辿り着くとそこには

 

「…………これって……牡丹?」

 

何故かそこにだけ牡丹がまとまって咲き誇っていて、その中心には……昨日の夜、白銀くんが使っていたものと同じだがボロボロになった一対の巨斧が突き立てられていた。そして……

 

「……そうか……そういうことかよ…………」

「白銀くん……?」

「分かったんだよ……何で…………何で敵もいないのに樹海化したのか…………」

「え…………?」

 

私を抱えたまま膝から崩れ落ちるように踞る白銀くんからゆっくりと降りて項垂れる彼の顔を覗き混もうとした瞬間……

 

 

ーーーーーーーーーーその足元に透明な雫が落ちてきた。

 

 

「………」

 

白銀くんが泣いて……ってまさか…………

 

「…………ここかよ…………ここだったのかよ…………お前が…………お前が最後に戦ったってのは…………なぁーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーーーーーー銀…………」

 

 

 

**************

 

ーーーーーーーーーー三ノ輪 白銀の章

 

  ▽▼▽▼▽▼▽話は少し遡って昨晩の夢▼▽▼▽▼▽▼

 

『……そんなに危険な奴らが現れたのか…………須美たち、大丈夫かな』

『乃木の嬢ちゃんについては無事を確認してるけど……須美、現東郷の嬢ちゃんについてはわからん』

 

順序は逆になったが俺が考え付いた推測を話してから銀に現在の状況、新たな敵のことをかいつまんで説明する。……ねっからのヒーロー気質な銀は逆に『混ざりたい~!!』とか駄々をこねていたがな。

 

『にしても……だ。そもそも何で俺はこの力を持ってんだよ?他の奴は端末……っていうかシステム使って変身してんだろ?』

『いや~……それは私にもわかんなくって…………ただ』

『ただ?』

『…………お……お兄ちゃんのことを…………』

『あ、そういう……』

『べっ別にぃ!お兄ちゃんが私がいなくてもやってけるか不安だった訳じゃ!!』

『はいはい。そういうことにしときます』

 

苦笑いしながら銀の頭を撫でてなだめる。

……にしても、銀でも何で俺にこの痣……華紋(乃木の嬢ちゃん命名)がついたのか詳しくはわかんねぇか。こいつの反応からするに最後の最後で俺のことを願ったってのがトリガーなのは確かなんだが……これに繋がる線が見えないんだよな…………。しかも、俺が使っているような能力とかだって持ってないというかそんな“神樹のような”力持ってるわけないって断言されたし…………気になるのは“神樹のような”ってところだが……まぁ確かに時を止めるだの、物と物を……じゃない、物を操る能力なんざ神でもない限りあり得ないわな………………神でもない限り。それじゃ何で俺が使えるのかっていうな~……。

 

『ん~…………何やら謎が謎を作ってナゾノミルフィーユに……』

『…………なぁ、お兄ちゃん』

『ん……?』

 

そうして頭を悩ましていると神妙な顔になっている銀から声をかけられる。

 

『少し考えたんだけど……お兄ちゃんは今もだけどこからも戦うんだよな?』

『悲しいことにしばらくはそうだろうな。敵の親玉でさえわかってないし、目的もはっきりとしたのがわかってないからな』

『なら……さ、もしさっきのお兄ちゃんの推測が当たって神樹様が復活したらさ、行ってほしいところがあるんだ』

『……どこに?』

 

 

ーーーーーーーーーー『大橋……私が死んだところにさ』

 

 

      ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△

 

…………っていうことがあったんだ。これって予知夢なのか?」

「結果的には予知夢となったわね」

 

……軽く泣いた後(軽くだぞ?ホントに軽くだぞ?)千景に昨日の夜に見た夢の重要な部分だけを簡潔に説明しながら突き立てられていた巨斧を回収する……しようとしたらパリンという澄んだ音と共に光の粒子状に弾け、その光の粒子も驚いて固まっていた俺の手……厳密に言えば華紋の中に吸い込まれていき、周りに群生していた牡丹も同じように消えてしまった。そして、華紋を見てみると……

 

「なんか変わってるな……」

 

輪郭がはっきりして元々赤かったところが更に赤くなり……他の空白だった花弁も、少しだけ色がついたよーなついてないよーな……とにかくなんか変わって……

 

「……というか怪我が治ったっぽいんだが……?」

「えぇ……?」

 

何故か怪我も治った…………なして?

 

「…………まぁいいか」

 

そうして呟くと同時に再び視界が白い光が見え始め、あまりの眩しさに一度閉じて……目を開くと、すでに日が傾きつつある公園の神樹が祀られているであろう社の前に千景と立ちすくんでいた。

 

「…………なんか、怒濤のように過ぎていったな」

「…………そう、ね……。さっきの話を聞いた後だと妹さんがあなたに見せるためだけに神樹に願った結果にも見えなくはないけれど……」

「…………それこそ神のみぞ知る事だろうよ」

「……そうとも言えるわね………」

「にしても……だ、これで神樹が蘇ってるのは確定……でいいのか?」

「恐らく。でも、きっと形だけ……だと思うけど」

 

話ながら千景と並んでゆっくりと歩を進め始める。

……なんだろ……今回のことで色々と考え直さなきゃいけない気がするようになったな……俺のこともそうだが千景のことに関しても。どちらにせよ、今のところ言えることは俺も千景も“例外”であるということか。千景は何故か過去の……それも現、神世紀の前、西暦の記憶を持って、しかもその時代で……千景には悪いが……最悪の結末を迎えた人が転生しているという点。そして、俺に関しては……もう何から何までわからなさすぎるな。だって、他の勇者とは違って異様な力を持ってるし、加えて男だし、生身の体で変身してるし…………下手をすれば

 

「………………俺の出生からも疑った方がいいかも知れねぇな」

「……え?」

「いや、何でもねぇよ。わからんことが更に増えに増えてもう色々こんがらがってんの」

 

呟きに反応した千景に適当に返しながら公園を後にしようとして…………

 

「…………千景」

「……ええ」

 

公園のメインストリートの半ば辺りで立ち止まった俺たちの前にはどこから現れたのか、俺にとっては忌々しい大赦の格好をした奴が1人でこちらを待っていたかのように佇んでいた。だが……そいつは……そいつからは明らかに奴ら、シャドウバーテックスと同じ気配がしている。

 

「…………お初に御目にかかります、過去の」「「御託はいい」」

「……せっかちな方たちです……」

「きっしょく悪い声しやがって……目的はなんだ」

「貴様に用はない。私がご用があるのは貴方様ですよ?」

「……私に?」

 

…………俺の方をガッツリ睨んでるのに俺じゃなくて千景に?一体どういうことだ?

 

「ええ。かつて精霊“七人御先”をその身に宿した勇者様の末裔……奇しくもその勇者様と同じ名を持つ郡千景様?」

「!!」

「七人御先?それって……高知にいるっつう亡霊の集団のことだろ?」

「貴様には関係のないことだ……。さぁ、千景様……私と共に我が主の元「ごめんこうむるわ。あなたみたいな奴と共にいるなんて気持ち悪すぎる」……随分と即決ですね」

「おあいにく様……確かに私は先祖と同じ名前で更に勇者の力も得ている。だけど、私は私。先祖と同じにしないでくれるかしら」

「…………後悔しますよ?」

「ハイハイ、さいですかっと。つか……なぁ……そもそもの話、お前の用事があんのは俺じゃないのかよ?さっきから話は千景としてるが目線は俺ばっかじゃねぇか」

 

千景との会話に強引に割り込みそう言い放つと、そいつは顔をうつむかせ肩を震わせ始め……

 

「そうですよ…………そうです…………そうだよっ!!」

 

ぶつぶつと呟き始めたと思ったら、うつむいたまま声を張り上げ始めた。

 

「そうだよそうだよそうだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!俺が俺個人として用事があんのは貴様だよ!!三ノ輪白銀ァァァ~!!」

「お~お~そうかよそうかよ。それで?俺はお前みたいなやつ知らねぇんだけど?」

「くっくっく……だが、俺はお前を知っているぞ?知っているぞ?そしてぇぇ~貴様に受けた屈辱もなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

屈辱……ね。つまりは俺はこいつと過去に喧嘩かなにかをしてるってことか…………該当者が居すぎてわからん…………がこんな話し方する奴なんていなかったぞ?

 

「へっへっへっ!!“あのお方”は偉大だ!!こうやって……こうやって俺は『三年前』の仕返しが出来るんだからなぁ!!」

「『三年前』……?」

 

…………なるほど、な。そういうことか。

千景もそれに気づいたようで少し身を強張らせ……俺はそんな千景を庇うように半歩前に出る。

 

「お前……あのときにいたやつか」

「そうさ!貴様が……貴様さえいなければ!!」

 

その言葉を合図に辺りから続々と俺が初めて相対した獣人型のシャドウバーテックス……とは少し違う奴らが躍り出て俺達を逃がさないように取り囲む。

…………新型……じゃないな……見た目からして獣人型の発展型か?

 

「だが、今日で貴様は最後だ!!これで……これでっ!!」

 

そして、奴が右手を振り上げると夕日に当てられて大橋の一画が不自然にキラリと反射するのが見え

 

 

ーーーーーーーーーー「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

歓喜の雄叫びと共にその手が振り下ろし…………

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーひとつ。

 

 

 

 

 

…………きる直前に心の中でカウントを刻みながら俺は踏み出し、同時に手袋を外しながら一瞬で変身ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーふたつ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーしきると同時にここら辺一体の時を止めて隣の千景に印を残してから一気に奴に肉薄しーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーみっつ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー奴の顔面に拳を叩き込み、刻印も一緒に刻み込んでーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーよっつ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーおまけで大きく仰け反っている奴へ踵落としを叩き入れた後ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

     「残念だが…………終わりなのは、てめぇだよ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー指を弾いて時を動き出させるのと同時に千景と奴の場所を入れ換える。

 

「………………は?」

「っきゃ……」

「っと……千景、無事か?」

「え、ええ…………なんだか奇妙な感覚ね…………」

 

いきなり移動させられてバランスを崩した千景を支え、少し後ろに飛びすさるのと同時に

 

 

「…………………………え゙?」

 

 

ーーーーーーーーーー奴の右肩から腕が吹き飛び、

ーーーーーーーーーーそこから直線上にある地面すらも弾け飛んだ。

 

 

「…………………………っ!!!!!!」

「この威力……!」

 

……シャドウバーテックスにしちゃ強すぎだろ!?

咄嗟にさっき光が見えた大橋の方向を振り替えるも…………

 

「……いないかっ………」

 

スナイパーらしき人影はもとより、反射光すらも既に見えなくなっていた。

……人間らしい動きだ。スナイパーにとっての基本、射ったら射撃位置を特定されないために動くということをしっかり理解してやがる。

 

「つ!!!ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ぼ、ボクのうでがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっつ!!!!!」

 

ようやく現実に理解が追い付いたのであろう仮面野郎の声が公園に鳴り響くのを流しながら、一連の出来事を振り返る。

何せ……さっき撃ってきた奴はしっかりとスナイパー“らしい”行動をしてたって言うのに俺から見える範囲で銃を夕日で反射させるって言う、しっかりとしたスナイパーだったとしたら“らしくない”ミスをしている。それがさっきから気にかかってるんだよな。あそこで俺や千景を確実に殺るなら、あんな分かりやすいミスは普通しないだろう…………っクソ!こんなんだったらかつての勇者の特徴とかも踏まえとくべきだった!!

 

「くそっ!!くそくそぉぉぉっ!!貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「チッ!」

 

仮面野郎の一声と共に最初俺達を取り囲んでいたシャドウバーテックス達の内の半分が一斉に飛びかかり、直感的に千景を抱えて飛び退くと同時に飛びかからなかった奴らから伸びてきたであろう何本かの黒腕が地面を突き破ってくる。そして、その黒腕の塊を盾にして先程飛びかかってきた奴ら左右から一気にその腕を伸ばしてくるのを何とか躱している内に仮面野郎は懐から取り出した何かを地面へと叩きつけ、そこから発生した煙の中へと姿を眩ましてしまう。

 

「クソッ!近づこうにも……ッ!!」

 

コイツら最初の時よりかも連携攻撃がなってやがる……!!

そうして、俺が何とか攻撃を躱している内に煙も晴れていき……仮面野郎の姿はなくなり、赤黒い血溜まりのみが残されていた。

 

「逃げられたわね……」

「あ~あ……せっっかく有能な情報が入ると思ったんだがな…………」

「追えないの?」

「……無理だな。実はさっき殴った時もそうだったんだが、おかしな感触がしたんだよ……なんつうか膜みたいものがある感じが。んで時止めてお前と場所入れ換えたらすぐにマーキングが外れた。こうなるとお手上げだな」

「「「「「「「…………ケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラ…………」」」」」」」

 

すると、攻撃の手が止み……俺達の周り、正確には俺達を再び取り囲んだシャドウバーテックス達が君の悪い笑い声をあげ始めた。

 

「……コレデ」「おれおれのもくてっきは」「はたはたはたたされた」「後は後は後は」「ききき貴様らをををを」「はははははは排除排除排除排除排除ハイジョハイジョハイジョハイジョ」「するだけだけだけだけだけ」

「…………前よりかは話してる内容が分かりやすいな。戦闘能力だけじゃなくて知能も強くなってるか」

「…………これでましなのね……聞いてると頭が痛くなってくるのだけど…………」

 

千景と背中合わせになり、話しているとどこに潜んでたのかどんどん獣人型どもがその姿を表していき…………最終的には

 

「…………あらまぁ……」

 

その数はパッとみただけで大体30から40体程の集団となった。

 

「「「「「「「きききき教祖様さましましまさまさまそまにきにににに」」」」」」」

「「「「「「「あだなすあだなすあだなす」」」」」」」「「「「「「「もこものもののものものには」」」」」」」

「「「「「「「しゅしゅししししゅくしゅくしゅく熟成をををを」」」」」」」

「「「「「「「あたあたあたたあたあたたたたあたえん」」」」」」」

「教祖様…………ねぇ。お前さんらの親玉とやらはその教祖様って奴か?」

「「「「「「「ききき貴様におおしえすすすすすることはないいいいいいい」」」」」」」

 

駄目元で聞いてみたけどやっぱりだめか。こんな奴らからも慕われてるほどの奴なのか、それともコイツらには機械みたいにこの言葉がインストールされてるだけなのか。…………まぁ知能が上がってるっていってもそこまでな感じだし十中八九後者かそれに準ずるものだろうけど。

そんなことよりも現状をどうにかしないとな。それには…………。

 

「……千景、いいんだな?」

「…………答えは言わなくてもわかるでしょう?」

「……ま……な」

 

ホントはあまり巻き込みたくないんだが……なにせ、過去にこの力で千景は…………いや、この考えはよそう。俺自身が言ったじゃないか、『記憶にある昔の勇者の《郡千景》じゃなく、今、ここで生きている俺と腐れ縁の普通の学生の《郡千景》だ』って。なら、俺が言えることは……

 

「千景」

「…………ええ」

「頼りにしてる」

「……っ!任されて!」

 

いつもよりも気合いが入った返事をしながら袋から大葉刈を取り出し構え、余った左手で端末を操作し……

 

「……変身!」

 

短い掛け声の後、千景の前進が一瞬だけ赤い光と花弁に包まれ……それが晴れると先日見た姿よりも少しだけ色が濃くなった勇者装束を見にまとった千景へと変わる。そして、俺も両手に巨斧を取り出し構える。するとシャドウバーテックス達も気色悪い声を上げるのをやめ、静かに殺気を纏い始める。そして……

 

 

ーーーーーーーーーーーー唐突に世界は時を止める。

 

 

「!?」

「……やっぱりか」

 

前よりもしっくり能力を扱えるし、今までみたいな疲れる感じも少ない。…………あんまり無茶はできねぇけどもこれなら!!

 

「千景っ!!」

「白銀くん!?この力って……」

「それについては無茶しなきゃ大丈夫になったっぽい!!それより飛ぶぞ!!」

 

少し慌てている千景の腰を抱えながら飛び上がり、奴等の包囲を抜け出す。そして、着地するないなや勢いよく振り向きながら双巨斧を思い切り投擲、それに合わせて少しだけ不満げな千景も飛び出した瞬間に時間停止を解除する。

 

「!!」

 

俺と千景が突然消えたことに驚く間もなく何体かが上半身と下半身がおさらばして塵となって消え、シャドウバーテックス達の動きが固まっている隙をついて千景が切り込む。そして俺は投擲した斧が交わった瞬間に片方の斧と俺の体を入れ換え、残りの斧で近くの奴等を斬り倒す。

 

「……一瞬で半数近く削れたな」

「あまりその力を過信しない方が……」

「戦闘中だろ、説教は後で!それに前に比べたら体への負担も少ねぇから何とかなるってのっと!!」

 

俺と位置を変えた斧を操りながら千景と共に残りのやつにも攻撃を与えてい始めたその時再び大橋の方から今度は黒い影が3つこちらへと向かってくるのが見えた。

 

「っち!」

 

舌打ちしながら近くにいた一体を蹴り飛ばしながらその反動を利用しつつ一旦距離を空けたまさにその時俺が戦っていた場所に影は突っ込み壮大に地面を抉る。そして、それによって生まれた土煙が晴れるとそこにいたのは、

 

『ギャラァァァァァァァッ!!』

「コイッツ……昨日の!!」

 

昨晩俺を苦しめた三体の内の一体にして一番厄介とも言える奴、虫人型シャドウバーテックスの蟷螂型だった。ソイツは俺の姿を見るやいなや直ぐ様その両手の大鎌を振るいあげながら俺に突進してくる。咄嗟に投げていた斧を手に戻しそれを受け止めるが流石受け止めきれず、地面を抉りながら押し負けてしまう。

 

「白銀くんっ!?」

「そっち任せたっ!!」

 

受け止めていた斧を斜めにし奴の勢いを殺さず後ろに反らして何とか切り抜ける。奴はそのまま俺の背後にあった木々を何本か折り倒したが、その途中で三体の小型の虫に別れ今度は角を生やした蟷螂よりも重圧感のある……甲虫のような、まんま虫の姿となり、改めてダンプカーのように突進をかけてくる。嫌な予感がし脇へと飛び避けると奴が俺のいたところに突っ込んだ瞬間にさっき空から突っ込んで来た時以上に地面が抉れる……というか陥没する。

…………あんなん喰らったらペシャンコじゃねえか。

そんなことを思っていると今度は背中の本物の甲虫なら羽がしまわれているはずが開き、そこから

 

「ミサイルぅ!?」

 

さながら嵐のように無数のミサイルのようなものが一斉に放たれる。

 

「ちょちょちょちょ!!そんなんアリかよっ!!」

 

愚痴りつつ一瞬だけ時止めを使い何とか全てを躱しきるものの、その爆煙を振り払いながら三度突撃してきた虫人型を躱しきることができず、そのまま林から道を挟んで反対側にある池まで吹き飛ばされ壮大に水飛沫をあげながら倒れこんでしまう。

 

「っぐぅ……!!」

 

俺があまりの衝撃でむせかえっている隙に蜂の姿へと変わった虫人型が更に追撃を仕掛けてくる…………が!

 

「残……念……っ!」

『ギイイッ!?』

 

俺が指を振るうと突如として虫人型の羽が何かに根本から断ち切られ、その何かが倒れこむ俺の両側に突き刺さる。

…………まぁ何かというか俺が吹き飛ばされる直前に空に向かって放り投げ、上手くアイツと俺が並ぶタイミングを待ってコッチへ勢い良く引き寄せただけの双巨斧なんだけど。

ともかく羽を失い墜落してくる虫人型を飛び起きながら蹴りあげてから池に蹴り落とす。だが、虫人型も池に落ちる瞬間に分裂し再び甲虫の姿へと変わりこちらへとミサイルを放とうと背中を開く……のを俺は待ってた!!

 

「貰いっ!!」

 

俺が腕を振るった瞬間、虫人型が中程から二分される。

簡単なことだ。甲虫ってのは確かに外の殻は物凄く硬い、だが……

 

「中は鳥ちゃんずの餌になるほど柔らかいってね。いやはや、姿通り甲虫と同じなようでよかったよかった」

 

夏場になると時折見かける甲虫の頭だけの死骸、アレって鳥達が外殻ばっかな頭を食べずに身の……腹の部分のみを食べた結果、それだけ身は柔らかいってことだ。かつて確かにどっかの国じゃクワガタだけど食物にしてるって話があったな。……少しだけ味が気になるが。

そうこうしているうちに、真っ二つにされた虫人型の真ん中の奴が塵となって消え残る2体が急いで逃げようとする……ってかまたこの構図かい!!

 

「逃げられないっての!!」

 

左手の平を逃げる奴らに向けその動きを止め、こちらへと引き込みある程度の位置に来たところで飛び上がり、その脳天に拳を振り下ろし貫通させる。

 

『ギ……』

 

地面へと落ち塵となっていく2体を一瞥する。

……あっけないほど簡単に倒せたな、昨日はあんだけ苦戦したってのに。

 

「…………体に馴染むとこんなに違うのか」

 

昨日今日で特に違いがあるとするなら戦い始めたときから感じていたしっくりした感覚だけだ。それがどーした、とか言われそうだが今日は今までよりも体が動かしやすかった……ただそれだけでこうも戦いやすくなるなんて…………。

 

「……不思議なもんだ」

 

…………さて、と……千景の方はどうだろうか。

そう思って立ち上がった瞬間、背後を何かが吹き飛んでいき池の回りに建てられた石垣に突っ込む。

 

「あら……そっちは終わったのね」

「まぁな。やっぱり力がしっくり来てるとやり易いな、今日はいやにあっけなく倒せたよ…………ま、昨日の変な顔面野郎もいなかったからかもしれんが」

 

そのあとすぐに、千景が飛んできて俺の横に並ぶ。どうやらあっちも片付いたようだ。

 

「後は……あいつだけか?」

「ええ。そこの奴が最後、それを刈れば終わりよ」

 

そう話していてふと小さな右頬に傷があることに気づき何も言わず軽く拭ってやると、少しびくり……と肩を震わせるが俺が何をしたかに気づき少しだけ呆れたような顔を浮かべる。

 

「……これくらいなら」

「…………お前なぁ…アイツもそうだったけど、女子ってのは顔がそれなりに大事じゃないのか?」

「私はあまり」

「はぁ~あ…………ったく、綺麗なんだからもっとちゃんとしろっての」

「ええ、ええ、そうさせてもら…………あっ!?」

「うし、さっさとアイツをやって結城の嬢ちゃんやらと合流するか」

 

微妙な空気になるのを感じつつ、上手く動けず体を震わせながら何とか立ち上がろうとしているシャドウバーテックスの元へ斧を構えながらゆったりと近づいていく。

……別に鈍感てわけじゃない。俺だって気恥ずかしいこと言ったことぐらい分かってるんだ、分かってるからあえてこうしてるんだ……!…………って、俺は一体何に弁明してんだよ…………。

 

「さて……それじゃいっちおう、お前にも自我があるんだし聞いといてやる。何か知ってることあったら」「はなす…………こどなどない…………っ!!!」「……そうか」

 

心は落ち着けて無駄なのは前提で質問し、予想通りの言葉に溜め息をつきながら右手の斧を高々と振り上げ…………

 

「………………もしまた生まれ変わったんなら、もっとましなモノになってましな生き方しろ」

 

何者かはわからないが……あの胡散臭い大赦仮面野郎に生け贄にされ、知性を失わされた人形となってしまった元の奴にせめてもの労いを込めた言葉を呟いた後、俺は斧を奴の脳天に向かって振り下ろしたーーーーーーーーーーーー

 

**************

 

それから…………何というか最後の最後に俺が言った言葉で顔を真っ赤にしてフリーズしてしまった千景を何とか再起動させ、二人で建物の屋上を軽く流しながら移動中……俺は今までのことを少し思い返していた。

 

「………亡霊……怨念……そして……“あのお方”………か」

 

…………おそらくあの野郎が“あのお方”と呼んでいた黒幕か、またはそれに近い人物……そいつが千景をこの時代に転生させた可能性があって、その狙いは“七人御先”の力……だろう。んで、そもそも七人御先っていうのは妖怪というよりかは亡霊の集団のことを示しているんだが……ここで奴ら、シャドウバーテックスとの……俺の中の見解ではあるが……共通点が現れる。そいつはなにかっていうと…………

 

ーーーーーーーーーーーーどちらも“死人”が関わるということ。

 

七人御先はおおざっぱながらもさっきから言っている通り。そして、奴らシャドウバーテックスも故意か偶然かは知らねぇが……死んだ奴の怨念やら執念やら過去の執着を糧に産み出されている。何故確信が持てるかと言うと今回の大赦仮面野郎が言っていた台詞と最初、俺が相対したシャドウバーテックスらの台詞……それが大きく関わっている。なにせ……

 

大赦仮面野郎はーーーーーーーー

 

『こうやって……こうやって俺は『三年前』の仕返しが出来るんだからなぁ!!』

 

そして、最初のシャドウバーテックスはーーーーーーーー

 

『またまたまたまたままたまたまたまたまままままままじゃまみじゃまじゃま!!!!!』

……要約すると『また邪魔をして』

 

つまりは俺は奴ら……正確にはあのシャドウバーテックスの元の奴、そしてあの大赦仮面野郎とは何かしらの面識がある、または一方的ではあるが奴らが覚えていた……ということになる。そりゃまあ、俺は何人もの奴らに喧嘩を売ってるから確証はない。だが、あの野郎が千景を採り入れるために行動したのなら……そしてあの野郎の言動から予測した動きやすい範囲となれば……今のところ一番大きな可能性は

 

 

ーーーーーーーーーーーーアイツや俺が今までの倒して来たシャドウバーテックスは……

 

 

 

 

    俺が不名誉な二つ名で呼ばれることになった

『三年前』の忌々しいあの事件が大きく関わってやがる

 

 

 

 

                  第捌話  終




以上、ゆゆゆ最新話でした!

次回投稿作品はストライクウィッチーズとなります。結構早く投稿できると思うので少しお待ちください。(仕事が忙しくなければ)
他作品につきましても鋭意制作中です。咲もリメイク進行中ですし、さらに………いや、投稿するかは現状わからないですが………。(こうご期待?)


さてさて、今回はやります。敵さん紹介!今回はこちら!

 植物人型
(バーテックスモデル:ポケモンより、モジャンボ)
全身が蔦でおおわれたシャドウバーテックス。移動速度は遅いが伸縮性があり、さまざまな形に変わることができる蔦で翻弄する。獣人型の伸縮性を最大限に引き上げた敵。

ちなみに補足ですがこの敵、モジャンボかゴジラのビオランテ(第一形態)かバイオのイビーかで結構悩みました。それで何故、モジャンボを元にしたかと言うと……蔦のぐちゃぐちゃ具合とあのずんぐり感で決めました。
ちなみに……ビオランテ、イビーをモデルとした敵も出る予定ですって言うか敵キャラもかなり出る事になるのでお楽しみに。

ではでは……誤字脱字、ご意見、ご感想等々遠慮せずよろしくお願いします!
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