新年度となり我が職場にも新人たちがやって来て色々と教えたのはいいものの、教えた内容をわかっているのかわかっていないのかさっぱりわからない行動をする後輩に手を焼いている璃空埜です。
まっさかリアルで「あー!もー!やってらんないんだぜー!!」なんて叫ぶことになろうとわ……。
ーーーーーーーーーー結城 友奈の章
「さてと……それじゃ今、それぞれが持っている情報を整理しようか」
左腕に痛々しい包帯を巻いた白銀さんが仕切……。
「……つーわけで、乃木の嬢ちゃん後の進行頼んだ」
るわけじゃなかった。
「へ?セツさんが仕切るんじゃないの?」
「おあいにくさま、俺は皆を率いるようなタチじゃなくてな」
「便乗するなら私もそうね」
「ええ……。そ、それじゃあ……まずは黒髪の人のことを教えて貰いたいな~って……」
園ちゃんと同じ様に私も白銀さんと一緒にやって来た綺麗な黒髪の女の人の方をみる。
……とっても綺麗な人だけど………もしかして、白銀さんの彼女さん?
そう考えた途端、少し胸がズキリと痛む。
「……高知出身、今度から讃州高校に通うことになる郡千景。よろしく」
「へ~、ということは先輩になるんですね~。私は乃木園子って言います~。よろしくお願いします、ちーちゃん先輩~」
「えと、私は結城友奈って言います!友奈って呼んで下さい!」
「よろしくね。乃木さんにゆうk……友奈さん。私のことは千景でいいし敬語はいらないわ。ちーちゃんって言うのは子供っぽいからやめてほしいけど」
「そんな緊張しなくていいんだゼ、ちーちゃん先輩♪」
「………………(無言、無表情で包帯を巻いた腕を思いっきりビンタ)」
「いってぇ!?なにしやがんだ!!」
「貴方がバカなこと言うからよ」
「えーと……話し合う前に2人に聞きたいことが……」
「?」
「あん?」
「2人って、付き合ってるの?」
「あ、それ私も気になる~!」
園ちゃんはどこからかメモ帳を取り出して目を煌めかせる。それにつられて私もちょっと身を乗り出す。
「んにゃ?付き合ってねぇぞ?」
「そうね。交際はしていないわ」
「ま、中学からの付き合いだが、よく一緒につるんで行動してるかんな~。そう思うのも無理ないわ」
「ありゃ~残念~」
「そうなんだ……」
ちょっとホッとする。う~ん……どうして白銀さんのこととなるとこんなにもやもやするんだろ……。
「そうだ……なぁ、郡。今日はこのまま乃木の嬢ちゃん家に泊まればいいんじゃないか?」
「何言っているの?罰ゲームで決めたんだから今さら変更は効かないわよ」
「さいですか……。家に泊まんのは確定ですか……。…………ああ、絶対面倒なことになる…………」
………………ホントに付き合ってないんだよね?
そんなことを考えていると、園ちゃんがパンと手を叩いて皆を静める。
「さてと……それじゃ、早速皆で情報交換しよう~」
「へいへい……。んじゃ、まずはこのネット記事を見てほしい」
白銀さんが差し出した携帯に表示されていた記事の見出しは……
『無惨!怪奇!一夜の惨劇!!土地神を祀った神社が破壊される!!!』
と言うものだった。そして……
「うわ……」
「…………酷い有り様ね」
とにかく酷く荒らされた神社が写った写真が大きく掲載されていた。
「今起きている騒動……今んとこ、この神社が破壊されてんのが始まり……と考えてるんだが……」
「それについてなんだけどね。私も今日、色々な情報を探ってみたんだ~。それで近い時期にその記事の場所を含めて3、4箇所で似たような破壊工作がされていたんよ」
「と、土地神様を祀ったところがそんなにも……!?」
「うん。しかも同時期に大赦の役員の1人を殺されていてね……。その殺され方もとにかく酷かったらしいよ……」
「大赦の役員の話なんて関係なくないか?」
「…………まさか、この破壊工作の秘密を知ってしまったとか?」
「私もぐんぐんの推測に至って、被害にあった人の交友関係とかを調べてみたらね…。その人の親友でしかも同期の役員の1人が突然失踪してたのがわかったの」
「乃木さん、ぐんぐんもやめてほしいわ……」
「…………その失踪した奴があの影を操ってるってことなのか?」
「う~ん……そこまではわからないけど、何かしらに深く関わっているとは考えてるかな~」
「えと……それより白銀さんが言っている“あの影”って?」
「ああ。昨日は大橋前の広場で、今日はイネスから俺ん家までの帰り道で戦った……敵と言っていい奴らだな」
「今日も襲撃にあったの!?」
「…………2日連続だったのね…」
「……お陰で寝不足だぁよ…………」
そう言って眠たそうに欠伸をする白銀さん。
でも、私の知らないところでそんなことが起こっているなんて……。それに…………。
「敵のことはあとで話すとしてだ……。失踪した奴なら俺達の身近なところでもいるだろ?」
「うん。わっしー……それと私とゆーゆ以外の勇者部部員との連絡がとれないの……」
「……相変わらず変な部の名前だな」
「勇者部…………というのは?」
「勇者部って言うのはね、皆が困っていることを率先して助ける部活「ま、ぶっちゃけただのボランティア部だな」……あー!白銀さん途中で口を挟まないでよ!!」
「長く説明する必要は今はないだろう?……さて、東郷の嬢ちゃんを含んだ他の奴の名前を教えてくれないか?」
「へ?う、うん。それじゃあ、まずセツさん達と同い年の犬吠埼風先輩。そして、風先輩の妹さんの樹ちゃん。最後に三好夏凛ちゃんって言うんだけど……」
「ふむふむ……さて、郡。それに乃木の嬢ちゃんもかな?…………今言った中に過去の勇者の中に名字、名前が同じやつはいるか?」
へ?どういうこと??
園ちゃんも不思議そうに首を傾げていたけど、千景さんは驚いたような顔になる。
「まさか……」
「郡は気づいたみたいだな」
「え?え?」
「あれれ~……?もしかして~?」
あれ?もしかしてわかってないの私だけ!?
「落ち着け、結城の嬢ちゃん。別段今、真相に迫ろうって訳じゃねぇんだ。まだ全部のピースが揃っていないけど、今あるピースを揃えてみようっつう段階だから焦らなくていい。ま、俺が気づいたことも憶測でしかないんだけどな」
「でも今のところ、貴方が気づいたことは重要なことだと思うわ。……友奈さん。実はね……私も昔の勇者の末裔なの」
「ええ!?」
わ~!園ちゃんのほかにも旧暦の勇者の末裔さんが……あれ?
「…………もしかして旧暦の勇者が関係してる?」
「そのまさか……だ。つか、ここ最近までいた勇者達ってお前らのことだったのか」
「あ……。えへへ、まぁそんなところ」
「ここまで来たら隠すつもりはないよ~。といっても今、力はないけどね~」
「ま、詳しいことはあとで聞くとして…………。んで、俺が気づいたことってのはな俺はイレギュラーだとして、郡もどちらかと言えばイレギュラーな方なんだが……おめぇら……乃木はかつての勇者の末裔、そして、結城はかつての……しかも大きな功績を残したであろう勇者の名前を受け継いでいる……と、いう風に何かしら昔の勇者と繋がりがあるだろ?それじゃ、消えた奴らはどうだ?東郷しかり、犬吠埼姉妹しかり、三好しかり……かつての勇者との関わりが小さい奴らばかり……つまりは奴らは意図的に行方をくらましたんじゃない…………。恐らくだがピンポイントで狙われた……そして、今は操られてるって言うところまでが俺の推測。そして」
「それを指示した首謀者はさっき話していた失踪した人ってこと?」
「いや、今俺らを狙ってんのはそいつの可能性があるが、首謀者は違うだろうな……。恐らくもっと大きな奴が背後にいるんだろうって言うのが俺の考えだ」
私は思わず拳を握りしめる。
天の神様を退けたばっかなのに、新しい敵が……きっと天の神様とは別の何かが現れるなんて…………。
「んで、今後なんだが……」
《~♪~♪♪》
そうして、白銀さんが話を続けようとしたとき、突然部屋の中に軽快な音楽が鳴り響いた。
「っと……わりぃ。俺だ」
「珍しい曲だね~」
「ん?ああ、これか。ネットで偶然見つけた曲でな、何でも西暦時代の数ある名曲の1つらしくてな。タイトルは……確か『マリオネット・イン・ザ・ミラー』つったはず。今度データ送ってやろうか?」
「うん。ちょっと気になるから送ってほしいんよ~」
「了~解」と軽~く了承しながら携帯のディスプレイに目を落とした白銀さんは、「げ」と小さく唸った後
「わりぃ……ちょっと席外すわ」
と言って、携帯を片手に一旦部屋の外に出ていった。
あの反応から察するにきっと白銀さんのお母さんからだろうな~。前も電話中に……
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
《……つうことがあって…っとちょいまち。お袋?どうした?》
《いや、ご飯ができたから伝えに来たんだけど……彼女さん?》
『ふぇっ!?』
《はぁ?んなわけあるか。少し前にあったゆうじ……オイコラ!》
《あらあらまあまあ~!かわいい子!あんたこんな子どこで捕まえたの~?》
《あー!!るっせぇ!!わりぃ、結城の嬢ちゃんまた明日な!》
『あ……うん』
《え~もう少しお母さん……》
《お袋は黙ってろ!!》
▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△
なんてことがあったな~。白銀さん、お母さんのテンションがちょっと苦手みたいだけど、仲良さそうにしてたのが印象に残ってるんだよね。
「それじゃ、今日は解散ってことでいいかしら?」
「あ、うん。ただその前に~」
そんなことを思い出していると千景先輩がそう切り出してきた。
「その前に?」
「連絡先教えてほしいんよ~」
「あ、私もお願いします!!」
「……いいわ。…そうだ……乃木さん、少し聞きたいことがあるのだけれどもいいかしら?」
「?いいけど……」
「これを……このシステムを使えるようにしたいのだけれども……」
ちょっと驚いたような千景先輩だったけれど少し嬉しそうに連絡先を教えてくれようとしたとき、少し思い出したように少し古めかしい端末を園ちゃんに差し出した。
「これって……」
「私の家の蔵の奥底にあったものだけど……何故かついさっきの戦闘では使えたのだけれど、ここへ来る途中で効果が切れてしまったの」
「過去の勇者システムが使えたの!?」
「ええ。……どうかしら?なるべく早めに使えるようにならないかしら?」
「う~ん……。大赦の、それも信頼のおける人達に頼んでみるけど…でも、どうして?」
「それは……」
少し恥ずかしそうに言いよどむ千景先輩。すると、一瞬キラリと目を光らせた園ちゃんが
「ゆーゆ!急いで白銀さんの行動を阻止!!」
「へ!?」
「GO!!」
「う、うん……」
私に向かって鼻息荒くまきたてて来て、私も部屋から追い出されてしまった。
う~ん、私もそのお話聞きたかったけれど……私、口が軽いってよく言われるんだよね…………。もしかしたら、園ちゃんもそれを考えてたのかも。
とそんなことを思っていると
「あん?何で廊下に出ているんだよ、結城の嬢ちゃん」
「ふぇあ!?」
「っ!!びっくりしたなぁ…。とにかく戻ろうぜ」
私が白銀さんに後ろから声をかけられてびっくりした隙に、部屋の扉へ手を伸ばす白銀さん。
「!待って待って!!」
「うおっ!?今度は何だよ…」
「え、ええっと~……そ、そう!今、古い勇者システム使った影響がないか千景先輩を見てて……」
「何!?千景に何か異常が……」
「ち、違う違う!念のためだよ念のためっ!!」
「お、おう……わかった」
流石の私の剣幕にたじろぐ白銀さん。
嘘をついたのはとても心苦しいけど、千景先輩のためにも仕方ないよね……。
「それなら少し話そうぜ?前に話したゲームの話、聞きたいだろ?」
「あ、うん!」
……でも、これは役得かも?
そうして、園ちゃんと千景先輩の話が終わる少しの間だったけれど、私は白銀さんのゲームの話を聞いていた。
**************
ーーーーーーーーーー郡 千景の章
乃木さんの豪邸である程度話をしたところで、三ノ輪くんのお母さんから「夕飯できた」という内容の電話を皮切りに一旦解散となり、私と三ノ輪くんは乃木さんの用意した車で三ノ輪家まで送ってもらった。友奈さんはそのまま、乃木さんの豪邸に泊まるらしい。
「さて……問題はここからだ…………」
そうして、私達は三ノ輪家の玄関前にいるのだけれど、そこで三ノ輪くんは頭を悩ましていた。
送迎の車に乗る頃から「どうすっか……」と悩み始めていたけれどここに来るまでに悩みは解消できなかったみたいだけど……
「……ええい!なるようになりやがれ!」
そうして、ちょっとやけくそぎみに玄関を開く三ノ輪くん。
「ただいま!」
「あら、お帰りなさい白銀。お友達はちゃんと連れてきt……」
そうして中に声をかけると彼のお母さんとおぼしき女の人が現れて、私をみて固まり手に持っていたタオルを落としてしまった。
「……どうも、始めまして郡千景です。今日はお世話になりm」
「あら……あらあらあらあらまあまあまあまあまあ!!」
私の自己紹介が終わらないうちに、三ノ輪くんのお母さんは顔中をキラキラさせながら詰め寄ってきて手を取り、私は面食らってしまう。
「ふぇっ!?」
「お友達が泊まりに来るとは聞いていたけど女の子、それもこ~んな綺麗な子なんて!しかも今郡って言ったわよね?白銀が高知に行っていた時よく聞いたわ~。『見捨てておけない奴なんだよな』って言っていたからとっっっっても気になっていたのよ~!!いや~白銀も隅に置けないわね~、こんな綺麗なお嬢さん捕まえるなんて!そうだ、お父さんにも伝えなきゃ!!あなた~!!白銀がとっっっっても綺麗な彼女さん連れてきたわよ~!!!」
「ちょ!?おい!郡は彼女じゃねぇって!!おい!?聞いてんのか!!ああっと……とにかく郡!上がってくれ!!俺はちょっとお袋止めてくるわ!!」
呆気にとられている私を他所にスキップしながら奥に向かっていったおばさんを追いかけるように三ノ輪くんも家に入る。
私は呆気にとられながらも、ともかく一旦あがらせてもらうことにした……。
**************
「はっはっは!ついに我が息子にも春がきたか!」
「だっから、郡は彼女じゃねぇって言ってんだろが……」
玄関から始まった彼女騒動も一旦落ち着き、私とみ……白銀くん(『三ノ輪くん』って呼んだら、『家の中じゃごちゃごちゃするだろうから白銀でいい』とのこと。因みにそしたらおばさんが『それだったら白銀も名前で呼べばいいじゃない♪』と言われ、白銀くんも私の事を名前で呼んでくれるようになった)の家族の自己紹介も一通り済ませ、おばさんが作ってくれた夕食をいただくことになった。なんだけど……
「……凄い量…」
「……流石に作りすぎじゃねえか……?」
まるで中華料理店の満韓全席さながらにずらずらっと並べられたテーブルを覆い尽くす料理の多さにたじろぐ。
「いや~。白銀が友達を連れてきてくれるって聞いたら張り切っちゃってね~」
「おいらにゃこれくれ~が丁度いいけどな!」
「ファミレスの料理、オールコンプリートしようとしていたようなブラックホール胃袋しているてめぇと一緒にすんな」
「わ~!おりょうり、いっぱい~!」
次男の鉄男くんの言葉に溜め息を着きながらも箸をすすめる白銀くん。その膝の上では末っ子の金太郎くんが楽しそうに鎮座していた。
「ん。ま、味がいいから文句はねぇがな」
「ふふん♪確かに時折白銀に家事を任せることが多くなってきたとしてもまだ負ける気はないわよ?」
「へいへい、さいですか。……にしても千景、あんまり箸が進んでねぇみたいだけど口に合わなかったか?」
「い、いえ……ちょっと料理の量に驚いてしまって」
「…………ま、この量じゃな~。かといって無理して食うなよ?残ったとしても、あそこのブラックホールがすべてを呑み込んでくれるから」
「ふぁ?」
「…………ハムスター?」
「違うな、あれは鋼鉄暗獣スチールバキューモンだ」
そうして賑やかに食卓を囲む。高知の実家にいた頃は親が共働きで基本1人だったから何だか新鮮に感じるし、とても暖かく感じる。…………これが本当の家族ってものなのかな?
そんなことを考えていると隣で金太郎くんが白銀くんにいろいろ頼んでいた。
「に~ちゃ!きゃんあれたべる!」
「あいよ。熱いから気ぃつけろ~」
「あい!…………ちゃあ!?」
「あ~熱いって言ったろうに……」
「いや……今のはしっかり冷ましてあげなかった白銀くんが悪いと思うけど」
「む……。一応少しは冷ましたはずだけだが…………」
「…………はぁ。少し待ってね」
金太郎くんが欲しがっていたおかずを取り、今度はしっかり冷ましてあげる。
「はい、どうぞ」
「あむ……。おいちい!ね~ねありがと!!」
「…………何か負けたような気分だ」
「なに言ってるの?貴方は色々私に負けてばかりの人生でしょう?」
「それはゲームに限っての話だろ?他の事なら負けてねぇだろうが!」
「果たしてそうかしら?例えばテストとか」
「あ!?それお前、中学最後のテストで勝っただけだろが!それ以外は基本的にどっこいどっこいだったろう!」
「最後で勝てば、それが勝利よ」
「言ったな~!高校最後のテストで負けても言い訳は聞かねぇぞ!」
「あらあら~。仲睦まじいわね~♪」
「もう彼女を通り越して夫婦だな!」
「「あ……」」
ついいつものように何の事でもないことを競いあうやり取りをしてしまい、おばさんとおじさんからからかわれて白銀くんが少し頬を赤くしてしまう。……多分私もだろうけど。
「…………だから彼女でも妻でもないっての……」
「おぉ珍し~。兄貴が照れるなんてな~。……なら、これをネタにして…」
「よぉ~し、鉄。この後また乱戦闘やろうか……。そうだ、千景もやるか?」
「面白そうね」
「え゙!?いやいやおいらは……」
「「逃がすと思うか(しら)?」」
「ハメ技……メテオ……うっ頭が……」と魚が死んだような目になった鉄男くんは放置して、その後も中学での話をしたり遊んだ時の事を話したりしながら食事を進めていった。
「にしても、本当に意外だな。白銀が友達を…それも女の子を連れてくるなんて」
「そんなに……意外なんですか?」
「そんなこと、別にいいだろが。友達がいなかった訳じゃねぇしただ都合が悪かっただけだ」
少しニヤニヤし始めるおじさんに対しばつが悪そうに返す白銀くん。
……やっぱり家族といると落ち着くのだろう学校にいるときよりも白銀くんの表情はとても柔らかく感じる。
「……?なんだよ、こっちをジロジロ見やがって」
「ふふっ……。何でもないわ」
「あ!やっとわらった~!」
「え……?」
「ね~ね、ずうっとむつかしぃかおしてたけど、やっとわらった~!!」
そう言われてみると確かに白銀くん家にお邪魔してから今まで笑う事はなかった様な気がする。
そんな私を見て、おばさんは優しく微笑みながら語りかけてくれた。
「千景ちゃん……そんなに肩肘張らなくていいのよ。確かにここは貴女のお家ではないし、私達は貴女との繋がりはとても少ないわ。……でもね、私達家族は貴女を心から歓迎するわ、新しい家族としてね♪」
「ちょい待ち!?お袋何言っちゃってんの!?」
「だから……貴女も私達を第2の家族と見てもいいのよ?」
「ストップ!ストォォォォップ!!」
いい言葉なんだけど節々に何か含んでるような言い方だった。それに気が付いたらしい白銀くんが大慌てで止めていたけど、終始おばさんは優しく微笑んでいたけど。
でも……その言葉に私は甘えていいんだろうか?だって私は……。
「…………出会った時にも言ったろうが」
悩んでいる私の頭にポンと白銀くんであろう手が置かれる。
「お前が何者か……そんなの気にすんな。お前はお前だ……」
「それ以外の何者でもない……でしょう?」
「……台詞とんなや」
明後日の方を向きつつ、ぶっきらぼうながらもいつもの言葉を投げ掛けてくれる白銀くんの言葉を先取りすると彼はちょっと拗ねてしまったようだった。
でも、その言葉に心の重りが溶けたような気がした。
「……ありがとう、白銀くん。それにおばさんも」
「いえいえ~。でも結局心を動かしたのはかれ……」
「だぁ~から、付き合ってるわけじゃねぇって!!」
**************
食事を終えて片付けを手伝おうとしたら「お客さんはゆっくりしててくれていいわよ~」とおばさんに断られてしまい、結局白銀くんと一緒に鉄男くんをゲームで叩きのめしていたらお風呂が沸いたと言うことで白銀くんは金太郎くんを連れてお風呂に向かってしまい、少し手持ちぶさたになっているとおばさんが声をかけてきた。
「ねぇねぇ千景ちゃん。ちょぉっといいかしら?」
「?何かしら、おばさん?」
おばさんがくれたお茶に口をつけながら、何だろう?と考えていると、
「ぶっちゃけ、白銀のことどう思っているのかしら?」
「っく!?けほっ!けほっ!」
「あら、大丈夫かしら?」
突然の直球の質問に思わず飲んでいたお茶が気管支に入ってしまいむせる。
「だ、大丈夫……」
「そう?それで……どうかしら?」
端から見てもワクワクした表情のおばさんの追求は続く。
「ど……どうって言っても……」
「因みに家の白銀は女顔だけどいい顔だし、ぶっきらぼうだけどとても優しいし、不良だけど家庭的だしかなりの優良物件だと思うけど……」
ーーーーーーーーーー
「えっくしっ!!」
「?に~ちゃ、かぜ~?」
「違えよ。ったく、誰かが俺のこと話してるな……」
ーーーーーーーーーー
「確かに……そうですね」
「でしょ……なら」
「確かに白銀くんは私に優しくしてくれる。でも、それは……私には身に余ることだと思う」
「あらあら。……白銀が言った通りね~」
「?白銀くんが??」
「ええ。実はね昔こんな話をしたことがあったの……」
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
《なぁ、お袋。ちょっと相談があんだけど》
『あら、珍しいわね。あなたが相談だなんて』
《ん~……まぁな。郡って子のことでちょっと》
『ああ、前に話していた子でしょ?』
《そ。あいつ、何か自分に自信がないっぽくてさ……。何とかしてやりたいんだよな……》
『ふふ~ん。もしかして恋?』
《はぁ?んなもんじゃ……ねぇよ。だけどな何か放っておけねぇんだよ。とにかく何とかしてあいつの力になってやりたいんだけど》
『あらあら~♪照れちゃって♪』
《……切んぞ?》
『あらら、怒らせちゃった。う~ん……。私からしたらいつも通り接してあげることが一番じゃないかしら?女の子だったら尚更ね』
《……そんなもんか?》
『そんなもんよ~♪』
▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△
「そんなことが……」
出会った頃は確かに彼の優しさは一時の優しさという考えが大きかったこともあって邪険に扱ってしまうことが多かった。でも、それでも彼は変わらず接してきて、ぶっきらぼうながらも私を助け続けてくれたけど……。
「もしかして……?」
「そのまさか…かもよ~。優しい子だけど、あの子があんなに真剣に誰かを思うなんてのはね……」
おばさんはそこで一旦言葉を区切り、居間の戸棚に置いてあった写真を手に取る。
「妹のこと以来なのよ」
そうして、私に見せてくれた写真には白銀くんが2人……。
「え?」
「ふふ、そっくりでしょう?因みに右の子が白銀で、左の子が妹の銀よ」
「そっくりというか……」
もう瓜二つで、答えを聞いてもどっちがどっちか分かりにくい……と言うか全く分からない。
……いや、よくよく見ると左の子は満面の笑みなのに対し、右の子は微妙に気だるげな雰囲気が……あるような無いような?
「とにかく白銀は銀のことをとても大切にしていたわ。もちろん弟達も大切にしていたけれど、それでもその中でも特に銀のことは本当に大切にしてたの……今の貴女に接するようにね」
「……もしかしなくてもシスコン?」
「ふふっ。あながち間違いじゃないわね~。……でも、ちょっとした事故で彼女は死んでしまったの」
その言葉に少なからず衝撃を受ける。そう言われてみると確かに中学1年の頃、少しだけだったけど塞ぎ混んでいた時期があった。
そして、おばさんが何を言いたいのかも分かったような気がする……。
「……まさか」
「そのまさかだと思うわ」
おばさんはあくまで優しそうな微笑みのまま告げる。
「白銀はね……きっと貴女のことが好きなはずよ~」
**************
「っと……千景はベッド使ってくれ」
白銀くんと金太郎くんが出た後にお風呂を使わせて貰い、結局白銀くんの部屋に泊まることになり(何故かおばさんが親指を立てていて、白銀くんが少しげっそりしていたが)金太郎くんと鉄男くんを寝かした後白銀くんの部屋に来ていた。
初めて白銀くんの部屋に足を踏み入れた訳だけど……。
「何か男の子の部屋と女の子の部屋がミックスした感じね……」
「そうか?」
片や戦車や飛行機、果ては高さ50センチはあろう精巧な丸亀城のプラモデルがひしめきあっている区画があれば……
「あら?でもあんなに精巧な丸亀城のプラモデルなんて……」
「ん?ああ、これ?パーツから全部手作りした」
「へぇ~。……えっ!?」
「苦労したぜ……。銀にも手伝ってもらってようやく完成した逸品さ」
片や様々なフラワーアレンジメントが飾られたとても華やかな区画もあるし……
「これはこれですごいわね……」
「こうゆうの作ってるのは結構楽しいんだよな。ただなぁ…」
「何かあるの?」
「いや、そろそろ虫が酷くなる時期なんだよな……。少し前なんか部屋の中にスズメバチの巣作られたし」
「えぇ……」
片やこれまた様々な楽曲が入っているCDがズラリと並んだ区画もあれば……
「すごい数ね」
「ん、ここ最近の曲から西暦時代の曲もたくさんあるし、ジャンルもポップスやら恋愛系やらいろいろあんぞ?」
「そう……。何かオススメの曲とかあるかしら?」
「千景が好きそうな曲か。なら丁度いいのがここに…………。……あったあった」
「これは?」
「西暦にあった自分でカスタマイズできるロボを操る高速アクションゲームあったろ?あれのBGM歌ってた人“振幅”っていうグループ」
「まさか……あの伝説の?こんなところで出会えるなんて……」
片や私も大好きなゲームが所狭しと並んだ区画があった。
「おお……」
「どうする?寝る前にワンプレイするか?」
「や、やりたいけれど……今日は我慢するわ」
「…………今度1人暮らしするマンション持ってっといてやろうか?」
「お願いするわ」
「あいあいさ~」
そして、1番異彩を放っていたのは……。
「これは?」
「ガキどもの遊び道具」
「え?もしかしてこれ全部手作り?」
「おう。近所の幼稚園とかに寄付してもらうことが多くなってきてはいるがな」
積み木やパズルなど小さな子供達が喜びそうなおもちゃが並んだ区画だった。しかも、全て手作りときたからさらに驚いた。
もはやおばさんが言ってた良物件どころの話ではない。
「…………早めに捕らないと後悔するわね……」
「?何を捕るのさ?」
「い、いえ……何でもないわ」
「??」
首をかしげる白銀くん。それに対し、1回咳をして自分を落ち着かせて私は乃木邸で話したとある話をすることにした。
「白銀くん、あのね……」
「ん?」
「私も貴方と一緒に戦うことにしたから」
「……はぁ!?」
流石に予想外だったのか敷きかけていた布団を放り投げ、こちらに詰め寄る白銀くん。
「おま……!分かって言ってんのか!?」
「分かっているし、元々戦闘の経験ならば私の方が上よ」
「た、確かにそうだけどな!」
「勇者の力については乃木さんがもしかしたら神樹が甦るかも知れないからなんとかなるとは言ってはいたわ」
「いや……それでもだな」
「……それに」
「それに?」
「貴方を1人で戦わせたくない。貴方を1人きりと思わせたくの」
「千景……」
私の言葉に頭を抱える白銀くん。もちろん心から否定されたらやり方を変えるけれど……。
「…………無茶だけはするなよ」
彼から出た言葉は一言だけ。
それだけの言葉でも私には十分だった。
「それじゃ、これからもよろしく頼むわね」
「……ったく。ま、よろしく頼む」
そして、私ご差し出した右手に白銀くんの左手が重なった……。
第肆話 完
ゆゆゆ第肆話、いかがでしたでしょうか?
なるべくならもうちょい先に進んで起きたかったんですが……ちょっと今月は少し厳しい……かな?
せっかくの春なんで入学式ぐらいまではいきたかったなぁ……(泣)(因みにもうちょい先の話となります。大方の話の筋は決まってるんですがね……)
さて、次の投稿ですがお待たせさせ過ぎて申し訳ない事この上ない、咲作品のほうがようっっっっっっっっやく投稿できそうです。というか今月中にゃ投稿したいです。
本当に申し訳なかったです。別段ゆゆゆや裏進行で進めているとある作品に捕らわれてたわけではなく、まじで今後の話の流れをあーでもないこーでもないして、麻雀のことも色々やってたら……もう3ヶ月。ずいぶん待たせてしまいました……。と言ってもまた次の話もあーでもないこーでもないとするつもりですが……。
では、改めて誤字脱字、その他様々な意見等あれば受け付けておりますのでよろしくお願いいたします!!
追記:ほ、☆9評価……!?TOアキレス様ありがとうございます!!