三ノ輪白銀は異質な勇者である   作:璃空埜

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お疲れ様です。大体1ヶ月ぶりの更新となります璃空埜です。

だんだんと仕事が忙しくなってきたの加え、書いていた小説をまとめていたデータが飛んでしまい……過去のものはバックアップをとっていたので無事でしたが投稿間近だった小説が消しとんでしまい1から作り直していたらここまで遅くなってしまいました……。申し訳ありません……。


うう……ぼくもうつかれちゃったよ、ぱとらっしゅぅ……(TДT)


第伍話(前) 裏切りの勇者という烙印を背負った少女、勇者になれなかった少女、勇者だった少女、そして……

ーーーーーーーーーー三ノ輪 白銀の章

 

香ばしい匂いが立ち上るハムエッグを6人分用意し、各々の飲み物、パンかご飯、そして、それぞれのトッピングを準備する。

一通りの用意が終わり手際よくエプロンを畳み、今度は庭に移動して花壇に水を撒いていると既に着替え終わった千景がやって来た。

 

「おはよう」

「おう、おはようさん。飯は出来てるから各自で食べてくれ」

「へぇ、今朝は白銀くんの料理なんだ」

「ん。まな~」

 

水を撒き終わり、ホースを片付けると花壇の花1つ1つに異常がないか見て回る。

地味な仕事だが、こうしないと気付かない内に虫やら何やらで枯れてしまうこともあるからな。この花壇を作ったばかりの頃はよく虫にやられて枯らしちまってたっけ……。

そうして葉の裏まで注意深く見ていると、千景が縁側に座ってこちらを眺めていた。

 

「?どうしたんだよ?」

「いえ……ただ眺めていただけ」

「??ま、いいか。……あ、そだ。暇だったら一緒にやってみるか?」

「いえ……私は見ているだけでいいわ。…………虫がいそうだし」

「あー……そっか。確かに虫はそれなりにいるからな~。……っと?」

 

千景の方に気をとられ、うっかり花壇の土にできていた奇妙な隆起に少し足をとられてしまう。

何だこれ?と思いながら少し掘り返してみると……。

 

「おわ!?」

「……あら」

 

出てきたのはまさかのハリネズミ。…………ものすごく小さなサイズだが。

 

「……と、とんでもないのが出てきたな…」

「あら、千景ちゃんに白銀、こんなところでどうしたの?」

「あ…おはようございます、おばさん」

「おはよう、お袋。ところで……こいつは?」

 

そうして手のひらに乗っけた眠り続けるハリネズミをお袋に見せると……

 

「あらあら、ニーちゃんじゃない。どこにいたの?」

「そこの花壇の土の中……つかニーちゃんってなんだよ」

「銀がね、自分のおこづかいで買った子よ。何か目付きがあなたそっくりなんだって」

「はぁ?」

 

そう言われ試しにハリネズミ……ニーちゃんとやらの目を見てみる。さっきの会話の途中で目を覚ましたらしいニーちゃんの真っ黒い瞳が俺を見つめ返してくるが……。

…………似てるか?

 

「……何だか似てる…………」

「千景ちゃんもそう思う?実はあたしもなのよ~!」

「……いやいや、似てねぇだろ」

 

話し込んでしまう前にニーちゃんを千景に預け、俺は花壇の手入れの続きを再開する。

一応、ニーちゃんが潜っていた辺りを確認したが、特に花達への被害はなかった。……つかここらへん何か虫の影も形も見えないような?

………………確かハリネズミって雑食だよな?

そのハリネズミの方へ目を向けると千景の膝の上で悠々と惰眠を貪っている。ううむ…………。

 

「…………?」

 

こちらに向かって不思議そうな表情で首をかしげる千景に肩をすくめながら何でもないと返し、俺は残りの作業を終えた。

 

**************

 

その後朝食を済ませ、皿洗いと洗濯も済ませ、両親は今日は仕事があるらしく早々に出掛けていった。何やら出掛ける前にお袋が千景に入れ知恵してたけど…………。………………気にすることではないか。

と言ってもその千景も荷物をとってくるとか不穏なことを言って出かけた。昨日の今日だから付いてくって言ったけど休んでほしいと諭されたんだよな……。…………お袋に一体何を吹き込まれたんだ?因みに鉄は金をつれて友達と遊びに出掛けた。勉強は終わってないみたいだがな。

まぁとにかく、今は俺もゆっくりさせてもらうか…………ここ数日っつう短い間に色々あったかんな………

そんな俺は春の陽気が降り注ぎ始めた縁側でいつも通り横になる。

…………うちの縁側はとても日当たりがよく昔っから俺達兄妹弟の憩いの場として非常に重宝してるんだよな。つっても俺はここで昼寝してるのがメインだが。

 

「……………………」

 

家事を一通り終えると、やはりというかなんというか俺の考えはここ最近のやつら……昨晩、結城の嬢ちゃんと話して命名したんだが“シャドウバーテックス”のことで一杯になってしまった。

 

「…………シャドウバーテックスねぇ…………」

 

何か結城の嬢ちゃんが言うには元より結城の嬢ちゃん達が相手にしていた“バーテックス”っちゅう敵の名称をもとにしたらしいが……。

そのバーテックスやらの話もかなりはぐらかされたからな……。あいつらが勇者として戦っていた敵の名前だとは教えてくれたが……。

そこら辺は後々詳しく問いただすとしてもだ、話した敵の特徴を話した結城の嬢ちゃん曰く、聞いた限りじゃそのシャドウバーテックスっちゅうのはどうにも今まで結城の嬢ちゃんらが相対していたらバーテックスらとは毛並みが違うらしいんだよな。元々のバーテックスらは黄道十二星座を元にしていたらしく姿形、そして大きさがシャドウとは全く違うらしい。最初の合体したやつよりも遥かにデカイとか言ってたし、あいつらはどんな怪物……いや怪獣のほうがしっくりくるか?……ともかくとんでもないやつと戦ってたんだって話だが……。

んで、そのバーテックスとやらには天の神っちゅう親玉がいて、そいつが当時敵対していた土地神達の集合体……神樹へ攻撃してきたからその対抗手段として産み出されたのが勇者……ということなんだと。

 

「……………………」

 

そこまで考えたところで起き上がり、居間の奥の仏壇に掲げられている銀の写真に目を向ける。

……乃木の嬢ちゃんと東郷の嬢ちゃん。あの2人は勇者だった………………。ならば銀は?大赦からの説明じゃ銀は神樹からのお役目の最中の事故で死んだとされている……。されているが……

 

「………やはり……………そういうことなのか……?」

 

だとしても……だとしてもだ。俺のこの手の痣の説明はどうなる?土地神の集合体とはいえ神樹に血のつながりはあるとは言えども普通の人に勇者とかいう大層な力を写すなんて力なんてあるのか??

 

「…………んん……」

 

…………ま、ひとまずは俺のことは後回しにして……銀のことも乃木の嬢ちゃんか東郷の嬢ちゃんに問いただせばわかることだからこれも後回しとして…………。

目下の問題はシャドウバーテックスの“真の”目的だ。あいつらは土地神達を殺しまわるという目的があるっちゃあるみたいなんだが、それは細々というかまだ前段階的な目的である可能性が高い。となればやつらの“真の”目的は何かとなるが……。

 

「…………結城の嬢ちゃんの話からして…………」

 

天の神は今のところ静観しているだけらしいから、そいつが手出しをしてきているとは考えにくい。となれば……土地神同士の内ゲバか?

………………いや、それも考えにくいな。

例え土地神同士でゲバったとしてもだ、普通殺すまでやるか?長い間、苦楽を共にした仲間と呼べるようなやつをだぞ?…………神にそんな考えが通用するかどうかはしらねぇが……やるとしてもだ、配下におくなりするのが普通だろう。同士討ち、しかも同じ括りに入る神同士でそんな殺し合い何てしていたら勇者うんぬんの方に気を向けれなくて嬢ちゃん達が勇者やってたときよりはるかに前ぐらいにゃ世界は滅んでたろうよ。

つうことは…………?

 

「………………ふむ」

 

……この事はこのあと顔を会わせたときに話してみてもいいかも知れねぇな。

そこまで思考を回転させたところで不意に俺の携帯が振動を始め……なんだろう、俺が寝ようとしたら連絡来ること多くないか?連続で来たからそう思っちまっただけか?

 

「…………にしても誰だ……?」

 

再び寝転びながら携帯を取り出して画面を確認すると……

 

「………っと、あいつからか…」

 

そういやこっちに帰ってくる少し前ぐらいに、新しいプラモデル完成したから見せたいっていってたな……。

 

「………………」

 

正直に白状するとさっさと寝たいんだよな。…………ただなぁ……この電話の主はほったらかしたらほったらかしたで後々ものすごく面倒なことになるんだよなぁ………。

…………ったく……。

軽く思巡した後、渋々ながらも俺は電話にでることにした…………。

 

**************

 

ーーーーーーーーーー郡 千景の章

 

 ーーー時は白銀の両親と千景が外出するときまで遡るーーー

 

「あ、そうそう千景ちゃん」

「?」

 

白銀くんの部屋に置いてあった私の荷物を一通りまとめてしまい、今日の晩から宿をどうしようかと悩んでいたらお仕事に出掛けるのであろう仕事着に着替えたおばさんと鉢合わせした。

 

「どうしたの、おばさん?」

「今日は泊まるところ……あるのかしら?」

「いえ……。でもすぐに探そうかなって……」

「やっぱり……。それなら、今日も家に泊まっていきなさい」

「え!?」

 

それは……ありがたい申し出だけども…………。

そう思い、思わず白銀くんがいる方向をみてしまう。

 

「……もしかして、白銀に遠慮してる?」

「…………はい」

「あらあら~♪やっぱり白銀も隅に置けないわね~♪」

 

いや、昨日最後に貴女が言った言葉が響いているんですけど……。

それに…………。

 

「大丈夫大丈夫。白銀は絶対あなたを見捨てなんてしないし、その話を聞いてしまったら多分嫌々な体を装いながらも貴女を泊めようとするわよ~」

「……そう…………でしょうか?」

「ええ♪あの子の優しさはちょっとだけ不器用なの~。ま、それがk」「お袋……仕事はいいのかよ?」

「あら」

 

おばさんと話していると洗濯ものを干してきた後であろう空の洗濯籠と金太郎くんを抱えた白銀が通りかかった。

 

「うふふ♪ごめんなさい、ちょっと千景ちゃんとのお話が楽しくって楽しくって……」

「はぁ……。さっさと行かねぇとまた遅刻するぞ~?」

 

白銀くんが呆れた顔をしながら脱衣場に姿を消したのを見計らいおばさんは小声で

 

(だから、白銀が讃州のマンションに行くまでここで泊まっていきなさい♪あ、でも白銀には一旦内緒にね♪)

(…………まぁ…はい)

 

今の私達を取り巻く状況的にここ、大橋を離れるつもりはなかったし……結果的に私はおばさんのご厚意に甘えさせてもらうことにした。

でも…………これでよかったのかな…………?

おばさんを見送り、ぼんやりと考える。

 

『白銀はね……きっと貴女のことが好きなはずよ~』

 

昨日の晩、何とか表面上はいつも通りにできたけれど色々考えてしまって上手く寝付けなくなってしまった要因となったおばさんの一言を思い返す。

かつての私は“勇者”としての郡千景にこだわっていた。“勇者”としてならば周りから必要とされるし、お父さんやお母さんが認められるって信じていた。……でも、それは幻想のようなもので勇者の本質が露出した瞬間……私の評価も元通りになって結果的にあんなことをしてしまった…………。

それじゃあ、今は?確かに最初は昔のような扱いにさらに勇者の恥さらしという汚名が上乗せされて、もっと酷いいじめを受けていたけれど……彼は最初から私を…………何者でもない私を、勇者の郡千景でもなく、裏切りの勇者の末裔の郡千景でもなく、郡千景という私自身を見ていてくれた。

 

…………………………なら

 

「千景?」

「あ……えと、何かしら?」

「いやさ、今日は昨日の話の続きもする可能性もあるけど、やるとすんなら午後からだろうからな。それまではゆっくりできるだろうし、もしこっちで昼飯食うんならなにかリクエストあるかと思ってな」

「ええと……なら、ハンバーグをお願いしてもいいかしら?」

「またか。えらく気に入ったな~俺のハンバーグ。そんなに上手いのか?」

「ええ…………とても。……それと少し出かけるわ」

「……昨日のこともあるし俺も行く」 

「大丈夫……荷物を取りに行くだけだから。それに2日もそれも夜に戦って、まだ腕の傷が直ってないんだから少しは休んで頂戴」

「…………ホントに大丈夫か?」

「……大丈夫よ。なにかあったらすぐに連絡するから」

 

………………………………私は彼を信じてみたい。

 

**************

 

「……一体、なんなのかしら…………?」

 

あれからコインロッカーに預けていた残りの荷物と日用品をいくつか買って、そろそろ白銀くんの家に一旦戻ろうと考えていたら突然白銀くんから「少し用事ができた。駅の方にいるんならこの前待ち合わせた駅前の向かってくれ」って言う連絡が入って昨日、白銀くんと待ち合わせた駅前までやって来てはいるのだけれども……

 

「中々来ないわね……」

 

かれこれ指定された場所で既に約1時間ぐらいまたされている。白銀くんの家からここまで来るのに歩いたとしてもここまでかかることはない……と思うのだけれども。

 

「ああ……もしかしたら…………」

 

道中でいつものに巻き込まれているかもしれないわね…………。

中学時代、白銀くんは学校近くの寮に暮らしていたんだけどよく朝のHR直前、または始まるかというぐらいに教室に駆け込んでくることが多かった。それである時、何となく聞いてみたんだけども白銀くんが言うにはどうにもトラブルを引き寄せる体質みたいで……寮から学校までの短い間でもスクーターの故障があったり、あまり見慣れない髪色からか不良達に絡まれちゃったり、近所の子供達の喧嘩に巻き込まれたり、猫を拾ったり、ヤクザの闘争に巻き込まれたりと色々あるみたい。

…………今思うとヤクザの闘争に巻き込まれるってなんだろう……?あの近辺には特にそういう人達がたむろしているところはないはずだったんだけど…………??

ヤクザのことは関わるなんてゴメンだから流石に放っておくけれど……とにかく彼は色々とトラブルを引き寄せ巻き込まれる……いわゆる不幸体質なんだけど、それだけじゃなくて口調こそぶっきらぼうというか常に投げやりな感じだけども性根が優しいこともあってかそうゆう自分が引き寄せたトラブルにも自分自身から突っ込んでいくのも原因もあるといえばあるんだけれども……。

 

「「……はぁ……」」

 

確かに人のためになるとは言えまたされる人のことももうちょっと考えてほしいなぁと思って溜め息をついたら隣の私と同年代の髪をおさげにした少女も同じように溜め息をついていた。彼女も私に気づいたようでこちらを一瞥したけれどすぐに興味をなくしたのか別の方を向いた。

おそらくだけど彼女も待ち人が遅れてしまっているんだろう。私には関係ないことだけれども。

 

    ーーーーーーーー更に30分後ーーーーーーーー

 

「……流石に…………遅すぎるわ……」

 

確かに白銀くんはお節介焼きな上にトラブル体質だから持ち合わせに遅れることはよくある。それは彼の体質と優しさがマッチしていることだから大目に見るとしても……そろそろ来ていてもおかしくはない。

 

「…………もしかして……」

 

頭をよぎったのは昨日遭遇したあの影……シャドウバーテックス達の事だった。でも今のところシャドウバーテックス達は基本的に夜間、またはそれに近い時間帯でしか行動をしていない。とはいえその情報も確認できた僅かな事実から引き出したものだから確証はない。それなら、日中でも襲撃は可能だし、ましてや日中でも裏道とか橋の下という暗い場所はいくらでもある……。

 

「…………っ!」

 

その考えに至っていてもたってもいられなくなったまさにその時……

 

「わりぃ!待たした!!」

 

ようやく白銀くんが姿を現した。

 

ーーーーーーーー…………頭から爪先までにずぶ濡れなって。

 

……よくよく見るとまだ髪から水を滴らせているし。しかもその腕の中には子猫が5匹ほど丸まっている。

 

「え……ど、どうしたの……?」

「ああ……ま、いつものやつさ。不良に絡まれて喧嘩して、そして急いでいたら子猫が段ボールごと流されててな……思わず飛び込んで助けて、それで今度は迷子の子供らと会って案内して、んで今度は外人……それもロシア人っぽいやつを案内してそんで」

「……もうわかったから。それでそんなに濡れているのは……」

「これは川に飛び込んだのもそうなんだが……その後に知り合いのばーちゃんちの外にあった蛇口が壊れちまったみたいでな。それを直してきた結果だ」

「……はぁ……」

 

あまりに平常運転な白銀くんに軽く溜め息をついたとき。

 

「……ふーん……見せつけてくれるわね」

 

脇から冷えきった声がかけられそちらの方を見ると、先程私の事を一瞥したおさげの少女が軽蔑な視線を白銀くんに向けていた。

 

「よう、おめぇも待たせて悪かったな。後、こいつとはおめぇもが思っているような関係じゃねぇよ」

「……どうなんだか」

「……はぁぁ……まるっきり信じちゃいねぇだろ。ったく………そういうところは相変わらずだよな…………メブ」

 

白銀くんからしたらいつもの事らしく、あくまで冷えきった返しをするメブと呼ばれた彼女に対していつもの感じでもう一度さっきの事を話始めたのだった…………。

 

 

**************

 

 

「……まさかあなたに年下の知り合いがいるなんて……」

「んだよ?以外か??」

「…………私もここ最近知ったけども、まさかそこそこ有名なあの“2つ名”で広まっている張本人だとは思ってなかったわよ……」

「…………へぇ…あなたもあの名を知っているんだ?」

「……ホントにここ最近知ったのだけど」

「そんなに有名なのかよ……」

 

さっき白銀くんが私ともども待たせていた女子……楠芽吹さんは白銀くんと同じ香川県出身の子で、春休み明けからは少し離れた町の中学の3年生になるそう。それで白銀くんと彼女のがどこで出会ったかって言うと……

 

「……んでそんときにこっちの友達の誘いでプラモの品評会に来てみればさこいつだけさ……あーっと…………なんつうの?怨念??邪念??…………とにかくヤバめな目付きをしてたわけよ。……いやはや、あんとき話しかけたときゃぁ視線だけで殺されると思ったわな~結構マジでさ」

「……あのときはこっちにも色々あったのよ」

「そうかい。ま、その後は段々と活気が戻って前回あったときには最初のときのような雰囲気は…………ま、少しだけならあったけども影を潜めてたな」

 

……大体予想はしていたけれどやっぱりいつものお節介焼きだ。

 

「……相変わらずそういうことには敏感に反応するのね」

「…………もしかしてあなたも?」

「…………似たようなものよ」

「……苦労したでしょ?」

「…………お互いに……ね」

「おいコラ。二人して勝手に話を完結させんじゃねぇよ……。てか俺、おめぇらになんかしたっけか?」

「「………………はぁ……」」

「な、なんだよ……2人揃って溜め息なんて付きやがって」

 

困ったことに……白銀くんは私たちの悩みとか普段とかの雰囲気との違いには過敏に反応するのに対して、他人が自分に向ける感情にはそれなりに……いやかなり疎いところがあるのよね……。

 

「あ~……ところでさ、話は突然変わっちまうんだけどさ…………こいつらどうする?」

 

私たちに対して分が悪くなったであろう白銀くんが振ってきた話題はさっき彼がつれてきて今は私と橘さんの腕の中ですやすやと寝息をたてている子猫達の事だった。

どうも白銀くんがうまく助けたお陰か彼とは対照的に少しだけ濡れている程度だったから近くのデパートで買ったタオルで橘さんときれいに拭いている内に疲れたのかみんな眠ってしまった。ちなみにそのデパートで白銀くんも濡れてしまった服の代わりを買って着替えている。

 

「……ちなみに白銀くんちは?」

「……うーん…どうだろな………。…………世話しようにも俺は近々、高校近くのアパートに引っ越しちまうし……しかも引っ越し先のアパートはペット禁止だしな……」

「…………そう……」

 

すると…………困ったわね……。私も白銀くんとは違うアパートだけれども独り暮らしを始めるし……そのアパートもペットは確か禁止……とは説明されなかったけれど、説明してくれた人の話し方からしてあまり良くはない雰囲気だったのよね。

そこまで考えると自然と顔を私と逆側の白銀くんの隣にいる橘さんへと向ける。

 

「…………言っておくけれど私の家でも飼えないわよ?」

「……そう…………」

「…預かることもか?」

「それは……全部は厳しいけれど…………というかそれだったら白の家でもできるでしょ」

「それが厳しいんだよ……お袋も親父もどっちも日中はいねぇことが多いし、鉄はアホだし、金はまだちいせぇから世話はできねぇし」

「……ならあなたの知り合いとやらの勇者部……だったかしら?その子たちに頼んだら?」

「……あ~………その手も考えてたんだがなぁ…」

 

橘さんの質問に詰まった回答を返す白銀くん。

それもそうよね。今現状、その勇者部も半数以上の人と連絡が繋がらなくて……しかも、無事な2人も下手な行動をすれば昨日話した敵、シャドウバーテックスに目をつけられてしまう可能性も否定できない状況…………今、彼女たちになにかをお願いすると言うのはちょっと気が引けるわね。

 

「なに?今忙しいの??」

 

「ん~……まぁそんなとk「見つけたぁ!!白銀さん!!」…………あー………結城の嬢ちゃん?ちょいとうっせえから一旦静かにしろ」

 

今まさに噂をしていた勇者部……その顔とも言える友奈さんがそれはもう猪…………いや、熊並みの勢いで突撃してきた。

 

「白銀さん!!大変だよ!!大変だよ!!一大事だよぉ!!」

「……だから一旦おちつ……」

「落ち着いてなんていられないよっ!!」

「…………何があった?」

 

尋常のない慌てようにすぐに白銀くんは真剣な顔つきになる。

ただなんでかは知らないけれど……橘さんも真剣そうな顔もちになって、でもその瞳には……正確には友奈さんに向けられている視線には何か……私とは少し違った…………でも私と同じような感情、思念が入っている…………そんな気がした。

 

「結城、とにかく深呼吸して一旦落ち着いて説明してくれ。そうじゃねぇとこっちも何が起こってんのか分かりゃしねぇ」

「う、うん。ええと……確か深呼吸は…………えと、ひっひっふー……ひっひっふー…………」

「それはラマーズ法よ……」

「あぅ……」

「……何やってんのさ………それで何があった?」

 

深呼吸(正確に言ってしまうと定番の深呼吸ネタであろうラマーズ法だけれども)をしてなんとか落ち着いた友奈さんに、一瞬だけ表情を緩ませた白銀くんだったけどもすぐにまた表情を引き締めた。

 

「そう!そうなの!!ーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーーーーーー私、泊まるとこ無くなっちゃったのぉ!!」

 

「………………は?」「………………へ?」「………………ん?」

「急いで出てきたせいでお金なんて電車分しか持ってきてないし!しかも貯金崩したとしてもあんまりお金ないから宿とかに泊まってたら私来月のおこづかい貰えるまでどうしようもできないレベルだし!!それでも園ちゃんのお家に泊めさせてもらえるかなって思ってたんだけどもなんだかお客さんが来て大切なお話があるから今日は泊められないって言われちゃってもうどうしようもないんだけど、どうしよう~~~!!」

 

…………ええと………………?

 

「…………結城」

「うぇぇ……?」

「それだけか??」

「それだけじゃないよぉ!!」

 

泣きそうになりながら話す友奈さんに対して呆れたような態度を取りながらも安心したかのように一息をつく白銀くん。

私も想定していた最悪の考えが的中することはなく肩の力を抜くことができた。

だけども問題がまだひとつあって……。

 

「あー……ところでメブはどうすんだっけ?」

「……家族には今日は友達の家に泊まるって伝えてきてあるわ…」

「…………あ~……」

 

腕を組んで空を仰ぎ見る白銀くん。少しの間そうしていた後、

 

「ま……俺が居間で寝りゃいい話か。んじゃ、結城の嬢ちゃんや……家に泊まってけよ」

「ふぇ……!?いいの…………?」

「いいもなにも……ここいら付近で現状、乃木の嬢ちゃん以外に頼れるとなると俺しかいねぇんだろう?なら遠慮すんな」

「うぇぇ……ありがとぅ……」

「あー……もうこんなことで泣くなっつうの…………。相も変わらずなき虫だな~おめぇは」

 

安心したのか軽く泣き始めてしまった友奈さんの頭をやれやれ……といった感じながらも優しく撫でる白銀くん……。

なんというか……端から見れば仲のいい兄と妹に見えなくもない。

私もそう見ていたのだけど………………私の胸の奥の方で……少しだけ…………。

 

「つーわけだ、すまんがこいつの着替えとか子猫を世話する道具とか買ってきてくれねぇか?」

「…………あ……い、いいけど……白銀くんは?」

「俺か?俺は…………まぁ、野暮用あんの思い出したんだよ」

「??」

「後……ほれ。これ俺ん家の鍵だから買い物したら寄り道せずに真っ直ぐ向かえ」

「う、うん……」

「いいか?何処にも寄らないで真っ直ぐ向かえよ?」

「……そんなに念を押されるほど私は子供じゃないんだけど?」

「……それをいうなら私もだけど?」

「わぁーってるよ。一応念のためだ、念のため。……それじゃ、ちょいと頼む」

 

そう言って一方的に友奈さんを私たちに押し付けるようにして白銀くんはどこかに走り去っていってしまった……。

 

「…………一体なんなのかしら……?」

「………さぁ…」

 

白銀くんが野暮用とはいえ用事を忘れているなんて……。でも、それ以上に…………なにか嫌な胸騒ぎがするのは……なぜなのかしら?

 

**************

 

ーーーーーーーーーー乃木 園子の章

 

「それっ……!!本当なの!?」

「はい。かつて勇者をされた方々に対して“我々が”発送しているものと同じようなものが元勇者様たちに送られていたそうです」

 

ゆーゆには悪かったのだけど……初めてシャドウバーテックスと遭遇したあの後から私はかつて大赦に属していて真に信頼をおくことのできる人たちに対してだけ、ゆーゆやわっしー達の周辺でなにか不審なことがなかったか調べてもらっていたのだけれど……。

正直言って嫌な予感が現実になりつつあった。

 

「……でも…確かにぼっしーのお兄さんは……」

「はい。我々と同じく大赦の人間でしかも乃木様も信頼

置かれていた方となります」

「……うん。…………もしかして……」

「………………残念ながら…………襲われておりました。現在、意識不明の重体ではありますが一命はとりとめておるそうです」

「……っ、そう……」

 

よかった…………。もし亡くなりでもしたらにぼっしーに顔向けなんてできなくなっちゃうよ……。

 

「…………お兄さんが襲われた大体の日時は?」

「乃木様が影達……シャドウバーテックスと遭遇された日となります……」

 

ということは3日前……あの日、あの晩…私たちの周りでは一体何が起こっているっていうの……?それにあの晩、影以外が少しの間……止まっていた謎も解けていないし……。

 

「…………セツさん達にも注意をしとかないと……」

 

そう呟いた時だった。

 

「園子様、お客様がご到着されました」

「……うん」

 

ようやく……といっても今日突然連絡して来てもらったわけだけど…………今、この状況を一歩先に進めるのに重要な人が来た。

 

「すぐに会うよ。お通しして?」

「はい」

 

それは…………かつて神樹様の声を聞くことのできる唯一無二の存在……

 

「……“巫女”さん……か。こんな時じゃなかったら小説のお話に使えたんだけどね~」

 

**************

 

ーーーーーーーーーー三ノ輪 白銀の章

 

……さてと、ここまで来ればそろそろいいだろうか?

少し強引だったが千景達と別れた後、俺はさっきのとこより少し離れた人気のない廃工場に足を踏み入れていた。

 

「…………」

 

懐かしいな……。よく喧嘩しに来た奴をここに連れ込んで喧嘩してたっけ…………。

…………まぁ、そんな感傷に浸っている場合じゃねぇけどな。

軽くため息をつきながら工場の中央辺りまでいって立ち止まり、振り返ったまさにその時ーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーー俺の耳元を風切り音と大きな何かが通り過ぎていきていった。

 

「……ったく、流石に3日連続はキツいぜ……」

 

そうぼやきながら今度は地面を蹴り飛び上がる。その瞬間、背後から迫っていた……先の何かが俺が立っていたところを勢いよく通過していった。

 

「っと……」

 

着地して顔をあげ、俺は虚空を睨みながら叫んだ。

 

「………しつけぇんだよ!シャドウバーテックスっ!!」

 

 

               第伍話  ー前ー 終




さて……この作品の◆のところ、次の話から解禁となりますのでこうご期待(で……あってるかな?)。更に、このあとがきでは小説内に登場したシャドウバーテックスを紹介していこうと考えております。

次の小説投稿ですが……ストライクウィッチーズの方を投稿予定です。咲についてはまた時間がかかってしまうかな?楽しみされているかたには申し訳ありませんが気長にお待ちください。なるべく早くには投稿します。

では改めて、誤字脱字、その他様々な意見等あれば受け付けておりますのでよろしくお願いいたします!!
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