やはり俺が765プロで働くのは間違っている。 作:けえす@陸の孤島
そう、箱崎星梨花の誕生日です。
というわけで、今回は「やはり俺が765プロで働くのは間違っている。」の番外編(?)で星梨花回になります。
時系列はゲッサン版漫画の第17話あたりです。
どうしても、箱崎星梨花には変えたいものがある。
とある日の控え室。
俺、翼、最上、箱崎の四人は劇場にある控室のソファに座っていた。俺の横に翼、正面に箱崎、斜め向かいに最上が座っている。
昨晩、最上から箱崎と一緒に相談がしたいことがあるとのLINEが来た。そのため、空いている控室を借りてこうしているわけだが……
「要は、体力の鍛え方を教えてほしいってことか?」
「はいっ!」
俺が訪ねると箱崎は元気に返事をした。相変わらす素直でいい子だなぁ。
箱崎からの相談内容は体力増強の方法についてだった。
今から数週間後にアイドルフェスティバルに向けたオーディションがあり、そこで箱崎は最上、北沢、野々原、北上の5人による新ユニットで出場することになっている。現在はそのオーディションに向けてレッスンをしているのだが、箱崎が体力不足から周りに付いていけていないとのことだった。
「そういうのって、ヒッピーさんよりもトレーナーとかに聞いた方がいいんじゃないの?」
俺の隣に座っていた翼がそう指摘する。何故か最近よく俺の傍にいるんだよなぁ、こいつ。レッスンとかはしっかりやっているから文句など言えようもないし……
それはともあれ、確かに翼の言う通り運動に関して素人の俺よりもプロであるトレーナーの方がいいと思うが……
「実は既にトレーナーの人に相談したのですが、その……」
「わたしの今の体力だと教えてもらった方法のなかでもランニングくらいしか出来ないんです……。でも、暗くなると外出しちゃ危ないってパパが……」
大きく肩を落とす星梨花。なるほど、一度相談した出前、再度相談しづらいと言ったところか。
「比木谷さんならテニスも素人だと思えないくらい上手で結構私とラリーも続きますし、もしかしたらトレーニング方法を知ってるかもと……」
「藁にも縋る気持ちで俺に尋ねてきたわけね……」
とは言っても、俺は運動部に入ったことがあるわけでもないしなぁ。体力づくりという意味では戸塚とのテニスのためのしているランニングくらいしかない。
んっ?
よくよく考えれば心当たりがあるじゃないか。過去体力不足に悩んでおり、今はそれを乗り越えた人に。どうして直ぐ思いつかなかったんだろう。
「確証は持てないが、俺に一つ心当たりがある」
「えっ、ホントですか?」
*
「八幡、久しぶり! 遅れてごめんね」
「いや大丈夫だ。俺も今来たところだから。」
翌日、劇場の最寄り駅で俺はとある人物と待ち合わせをしていた。そう、大天使トツカエル……っと違った、戸塚彩加である。でも、俺と同じで二十歳過ぎたはずなのに高校の頃とほとんど見た目が変わってないんだよなぁやっぱ天使なんじゃないかな。ちなみに今朝は戸塚と会えることに心が躍り、待ち合わせ時間の1時間前に到着してしまった。まぁその時間も戸塚のことを考えていたらあっという間に過ぎたのだが。
「昨日の今日で来てくれて本当に助かったわ。サンキュな」
「ううん、たまたま予定が無かっただけだから気にしないで。それよりも八幡がぼくを頼ってくれたことの方が嬉しいよ」
そう言って戸塚は太陽のような笑顔を咲かせた。もうこの笑顔があれば皆を幸せにできるんじゃないかなぁ。今からでも765プロにアイドルとして入ってくれないかなぁ。
「それで、相談ごとについてなんだけど、本当にぼくで良かったの?」
「あぁ、むしろ戸塚が適任だと思う」
現在、戸塚はとある大学でスポーツ科学を専攻している。また、それと並行してアルバイトとしてテニスクラブのコーチをやっており、更にはテニスの大会で小柄なのに手強いプレイヤーとしてその地域では有名になっているらしい。初めて奉仕部に来た高校2年生の時には体力不足が顕著だったのにここまで頑張ってきたのだ。そんな経験を持つ戸塚であれば、箱崎の相談相手として適任だと言えよう。
「それじゃあ、早速だが劇場の方に行っていいか? 小さめのレッスンルームを借りてるんだが」
「うん。それじゃあ案内よろしくね、八幡!」
……やっぱり今からでもアイドルしてみない?
劇場にあるレッスンルームに俺たち2人とアイドル3人の計5人が集まっていた。翼は、何だか面白そうだからとやってきている。ただ体力トレーニングするだけなんだがなぁ。
「初めまして、戸塚彩加です。八幡とは高校の頃からの友達になるのかな」
「ヒッピーさんに友達ですか!?」
とりあえず、始めに戸塚やアイドル達に簡単な自己紹介をしてもらう。戸塚が俺のことを友達と言ってくれて何だかむず痒かいな。ところで翼、戸塚のその発言に驚きすぎだろ。しかも何やら考え込み始めたし。
(まさかヒッピーさんに女の子の友達がいるなんて……)
「初めまして、箱崎星梨花です。今日はよろしくお願いします!」
箱崎が相変わらず丁寧に自己紹介をする。それに続いて、最上と翼も簡単に自己紹介をした。
「それじゃあ今日はよろしくね、箱崎さん、最上さん、伊吹さん。」
そうして、戸塚による体力training初級編が始まった。
「とりあえず、自宅で出来そうなトレーニングとしてはこんなものかな?」
約数時間後、戸塚は様々な体力および各種トレーニングの実践やそれをする際の注意点をアイドル達に教えてくれた。そのほとんどは今の箱崎でも十分こなすことが出来るものであり、流石は体力に悩んでそれを克服した経験者だと感心した。ついでに、伊吹には結構きつめなトレーニング方法を教えたりしていた。
「ありがとうございます。これなら自宅でも時間がある時に出来そうです!」
「それなら良かったよ。ただし箱崎さん、さっきも言ったけどやりすぎには注意してね。体力ってのはすぐ付いてくれるものじゃないから。無理にやっても体を壊したり、変な癖をつけたりするだけだからね」
「はいっ!」
相談者である箱崎も満足そうだ。最上の方も、同じユニットの中で大きくしなやかに動く北沢や、スピードとキレがある野々原と比べて劣っている自分自身に劣等感があったようで、今回のトレーニングが大きな参考になったとのこと。
「それじゃあ今日はこんなところにしておこう。本来今日は休日で、明日からみっちりオーディションに向けたレッスンが始まるからな。戸塚、今日は本当に助かったわ。その、ありがとうな」
「ううん、八幡の役に立てて良かったよ」
「そ、そうか」
やっぱり戸塚の笑顔は眩しいなぁ。……翼から何やら視線が突き刺さるが、戸塚の笑顔の前ではそんなの小さいことだよな、うん。
「ところで戸塚、この後用事とかあるか? もし良かったら晩御飯でも行かないか?」
「うん、それじゃあ一緒に行こうか」
よし、無事に戸塚を食事に誘うことが出来た。あれ、これってデートじゃないか? 性別? 戸塚は性別:戸塚だから異性なんだよ(支離滅裂な発言)
「あっ、それじゃあわたしも一緒に行きたいです! いいですよね、ヒッピーさん?」
「つ、翼? あっ、でも……私もいいですか?」
「皆さん行かれるのでしたら、私も一緒に行っても良いでしょうか?」
「えっ、いやでも俺は戸塚と二人で」
「うん、それじゃあ皆で行こうか!」
……戸塚がそういうなら仕方ないよね♪
「はぁ、それじゃあ着替えてから関係者入口集合で待ち合わせでいいな? 戸塚、更衣室に行くぞ」
「「えっ!?」」
俺の発言に翼と最上の発言が同時に驚いた声を上げた。どうかしたのか?
「何言ってるんですか、ヒッピーさん!」
「そうですよ、戸塚さんと一緒に着替えなんて、そんな破廉恥な!」
「比企谷さんもわたし達と同じ部屋で着替えるんですか?」
「お前ら何言ってるんだ……。あっ」
そうだった。まだこいつらには言ってなかったな。
「言うの忘れてたが、戸塚は男だ」
「えっ、何言ってるんですかヒッピーさん、こんな可愛い人が男なわけないじゃないですか~」
「いや、その……ぼくは男だよ?」
「「「えっ!?」」」
こんな可愛い子が女の子のはずがないだろうが。
全員着替えた後、俺たちは近くにあるファミレス(サイゼリア)に訪れた。店員に一瞬怪訝な顔をされたが、傍から見れば美少女4人を連れているように見えるだろうから仕方がないだろう。
案内された席に座って注文を済ませる。どうやら箱崎はファミレスに来たのが初めてらしく、店員を呼ぶボタンを感心した表情で見ていた。
しばらくして、全員分の食事が配膳された。
「こんな短時間でお料理出来るなんて凄いです! それに皆さんの分まで!」
……これは調理済みのやつを温めたりしているだけだという真実を伝えた方がいいのだろうか……
雑談しながら食事をしてしばらく経ったとき、箱崎はふと箸を置いた。
「箱崎、どうかしたのか?」
「あっ、その……。比企谷さん、戸塚さん、今日はわたしのためにありがとうございました!」
食べ物に髪が付かないようにしながら頭を下げる箱崎。その顔は悔しそうに見えた。
「わたし、その、ユニットの誰よりも体力無くて、ダンスも下手で、足引っ張ってばかりで……。」
「星梨花……」
「それなのに、またこうしてお二人にご迷惑をかけて……」
今にも泣きだしそうな箱崎に、俺は掛ける言葉が見つからなかった。
「箱崎さん」
そんな箱崎に、戸塚は優しく語り掛ける。
「とある人が言ってたんだけど、誰にも迷惑をかけずに生きるなんて無理なんだって。でも、大切に思っているからこそ迷惑をかけたことに気づけるんだって」
そう言って戸塚は俺の方をちらりと見た。
「だから、それは箱崎さんがユニットの皆やぼく達のことを大切に思ってくれている証拠だよ。」
「でも、ご迷惑をかけていい理由にはならないですよね……?」
「そうだね。だから、次に自分を頼ってくれた時、全力で助ければいいんだよ。そうやって、迷惑をかけあっていくのが友達だったり、仲間だったりするんだ、きっと」
「でっでも! わたしが皆さんのお役に立てることなんてっ!」
「……ぼくも最初はそう思ってたよ。」
「えっ?」
「ぼくとそのとある人が出会ったとき、ぼくは助けを求めていたんだ。そして、その人はそれに答えてくれた。その後、ずっと恩返しがしたいと思ってたんだけど、勉強も運動も優れてないぼくに何が出来るんだろうとも思ってたんだ。でも、その後彼がぼくを頼ってくれた。……そして、今日も。結局、プロでもないぼくが助けになれたかは分からないけどね。」
「そんなことありません!」
「ふふっ、ありがとう。でも、もし箱崎さんがそう感じてくれたなら、箱崎さんも誰かの助けになれるってことだと思うよ。他の人には出来ないけど、君なら出来ることがあるってことだと」
「わたしだけに出来ること……。見つかるでしょうか?」
「いいえ、星梨花。私はもう星梨花から色んなものをもらっているわ。私が倒れた時はお見舞いに来てくれたし、文化祭にも来てくれた。星梨花は既に仲間のために行動できているわ」
「それに星梨花ちゃんがいつも頑張ってるから周りも頑張ろうってなってると思うよ? 今日だって、わたしも頑張ろ~って気分になっちゃったし♪」
「静香さん、翼さん……。……いいえ、やっぱりわたしはまだまだ恩返し出来てないと思います。でも、いつか必ず返すので、今はわたしを手伝ってください!」
再度頭を下げた箱崎。だが、その顔は先ほどと違って決意を秘めたものだった。
本当、素直で応援したくなるアイドルだな
*
「比企谷さん!」
「ん? 箱崎か。オーディションの合格、おめでとさん」
「ありがとうございます!」
その後、箱崎は無事に体力不足を乗り越えることができた。それ以外にも色々あったようだが、その結果アイドルフェスティバルの出場を勝ち取っている。
「今回は本当にありがとうございました。比企谷さんのおかげで皆になんとか付いていくことが出来ました!」
「いや、俺は何もしてないけどな。トレーニング方法を教えたのは戸塚だし、実践したのは箱崎だし」
本当に今回の件は何もしてないからなぁ。
「いえ、比企谷さんが戸塚さんを紹介してくれたからですので、やっぱり比企谷さんのおかげでもあります」
「まぁ、そういうなら有り難く受け取っとくわ。まぁでも、よく頑張ったな」
「えへへ♪」
「んじゃ、俺は事務所に行くわ。それじゃあな」
「あっ、ちょっと待ってください!」
「他に何か用か?」
「えぇと……」
箱崎は俯いてもじもじし始めた。
「その……、これからわたしのことを名前で呼んでくれませんか?」
「え?」
「ですから、その……星梨花って」
「いや、なんで?」
「だって、翼さんは名前で呼んでいますし」
「それはそうだが……」
「だから、わたしも名前で呼んでください。……八幡さん」
恥ずかしそうに顔を赤くしてそういう箱崎。破壊力が凄まじいな……
「おっ、おう、分かった。せ、星梨花」
すると箱崎の顔がパァと輝いた。めっちゃ恥ずかしいなこれ。
「えへへ、嬉しいです♪」
「……それじゃあまたな」
「はい!」
「これからもよろしくお願いします、八幡さんっ!」
2月20日は箱崎星梨花の誕生日ということで、随分先に書く(予定の)話の幕間を投稿させて頂きました。
普段以上にクオリティが低い気が……
すいません本日は私の誕生日であることに免じて許してください!もしリクあったらそのキャラと絡めた話書きますから(多分)
現状では翼以外で未来、静香、ジュリア、瑞希、エレナ、桃子、美也がメインキャラとして登場予定。
P.S.
”けえす”は所詮…6th 仙台の先行にも一般にも敗れた”敗北者”じゃけェ…!