冥界の最古参執事   作:カフェ・オーレ

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個人交流

 

 ソロモン。歴史上では旧イスラエルの王、ダビデの息子であり、悪魔または悪霊を使役する力を持つ指環を神ことヤハウェの命により、大天使ミカエルから授けられた男の王。

 

 …なのだが。この冥界、いや、この世界にいる彼は『ただの人間』のソロモンであって、イスラエルの『ソロモン王』ではない。

 

 何故ならば、ソロモンは魔力を保持してるが使わない。いや『使うことを拒否している』のだ。彼は人間であることを尊重し、魔力を拒んだ。それでも、彼を慕う者たちからソロモンは『人王』と呼ばれている(彼自身は王ではないと否定しているが)。それでも、ただの『人間』なのだ。だがその年齢は既に千を超え、人間でありながら悪魔、天使、堕天使と関係を持つ人外と言える存在になっていた。

 

 かの大戦、三大勢力と二天龍との戦いにも彼はその地に立ち、魔力を使わずに己の力だけでかの二天龍。赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオンを撃破。

 二天龍を討ち取り、どの勢力からも多くの歓声が湧いている中、彼は堂々と言った。

 

『たとえ年が千を超えようとも、人外に同様になろうとも、俺は人間だ。俺が人間として生きている限りは俺は何処の勢力にも就かん。まあ、そうだな。ある程度の協力はしよう。全ては、未来を見たいという我が願望のために』

 

 だから、彼は生き続ける。

 

 先の未来を見たいが為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日。男ことシン・ソロモンは冥界を離れて、人間界の日本の京都、正式には人避けの結界の中にある裏京都に来ていた。

 ソロモン…シンの服装は京都に因んで茶色の浴衣に下駄という日本風な格好である。今回、シンが京都に来たのは、ある妖怪に会うためだった。

 

 周りの妖怪たちからチラチラと珍妙な視線で見られつつも特に気にせずに時代外れの景色が広がる城下町を歩き、一軒家の大きな屋敷の前に足を止めた。すると、屋敷の護衛である妖怪がシンに要件を聞き始めた。

 

「この屋敷になんの御用で?」

 

「ああ、ここに住んでいる裏京都の妖怪大将に伝えてくれ。ふむ、そうだな…『人王』が来訪した、と」

 

 彼自身、この名称を使うことは滅多にないのだが不審者と間違えられる訳にはいかないので今回は仕方なく使った。

 護衛の妖怪は最初は首を傾げながら困惑していたが、しばらくするとフルフルと緊張と感激半々で肩を震わしながらシンに聞いた。

 

「も、もしかして、あああなた様は…あの三大勢力大戦を終結させ、どの種族にも救いの手を差し伸べた。あ、あの『人王』こと、シン・ソロモン様なのですかっ!?」

 

 きっとこの者は新しく護衛になった妖怪なのだろうと考え、ソロモンは苦笑しながら答える。

 

「…あー、そうだ。その人王こと、シン・ソロモンだ。あと、すまないがもう少し静かにしてくれないか?そんなに大声だとアイツが「シィィィィィィン兄ぃぃ様ぁぁぁ!、来てくれたかぁぁぁ!!」…既に遅し、か。おう、九重。元気だったカハァァァッ!?」

 

 護衛妖怪に静かにするよう頼むが、時既に遅し。屋敷の中からダダダッ!とソロモンの方に走ってくる音が聞こえ、ソロモンが声の主に挨拶したと同時に声の主の勢いある突撃が見事にソロモンの鳩尾にドスッ!と強い頭突きが見事に命中。ソロモン、少し涙目である。

 

「い、いきなり突撃してくるなと前に会った時、言ったよな。九重…」

 

「そうだったか?すっかり忘れおったわ!」

 

 おい、忘れるなよ…。とアッハッハッハ!と無邪気に笑う九重に心中でシンは呟いた。その少し後、シンと九重の元に妖怪の女性がゆっくりと歩いてきた。

 

「これはこれは、シンはん。お久しゅうございますなぁ。確か、前にお会いしたのは…」

 

「約ニ〜三年前だな、八坂。まだ九重が妖力を完全にコントロール出来なかった頃だ。だが俺はわかるぞ、九重よ。とうとう妖力を自在に操れるようになったようだな」

 

「うむ!ほれ、この通り!」

 

 九重が手に妖力を集め、お手玉くらいの狐火を浮かばせる。その後にも二つ三つと狐火が浮き上がり、九重の頭上をクルクルと回っていた。その様子にシンは笑みを浮かべる。

 

「見事だ。流石は八坂の娘だな。数年後には立派な妖怪大将になっているだろう。お前の亡き夫もさぞ喜んでいるだろうに」

 

「あらあら、九重に妖力の操り方を教えたのはシンはんやろ?その鍛錬が成果として出ても別におかしくないやろか?」

 

「俺が九重に教えたのは、あくまで手に妖力を集める方法だけだ。やり方は魔力同様だから難しくはない。後はそれをどう動かすのかを導き出したのは、他でもない九重自身。これを見事と言わずになんと言うんだ」

 

「なるほど。だからお前さんと別れてからも必死に鍛錬を積んでおったのは、そういうことやったのか」

 

「そういうこと―待て、今何故『お前さん』と言ったんだ?俺はお前の亭主ではない。天に還った亡き夫だろうが」

 

「確かにそうや。じゃが、九重も年頃の娘になってきおった。もうそろそろ九重に弟か妹をと思ってな」

 

 八坂が艷やかな表情をして、シンを見つめる。その目はまるで獲物を狙う捕食者のようだ。

 

「他にも相手はいるだろうに。力なら鬼とか―」

 

「鬼は力バカばかりだから論外じゃ」

 

「なら…」

 

「妾には、シンはんしかおらへんのや」

 

「…」

 

 

 シン・ソロモン

 

 未亡人に迫られるのであった。

 

 

 

 続く!

 

 

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