ブラボ×ソーマ流行れ流行れ。流行るんだよあくしろよ
超不定期。ブラボ×バンドリと掛け持ちで、気が向いたら筆が乗ったら書きます
一話一話短いです
イチャコラが書きたかった人生だった。


自慰文ですので悪しからず


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やっちゃったぜ
まあええわ。(料理描写とかは面倒くさいので書か)ないです


ブラボ×食戟のソーマ

鬱蒼と生い茂る森の中。枝からなる葉は鮮やかな紅に染まり、大地をそして空を紅葉が抱く。

食欲の秋。そんな言葉を聞いたことはないだろうか。秋は美食の宝庫。何もそれは人だけに適用された言葉でも季節でもない。それは、森に住む獣たちも同様であるのだ。

貴方は息を潜めた。狩人の正装である黒装束を身に纏い、手にシモンの弓剣を携えた貴方は、努めて静かに眼前の光景を注視する。

灰の瞳に映るのは一体の鹿。何の警戒心もなく木の根本に生えたきのこを啄む滑稽な様子は、獣にこそ相応しい。

貴方は流麗な動作で弓を番えた。

医療教会、最初期の狩人窶しの狩人、シモンの狩り武器。銃器が狩りの主流だったヤーナムで彼は銃器を忌み嫌った。そんな彼の為に、教会の工房が誂えた特注品。弓形の剣の大きな刃は、仕掛けにより弓に転じる。

彼の友人ですら、獣に弓で挑むなどと、嘲笑ったその武器が、酷く手に馴染んだのを覚えている。

溜めた弓。しなる音が耳朶を打つ。そして、間もなく放たれる。甲高い音と共に放たれた白銀の矢は空気を裂き、吸い寄せられるかの様に鹿の脳天を貫いた。

鹿の体躯が重々しい音を立てて地に伏せた。その音が貴方の狩りの終わりを告げる。

 

 

貴方は血抜きを施した獲物を背負い山を降りる。歩き慣れた獣道を進み、一つの家屋に辿り着いた。寂れたあばら家。それが貴方の家だ。

施錠されていない戸を開け、今朝まではなかった異物に気づいた。几帳面に揃えられた黒い靴。ここに来るまでは小奇麗だったのだろう。しかしながら表面が腐敗土に覆われ、その光沢は鳴りを潜めている。靴の大きさから来訪者は男だと思われる。

しかし、貴方が臆する気配はない。もしも下劣で卑劣で醜悪な魑魅魍魎がいたとしても、貴方はその悉くを狩り尽くすだろう。負けることはない。ある種、慢心ともとれるだろうが断じて違う。己の力を正しく理解しているから、己の能力に絶対的な信頼を寄せているから。それは慢心ではない。強者の余裕。しかし、警戒は緩めない。不意に影が揺らぐ。光が漏れる狭い部屋から独特の雰囲気を纏う大男が現れた。

「いきなり押しかけて申し訳ない」

そう言いながら、男は申し訳なさそうに頭を下げる。躾のなった熊だと、そんな考えをおくびにも出さず、貴方はどうしてここに居るのかを目の前の大男に問いかけた。

「山本さんに紹介をしてもらった」

そう答えた彼を貴方は一瞥した。居る理由は理解した。それについては何も言わない。けれど、あの翁はどうしてこちらに話を一切通さず事を進めるのだろうか。苦言を呈してもあの翁はのらりくらりと躱すのだろう。ああ…と諦念が滲んだ声を漏らし、短く息を吐いた。

すると、彼は鳩が豆鉄砲を食らったような間の抜けた表情を浮かべた。

「そんな顔もするんだな」

どんな顔だと、ほんの少し語気を強めた。彼は慌てて首を横に振り、違うと言い放つ。

「良くも悪くも人形のようだったから…気を悪くしたのなら謝る」

再び頭を下げようとする男を貴方は止めた。よく言われることだ、もう慣れてしまった。貴方は自分の容姿を認識しているし、それがどう思われるかも理解している。だから、怒ることはない。

そう言えば、彼はより一層申し訳なさそうな顔をする。生真面目な性格だと貴方は呟き、ここに赴いた理由を問いかけた。

「君と取引をしたくてここに来た」

曰く、彼は料理人だと。

曰く、貴方は料理界で知らず知らずの内に名を馳せていると。

曰く、貴方の狩りの腕を買ってジビエを斡旋してほしいと。

ジビエの斡旋やら何やらについては貴方はひどく無頓着だ。全て翁に一任しているので何ら関与していない。好きにしろと言えばそれで終わりだが、貴方は彼に一つ条件を出した。期待の表れから出た言葉、実力を示せ。短く紡いだ言葉に彼は力強く頷いた。

貴方は狩った鹿を渡した。好きに使えと言葉を添える。彼の目に炎が宿ったのが見えた。闘志にも似た雰囲気に思わず微笑み、期待をより一層募らせた。

彼が料理を作り終えたのは、西に蟠った闇が空と複雑に絡み合い、混ざり合い、夜となろうとする時間帯。彼は料理を載せた皿を貴方の目の前に置いた。

「どうぞ」

皿の上に鎮座するのは、飾りっ気のない焼かれた鹿肉。それを見て、貴方はひどく落胆した。これぐらいなら貴方でも作れる。そう思ってしまった。けれど、すぐにそんな思考は捨てた。まだ食してもいないのに上辺だけで価値を決めるなど愚者のすることだと、思い留まった。

貴方はナイフとフォークを巧みに使う。何の抵抗もなく裂ける肉。切っている感触は極めて希薄で、思わず鹿の肉なのか疑ってしまった。

恐る恐るといった風に口許に運び、口に入れ、咀嚼し、飲み込み、そして交信した。

それは筆舌に尽くし難いものだった。料理についての感想は美味いとだけ。貴方の言葉が異常に少ないだけかも知れない。けれど間違いなく言えるのは、今まで口に入れてきたものの中で一番美味いということ。

一瞬で皿が空になった。役割を果たした食器を置き、口許を拭った。

貴方は、彼に興味を持った。全力ではないのだろう。調理環境も何もかもが彼が満足できるようなものではなかったはずだ。けれど、それでも彼は素晴らしいものを作り上げた。

なら、もし彼が最高の環境で尚かつ全力で料理を作ったのなら、それはどのような味になるのだろうか。それはもう神の領域に至るものではないのか。貴方は年甲斐もなく心を踊らせた。

彼の料理を食したい。その領域に至るその時を見届け、食したい。だから、貴方は笑った。能面のように張り付いた顔に、美しい花々のような満面の笑みをたたえ、彼を見つめた。

貴方は彼に名を尋ねた。すると、男は驚いた表情をたたえながら、鋭い眼光で貴方を射抜き、口を開く。

「堂島銀」

貴方は口許に手をやると、小さな声でたどたどしく復唱し、視線を下に彷徨わせる。それから思い至ったのか顔を上げた。

そして、貴方は見るものすべてを魅了する蠱惑的な笑みを見せ、銀と、囁いた。彼の顔が心なしか赤みを帯びたように見えた。貴方は微笑む。貴方を知るものなら驚愕するだろうその表情は、貴方の機嫌の良さを顕著に表していた。

 

それから、貴方は彼と関係を持った。貴方が食材をとり、提供し、彼が腕をふるう。その関係を見た翁からはビジネスライクな関係と言われたが貴方はその関係で満足していたし、きっと彼もそのはずだ。

光る液晶に目が移ろう。何ヵ月前かに彼から渡されたスマートフォンなるものに映し出された几帳面な黒の文字。

貴方の交友関係は極端に狭く、寂しいことに二人しか連絡先は交換されていない。一人は翁、もう一人は銀。翁の方は口頭で訊いた方が早く終わることもあり、もはや形骸化している。その事を鑑みれば、その宛先人は銀であることは明確で、貴方はそこに記された文字に心を踊らせた。

『迎えに来た』

言葉の羅列に心躍らすなど、あの夜に身を挺していた頃は思いもしなかっただろう。その変化の良否は定かではないが、貴方は現状を好ましく思っている。そこに何人の意志は介入しない。

貴方はそそくさと身支度を済ませ家を後にする。軽やかな足取りで彼が待つ場所まで歩を進めた。




おはようこんにちはこんばんはおやすみなさい


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