授業が終わり、爆豪はとっとと家に帰ってしまったらしい。
「(まあ、飯田君の事を初対面で端役とか見下しといて自分はそれ以下とか居た堪れなさ過ぎるよね。自業自得だけど)」
そして緑谷は、また皆に挨拶して回って、かつての記憶と同じ様に、残ったクラスメイトも巻き込んでまた特訓だ。 相澤先生に許可を頂いて、ついでにB組に残っていた拳藤さんや塩崎さんなんかも誘ったりして、テンションを上げつつ準備万端!特に、塩崎さんの茨の使い方はすごい参考になりそうだしと思い、積極的に声をかけた。
入試の時にこの世界に現れてからずっとテンション低空飛行を続けていた緑谷だが、他のクラスメイト達と共に活動ができるようになって、ようやくテンションが上っていた。融合したもう一人の自分は、中学の時は友達なんて居なかったし、女子と話す機会もなかったしで、凄いテンションが上っているのだろう。ウキウキしながら、全力で身体と個性を使う準備をしている。
そして、そんなテンションの高さは他の皆にも伝わっちゃったようで……
「しかし緑谷、お前テンション高いな?」
「そうね。緑谷ちゃん、すっごく嬉しそう」
切島と蛙吹が、感心したように声を掛ける。他のメンバーも似たり寄ったりだ。
「うん! 入試の時までずっと個性が発現しなかったから、思い切り身体も個性も動かせるのが、凄く嬉しくて! それに、こんな風に、学校で話せる人がいるって本当に楽しくて!」
満面の笑顔で喜びを表現する緑谷に、みんなほっこり心が温まりかけて――拳藤や蛙吹が気がつく。
「……学校で話せる人が居るのが、楽しい?」
「ケロケロ。緑谷ちゃん、それってひょっとして……」
一転してしまったと言う表情になる緑谷。だが、注目は既に向いてしまっている。
「……ああ、うん。……えっと……実は、中学までずっと友達居なくて……4歳の頃からみんな"無個性"の僕を馬鹿にしたり虐めてきたりして……」
「えっ……!」「そ、それって……」「な、何だよそれっ!?」「オイオイ、洒落にならねーぞ……」「罪無き子羊に石を投げるなど許されることでは有りません……」
それを聞いた一同は驚き、また憤る。皆、中学の時の同級生たちみたく、なんちゃってヒーロー科志望ではなく、皆が選びぬかれて入学した生粋のヒーロー志望である。そんな理不尽を許せる者は誰も居なかった。
「ちょっ!? そ、それ先生はっ!? 先生とか止めてくれなかったの!?」
「…………先生も、見て見ぬふりだった…………」
本当に、あまりにも酷すぎる環境である。あのままでは、爆豪の言う通りに"ワンチャンダイブ"してもおかしくなかった。それでも雄英に入れるだけの頭は維持して、その上でオールマイトから提示された以上の鍛錬を1年近く続けられた元の体の緑谷も、恐ろしく精神的にタフだ。
「……爆豪ちゃんの言ってた"デク"って呼び方は……」
「あ、ええと……うん。僕は無個性だから、一番凄くないでくのぼうの"デク"だって……。出久って漢字が、デクって読めるから、余計に……」
その言葉に更に沈黙が降りる一同。おおよそヒーロー科に来る人間がして良い言動では無い。初日から酷かった爆豪の好感度はだだ下がりどころかストップ安である。
「で、でももう良いから! 僕は、ヒーローを目指すから! 過去の憎しみに囚われちゃきっといけないから! ――それに」
『それに?』
「僕を虐めてたクラスメイト達も、皆ヒーロー科志望だったから、彼等より凄いヒーローになって見返してやろうと思って」
「……そうだな、そっちの方が良いな!」
「ケロッ……緑谷ちゃん、憎しみに囚われないなんてとっても凄いわ」
そう、何時までも憎しみに囚われてはいけないし、積極的に絡みに行くことも無いのだ。……向こうが積極的に絡んで来るが……。
まあ、そんな悩みは置いておいて特訓である。前よりも身体能力がかなり低いので、黒鞭の許容上限を上げると共に身体も鍛えるため、黒鞭でセメントブロックを引き寄せひたすら殴る蹴る。地道な個性と肉体の使用の反復が、結局の所強くなる一番の近道かもしれない。
前より低い身体能力、前より増えた個性。ひとまず、身体能力が元の世界並みに戻るまでは戦闘スタイルからガラリと変えていかねばならない。待っているのは強敵達――。ならば、頼るのは心苦しいが、オールマイトには真実を話して、今のうちから対策を練るべきだろう。あの人ならば、きっと信じて受け止めてくれる。そんな確信が有るのだ。
出来ることには限界があるけど、その限界を伸ばすことは出来る。そう信じてひたすら個性を使って、殴る、蹴る、ついでに投げる。それを繰り返した結果――
「あっ……」
「「「「「み、緑谷(くん)(ちゃん)(さん)!?」」」」」
加減を間違えてうっかり気絶してしまった緑谷だった。慌てて保健室に運ばれ、起きたらリカバリーガールのお説教が待っていた。オールマイトからは心配され、ついでにお母さんからは泣かれてしまって反省するばかりである。――と言っても入学直後から既にイベント目白押しなので、それがどうしても焦りに繋がってしまうのだ未来を知るからこそ、逆に今の手札だけでは凄い不安であり、夜嵐の変わりに爆豪がA組に居るので戦力的にも不安だからだ。戦闘力は負けず劣らず有るのだが、協調性0だと不安しか無い。
と、今日も悩ましい日は続くのであった。
【本編に出せないっていうか酷すぎて入れられない原作展開なおまけ】
授業参観――出久には二度目のイベントであるが、皆にとっては初めての出来事。当然、みんなはショックを受けているし、自分もそれに合わせて演技する。それに、下はガソリンだったり、ぽつんと土柱の上に檻が置かれているしで、何か有ったら危ないのは変わりない。前は相澤先生に注意をされたし、今度はうまくみんなでやろうと考えていたら――
「ボクハユウエイニオチタ。ユウエイニハイッテヒーローニナルノガ、ボクノスベテダッタノニ。ユウシュウナボクガオチルノナンテ、ヨノナカ、マチガッテル。セケンデハ、ボクハタダノオチコボレ。ナノニ、キミタチニハ、アカルイミライシカマッテイナイ。ダカラ―――」
「要するに八つ当たりだろうがクソ黒マントが!!」
ヴィラン役のオールマイトのセリフを遮り、爆豪が叫ぶ。
「爆豪!?」
いやちょっと待て、相手には人質が居るんだぞ。暴発したらヤバイんだぞ!?と、心の中で怒涛の突っ込みが生まれるが――更に斜め上の行動に出る爆豪。
「めんどくせえ、今すぐブッ倒してやるよ…………!」
そう、不敵な笑みを浮かべて、手のひらで爆発を起こす爆豪。そのまま檻へダッシュするつもりなのか――
「バカかお前は!?!?!?!?!?」
耐えきれず我慢ができなくなり、緑谷が黒鞭で拘束した。ついでに瀬呂がテープを飛ばし、梅雨ちゃんも舌でぐるぐる巻きにしている。完全拘束3段重ねである。
「なっ、何しやがるっ!?」
「それはこっちのセリフだよバカ野郎! ガソリン有るんだぞ!?」「おめー何考えてんだ!? ばっかじゃねぇのか!?」「お父さん、危ないの。それに他のみんなの保護者の人たちも……!邪魔よ、爆豪ちゃん……!」
あまりの斜め下に逆に驚いて正気かと問い詰めたくなる緑谷。瀬呂もキレているし、珍しく蛙吹までが声を荒げて、拘束する。そのまま瀬呂がテープでがんじがらめに縛ってついでに口にもテープを張っておくと、後ろに転がされる爆豪。
そのまま授業参観終わりまでほっとかれ、ついでに爆豪の母親も頭を抱えている。
そして、授業終了後。
「――爆豪、お前、もう明日から来なくていいぞ。学校に置いてある荷物は纏めて出て行け」
「なっ!?」
相澤先生から、冷たく突き放される。それに対する同情の目線は無い。アレが本物のヴィランだったら、自分の大切な人が死んでいたかもしれないのだ。流石に看過出来ない。
「人質が檻の中にいる、ガソリンの臭いが漂っているあの状況で正面から爆破しに突っ込んだ合理的な理由が有るなら取り消してやろう。何だ?有るか?」
有るはずがない。と言うか、あの状況で爆豪が真正面から突っ込んでやれることなど何一つ有りはしないのだ。
「ヒーローとは戦闘力も大事だが、何よりもまずは人を救けることが大事――それを、色々な先生が教えてくださった筈なんだがな……。その言葉はどうやらお前には何も響かなかったようだな。それを顧みない限り、お前は決してヒーローになれる事は無い。――才能は有ったはずなんだがな、残念だ」
最後の相澤先生の一言が本音なのだろう。複雑な表情を浮かべるクラスメイト達。もう少し、何か出来ることは有ったのではないか……そう考えてしまうが……果たして出来ることは有ったのだろうか?
こっちの執筆が滞ってる理由がこのおまけの方の話に集約されてます。素の爆豪そのまま書くと、態度やら何やらでアウトな話が多すぎるんだもん! それ注意されておとなしくなったら他のSSみたいに、爆豪がマイルドになったSSになっちゃうし!
……いやだってね、これ素でやられたら、贔屓抜きでまともに考察したら一発除籍でしょ?なんで小説版でこれ誰も注意しないの?
相澤先生、
「犯人は一人だぞ、わらわらしすぎだ。無駄な時間が多い」etcetcと、こんな事注意する前にまず爆豪ぶん殴れよ!?ギリギリ合格だじゃねぇよ! 一人一発アウトな奴が居るだろ!救助の手順ミスったとかそういうレベルの問題じゃねーだろ!? ヒーローとして一発退場レベルのやらかしだろ!?