佐倉蜜柑の兄は運命に抗う   作:こむぎ子

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02話 脱走の果てに

 わいわいガヤガヤと村の人達が集まって蛍を見送りに来た。とうとう原作の一話がはじまるのだ。

 

「蜜柑ちゃん遅いねぇ」

「どうしたんやろな」

 

 学校の子たちが蛍の親友の登場がまだないこと不思議がっていた。原作の知ってるから言えることだが、蜜柑の言う通り蛍の愛は分かりづらい。

 

「蜜柑もそろそろ来るよ、蛍」

「来夢くん」

 

 カメだかスッポンだかのメカ片手に蜜柑が走ってくるはずだ。そうなると蛍と会話も出来ないだろうし、あの蜜柑と蛍のやりとりに間に入るほど無粋ではない。今のうちにお別れをする。

 

「蜜柑に黙っておいてくれて助かったわ。あの子知ったら毎日泣きついてくるの、目に見えるから」

「まぁ、たしかにな。それに蛍から蜜柑に話すんだろ?まだ来てないってことは何かしたん?」

 

 既に知ってることだが聞いておかない訳にはいかないだろう。これから先も知らんふりをする気苦労が確定して少し落ち込む。

 

「ええ」

「……そっか。次会えるのいつだか分かんないけど、元気でな。餞別、車の中ででも食べて」

「ありがとう」

「蛍ーーーー!」

 

 さっくりとお別れをした後遠くから蜜柑の声が聞こえて、2人して振り向く。「大ボケボケナスゥーー!!」を開幕に2人の劇場が始まったのでサッと身を引く。

 ちなみに餞別の中身は佐倉家お手製(蜜柑をのぞく)ミニカップケーキです。こんなド田舎でもホットケーキミックスは優秀なのだ。

 そうこうしている内に蛍が車に乗って、みんなに見送られていった。

 遠くに行く車を見ながら、隣でベソベソ泣いていた蜜柑が縋り付いてきた。

 

「来夢もなんで黙ってたんやぁ」

「蛍も言ってた通りだよ。蜜柑が泣きついてくるだろうからって。それに蛍から蜜柑に伝えるって言われてたん」

「うぅ、それにしたってこんなギリギリなんて、蛍も来夢もハクジョーもんや!」

「そうやね、ごめんごめん」

 

 蛍の事情も蜜柑の気持ちもわかる分、自分に出来ることは今べそかいている蜜柑を宥めることだと、纏わりついてくる妹の頭をひたすら撫でる。

 ひどい、あほぉ、(蛍から教えてもらった)冷血漢と言葉を来夢にぶつけながら、蜜柑は泣き荒れた。

 それでも蛍がくれたカメ便をぎゅっと離さない蜜柑をみて、来夢はさっそく蛍に書く手紙の便箋を買いに行こうと提案した。

 

 

 

 半年後。あの日から欠かさず郵便ポストを探る蜜柑がやっと蛍から手紙が来たと喜ぶのも一瞬、半年もかかった事とその素っ気ない文章に泣き崩れていた。

 

「蛍ちゃんは面倒臭がりだからのぅ……」

「しかも暑中見舞いにしても素っ気ない文やもんなー」

「うわーん!来夢やって手紙書いたのにこの内容でなんとも思わんの!?」

 

 来夢も勿論手紙書いたが、2日に1回出してた蜜柑ほどではない。事情を知っているから、桜が咲いて五年生になりましたと、学校で無理してないかと聞いた2回だけである。

 原作見てても思ったが、手紙の検問厳しすぎると思う。面談も電話もできないのだから手紙のセーフティラインを上げるべきだ。てか電話もできないって学園のセキュリティレベル変なとこで謎だ。

 

「寂しいけど蛍が元気そうでよかったやん」

「うぅ、来夢は淡白やねん。蛍はうちを捨ててトーキョー行ったっきりやし、うちは不憫やぁ〜〜」

「ほらオヤツにホットケーキ焼いてやるから」

「2枚じゃなきゃ嫌やぁ〜〜」

「はいはい、じいちゃんは?」

「わしは1枚でええのぅ」

 

 佐倉家では今日もホットケーキミックス大活躍なのである。

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 蜜柑が泣き腫らした顔で学校から帰ってきた。原作通り蛍の母から、学園と蛍のことを聞いたのだろう。

 じいちゃんに心配されてたが、蜜柑は学園に行くと決めているからか心ここに在らずって感じで夕飯を食べてた。

 多分明日になったら蜜柑元気になってるよと、じいちゃんにおやすみを言って布団に潜り込む。

 実際アリス学園に仮入学し、北の森を経てアリスが判明、蛍と一緒に居られるということで元気になる。

 

「来夢もごめんな……」

 

 ウチ、どうしても行きたいねん。夜寝静まった頃、来夢の布団の側でポツリとそんな言葉を零していった。

 じいちゃんの枕元に置き手紙をしてヘソクリを持っていったのだろう、ガラガラと玄関の閉まる音を聞いてから寝た。

 

 

 

 そしてその日を境に、暗転する現象が無くなった。

 

 

 

 

「孫が家出したーーっっ」

 

 朝一番にじいちゃんの声がご近所中に響き渡る。その声に導かれたみんなが集まっていた。いつかやると思ってたのよあの子なら、愛じゃのぅ、すごーいみかんちゃん、と外が騒がしい。

 

「もう片方の孫はココにいるでじいちゃん」

「来夢!蜜柑がへそくりと共に家出したんじゃ!」

 

 空っぽになった壺を抱えながら怒髪天のじいちゃん。問題行動の多い妹である。もっともこうなる未来を知ってた自分が言うのもなんだが。

 

「しかし蜜柑はへそくり持って一体どこに……」

「昨日クラスで蛍の行った学園について話してたんよ。だから行くとしたら蛍のいる東京やと思う」

「東京!?そないところ小学生がひとりで行くなんて蜜柑は何を考えているんじゃ……」

 

 蛍のことだと思う。そんな言葉をとりあえず飲み込んで、じいちゃんを宥めながら朝食を摂り学校へ向かう。

 流石は田舎、蜜柑がへそくり掻っ払って家出したことはもう広まってた。

 

「蜜柑ちゃんトーキョーに行ったんやって?」

「多分ね〜」

「なぁなぁ、やっぱり昨日のうちらが言ってたせいかな?」

「事情を知ってすぐ行動するところはすごいよな」

「来夢、アリス学園ちゅーとこ知ってたん?」

「いや、昨日の知ったばっかりや」

 

 知識をみんなに合わせつつ、女子にも男子にも挙句には先生にも質問攻めされた。田舎からしたら蛍のアリス学園入学以来のビッグニュースだから仕方ない事だけども。

 ネットなんてまだ普及してないから、アリス学園の実情なんて本当に限られた人しか知らない。

 クラスのみんながどうやって会いに行くのか予想を立ていて、その日は一日中授業がままならなかった。

 

 来夢くんは蜜柑ちゃんと一緒に行かへんかったの?来夢くんも蛍ちゃんと仲良かったやん。

 

 クラスメイトから投げかけられた問い。結論からいうと行けるかわからないから行かなかったのだ。

 勿論、蜜柑は来夢を一緒にいこうと誘わないだろうと最初から思っていた。

 蛍と蜜柑の間にある親友同士の感情に入れるものなど無いし、そこに自分は大いに無粋である。

 行けるかわからないというのは、アリス持ちだったら無理矢理でもついて行って、蜜柑が危険な目に遭わないようにすることもできたであろう。それが物理的に出来ないのだ。

 つまり、来夢自身アリスを持っているかどうかわからないのである。

 蜜柑のアリスは「無効化」で、近い将来「盗むアリス」と「入れるアリス」が現れる。どちらも他のアリスありきの能力だから、学園に行って初めてわかるのだ。

 同じ遺伝子を受け継いでおり、双子である来夢自身アリスを持っている可能性は高いと思われる。だがその3つのうちのどれか、もしくは全部だとしても実証するすべがない。

 別に蛍のアリス無効化にできなかったし、盗む気配もなく、アリスストーンが無いので入れることもできなかった。

 手を合わせてアリスストーン出来るかと思ったが、それも何の反応もなかった。

 もしかしたら全く違うアリスかもしれないとこの10年、意識があるときは色々な事をした。習い事したり、勉強しまくったり。一番頑張ったのは厄介ごとや揉め事にも間に入りわざとトラブルに巻き込まれたのだ。

 何かの拍子にアリスが出現するのではないか、という考えでの行動であったがそんなこともなく今日まで来た。余談だが、この行動が基にみんなのまとめ役と認識されてたのだが、来夢自身そう思われていることに無自覚である。

 原作の主要人物は兄弟でアリスが多かったから忘れていたが、兄弟でもアリスが出るか出ないかはわからないらしいし、来夢はアリスが「無い」かもしれないと思い当たった。

 できる限りの事は調べたし、確証もないので正直お手上げ状態。

 まあ、蜜柑にとって今の段階ではまだ危険なことも大事な繋がりになるし、今のところ大丈夫だろ、というのが来夢の考えである。

 

 今頃蜜柑は北の森だろうか、と考えながら帰宅する。放課後遊びに誘われたが、じいちゃんが心配なので全て断ってきた。

 原作ではコマが小さかったが、ここからじいちゃんは蜜柑の安否もわからず、突然の全寮制の入学で心労から病気になってしまうのだ。

 せめてもう片方の孫である自分はそばに居なくては。

 自分が非アリスの可能性も考えて、これからどうするかも決めなくてはいけない。

 自分がいる時点で「本来の」物語からだいぶズレはあるのだ。できれば多くの人に生きてもらいたい。目の前で死を見たとき、きっと自分は耐えられないだろうから。

 

 ──その日の夜、一通の電報が届いた。

 

 知ってはいたが、呆然としているじいちゃんを見るといたたまれなかった。

 カタカナ混じりの文章は、素っ気ない通り越していっそ冷たかった。

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 蜜柑が入学してから1週間とちょっと。蜜柑は毎日手紙を書いているのにも関わらず、いっこうに祖父からも兄からも返事が来ないことに切羽詰まっていた。

 

「じーちゃん〜〜らいむぅ〜〜手紙〜〜」

「ええい鬱陶しい」

「んぎゃっ」

 

 蛍と心読みに蹴られて呻き声をあげる。じーちゃんは拗ねると長いし、来夢も勝手に行ったこと怒っているのかと蜜柑は不満気だった。

 今2人はどうしているか知りたい一心で占いのアリスの音無さんのダンスをする。

 

「らいむってだぁれ?」

「蜜柑のお兄さん。ミカンとライムで柑橘系のキョーダイなのよ」

「へぇ〜蜜柑ちゃんお兄さんいたんだ〜」

 

 外野でそんな話をしている間に、音無さんのダンスが終わった。

 

「佐倉さん……貴女のお爺さんとお兄さん、今この学園に来ているみたいよ」

「へ?」

「門前で『孫に合わせろ』としつこく食い下がっては追い返されるエンドレスバトルが見える……。横でお爺さんを支えているお兄さんも見えるわ……」

「な、ナニソレ!?」

 

 委員長と蛍に咎められたが、諦めきれず泣き止まない蜜柑に蛍が折れて、発明品で外門近くまで見せてもらえることになった。

 

「見て!じーちゃんと来夢や!来てくれたんや!」

「うるさい」

 

 たしかに学園の外門には蜜柑のお爺さんと兄の来夢が来ていた。しかしすぐ様子がおかしいことに気付いた。

 

『お願いです、孫に、ここに入学した孫に会わせてください』

『せめて声だけでも、手紙でもいいんです。なんの音沙汰もなく心配で夜も寝れなくて』

『こう毎日来てもらっても会わせることはできないんです』

『じいちゃん、夜眠れてないからフラフラや、今日はもう無理しないで』

 

 やつれている祖父、心配気な兄、そして会話の内容。全てが意味わからなかった。

 そのあとすぐに棗から一方的に手紙が一生届くことはないといわれ心が大いに荒れた。棗の言う事を否定したいが実際に届いていない。そこでまた蛍の発明品を使って手紙を書いた。

 真実は、届けるどころか燃やしていたという蜜柑にとって残酷なものだった。

 

 

 

(……今日くらいに蜜柑は脱走するかな)

 

 正確な日にちは覚えていないため、来夢は蜜柑が入学してから1週間すぎたあたりから、夜のアリス学園の外壁近くを張っていた。

 蜜柑が蛍の発明品でじいちゃんを見たらもう京都に帰るつもりでいた。

 しかし、実際に蜜柑が脱走するまで「見た」後なのかわからないため、こうしてじいちゃんと泊まっているホテルを抜け出して待っている。

 勿論夜道対策に防犯ブザーを片手に握りしめている。

 自分がいる事でもう原作通りではないが、何が起こるかわからないのもこわい。出来るところは原作に寄せておきたいのだ。

 

(合気道で鍛えてるけど所詮は小学生。大人に絡まれたら厄介だ)

 

 そんなに沢山の習い事はできなかったが、じいちゃんの友達の田中さん(74歳)が教えてくれた合気道は重宝してる。でもその出番は無い方がいいに決まっている。

 とにかく夜道で人に絡まれず、蜜柑と鳴海先生を発見次第帰るだけだ。

 ここに来るまでだって、じいちゃんは蜜柑が心配だからすぐにでも学園に行くと聞かず、付いていくと言っても来夢は学校行きなさいと言われ、やっとの事で一緒に東京まで来たのだ。

 蜜柑がじいちゃんを確認次第、じいちゃんには自宅養生してもらう必要がある。

 夜寝れなくてやつれていくじいちゃんを見るのは辛かったが、蜜柑と鳴海との信頼関係にはこのイベントを外すわけにはいかなかった。

 その時の鳴海の言葉が、蜜柑のチカラになるのだから。

 

 遠くから、バチッという音がした。

 きた。出来るだけ物音を立てずに音源の方に向かう。

 

「気を付けろ、どんなアリスを持ってるかわからないぞ」

「さっさと気絶させて車にでも入れろ」

 

 そこには2人の男に捕まっている蜜柑がジタバタ暴れているところだった。

 すぐ逃げると思ったが、様子がおかしい。

 原作では蜜柑は男たちから逃げ、そのすぐあとに鳴海が来るはずだ。

 蜜柑は男たちの手に捕まったままだし、その周辺に鳴海の姿が見えない。そうこうしている間に蜜柑が車の近くまで持ち上げられていた。

 

(──蜜柑っ!!)

 

 反射的に手元の防犯ブザーの起動棒を思いっきり抜いて男たちのところにぶん投げた。

 耳をつんざくような音が響き渡り、蜜柑を掴んでいた男がビックリして手を緩める。その隙を逃す事なく蜜柑は逃げ出した。

 その音につられてチラホラ人が集まり始める。

 焦り始めた男たちが再び蜜柑の腕を掴んだ瞬間。

 

「うちの生徒に指一本触れるな」

(……やっときたぁぁ)

 

 鳴海が登場し、来夢はひとまず2人がギリギリ見えるところまで逃げた。

 鳴海が来てくれたことで安心したが、今2人に会うわけには行かない。

 男たちが学園の先生が来た事で、捕まることを恐れ鳴海目掛けて爆発物を投げる。

 防犯ブザーの比ではない音が鳴り響いた。

 

(漫画じゃマイルドな表現されるけど実際に見ると血の量がエグい……)

 

 この先の学園アリスの世界で「わたし」はやっていけるのだろうか。不安を胸に抱きながら、とりあえず今も鳴り響いて止まない防犯ブザーの起動棒を2人のそばに投げ、そのままホテルまで走り去った。

 2人を確認出来たことだし、明日はじいちゃんと帰れそうだ。

 

 

 

 コツン。ボロボロな鳴海とごめんなさいと謝る蜜柑のそばに小さな棒状のものが転がった。

 蜜柑は何か分からなかったが、鳴海は思い当たりがあったのだろう、近くに転がっている鳴り止まない防犯ブザーを拾い、その棒状のものをくっ付けることで音を止めた。

 

「鳴海先生、それ……」

「うん、どこから投げられたのかわからないけど、この音のおかげで蜜柑ちゃんの正確な位置が分かったんだよ」

「う、うちも、その音のおかげで、男の人から逃げられてん」

「……そっか。うん、そうだね。僕らは運が良かった。帰ろう、蜜柑ちゃん」

 

 以前と違う外の危険を肌で感じた蜜柑は、そのまま鳴海と一緒に学園に帰っていった。

 蜜柑は初等部寮に帰らず、学園の教員寮に泊まっていくこととなった。

 祖父の病気が心配な蜜柑に、鳴海はその事は僕がなんとかすると言う。

 色々あって信じれなくなっていた蜜柑だが、飾らない言葉をかけられ、もう一度信じたくなった。

 人恋しくなった蜜柑は一緒に寝てもいいかと鳴海の寝室を訪ねた。

 勿論と了承した鳴海は蜜柑の思い出話に華を咲かせていた。

 

「おばけこわい時、よくじーちゃん一緒に寝てくれてん」

「うんうん」

「来夢も普段布団離してるんやけど、じーちゃんが先に寝ちゃったときはくっ付けてくれるんや」

「そっかぁ、お兄さんとも仲がいいんだね」

「うん!……来夢はなんでも出来て、優しくて、たまに作ってくれるおやつも美味しいねん。勉強も好きでな、そこはうちと双子とは思えんってじーちゃんによく怒られてん」

「……ふたご?」

 

 穏やかに蜜柑の話を聞いていた鳴海が、驚いた表情になった。

 

「うん、来夢は双子のおにーちゃんや」

「……へぇ〜、蜜柑ちゃんからよく聞く来夢くんの印象、しっかりした子だから年が離れている兄妹かなって思ってたよ♡珍しいね、男女の双子って」

「えへへ」

 

 自分の兄が褒められて嬉しい蜜柑は、鳴海が一瞬思案顔になっていたことに気付かなかった。

 ──蜜柑ちゃん、信頼し合える仲間を沢山つくるんだ。

 鳴海と話していた蜜柑は、やがて眠り始めた。蜜柑が寝付くまで鳴海はずっとそばにいた。

 

(ここに来て双子だったと知るとはね……)

 

 鳴海の机の中にある一枚の調査報告書。佐倉蜜柑の個人情報が書かれており、祖父との関係は養女であった。家系図で兄がいる事も、蜜柑との話からちょくちょく「兄」のことが出てたのでいることは知っていた。

 ただ「あの人」が学園から消えた状況を思えば、子はいても1人が奇跡だと考えていた。蜜柑の言う兄は養われ先の家族、祖父と本当に血が繋がっている年の離れた子だとすっかり思い込んでいた。

 蜜柑が「あの人」の子である事も確信が無い今、確かなことは実際に血が繋がっているのは蜜柑と来夢であり、蜜柑共々養子なのだろう。

 

 アリス持ちの可能性がある。

 

 学園から目を背けさせたい気持ちもある。これ以上、佐倉蜜柑の祖父から「家族」を引き離すことになるかもしれない。

 ただ、どんなアリスを持っているかわからない以上、学園の外では今日みたいな事が確実に起こる。

 万が一、人目のあるところでアリスが発現してしまったら?人身売買の組織に学園より先に目をつけられてしまったら?

 何より、「あの人」の手がかりだとしたら?

 蜜柑の入学から1週間が過ぎた。学園側も身辺調査が個人から周囲に向く頃だろう。

 鳴海自身、学園から目を盗んで蜜柑祖父に会うという立場が危うくなることをするつもりだ。

 自分が報告するしない関わらず、蜜柑の双子の兄来夢に学園の調査の手が伸びるかもしれない。

 

 ──それでも、報告しないわけにはいかない。

 

 自分のために、学園のために、「あの人」ために。

 できることなら、非アリスであることを願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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