ダンジョンにユグドラシルの極悪PKがいるのは間違っているだろうか? 作:龍華樹
「あんのドグサレ、うちの前に連れてこ━━━━い!!」
ロキ・ファミリアの主神、ロキは荒ぶっていた。
ここはロキ・ファミリア
普段はダンジョン深層への遠征前に、全員参加の打合せなどで使われる大広間には、上はファミリアの古参幹部から、下は入団したての下級冒険者に至るまで、全員が勢揃いしていた。
議題は昨夜、『豊穣の女主人』において起こった前代未聞の珍事件についてである。
朝一で休暇中の団員を含めた全員に緊急招集がかけられ、わけが分からないまま集められた彼らに配られたのは、とある女性の似顔絵一枚。
そして開口一番、彼らの主神であるロキから発せられたのが冒頭の台詞だった。
ロキはよほど腹に据えかねているのか、とにかく探し出して連れてこい!と繰り返すばかりで要領を得ず、見かねて口を出した団長のフィンも具体的な捜索理由については言葉を濁し、事件の現場に居合わせた者達も口をつぐむばかり。
招集された大多数の団員は首をひねり、憶測を混じえて勝手に噂しあった。
「…なあ、俺は昨日、歓楽街で羽伸ばしてたんで、何があったか知らないんだが?」
「いや、俺もベートさんの財布にたかるわけにはいかないから、パスしてた」
「豊穣の女主人で一悶着あったらしいぞ?」
「なんでも、この似顔絵の女にロキがとんでもない大恥をかかされたとか何とか」
「それって、いつものセクハラの自業自得じゃないの?」
「それがね、見かねて止めに入ったベートさんが返り討ちだそうよ。手も足もでなかったらしいわ」
「マジか!?気にくわないが、ベートは強い。てことは相手は少なくともレベル5以上だよな。それならすぐに割り出せそうなもんじゃないか?」
「面子の問題かな?内々に詫び入れさせる、とか」
「まったく、何処のファミリアだ。うちに喧嘩売るなんて」
「…この似顔絵、結構美人じゃね?」
「最低」
手がかりはその場に居合わせた者達が一晩で作ったという似顔絵に、種族はヒューマン、後は『キルコ』という名前のみ。恐らくレベル6クラスの力量があるため、見つけても幹部以外は手を出さないように、ということが徹底される。
あまり事件そのものを大っぴらにしたくないロキの意向もあり、賞金をかけるという案は却下され、関連するファミリアにも話は通さず、あくまでロキ・ファミリアの総力を挙げて捜索を行うという行動方針が示された。
秘密裏に動かざるを得ない状況での捜索は、最初から困難が予想されたが、かつてないほど怒りをたぎらせて眷属に檄を飛ばすロキの様子に、徐々に団員達のボルテージも上がった。
ロキは普段はひょうきんな行動が多く、女性団員へのセクハラなどで煙たがられてもいるが、自身のファミリアの子供たちへの愛情は深く、また眷属達のロキへの信頼も厚い。
主神の怒りは子の怒りである。
「どんな手をつこてもええ!必ずうちの前に、首根っこひっつかんで来るんやで!!わかったか!!」
「「「おう!!!」」」
その日の夕刻、『第1回ドグサレ捕獲作戦進捗会議!!』とロキ自身の荒ぶる手書き文字が張り出された会議用の一室で、ファミリアの主だった幹部が勢揃いしていた。顔が見えないのは、昨夜の騒動のもう一人の主役、ベート・ローガだけだった。
「で、状況はどないなっとるんや?」
「余り芳しくはないね」
まず口火を切ったのはファミリア団長、フィン・ディムナだった。
「まず、豊穣の女主人亭周辺の聞き込みについてだけど、有力な目撃証言は皆無だ。少なくとも相手の居所や正体については依然として何もわからない」
明日からオラリオ全域まで捜査範囲を拡大するつもりだ、とフィンは続けた。
「僕自身はミアさんに詫びを入れるついでに店の方に探りを入れてきた。実は入れ替わりで、相手がもう一度来店していたらしいんだが…」
「なんやて!」
興奮するロキに首を振りつつ「慌てて引き返したけど、タッチの差ですぐに姿をくらましたらしい」と話すと、ロキ以外にも会議室の中から落胆する声が上がった。事件に直接居合わせなかった幹部の中には、この不毛な大動員に乗り気でない者もいるのである。
「騒ぎを起こした詫びとして、未払いだった飲み代に迷惑料込みで、そこそこのヴァリスを置いていったようだ。ちなみに、昨日が初めての客だったそうだよ」
初見の客となると、これ以上店の人間に話を聞いても無駄だ。何より、あの店はロキ・ファミリアとして贔屓にしてはいるが、店主は最大のライバルであるフレイヤ・ファミリアの元団長。あまり無理を利かす訳にもいかない。
「念のためにしばらく昼夜交代で店の周りに人を張り付かせている。二度あることは三度あるとはいうけど、当然相手も警戒しているだろうから、あまり過度の期待はしない方がいい」
最後に、店主からロキとベートはしばらく店に出禁を言い渡された、と付け加えてフィンは報告を終えた。
次に発言したのは、アマゾネスの姉妹だった。
「私達は団長の指示で何人か連れてギルドに行って来たよ。各ファミリアの登録名簿を確認したり、受付担当に片っ端から声かけて聞き込んでみたけど、収穫ゼロ。少なくとも、ギルドに届け出をしている正規の冒険者じゃないね」
「となると、他の土地でレベルをあげて、最近オラリオにやってきた、という線もありえるか」
フィンがそう指摘すると、姉妹の顔がやや曇った。
ティオネ・ヒュリテとティオナ・ヒュリテの祖国、テルスキュラがよい例だからだ。
闘争と殺戮の女神カーリーが運営する国家系ファミリア、テルスキュラ。団員はアマゾネスのみで構成され、ダンジョンでの経験値を得ずに高レベルに至った眷属が多数存在する。
だが、その理由は凄惨の一言に尽きた。人とモンスターを、あるいは人と人を、どちらかが生き残るまで殺し合わせることを繰り返す、そんな狂気の産物だ。
次に、フィンの両隣に座っていたエルフの女性とドワーフの男性が、互いに目配せを交わした。
そして、エルフの女性が口を開く。
「私はガレスと手分けして、主だった生産系ファミリアをあたってみた。この町で冒険者として暮らすなら、彼らの世話にならない筈がない」
ファミリア副団長、リヴェリア・リヨス・アールヴ。長い寿命を誇るエルフの王族の出身にしてファミリア最古参、常に冷静沈着で知られる才女は、如才なく報告を行った。
「残念ながら目撃証言は皆無だったのだが、ついでにこれをディアンケヒト・ファミリアに持ち込んで鑑定してもらってきた」
ディアンケヒト・ファミリアは、大手の医療系ファミリアだ。ポーション販売、原材料買取りなど、多くの冒険者と取引があり、ロキ・ファミリアとも良好な関係を築いている。
リヴェリアは一旦言葉を切り、机の上に一本のガラス瓶を置いた。
それは、底に僅かに赤い液体が付着した、まるで一流の工芸品のように精緻な細工が施された瓶だった。
瓶を見た瞬間、ロキが細目を薄っすらと開いて鼻を鳴らす。
昨夜、件の女によって、気を失っていたロキの口に、中身を注がれたもの。その際、現場に打ち捨てられていた瓶を回収したのである。
主神に正体不明の液体を注ぎ込まれた時は、その場にいた全員が肝を冷やした。
慌てて
「この僅かに残った赤い液体、やはりポーションで間違いないそうだ。毒物や違法薬品は一切検出されなかった。品質は最高級のエリクサーと比べても勝るとも劣らない、とはディアンケヒトのお墨付きだよ」
最初は、誰もこれがポーションだとは気づかなかった。冒険者にとって見慣れたそれとは、似ても似つかない血のような赤色をしていたから。
「だが驚くべきことに、これは通常のポーションとは違い、ほとんど経年劣化しない特性を持っているそうだ。…ディアンケヒトに詰め寄られたよ、いったい何処の誰が作った代物なのかとな」
思わず、といった様子でその場の全員の視線が空瓶にそそがれた。
一度作ったポーションは必ず経年劣化する。それは最下級のポーションだろうが、エリクサーだろうが変わらない。
だからこそ、 ポーションは厳密な管理が求められる。劣化したポーションでは、いざという時に命に関わるのだから。
しかし、目の前にあるのは、その常識を覆す代物である。価値は計り知れない。
一気に騒めき始めた室内に、さらなる爆弾を投下したのはファミリア最古参の一人、ドワーフのガレス・ランドロックだった。
「儂はアイズ達を連れて鍛治系ファミリアを梯子するつもりだったんだがな、最初に顔を出したヘファイストス・ファミリアで、当たりを引いた」
全員の視線が、一斉にガレスに注がれる。
「ホームに顔を出した時から、いつもとは明らかに様子がおかしかったのだ。主だった幹部は揃って奥の工房に引っ込み、その周りを職人連中が囲んで、部外者が近づけないようにしていた。実際、儂らですら門前払いを食らわせられそうな雰囲気だった。それが気になってな、少しゴネてみた」
ガレスはヘファイストス・ファミリアの団長、椿・コルブランドと武器の専属契約を結んでいる。
その伝手を使ってなんとか聞き出したところによれば、ヘファイストス・ファミリアに
「下手をしたら、これまでの第一等級武装が軒並み時代後れになる代物だって、言ってた」
そう呟いたのは、弱冠16歳にしてレベル5に至った少女剣士、『剣姫』の二つ名を持つアイズ・ヴァレンシュタイン。
その表情はほとんど変わっていなかったが、つきあいの長い人間からみれば、非常に強い興味を持っているのが一目瞭然である。
アイズの戦い方は高威力の魔法と剣術を併用するため、武器に対する負担が大きい。そこで不壊属性を持った専用の第一等級武装を新調したばかりだ。
そのタイミングでこんな話を聞かされればナイーヴにもなろうというもの。いや、アイズだけではない、ダンジョンの最前線で体を張る第一級冒険者なら、誰もが関心を払わずには居られないだろう。
「たかが素材ひとつに、とんでもない金額が動いたらしい。ヘファイストス・ファミリアは今、そいつの研究に没頭しとるよ。しかも、それを持ち込んだのが、どうもこの似顔絵によく似た女だという話でなぁ」
目を血走らせ、鬼気迫る様子の椿から「これ以上研究の邪魔したら分かってんなオラ」と控えめな(直球)脅迫を受けたために、それ以上のことは聞き出せなかったという。
会議室のいたるところで、幾つものため息が漏れた。
オリハルコンは世界最硬とされる極めて希少な金属だ。全人類と亜人の技術の結晶である。破壊はほぼ不可能とされ、不壊属性武器の原材料となっている。
それを超える新たな金属の存在、しかも、よりによってそれをヘファイストス・ファミリアに持ち込んだのが、今現在ロキ・ファミリアが総力を挙げて探している人物とくれば、どう反応してよいやら分からない、というのが大方の出席者の感想だった。
ロキですら、ただでさえ細い目をさらに細め、訝しそうに唸っている。
「…ええわ、ちょうど神会が開かれるから、そっちはうちが直接探り入れたる」
ロキは腕を組み、何かを考え込むように俯いていたのだが、やがて向かいに座っていたフィンに視線を合わせた。
「ベートはどうしとる?」
「捜索からは外して療養させている。本人曰く「煙管で軽く小突かれた」ところの骨が、残らずいっているようだ。下手にエリクサーを使うと、骨が変なふうにつながりかねないから、添え木を当ててベッドに縛り付けてるよ」
命に係る怪我ではないし、高価な
ベートは意外なほど静かに、ベッドで体を癒している。
それに、件の女性に対して含むものはないらしい。俺の方が弱かっただけだ、といっそ見舞いに行ったフィンが拍子抜けするくらい淡々と語った。
ファミリア内でも勘違いしている者が多いが、ベートは誰彼構わず噛み付く狂犬のような男ではない。
ベートが嫌いなのは彼自身の言葉を用いれば、身の程知らずの弱者だけだ。無理をして背伸びしても、死ねばそれまで。ベートは、誰よりもその事を知っている。
普段の態度が態度だから誤解されてしまうのもやむを得ないが、少なくともフィンやガレスあたりは、その事を承知していて、ベートに一目置いている。
今回の件も、単に成り行きを見れば、ベートは良いように振り回されたピエロだが、実際にはあの場の誰よりも素早く状況を認識して、怪物の手からロキを奪還しようとしていたと見る事もできる。
「しばらく養生させとき。今回ばかりはベートが先走ってくれたおかげで大金星や。さもなきゃ、なんも分からんと後手後手に回っとった」
その言葉に、この場の全員が真面目な顔で頷く。
始めは、またロキのわがままかと眉をひそめて会議に臨んでいた者も、既に事の重大性に気がついていた。
「これは、ここにいるもん以外は口外厳禁やで…あの女な、『
神々から下界の住人に与えられる神の恩寵、『
様々な事象から
神々がまだ天界にいて下界を見守っていた古き時代には、人類は恩恵無しにモンスターに挑むことを余儀なくされたが、現在では冒険者が恩恵無しでダンジョンに潜ることなど考えられない。
「…確かなのか?」
フィンが確認すると、ロキは鷹揚に頷いた。
「どっかの女神とちごて、うちは余所様の子に手ぇ出すほど趣味は悪くないで。何処かの神の唾付きなら、一発でわかったわ」
だから口説きに行ったのだ、と言うと誰もが納得した。
恩恵とは『
もし、わからないとしたらよほど抜けている神だけだが、ロキはそんな間抜けには一人しか心当たりがなかった。
「つまり、なんだ。そのキルコとかいう女は、恩恵も無しにベートを、レベル5の冒険者を一蹴する強さを持っている、と?」
ガレスが呻くように唸った。
「そうなるね。どうりでギルドをあたっても何も出てこないわけだ。正直、信じがたいよ。僕もその場にいて彼女を直接見たけど、アレは…桁が違っていた」
フィンもまた、眉根を寄せて難しい顔をしている。
「あの場に居た人間は、彼女が最後にフッと姿を消したのを見ただろう?時間停止とかいうのは流石に眉唾としても、透明化できる能力なり魔道具なりを持っているのは十分にあり得る」
それだけでも放置するにはリスクがある。
いつ、どこに忍び込まれるか、わかったものではない。
「確か、透明になれる魔道具ってあったっすよね。あれを作れるとすると、その筆頭は… 」
「ああ、ヘルメス・ファミリアの道具店にも探りを入れる必要があるな。あそこは元から色々と怪しい取引の噂が絶えない」
次期団長候補とも噂されるラウル・ノールドが疑問を提示すると、リヴェリアが補足した。
「フン、ポーションといい素材といい、まだまだ隠し球は多そうやな」
ロキは不敵に笑った。
普段は飄々とした物腰をしているが、かつて地上に降りる前は暇つぶしの為に他の神々を嗾けて殺し合いを画策した事もある、天界きってのトリックスター。
不審な物事やキナ臭い話には、目鼻が利く。
「ま、ええわ。せいぜい落とし前代わりに、キッチリむしりとったろうやないか!」
ロキが邪神もかくやという陰惨な笑みを浮かべてそう宣言すると、彼女の眷属達は揃って頷いた。
…なんて会話は、当然のごとくキル子には筒抜けであった。
場所はロキ・ファミリアのホームから、キル子の聞き耳スキルの最大可聴範囲ギリギリに位置する、一泊500ヴァリスのうらぶれた木賃宿。カビ臭いベッドの他には何もない一室である。
頭にウサギの耳を生やし、足元にネズミを這いまわらせながら、キル子はこの世の不条理に押しつぶされていた。
「やっちまった、やっちまった、やーっちまった、好ーきなあーの子をボコボコにー、ケンカは買うもの堂々とー、ショタを抱えて啖呵きるー、イケメンに、負けても、いいんだぜ〜、いつか、告られると、夢を見て〜」
死んだ魚のような目で、煙管をふかしつつ、妙な替え歌を歌っている。どうやら重症のようだ。
なお、キル子の頭に生えているウサギ耳は、聴力強化系の魔法《
足元をうろちょろしている肉の爛れた体を持つネズミやカラスが、その答えである。
アンデッドの種族スキル【眷属招来】で呼び出した低レベルの
ロキ・ファミリアのホームの天井や壁の隙間に入り込んだ使い魔達から送られてきた、会議の様子を盗み見て以来この有様である。
そもそも、キル子がロキ・ファミリアに監視の目を伸ばした理由は、朝一に昨夜の飲み屋へ詫びを入れに行った時に遡る…
朝。
キル子は土下座していた。
相手は酒場兼食堂『豊穣の女主人』の店主、ミア・グラント。
気持ちよく飲める飲み屋というのは宝である。特にロックオンしたイケメンとの出会いの場とくれば、キル子的にはもはや世界級アイテムに匹敵する。
出禁にされてはたまらない。そのためなら、土下座など安いものだった。
店主のミアは両手を組み、怒り心頭と言った有様で、ひたすら床に土下座するキル子をにらみ付けていた。
ジロリ、とミアがキル子の横に視線をずらせば、そこに燦然と積まれているのはヴァリスの山。ゆうに100万ヴァリスはあった。
「姐さん!どうか、この通り、 ゆるしてつかぁさい!!」
「誰が姐さんだ!」
指詰めろ言われたら詰めますので 、とガクガクブルブル震えるキル子に、ミアはハアと特大のため息をついた。
「自分から支払いに来たんなら、ギリギリセーフかね。店を壊したわけじゃないし、先に突っかかっていったのはロキ・ファミリアの馬鹿だ」
あっちはしばらく出禁にしてやった、と女店主が宣言すると、キル子は足元が崩れ落ちたかのような錯覚を覚えた。嗚呼、ベート様とのフラグが…
「ただし、これっきりだからね。次に騒ぎを起こしたら、出入り禁止だよ!」
「…はい、わかりました」
キル子は悲しみにくれながら、気の無い生返事を返した。
「それと、ロキ・ファミリアの連中があんたを捜し回ってるよ。しばらく自分のファミリアにでも引きこもって、大人しくしとくんだね」
…とまあ、そんな忠告を受けたことで慌ててロキ・ファミリアのヤサを探し出し、探りを入れてみれば案の定だったわけだ。
キル子は大人数の徒党を敵に回す厄介さはユグドラシル時代に嫌というほど身に染みている。彼らに組織立って動かれると詰むのだ。
何せこちらは常にログインしているわけではない。仕事や私生活に費やす時間の方がずっと多い。ところが、あちらはログイン時間の微妙に異なる連中が有機的に繋がって、常時稼働できる。24時間イン可能なリアル金持ち廃人様を一人でもメンツに捕まえておけばさらによし。ちなみに貧富の差の極まったこの時代に、ニートなる非生産階級は存在しない。
探索、感知、占星術、情報系魔法の波状攻撃で居場所を常に特定され、こちらの唯一の強みであるソロならではのフットワークの軽さすら殺される。ゲーム外のSNSを使った盤外戦に至るまで大人数を動員できる人海戦術は脅威だ。
「う〜ん、自業自得だけど、面倒なことになったなぁ…いっそのこと…」
しばし、考えこんでいたキル子だったが、やがてインベントリに手を突っ込むと、一つのアイテムを取り出した。
それは『魔封じの水晶』と呼ばれる、魔法を中に封じ込められるユグドラシルの消耗品アイテムだった。
中身は第10位階魔法《
他にもやや威力は落ちるが効果範囲の広い第10位階魔法《
いずれにしろ、せいぜいレベル4、50台が10人程度、あとはそれ以下しかいないロキ・ファミリアを潰すには過剰な代物だ。
かつてギルド、アインズ・ウール・ゴウンの最栄期に敵対ギルド対策として、モモンガや、仲間内でも最強の魔法職だったウルベルト・アレイン・オードルがしこたま作り出したものである。
敵対ギルドの連中に爆撃かますにはちょうどいいので、遊撃要員のキル子やペロロンチーノあたりに貸し出されていたものだが、魔封じの水晶は展開から発動までタイムラグがあるし、何より高価なので滅多に使わせてはもらえなかった。
最終日のあの時、いざとなれば全部同時に起爆してやろうと思い、ナザリックの宝物庫から『強欲と無欲』や『山河社稷図』等といった世界級アイテム等と一緒に、ありったけ持ち出したものだ。
対人性能はともかく、範囲火力に決定的に欠けるキル子にとっては虎の子である。
今、ロキ・ファミリアのホームには主神と幹部が全員揃っている。これを使えば、一撃で何もかも一切合切決着するだろう。
キル子が直接やるより楽だし、取りこぼしなく確実に皆殺しにできる。範囲もそこそこ広いから目撃者を気にする必要もない。
それこそが、正解。たったひとつの冴えたやり方。そのはずだ。
少なくとも、ユグドラシル時代のキル子なら、嬉々として汚い花火を打ち上げて、大いに盛り上がった筈だが…
「…うん、却下だな」
やがて、煙管の中の煙草が全て灰になるくらいの時間が過ぎた頃、水晶をインベントリの奥深くに戻した。
使わない理由は、いくつかあった。
補充が利かない貴重品をむざむざ無駄にできないだとか、騒ぎが大きくなり過ぎれば必ず自分の首を締めるかもしれない、だとか。
そのいずれも、単なる言い訳に過ぎないことをキル子は自覚していた。それでも結論を変える気は無かったが。
昨夜の、あの酒場でのことは全て覚えている。
我ながら酒に溺れてバカをやった自覚はあるが、楽しかった。
かつて、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンの全盛期、仲間達が毎日ログインし、そんな馬鹿を繰り返していた頃の日々が、わずかばかり返ってきたようで。
それが、ただの思い出、単なる感傷に過ぎなかったとしても。
それに、なにより。
「…そっかぁ…ロキきゅんはロキたんだったかぁ…残念。でも、俺様系のベート様ならワンチャンあるよね…?」
酔ったうえでの乱行だが、フラグが立ったと思い込みたい乙女心が(…あ?こちとらまだ乙女なんだよ、殺すぞクソが!)待ったをかける。
「強くなってみかえしてやる、って感じでリベンジに来たところを、如何にも激闘の末にさりげなく勝ちを譲る感じで。ライバル系カップルというのもアリやね!ありやろ!…たぶん…めいびー…ふヒヒ」
イケメンとの出会いフラグは何よりも優先されるのである。
「…うん、やっぱりほとぼりが冷めるまでは大人しくしとこうね。ヘファイストスのとこもバレたようだし、ベート様のお見舞いにも行きたいし」
土産は秘蔵の神器級装備とかでいいだろうか。キル子は他の職業に化けて街中をうろつくために、奪った装備をいくつかストックしている。確か、モンクが装備できそうなのがいくつかあったはずだ。どうせ滅多に使わないし、イケメンの好感度を稼ぐためなら安いものである。
「まあ、今は騒がしいからもう少し間を置かないとね。暇つぶしに、ダンジョンに潜っておきましょうか」
ダンジョンや町中等の入り組んだ地形でのPKはキル子の十八番である。いずれ利用することを考えたら、今のうちに地形や特性を把握しておくのは悪くない。
となれば、問題はどうやってダンジョンに潜り込むか、だ。
バベル1階から地下階ブチ抜きのダンジョン入口は、常時ギルドの管理下にある。
ダンジョンへ潜るには、まず冒険者としてファミリアごとに行う事前登録が必要で、出入りの際にも簡単な手続きが必要となるらしい。
当然、どこのファミリアにも所属していないモグリが入ろうとしたって速攻で止められるに決まってる。
これはダンジョン内でパーティが全滅した場合などを想定し、一定時間が経つと所属ファミリアへ連絡を行うための措置だ。
ダンジョンに侵入するだけなら、変装系のスキルを多用して、どこかのファミリアの適当な冒険者になりすますという手が使えるが、後でバレたときに面倒事になるのが目に見えている。
では不可視化系の能力を利用してこっそり侵入してしまうのはどうかというと、キル子はその手のスキルや魔法を豊富に持っているので、実行方法としては問題がない。
例えば、酒場から逃走するときに使った第9位階魔法《
これは音や気配、体温、震動、足跡、その他諸々を探知されなくなるという最高位の不可視化系魔法である。これにキル子の持つ探知阻害スキルや情報隠蔽能力を駆使すれば、そうそう見つかることはない。
唯一のネックは《完全不可知化》を使っていると常時MPを消費することだが、キル子が取得している
MP量は本職の魔法職使いに及ぶべくもない暗殺者ビルドのキル子が、MPを馬鹿食いするこの魔法をほいほい使えるのはそのためだ。
ただし、この方法の問題は、魔石やドロップ品を得た後で換金が難しい点にある。
ドロップ素材はまだ各生産系ファミリアや商人ギルドに直接持ち込みできるのだが、オラリオの産業の根幹を支える魔石販売だけはギルドの専売制になっている。ギルドを通さない流通は違法であり報復の対象だ。
「出来れば協力者がほしいところね。恩恵にしろファミリアにしろダンジョンにしろ、まだまだ仕入れたい情報も多いし…ユグドラシルwikiが懐かしいわ」
末期にはほとんど更新が途絶えていたが、ユグドラシルを始めたばかりの頃は何かとお世話になったものである。
「どっかに低レベルでくすぶってて、そこそこ経験豊富な冒険者とかいないかなぁ…いざとなったら後腐れなく始末できる感じの」
恩恵を受けて冒険者になれば全員がもれなくレベル1のステイタス0からの出発だと言うが、その後の成長についてはやる気と運と、才能の差が物を言うらしい。大半の冒険者はレベル2に上がれずに一生を過ごすという。
適当に町をぶらついて、悪所で腐ってそうなのを攫い、《
問題はそれをやろうとすると、似顔絵片手に走り回っているロキ・ファミリアとかち合う可能性があるわけで。
「似顔絵まで配られたら、流石に今の顔じゃあ、お外歩けないわ…ロキ・ファミリアェ…」
ちなみにキル子は鬼畜PKとして、主にアイテムを奪われた被害者の有志の手で、ユグドラシルでも手配書が回されていたりする。
それはともかく、今使っている【
仮面系のアイテムで顔を隠すことも考えたが、手持ちの仮面はクリスマスにログインすると配られる『嫉妬する者のマスク』という運営公式の嫌がらせアイテムだけで、検討の余地なく却下である。こんなクソださくて、悪目立ちするものを使う気は微塵もない。
「とはいえ1から外装データいじるのは面倒だし、何か適当なやつが…あ!」
確かアレがあったような、と呟きながら、キル子はインベントリをまさぐると、1つのデータクリスタルを取り出した。
これは武具の製作時にに使うタイプとは全く別物で、外装調整用の別売りソフトを使って作った外装データを保存し、ゲーム内で使用するための課金アイテムである。
データクリスタルを使って【変身】のスキルを使うと、その場に元のキル子とは似ても似つかない、やや鋭い目付きをした金髪縦ロールの美少女が出現した。
「ギルドの年末隠し芸大会で使った悪役令嬢ムーヴの外装データ。取っておいて良かった。でも、これ腰に手を当てると勝手に高笑いするのよね。ペロロンチーノに大受けしたわ」
何せ、この外装専用として見た目重視の伝説級アイテムを献上されたほどである。代償にしばらく悪役令嬢ムーヴを強要されてドン引きしたものだった。
懐かしい思い出にひたり、ほっこりとしたところで、ようやくキル子は煙管の煙草がすでに燃え尽きていることに気がついた。我ながら随分悩んでいたらしい。
室内を見回したが、灰皿や煙草盆は見当たらなかった。諦めて窓に手をかけ、わずかに開いた隙間から、ポンと焼けた灰の塊を階下にポイ捨てする。
そして、新しい煙草を詰めようと、インベントリに手を差し伸べた、その時だった。
「キゃあああああ!!」
悲鳴が上がった。
慌てて窓を開け放ち、眼下を確認すれば、やたら大きなリュックを背負い赤い女物のコートを着た小柄な人物が、熱い熱いと悲鳴をあげている。
キル子は思わず頭を抱えた。どう見ても子供か、あるいは小人族だ。
自らやらかしたこととはいえ、ビジュアル的に小さな幼女が涙と鼻水を垂れ流しながら、火傷の痛みにもだえ苦しむ有様は凄惨であり、キル子は慌てて赤ポーションをぶっかけたのだった。
リリルカ・アーデはその日も路地裏を駆けていた。
リリルカはソーマ・ファミリア所属の小人族である。
ソーマ・ファミリアは主神ソーマの手による極上の酒を下げ渡す代わりに、月々に明確な上納金ノルマのある極めてブラックでヤクザなファミリアだ。
しかも、神酒には依存性があり、団員はほとんどが中毒症状に陥っていて、神酒を得ようと他者を蹴落とす荒くれ者の集団と化している。
当然、リリルカは嫌気が差していて、さっさと他のファミリアに改宗したいと目論んでいるのだが、それすら膨大な脱退金を求められる有様だ。
リリルカの場合、自ら望んで所属したわけではなく、両親ともにソーマ・ファミリアに所属していたために、生まれた時から選択肢がなかっただけ、というのが救いようがなかった。まさに世は無情だ。
そんなわけで、リリルカは大金を欲していた。
だが、リリルカは冒険者としてはまったく才能に恵まれなかった。
持っているのは「縁下力持(アーテル・アシスト)」と言う、重い物が持てるようになるだけのスキルと、見た目が変わるだけの変身魔法のみ。戦闘力皆無の小人族だ。
だからこそ身の丈を弁えて、サポーターという冒険者を支援する仕事を生業としている。
サポーターは冒険者のドロップアウト組がなることも多く、立場は弱い。たかり、コジキ、寄生等、心無い言葉を向けられたのも、一度や二度ではなかった。
ファミリアの人間からは理不尽に金を巻き上げられ、冒険者達から侮蔑とともに酷い扱いを受け、やがてリリルカは歪んだ。
いつの頃からか、新米冒険者を相手にして、魔石やドロップアイテムなどをちょろまかしながら、生きるようになっていた。
今日もゲドとかいう冒険者から巻き上げた装備を売り払ったばかりであり、後をつけられないようにランダムにルートを変えながら、塒に帰る途中だったのだが…罰は、突如として頭上から降ってきた。
「キゃあああああ!!」
路地裏の二階屋から、心無い何者かがぶちまけた焼けた灰、それが運悪く顔面を直撃した。
魔石の熱源道具を使えない貧困層がひしめく路地裏では、暖炉や竃の焼けた燃え滓を投げ捨てるのはよくあることなのだが、やられた方としてはたまったものではない。
灰はリリルカの顔面に降りしきり、眼球や敏感な鼻の粘膜を焼き、呼吸器に入って喉を爛れさせた。
痛みに呻きながら、リリルカは思った。
もう、嫌だ。何故、自分ばかりこんな目にあうのか。だれか、だれか助けて!!
その思いが通じたのか…
「危ういところを助けて頂きまして、本当にありがとうございます!」
「いえ、顔に痕が残らなくて幸いでしたね。まったく、二階から灰をばらまくなんて、ひどい人がいたものです」
丁寧に頭を下げたリリルカに対し、偶然通りかかった所を助けてくれたヒューマンの女性は、笑顔で答えた。
人の情けも捨てたものではなかったらしい。わざわざ自分の宿の一室にリリルカを運び込んでくれただけでなく、ポーションを使って傷の治療までしてくれたのだから。
何故か恩人の目が泳いでいるような気がするのだが、きっと気のせいだろう。
「高価なポーションまで使っていただいて、恐縮なのですが、その、大変ありがたいのですけれど、恥ずかしながら今日は持ち合わせがなくてですね…」
リリルカは女性が片手に持つ空の瓶を見ると、言いにくそうに口ごもった。
「ああ、気にしないでください。これ、ログインボーナスで無駄に貯まってくやつなんで」
「ろぐいん…?」
「何でアンデッドまでログインボーナスがポーションなんだよ、クソ運営が」とよく分からない事を呟く相手のことを、リリルカは改めてよく観察した。
落ち着いて見てみれば、綺麗な人だと思う。
綺麗な金髪の巻き毛は丁寧に手入れされていて、キューティクル。肌も白くきめ細やかで、シミ一つ無い。顔立ちはややきつそうな吊り目をしているがとても整っていた。物腰も柔らかく丁寧だ。
着ているのは、所々に宝石が散りばめられ、薔薇の黄金細工が施された派手な甲冑である。実用性はともかく、売れば高値がつきそうだった。武器は腰に履いた短剣が一本だけだが、他にも宿に預けているのかも知れない。
この格好から見るに、何処かのファミリアに席を置く冒険者というところなのだろうが、リリルカにはとても彼女が冒険者だとは思えなかった。あまりにも見た目が整い過ぎているからだ。
女性の冒険者なら見慣れているが、大半はダンジョンに潜りっぱなしなので、肌は不健康に白くて荒れ放題、髪も適当だから枝毛が目立つ。ダンジョン用の装備を着慣れて普段着にしてしまう横着者も多くて、服装のセンスもあまりない。
一般の女性に比べて、どうしてもオシャレや美容というものに費やすリソースが少なくなってしまうのだ。
そこへいくと、この女性は随分と自分自身のケアにも手をかけている。むしろ、使用人を侍らせてドレスを着ている方がお似合いだ。
どこか裕福な良いところのお嬢様が、観光がてらお気楽な冒険者ごっこでもしているようにしか思えず、それが少しばかりリリルカの堪に障った。
「…申し遅れました。私はリリルカ・アーデと申します。サポーターをしています」
「ご丁寧にどうも。私はキ…キ、キルト、と申します。冒険者です」
リリルカはパッチワークのような名前だと思ったが、口には出さなかった。
名を名乗る時に妙に口ごもったのがまた怪しい。姓を名乗らないということは、偽名かもしれない。もしかしたら家出娘か、あるいはオラリオに出てきたばかりの冒険者志望のお上りさんか。
都市外の領地を持つ貴族の子女が冒険者に憧れて上京する、というのはよくある話だ。大半は下級冒険者から抜け出せなくなって、いずれ去っていくのだが。
まあ、帰れる家があるだけマシだろう。大半の冒険者は、食い詰めて家を追い出された農家の次男坊あたりが、止むに止まれずになるものなのだから。
いずれにしろ、見ず知らずのリリルカを助けて宿の一室に運び、ポーションで治療までしてくれたのだ、育ちは良いのだろう。
それに、装備も良い。
「その、失礼ですがキルト様はどこのファミリアの冒険者様なのですか?」
その質問に、キルトはしばし考えるような仕草をした。
「…も、モモンガ!そう、モモンガ・ファミリアに所属していますわ」
リリルカは首をひねった。聞いたことのない神だ。
「実は、田舎から出てきたばかりの零細ファミリアですの。眷属もまだ私しか居ませんが、死を支配する偉大な神様でいらっしゃいますのよ!」
え?死を支配とか、なにそれこわい。
「そ、そうですか。す、すごい神様なのですね」
「そうですのよ、なんせ千人殺しの伝説を成した偉大なお骨様ですから!」
キルトは腰に手を当て、得意げに高笑いをあげた。
実際にその神様がやばいのか、あるいはこの女の頭の中がやばいのか、リリルカにはもう判断できなかった。
とりあえず相手をヨイショするために、笑顔を維持するので精一杯である。
「ところでその、さぽーたー?というのは、どういうご職業ですの?」
キルトは小首を傾げて、そう言った。どうやら、田舎から出てきたばかりというのは、確かなようだ。サポーターも知らないらしい。
「そういえば、キルト様はオラリオに来たばかりだと仰っていましたね。いいですか、サポーターというのはですね…」
サポーターについて説明すると、キルトは首を傾げた。
「え?何それ罰ゲーム?」
解せぬと言わんばかりの表情である。
「荷物持ちしてドロップ拾うだけとか、経験値入らねーじゃん。まさか、遠回しにパーティから追い出すためのイジメ案件?単発攻撃しか持たないアサシンとか、パーティには要らない子ですかそうですか。範囲攻撃?知らない子ですね。盗賊さんに転生し直してダンジョンの鍵開け覚えて来いって?ハハッワロス、PKるぞこのやろう」
何かトラウマでも刺激されたのか、キルトは死んだ目をして何やら呟いている。
「ちょっと何言ってるかわからないですね」
なんか口調も変わってる。
「いえ、そもそもサポーターは、原則としてモンスターとの戦いには参加しませんので、そういうわけでは…」
冒険者の世界はカタギとは違い、所詮は切った張ったである。
レベルが上がらず、やがてモンスターとの戦いに耐えきれなくなって、ドロップアウトした下級冒険者がサポーターに転向するケースは多い。
それすら務まらなければ、果ては歓楽街かダイダロス通りへと真っしぐらだ。あそこは、元冒険者や元サポーターがひしめいている。
「…それは、世知辛い話ですわねぇ」
まるきり他人事のような口調に、少しだけカチンときたので、リリルカは次のターゲットをこの女にすることに決めた。
「(…田舎から出てきたばかりの物知らずのお上りさん。実家から持ち出したのか、装備は充実しているけど、眷属が一人しかいない零細ファミリアの所属。いざというときは、装備だけはぎ取ってモンスターの餌にしても何の後腐れもない)…キルト様、ちょっと提案があるのですが」
そんな皮算用を立てていたリリルカだったが、まさか相手が腹の中で似たようなことを考えていようとは、想像もしていなかった。
「(…レベル1のサポーターとかいう冒険者崩れ。そこそこ経歴長くて知識はある。恩恵や経験値、こちらの独特のスキルや魔法を確認できればなお良し。いざというときはダンジョン内で始末して口封じしても何の後腐れもない。出来ておる喃)…あの私からも、ちょっとよろしいですか」
「「一緒にダンジョンに行きませんか!!((これは、良いカモの予感!!))」」
二人とも実に良い笑顔だった。
次の日、一緒にダンジョンに行くことが、速攻で決まった瞬間である。