新緑はやがて輝き出す 作:靴下をはかない猫
(勢いで書いたので)初投稿です。シューレス・ニンジャ・ガールの二次ssが何故ないのか、甚だ疑問である。
皆の衆、シューレス・ニンジャ・ガールをすこれ。
「なぁ妹よ」
「なーにお姉ちゃん」
「バンドマンってかっこいいと思わへん?」
「え?……うん、かっこいいと思うけど」
「バンドウーマンというのも、ありやと思わへん?」
「……まぁありなんじゃない?」
「――なぁ妹よ」
「なに?」
「上京するね」
「うん……………はぁ!?」
☆☆☆☆☆
歳は15。今年から女子高校生だ。そんな私なのだがつい最近、進学について非常に、非常に悩ましいことが起きた。……いや、実際はそこまで悩ましくはなかったりするんだけど。
私は小中と、どちらも地元の所へ通っていたんだ。特別大きいわけでもなく、在籍生徒の数も多くない、正に田舎の学校といった感じの。
だからそのまま、高校も地元のそれにしようって考えていたし、そうなるものとばかり思ってたんだけど……うん。やがて来た現実は、その考えとは完全に違うものとなっていた。
――端的に言うと、進学先が地元じゃなくなった。
通うことになった学校。それがあるのは、まさかまさかの東京都。あまりの唐突さに頭を抱えた。
……あれもこれも、全部一人の少女が原因なのだ。
牛込りみ。
靴下を履くのが嫌いなのかいつも裸足で駆け回っている……恥ずかしながら、私の
小さい頃に見た『ザ・ニンジャ』というバンドの影響で、いつもヘンテコな喋り方をするのが特徴のちょっと、いや、かなりの変わり者。悪い人じゃないんだけど。
そんな不肖の姉がなんで原因なのかというと、その詳細は実に簡潔にまとめられる。
りみ『上京したい』
↓
両親『りみだけじゃ心配だからゆりもついて行きなさい』
↓
上京不可避☆
おのれお姉ちゃん。『どうしても地元の高校に行きたい』と。そんな願望が私にはなかったから良かったものの。
……いや。私がどうしてもと言うなら、両親もお姉ちゃんも無理は言わないだろうけどさ。
そんなこんなで、私達は故郷を飛び出して上京することになったのだ。
☆☆☆☆☆
引越しも済み、徐々にここでの生活にも慣れてきた。未だにその人の多さにはクラクラしちゃいそうになるけど〝じきに慣れるよね〟なんて、どこか楽観的な考えで日々を過ごしていた。
「おかねをください」
「開口一番にお金をせびらないでよお姉ちゃん」
進学先の高校、その入学式を控えたある日。
東京都某区のとあるアパート。そこで一緒に暮らしているお姉ちゃんが、なにやら深刻そうな顔で私に相談を持ちかけてきた。
そのあまりに険しい顔に『一体なにがあったんだろう』と思いつつ、こちらも真剣な対応をしようとした。……その矢先に放たれたセリフがこれだと、それはもう脱力感どころではない。なにか大切なもの、気力とか活力とかそういうのが天に昇っていったような感覚さえ覚える。
「まだ引っ越してきてそんなに経ってないでしょ。確かに、お姉ちゃんにお金の管理任せるととんでもないことになるから、お母さんたちから貰ったお金は全部私が管理してるよ? でも、お姉ちゃんが使えるお金はお小遣い制にしたよね。私ちゃんと、お姉ちゃんにお小遣い渡したはずなんだけど。え? なに? 足りないって言いたいの?」
「欲しいものができた!」
口うるさく説教するがそんなことはどこ吹く風。物怖じする様子すら見せず、目を輝かせ、前のめりに私の方へ顔を近づける。
広いおでこに、トレードマークであるピンク髪飾り。可愛らしい顔つきの彼女は、鼻息荒く〝欲しいもの〟について語り出す。
「ベースが買いたい!」
「ベース?」
「楽器店で見た時、これしかないって思った。お値段は大体二十万」
「に、にじゅうまん!?」
「でも私の所持金は野口が一人。到底買えない」
「……ねぇお姉ちゃん? ベースって、確か二万円くらいで買えるのがあったよね。それなら、今は無理でもいつかは買えるでしょ。お姉ちゃん初心者なんだから、いきなり高いの買うのもどうかと思うよ」
「これしかないっておもったのー!」
私の腰に縋り付いてくるお姉ちゃん。しかし二十万はさすがに高すぎる。
「ダメ」
「ご慈悲をー! ごじひー!」
「ダメなものはダメ。お金だって沢山ある訳じゃないんだよ? 二万円でも高いのに……」
出発の際、両親が結構多めにお金を渡してくれはした。
しかし、そこはやはり育ち盛りの二人の女子高生。
男子高校生に比べて食が細いとはいえ、それでも生活費としてかなりの額の負担が来る。故に、貰った額の大半は生活費へと溶けていくだろう。
「ぐぬぬぬぬ」
「はぁ……お小遣い前貸ししてあげるから、安いのなら買ってもいいよ」
翌日、若干不満そうな顔をしながら彼女は、可愛らしいピンク色のベースを買ってきた。
――――――
――――
――
入学式。クラス発表。初めての教室。
記念すべき高校生活1日目は、瞬く間に過ぎていった。
ちなみにお姉ちゃんとは違うクラスだった。自分の目の届かない場所で何か変なことをしていないかと気が気じゃなかった。
今日一日どうだったかと、お姉ちゃんに話を聞いたところ帰ってきた言葉は
「ニンジャの末裔らしき者がいた」
『何言ってんだこいつ』と、口に出さなかった私を誰か褒めて欲しい。この姉、ホントにこの調子で大丈夫なのだろうか。
一抹の不安を抱えながら、私は眠りについた。
――――――
――――
――
「妹よー」
「どうしたの」
「実家から送られてきたお米はまだ余っておるか」
「あーうん、余ってるけど。それがどうかしたの」
「それを売って一攫千金や」
「……はぁ」
頭が痛い。大方二十万円ベースの購入、そのお金の足しにしようとでもしてるんだろうけど、多分大したお金にならないでしょそれ。
そう言おうとしたが、何かとんでもない程自信に満ち溢れたような顔をしていたから何も言えなかった。もう好きにすればいいんじゃないかな。
お米が余っているのは事実である。実家から大量に送られてくるのだ。だけどそれ以外は送られてこない。せめて野菜を……。
食べきれないほどの米の消費に、確かに若干困ってはいた。だからこそ彼女が持っているその労働意欲のようなものは悪いことではなく、いや寧ろ良いことですらあるので卑下にはできない。
故に取り敢えず、私はお姉ちゃんのお米売りに許可を出しておいた。
「ところで米ってどう売るの」
「炊飯ジャーで飯を盛ります」
もうやだこの姉。
――――――
――――
――
――折角東京に来たのだから、現代っ子らしくて、程々に楽しい高校生活が送れればいいと思っていた。
破天荒な姉に振り回される日々。それもいいけど、こう普通に楽しい日々というのにも興味があったから。
「妹よ妹」
「えっとこれがGで……何、お姉ちゃん」
お姉ちゃんがベースを始めたので、私もギターを始めてみた。私が買ったのも安めのモデル。まだコードも覚えきれていないけど、それでも毎日が楽しかった。
だからだろうか。〝多分、近いうちになにか度肝を抜かれるようななにかが起こるんじゃないか〟と、私の中の第六感のような何かがそう呟いているのは。
「わたしねー」
「うん」
――次の瞬間、ギターのコードを押さえながら聞かされるその言葉は、これまでの数倍以上に意味不明で。
高校に入ってからというものの、入学式の時以来誰かのことを一言も語ろうとしない。そんな見るからに友達の一人もできていない様子のお姉ちゃんの口から、久方ぶりに出てきた誰かの呼び名。
……それが、あまりにも意味不明すぎて。
「ニンジャの師匠ができた!」
「へー、ふーん…………へ?」
――友達ができないあまり、どうやらお姉ちゃんは壊れてしまったらしい。
「……いや待って、ニンジャの師匠? 何言ってるの大丈夫? 詐欺とかに遭ってない?」
「クラスでいつもオンミツコードーしてる娘がいて! 誰も彼女に話しかけようとしないの! だからニンジャの師匠!!」
(いやそれ単に存在感薄いだけじゃ)
目立たない、悪く言えば地味な娘なだけではないのだろうかそれは。
「――――よし、それじゃあ私もニンジャの修業してくる也」
「……は!? 今11時だよ!? 何考えてるのお姉ちゃん!?!?」
「拙者、これにて御免。ドロン」
「あっ、こら! 待て!!!」
見事なターンを決めて、ドアの方へと駆け出していくお姉ちゃん。既に寝静まった街の中へ飛び出そうとする、頭のイカれたニンジャガールを取り押さえようと、私も慌て気味で飛び出した。
全く。いつまで経っても、彼女は私を振り回し続けるらしい。
あーもうギターの練習が進まない。
早く弾けるようになりたいのに。このままじゃいつまで経っても
思わず叫びたい衝動に駆られる。近所迷惑だからそれは出来ない。だから胸の中で思い切り叫ばせて欲しい。心が叫びたがってるから。
口にはできないこの思いを、声には出さずにただ叫んだ。
(もうやだこの姉!!!!!!!!!!!!)
――それでも嫌いになれないのは、やっぱり私達が姉妹だからなのだろうか。
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――変わり者の姉。しっかり者の妹。
――破天荒な姉に振り回される妹は、しかしどこか楽しそうな笑みを浮かべていた。
――今日もニンジャは米を売り、己の修行に精を出す。そして妹は頭を抱える。
――――この物語は、彼女達がそれぞれの大事な人たちと
「待てー! お姉ちゃーん!!!!」
――――ちょっぴりハジケた、日常の一幕だ。
『新緑はやがて輝き出す』
双子にしたのは引越しにおいて都合がよかったからです。特に大きな理由はありません。許してクレメンス。
アニメ版ではちゃんとお姉ちゃんしてたゆりさん。ニンジャガールの手綱を握る姉というのもありかと思いましたが、『振り回されてる方がいいや』との謎思考で妹に。しかしできあがったのは殆どオリ主のようなキャラでした。というかオリ主。どうしてこうなった?
連載するかは未定。多分単発です。気に入った方がいらっしゃいましたら、続きは各自で妄想してください。