仮面ライダースコープーSaved storyー 作:コンテンダー。
人にはそれぞれ人生と言う名の物語が存在する。
数えることは敵わぬその無数のページの海にはどれだけの運命が交錯しているのだろうか?
誰と誰が何を演じているのだろうか?
その物語の広がりにはどれほどの世界があるのだろうか?
そんなことはわからない。知れるはずもない。
その無限とも言える物語は図書館の中に埋もれた一冊のストーリーにしか過ぎないのだから。
だから、人はその物語を賢明に駆け抜けていく。まるで自らを証明するかのように。
しかしだ、証明される事は確立を意味する。もし確立された何のへんてつも無い物語が『初版』と違っていたらどうなるか?
童話集等では『初版』での結末が後に書き換えられる事も少なくない。
それは残酷過ぎるだの、可哀想だの、ためにならないだのの一身的な都合によるためだ。
もし、そんな事が『人の』物語で起きてしまったらどうする?
つまりその人の物語が上書きされて『成り代わられる』、『消える』と言う事だ。
大事な思い出も、存在証明も成り立たない荒野に待つのはバッドエンドのエンドロールだけ。
そんな物語達を忘れさせない、壊させない、守り抜くために彼は銃弾を放つ。
闇に煌めく赤いゴーグル状の光。
『俺の名前か?お前になんてさ、名乗る名前はないのさ』
人知れず、彼はこう呼ばれる。
心を撃ち抜くスナイパー
ー仮面ライダースコープーと。
古い街並みが残る川沿いのエリア。心落ち着く風景と昭和の香りが色濃く残る。
そんな街の一角にレンガ造りで蔦の絡まった一軒の店がある。2階建てでキリシタンのようなステンドグラスが2階に、1階には明治、大正、昭和、平成各時代の雰囲気がごちゃごちゃにかき混ぜられたようなオフィスがある。
入り口には置時計に古びた小物類が、奥の応接間には西洋チックなソファーや雑貨、さらに昭和のテレビや日用品が壁際に、そして何個か連なる社員の机にはパソコンや今流行りのゲームなどが置いてあったりととにかく騒がしい。
屋号には筆記体で店名が刻まれていた。
ーMemory Gardenー
そんな横文字でロマンチックな屋号とは対照的に小さな看板には
ー大切な思い出を、形にしますー
怪しげなキャッチコピーが書かれていた。
その不釣り合いな看板同士がそっくり店の中と調和していた。そんな怪しげな店だがどうやら写真や映像も取り扱っているようだ。
ショーケースに飾られた味のあるカメラとフィルムが辛うじてーMemory
Gardenー記憶の庭であることを示しているのは吉か、はたまた凶か?
そんな不思議な店の前に白いスーツと黒いアーミーシャツ、青いジーンズと言う不揃いな格好をした青年が立っていた。
「今日は店じまいでいいだろ。ま、オーナーの趣味みたいな店だし閉めちゃってもノ・アイ・プロブレマ(問題ない)、な」
わざとらしく右目にかかるように伸ばした黒い前髪をかきあげ、日本語にスペイン語を織り混ぜながら話す青年。
彼の名は早瀬誠久郎(はやせ せいくろう)。
ここに半分従業員のような形で住み着いている自称・小説ライター……らしい。
「何勝手に閉めてるのよ」
とそこに誠久郎とは違って落ち着いた雰囲気を持つ少女が背後から声をかけた。
ポニーテールにたらした美しい漆黒の髪と鳶色のつり目と小さめの鼻と唇と言う気高さと可憐さを兼ね備えた顔立ち。すらりとした体型、ショートパンツとブーツの凛とした立ち姿。
「あれ、もう帰ってきたのかい、カナタ。ま、それでこそ君だねぇ。仕事の手早さ、俺も参考にしたいんだけどな」
誠久郎の煽りに近いような口ぶりをカナタと呼ばれた少女は受け流す。
「はいはい………馬鹿言ってないで」
彼女もここ『Memory Garden』の従業員、黒月星空(くろつき かなた)だ。
「じゃ、お嬢様?俺なりにさ、美味しいお茶でも煎れてあげようか?」
「回りくどいんだから、まったく………智大オーナーと所長に好き勝手やっていいって言われてるからって好き勝手過ぎるのも問題よ?」
誠久郎とカナタは軽い口喧嘩をしながら店内へと足を踏み入れていった。
ふわりとcloseの看板が風に浮いた。
それにつられるようにあなたの思い出を形にしますと言う看板の裏に目をやるとこんな文字が書いてあった。
ーあなたの物語を守りますー
仮面ライダースコープの物語を始めようか?