はい!こちらG&K市民相談窓口です!   作:スツーカ

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他作品ではオカン役やツッコミ役のおばあちゃんが実は…なお話


報告書2枚目:おばあちゃんは強し

 いつもと同じく通常の業務をこなし、営業時間ももうすぐ終わる時間帯。赤い夕陽が窓から射しこみ人はまばらでキーボードを打つ音がやけに大きく聞こえる中、受付の電話がかかってきた。

 

「はい、こちらG&K市民相談窓口ですわ」

 

 時間ギリギリに電話とは珍しいと思いながらいつもの調子で対応するKar98k。だが電話相手はかなり焦った様子だった。

 

「……えぇっ!? わ、わかりましたわ。今すぐ職員を派遣しますから待っていてくださいませ!」

 

 あの真面目で背の低いKar98kが驚いた声を上げ慌てて指揮官の席へ走るとは、いったい何事かといった表情で他の人形たちが見つめる。パタパタと前回のような遅い足取りで指揮官の席まで来ると声を荒げた。

 

「どうしたKarちゃんそんなに慌てて」

 

「大変ですわ! 街のお店で大勢の戦術人形が暴れてると連絡が!」

 

 床に落ちたスマホに気が付いたのは数秒経ったあとだった。

 

 

 

 〇

 

 

 

「うーん、これはひどいな」

 

 15分後、職員総出で現場に向かった相談窓口メンバーが見たのは戦場かと見間違う光景だった。窓ガラスは割れドアは外れ、ビールとウォッカの瓶があちこちに散乱し食いかけの料理がぐちゃぐちゃに踏まれ見るも無残な口径となっていた。ここは街では有名な大きい酒場で、G&Kの人形や職員もよく利用する店である。中からは壮絶な罵り合いと殴り合いの音が聞こえ、店員は全員外に避難し手の施しようがないとして相談窓口に連絡をしたという。

 

「これはうちでも対処できんよ」

 

「頼むよグリフィンさん。このままじゃ店ごと潰れちまう」

 

 店長の懇願に応えたいのは山々だが、ぱっと見て30人はいる現役バリバリの戦術人形を相手取るのは自殺行為である。どうしたものかと頭を抱える指揮官の隣にいたStG44が手を上げる。

 

「ところで中にいるのはどこの部隊なんですの?」

 

「たしか〇〇地区の部隊で予約されてた気がするが」

 

「ほう、〇〇地区とな?」

 

 その声に一同が振り向いた。Kar98k並の身長により幼い声、若干大きめでブカブカな服装の金髪ロリ。I.O.Pが製造する戦術人形の中で2番目に古い銃を持つおばあちゃんことナガンM1895がそこにいた。

 

「おばあちゃんじゃないか。病院はもう終わったのか?」

 

「誰がおばあちゃんじゃ! それに今日は病院じゃなくてエステにいっとったんじゃ!」

 

 傍から見れば指揮官とナガンは親と子だが誰もそれは言わないお約束。二、三言葉を交わすとナガンは「わしに任せておけ」と言って大混戦の店の中に入っていった。止めなくていいのかと言う店員の言葉に指揮官は大丈夫だと答えた。そしてナガンは店の入り口に仁王立ちし大きく息を吸い込んだ。

 

誰が私闘を許可した! そこに直れ蛆虫ども!!!

 

 店の外からでも十分すぎるほどの声に店内の乱闘はピタリと止み、30名あまりの戦術人形たちは大慌てで整列した。

 

「全く、店が騒がしいから来てみれば、お主らは教育課程でなにを学んだのじゃ?」

 

 普通のロリボイスに戻ったナガンだが、溢れ出る怒りの波動に先程まで乱闘していた戦術人形たちは冷や汗をダラダラと流す。かつて部隊配属前の教育課程で鬼軍曹と恐れられたナガンM1895がいるとは思いも寄らなかったのであるから当然である。ナガンは足元に転がる酒瓶を手に取ると店内を見渡し、全員の戦術人形の顔を見ると納得したように頷いた。

 

「なるほど、酒に酔ってドイツとロシアに分かれて私闘した。そうじゃな? ……返事は?」

 

「い、Yes, Ma'am!」

 

 青ざめた顔で全力で返事する416はおそらく後にも先にもここでしか見れないだろう。

 

「返事だけは一人前じゃなぁ……なにボケっと突っ立っておる! 5分以内に全部片付けろ! さもなくばグラウンド100周じゃ!」

 

「「「Yes, ma'am!!」」」

 

 威勢のいい返事と共に戦術人形たちが慌てて片付けを始める。指揮官はその間に店員と片付けに追われる戦術人形に今回の事件の経緯を聞いた。3時間ほど前、大きな作戦が終了し打ち上げで40名ほどの戦術人形がこの酒場で飲み会を始めた。1時間ほど経ち程よくアルコールが回ってきた頃に10名が先に基地へ帰り、ドイツ銃とロシア銃が残って飲み会を続けていたという。その後ドイツ銃たちで兵隊ソングの合唱が始まり、ロシア銃がこれに対抗して歌い始め、徐々にエスカレートし最終的に殴り合いの独ソ戦に発展したと言う。

 ナガンと連絡を受け到着した彼女らの指揮官は頭を抱え店長に頭を下げた。数日後にまとまった話では、最終的にG&Kが破壊した店の備品を弁償し、部隊は数日の謹慎処分と再教育処分となったそうな。

 

「まさかおばあちゃんがあんなすごい声出せるとは思ってなかったよ。昔の映画に出てた海兵隊の軍曹みたいだ」

 

「だからおばあちゃんと呼ぶでない。まぁ、あれを参考にしたのは事実じゃが」

 

 なお先ほどの大声のせいで喉に不調が出て工場送りになったのは別のお話。

 




酒癖の悪い416を矯正させるおばあちゃんマジ鬼軍曹

登場人物紹介
ナガンM1895
市民相談窓口の自律人形課を担当する元戦術人形。第二世代自律人形の中でも初期に製造され、鉄血との戦いの中盤で引退し新たに配備される戦術人形の教育官として働いていた。今回の事件を起こした戦術人形らは全員教え子であり、彼女らからは鬼軍曹と恐れられていた。普段は可愛らしいのじゃロリだがスイッチが入ると映画フル〇タルジャケットのガ〇ー軍曹に引けを取らない気迫で教鞭を振るう。エステ通いが趣味だがすぐ不調で工場送りにされる。
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