デビルサマナー 須賀京太郎   作:マグナなんてなかったんや

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※大きな星の淡さんではありません。

本作の書き溜めとソシャゲのイベントを消化するために今日の更新はもうなく、
明日の更新予定もないので月曜日をお待ちください。



『淡い金の少女』

「なるほどなるほど。それで私のところへ来たのだな」

「そうです」

 

 薄暗い邪教の館の中に居るのは男二人。

 サマナー須賀京太郎と館の主パラケルススだ。

 マチコはどうやら買い物に出かけているらしく、残念だが今は居ない。

 

「というかキミこの短期間に何回も異界に巻き込まれるとか呪われとるんじゃないか」

 

 変態の否定することができない言葉に京太郎は黙った。

 この頻度で異界に巻き込まれることがどれだけおかしいか京太郎も理解はしていた。

 これが普通なら京太郎はもっと早く覚醒しサマナーになっているか死んでいる。

 

「私としては面白いので今の君のまま成長してほしいね。今のサマナー……サマナーだけではないが、安全思考すぎてねぇ面白くないんだ。話がそれたな。異能を封印する話だったな」

「はい。これが依頼にあたる話なのは俺も理解してます。報酬はこれを考えてます」

 

 京太郎がかばんから取り出したのは異界鶴賀学園から取得したドリーカドモンである。

 パラケルススは呆れたように首を振った。

 

「ドリーカドモンじゃなぁ。見なかったかい? 腐るほどあるんだよ、ドリーカドモンはね」

「商店街のドリーカドモンって貴重なものだったんですよね」

「そうだな。異界の維持期間もそんなに長くなかったのが理由だが」

「これ、異界発生から1、2時間ぐらいの代物です」

「まさか、鶴賀学園の異界もこれが原因か! ふ、腐るほどドリーカドモンがあると言ってごめんね。依頼を受けるから見せて」

「分かりました。ただその前に異能封じのアイテムがほしいです」

「それもそうだね……。ふむ、ちょっとまっていてくれるかい?」

 

 パラケルススは積み上がったゴミの山から一つの箱を取り出し開けた。

 箱の中に入っていたのは小さな宝石が埋め込まれたイヤリングである。

 目の前の男に似合わないおしゃれなアイテムが出てきて戸惑っていると、このアイテムについてパラケルススが解説をした。

 

「異能封印を行いたいのは少女なんだろう? しかも麻雀で異能を利用していると聞いているよ。なら付け外ししやすいアクセサリのほうが良いと思ってね」

「これってどういうものなのです?」

 

 京太郎は箱を受け取りイヤリングを見ながら問いかけた。

 

「ふむ。君は疑問に思わなかったかね? 異能者に覚醒している龍門渕がなぜ他の学校に麻雀で負けたのか」

「それは少し思ってました。覚醒してれば一般の人に負けることはないですよね。今の俺のように」

「それはそのとおりだが。不便だと思わないか? 麻雀が好きなのにどう打っても勝てる配牌が来るんだぞ? やりがいがないだろ? だから能力を封印したり異能を封印したりするアクセサリには一定の需要があるんだよ。ちなみにこれは異能封印の力のみ宿っている」

「封印できたの確認したら報酬を……いえ、渡す。渡しますよ」

 

 血涙でも流しそうなほどの勢いで睨みつけるパラケルススの迫力に負け京太郎はドリーカドモンを手渡した。

 念の為自分にイヤリングを付けたところ、電撃魔法「ジオ」が行使できないを確認した。

 確かに効果はあると希望を持ち京太郎はイヤリングを懐に仕舞った。

 

 パラケルススは受け取ったドリーカドモンをしばらく調べたあと。

 

「よし。少し手伝え」

 

 と言いながら、京太郎が最初に館へ訪れたときのようにドリーカドモンを機材にセットした。

 ドリーカドモンの正体が気になっていた京太郎は彼の指示に文句を言うことなく動いた。

 しばらく画面に表示されたデータを凝視していたパラケルススは「少し違うな……」と呟いた。

 

「若きサマナーよ、お手柄だぞ? どうも中に居るのはミイラじゃないようだ。商店街の異界で手に入れたドリーカドモンとも違い万全の状態と言っていい」

「ミイラじゃない」

「うむ。ふつうの子供だな。このまま安置したいところだが、放置するとミイラになりそうだ。出来るだけ情報を収集しておいてから割ろう」

 

 それから一時間ほど時間が経過したか。

 パラケルススの助手の様に馬車馬のごとく使われた京太郎は、設置されていた冷蔵庫からお茶を取り出し一服していた。

 もう一本缶のお茶があったので、飲むかフケイに問いかけたのだが暖かい方が良いと言い断られた。

 

「……うむ。割るぞ!」

「いきなりだな!」

 

 お茶がまだ入った缶を適当な場所に置き京太郎はパラケルススのもとへ向かう。

 ドリーカドモンは既にパラケルススの足もとにあり、彼は全力で、勢いよくドリーカドモンを踏みつけた。

 パリンという音と共にドリーカドモンの頂点にひびが入った。

 それから音を立ててひびが広がっていき、ドリーカドモンが真っ二つになったその時だった。

 

「うお」

「くっ」

 

 割れたドリーカドモンからは大量のマグネタイトが光の帯の様に広がり、エネルギーの奔流が発生し京太郎たちを吹き飛ばさんとする。

 京太郎はその光景を見ながら吹き飛ばされないようにと地面を踏みしめる。

 目が眩むほどの光の中で、京太郎の瞳は人影を見た。

 それがなんなのか考えるよりも前に動いた体が人影の腕を掴み取った。

 

「ぐあぁぁ!」

「くぉ!?」

 

 京太郎が人影の腕を掴んだ瞬間マグネタイトが収束し爆発を起こした。

 さしものサマナーと変態科学者も踏ん張りきれず壁に体を叩きつけられ痛みに苦悶する。

 一般人であれば骨折してもおかしくない出来事だったのだが「いてて」で済ますこの光景は一般人を脱した人間が如何に頑強かを表していた。

 

「ふぅ、大変な目にあったな……おや」

 

 埃のついた白衣を手で払いながらパラケルススは倒れている二つの人影を見た。

 ここには自分と京太郎しか居ないはずだと訝しみながらパラケルススが視界に入れたのは一人は当然京太郎だが、もう一人は京太郎の金髪と比べて少しだけ眼に優しい金髪の少女だった。

 少女に下敷きにされた京太郎が動こうとしないのは、反射的に少女を庇い後頭部を壁に強打したのが原因のようだ。

 

「むっ、マチコが帰ってきたか丁度いい。いやしかしこの少女は……」

 

 大きな買い物袋を持って部屋に入ってきたのは無表情がトレードマークの造魔マチコだった。

 大の男でも苦労しそうなほど大きな買い物袋を無表情で運んでいるが、実際マチコにとっては軽いの分類に入るためだ。

 館に帰ってきた彼女の視界に入ったのは少女を見て高笑いを上げる変態と、裸の少女に下敷きにされ倒れている少年の姿である。

 

「この状況はなんですか?」

 

 首をかしげる黒い少女を見るのは瞬きすら行わない虚構の瞳だけだった。

 

 *** ***

 

 突如現れた少女の検査を終えたパラケルススが館のメインルームへと帰ってきた。

 後ろには車椅子に載せられマチコに連れてこられた少女がいる。

 

「その子が?」

 

 少女の検査中に自身が気絶をしている間に起きた出来事を説明された京太郎が問いかけた。

 

「その通りだ」

「無事だったんだな。その子に聞けば何があったか分かるかも」

「どうもそうはいかんようだ。見てみろ」

 

 こくんこくんと少女の頭が不規則に振り子のように揺れている。

 少女に三人の視線が集中しているのに彼女は一切の反応を示さない。

 

「これは……」

「最初に言ったな。子供のミイラには魂がないと。どうやらそれは変わらんらしい。軽く叩いたり、くすぐったり、つねってもみたが全く反応しない。頭が振り子のように揺れているのは倒れないように反射的に動いているんだろう。それを考えればもっと強い刺激を与えれば反応するかもしれないが」

「それはちょっと……」

「そのつもりはないよ。彼女は貴重なサンプルだからね。ただこれで一つ判明したな。子供がミイラ化するのはマグネタイトの過剰供給が原因だ」

「マグネタイトの?」

「水を植物に過剰に与えれば枯れるだろう? それと同じだ。マグネタイトは生体エネルギーだ。それが過剰に与えられパンクしたんだ」

「それでミイラになる原理がわからないですけど……」

「あのミイラは生体エネルギーで一気に成長し爺さんになり干からびたと思え。ただ過剰にマグネタイトを与えられれば年寄りになる前に破裂し死ぬはずなんだが」

「やっぱよくわからないですね……」

 

 それにしてもと。車いすに座る少女を京太郎はじっと見つめる。

 パラケルススの話が本当なら墓を暴かれそこから取り出した骨を元に作られた『誰か』の筈だ。

 こうして見ていると反応こそしないがミイラとは異なり生きているように見えると、京太郎が少女の腕を取った時だった。

 

 振り子のように揺れていた頭が動かなくなり、腕をとった京太郎を真っ直ぐに見つめていた。

 それに気づいた京太郎は眼を丸くするほど驚き少女の瞳を見つめ返した。

 驚いたのは京太郎だけではない。パラケルススとマチコも驚き、声を上げそうになったが観察に徹した。

 しばらくすると少女の頭は最初と同じように振り子のように頭が揺れだした。

 

「……サマナーに反応したのか?」

「どうなんですかね……」

 

 京太郎はもう片方の腕を取るが少女は反応を示さない。ただ機械の様に首だけが同じ動作を続けるだけだ。

 

「よし。サマナーよ、お前定期的にここへこい。そうだな、依頼内容は少女と定期的に会いこの子に向かって何かを話せ。文句はないな」

「契約成立だなサマナー」

 

 マチコが少女を寝かせに行くために部屋から出ていこうとするのを京太郎も手伝うために動いた。

 二人が部屋から居なくなったあと少女のことに思考を巡らせていたパラケルススはふと思いついたことを口に出した。

 

「一度死にそして肉体的には再び生まれ落ちた……か。どこぞの聖者のようだな」

 

 戻ってきた京太郎とパラケルススの会話は悪魔合体に及んでいた。

 

「なるほどな。ピクシーはあと1レベルでハイピクシーへと進化するか」

「はい。なのでカブソとフケイの合体をお願いしたいんです。そのためにはまず異界に行って仲魔集めですけどね」

「集め終わったならばこちらで責任を以て合体を行おう。と、そうだなまず先ほどの依頼だが先行報酬としてこれを渡そう」

 

 パラケルススが取り出したのはハンドガンだ。

 日本と言う国においてハンドガンが気軽に出ると言う状況に今更ながらくらくらと来るが「これは?」と京太郎は問いかけた。

 

「通常のハンドガンを私が強化したものだ。君のレベルで用意できる銃としては破格の性能と思っていい」

「はぁ……。武具屋には行ったんですけど銃は買わなかったんですよね。高くて。銃本体もだけど弾丸が……」

「特に君は魔法があるからな。とはいえ鳥に似た悪魔は大体銃を苦手としているしこういったものは色々な用途で使用できる。持っておくといい」

「はい。あ、そうだ。フケイから金属探知機にも反応しないカバンがあるとか聞いたんですけど」

「もちろんあるぞ。ないと入国審査とか面倒だからな。そうだな今どれぐらいマッカはある?」

「えっと……2万マッカですね」

 

 スマホを取り出し現在所持しているマッカを確認して言った。

 

「十分だな。一万あれば十分なカバンが買えるぞ。君は学生だしそれっぽいやつを取り寄せておこう」

「いいんですか?」

「異界のドリーカドモンを持ってきてくれた時言ったろう? 優遇させてもらうとな。どうせほかの物を買うついでだ」

「なら先に一万マッカ渡します。足りなかったら言ってください」

「分かった。物品と一緒に領収書も君に渡すから差額を返すか補填させてもらおう」

 

 日も暮れる時間となり、京太郎はパラケルススとマチコに挨拶をしてから邪教の館を出た。

 懐にあるハンドガンという異物に少し違和感を覚えながら公共交通機関を用い帰宅するのだった。

 

 *** ***

 

 次の日学校を休んだことを咲や誠に心配された京太郎は、嘘をつくことによる罪悪感と後ろめたさを感じつつ元気になったと伝えた。

 それからいつも通り授業を受けて今は放課後の時間となり、京太郎は椅子から立ち上がると体を伸ばした。

 

「終わった~!」

 

 伸ばした体からは骨の鳴る音が聞こえた。

 これから悪魔合体を行う悪魔を探しに異界に行こうかと教室の出口へ向かおうとした京太郎を引き留めたのは咲だった。

 

「京ちゃん今日も部活に来ないの?」

「ん? あ~ちょっとな」

「そうなんだ……って冗談でした! 今日は休みなんだよ。連絡来てない?」

「聞いてないぞ?」

 

 もしかしたらもう、幽霊部員扱いになっているかもな。そんなことを京太郎は思った。

 それならそれで来年居なくなる久の分を埋めるために幽霊で居続けるのもいいかと、そこまで考えたところで京太郎をじっと見つめる咲の瞳に気づいた。

 

「どした?」

「ううん。なんでもない。えっとね、一緒に帰ってもいい?」

「いいぜ! 用事はあるけど一旦家に帰るつもりだからさ。久しぶりに買い食いしていこうぜ! 実は公園の近くにうまい鯛焼き屋が来てるんだよ」

 

 人懐っこい笑みを浮かべていつも通りに話す京太郎を見て咲は「よかったいつも通りみたい」とホッとしていた。

 麻雀が突然強くなり、それから部活を休み始めて昨日に至っては健康優良児のはずなのに突然風邪で休んだ。

 そんな少年の変化に咲は突然目の前から居なくなった姉の姿を思い出した。

 

 咲にとって少年はおせっかいで大切な同級生だ。

 いつまでも一緒に居られるわけではないけど、何年たっても「よっ! 元気にしてたか? 咲」と言われ頭をぐりぐりしてくる京太郎に「もうやめてよ~京ちゃん」と言いながら嫌がる自分。そんな関係がずっと続くと彼女は思っていた。

 けれど少年の姿に突然消えていった姉を思い出して咲は心配になったのだ。

 

 少年もいつか、姉のように自分の前から消えてしまうのではないかと。

 

 けれど自分といつもどおり会話をする少年を見て咲は心配のしすぎだったと安心した。

 

「どした咲?」

 

 じっと自分を見つめてくる先に京太郎は問いかけた。何か理由があるんじゃないかと少し疑問に思っただけなのだが、咲からしてみれば京太郎をずっと見ていたことに気づかれたことに少し気恥ずかしくなり、慌ててごまかした。

 

「なんでもないよ、京ちゃん」

「んだよ~。あっ、実は昨日テスト範囲を先生が言っててそれを黙ってたり?」

「違うよ! もしそうだったら言ってるもん!」

「ほんとかぁ?」

「ほんとだよっ」

 

 そんな会話を繰り返している内に、咲の頭から先ほどの考えは消え去っていた。

 

 *** ***

 

 咲と別れた京太郎は一度家に戻った後に自身の装備を持って異界へと向かった。

 異界のある場所は住宅街の奥にある廃工場でありそこまで歩いて移動した京太郎は、異界の入り口まえで準備を整えると異界の門を潜った

 

 少年の左手には幼馴染の少女と会話している間も懐にあったハンドガンが握られていた。




次が悪魔合体。
そしてようやく鉄パイプ以外の武器を持ったよ。
使うかはともかく近接武器と銃はサマナーの嗜み。だけどザ・ヒーローやソウルハッカーズの主人公辺りはどこで銃の使い方習ったんですかね。
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