デビルサマナー 須賀京太郎 作:マグナなんてなかったんや
本作の『フリン』は真4にでるサムライポニーテールファンド野郎ではありません。
現実のとある人物の名前から取ってますがまぁ本名出さん方が良いかなって。
ゲームでの彼は確実にメシアンの役割である。
(チョビ髭が許された時代ならいけるきもするんだけど)
須賀京太郎の朝は意外と早い。
小学校高学年に動物園で見て一目ぼれした京太郎のペットであるカピバラに朝食を与えに行くのとブラッシングとプールの清掃を行うためだ。
両親との約束でカピバラの面倒を見るのは京太郎の役割であり、ずっとこなしてきた仕事でもあった。
眠るカピバラを京太郎は愛おしそうに抱き上げてプール清掃の邪魔にならないところまで移動させる。成長し50キロを遥かに超える大きさになったカピバラを抱きかかえて移動させるのは今までの京太郎なら大変だったが、異能者に目覚めた今の彼ならば容易なことだ。
「さて、と」
気合を入れて掃除用具を抱えた京太郎がプールの水を抜いた時。
「……」
京太郎をじっと見つめる存在に気づいた。
白を基調とした鎧を纏い赤き翼を持った天使がそこにおり、京太郎の脳裏を駆け巡ったのは先日ハギヨシから聞いたメシア教の話についてである。
一体何をしに来たのか、サマナーである自分を粛清にしに来たのか、等々。京太郎の脳裏にあらゆる可能性が駆け巡り、思考がパンクした京太郎は叫ぶことしか出来なかった。
*** ***
京太郎の様子がおかしい。
それに真っ先に気づいたのは幼馴染の咲だった辺り流石と言えるだろう。
ホームルームまではそうでもなく普通の様子だったのだが、授業が開始した後から京太郎の百面相は始まった。
一限目の授業は数学である。
あまり勉強が得意ではない京太郎のことだ。授業内容が分からず頭を抱えているのかと思いきやそうではない。
何やら窓の外をちらちら見ており、かと思えば頭を抱え、次にはハッとするかのように黒板を見る。そんなことを繰り返していた。
そんな奇怪な行動を取っていれば教師も京太郎の行動に気づき、注意目的で黒板に書いた問題を解くようにと指示を出した。
立ち上がった京太郎は、どこか人を寄せ付けないそんな雰囲気を醸し出しながら黒板前まで歩きチョークを手に取る。
ジッと黒板を睨みつけていた京太郎はおもむろに黒板に数字を書きだした。
それを終えた後教師は黒板を、次に京太郎を見て言った。
「正解だ。なんだきちんと授業聞いてるじゃないか。ただ挙動不審なのはよくないな」
「ははは、ごめんなさい。でも今日はちょっと事情があってですね。気をつけます」
「ははは」と笑いながら着席した京太郎を見て咲は「やはりおかしい」と確信を持った。
咲の知る京太郎は勉強は不得意だが授業中に寝るタイプでは決してない。
見た目が金髪で一見すると軽くみられる性格のため、色眼鏡で見られがちな京太郎はそれに負けないように授業は真面目に受けている。
そのため少し経てば京太郎は真面目な生徒だと気づく教師もおり、そんな京太郎が挙動不審な行動を取っていることがまずおかしい。
また、不得意な数学の問題を突然当てられたにも関わらず答える京太郎は失礼な言い方だが異常だった。
京太郎がおかしい理由、それはずばり天使アークエンジェルが京太郎を遠くから見ているためである。
早朝に叫んだ京太郎だが気づけばアークエンジェルは消えており、叫び声で起きた両親に叱られたが比較的いつも通りの朝を迎えることができた。
その後いつも通り登校した京太郎は早朝に見た天使は自分の想像が生み出したのだと本気で思おうとした時である。
異能者として覚醒した京太郎の鋭敏な感覚が自身に視線を向ける何者かを感知した。
ギギギと首から音が鳴るように京太郎が窓の外を見るとアークエンジェルが遠くから京太郎を見ていた。
こうして京太郎はおかしくなった。
普段は眠気が来る数学の授業でさえ時々窓の外を見るが圧倒的なまでの集中力で授業内容を理解し、眠気なんて感じない。
優等生須賀京太郎の誕生である。
だが。
「だ、大丈夫? 京ちゃん」
「おう、大丈夫大丈夫」
時がたち授業もホームルームを終えた放課後。
明らかに顔色の悪い京太郎を心配した咲が問いかけるが京太郎は大丈夫と答えてひかない。
アークエンジェルはまだ京太郎を見ている。
殺気を向けられるぐらいならまだいい。戦うだけなのだから。だが、一体何の目的で観ているのか分からないのが京太郎を苦しめる原因だ。
もしかしたら、自分が原因で周りの誰かが傷つけられるのではないかという京太郎の不安をアークエンジェルが増長させていた。
「本当に大丈夫? 保健室についていこうか?」
「いやいや、もう放課後だろ? それなら帰るって」
「そっか。今日ぐらい麻雀部に来ないかなと思ったんだけど……」
「……そうだなぁ」
結論から言えば京太郎にこの後の予定はない。
なら何を気にしているかと言えば、やりたいことをやっているとはいえ部活を休み続けていることに対する罪悪感である。
休んでいることに後悔はないけれど、気にしないかと言えば話は別だった。
京太郎は少しだけ考え込んでから決めた。
天使がなぜ自分を監視しているのか今もって分からない。
だが、ハギヨシの話から、もしかしたら自分を含めた親しい者たちも粛清対象であり、その下調べをしているのではないかと考えたのだ。
京太郎は咲をじっと見つめた。
かわいらしく、少し不安そうに京太郎を見つめる咲の姿がそこにはあった。
清澄高校で京太郎が最も親しい人と言えば目の前の少女だ。狙われる可能性があるなら彼女と部活のメンバーだろう。そう結論に至った。
「今日は予定ないしな。部活に少し顔を出すかな」
「ほんと!?」
うれしそうに驚く先を嗜めながら京太郎は二つのカバンを手に持って言った。
「行こうぜ咲。久々に皆と話したくなったよ」
「……うん!」
二つのカバンを手に持って、つのカバンを気にしながら咲は頷いた。
かくして、久々に幼馴染と部活に出れると喜ぶ咲と、自分の周りの命を心配する京太郎。という全く逆の心理を持った二人が教室から出ていくのであった。
*** ***
「お疲れ様っす」
「あら」
「おお! 久しぶりじゃの、京太郎。元気しとったか?」
「はい! すみません、全然部活に出なくて」
部室には部長である竹井久と副部長である染谷まこが居た。
まだ人数が揃っていないためそれぞれ教本を読んだり麻雀牌を綺麗に磨いていた。
優希と和がまだ来ていないが、彼女たちのクラスはホームルームが長引いているのを扉越しから確認している。
「でも元気そうでよかったわ。これからも部活はでれるのかしら?」
「いえ。今日はたまたま休みなだけですね」
「……そう」
竹井久は肩を落としていたが無理もない。
京太郎を除けば部員は五人。麻雀を打つのには4人で良いが手が空いた一人は部室にあるパソコンでネット麻雀を行い腕を磨ける。
久にとって京太郎は大事な部員ではあるが、雑用などの縁の下を担当してくれるはずだった戦力である。
京太郎が一人いれば五人が雑用をせず練習に打ち込める。特にタコスが生命線である優希には死活問題だ。
京太郎はカバンを壁端に置くと雀卓の前に座った。麻雀を打つためではなく先輩であるまこの手伝いをするためだ。
「まこ先輩から見て右の山が掃除してない奴でいいですよね」
「あっとるぞ」
「了解っす」
掃除を始めた京太郎とまこ、教本を読み進める久を見て手持無沙汰になった咲は一人ネット麻雀へと向かった。
そんな咲を後ろから久は見つつ咲のネット麻雀の腕前を確認していた。
オカルトに頼る咲は実際に打てば一流の雀士だが、オカルトが影響しないネット麻雀ではその限りではない。だがオカルトが効かない相手が全国には居るかもしれないと素の技術を鍛えさせていた。
それから30分ほど経過しただろうか、牌だけでなく雀卓自体の軽い掃除も行い完了させた京太郎とまこが体を伸ばしていると大きな音を立てて部室の扉が開いた。
「ホームルームが長引いてこまったじぇ! って犬!」
「ごめんなさい。遅れました……須賀くん」
「おっす、二人とも久しぶり」
「おっすじゃないじぇ! 今までサボって何やってたんだ!」
怒り心頭と言った感じの優希に対して京太郎はこれまでの記憶を思い返す。
流石に悪魔相手に命のやり取りや他校の女の子と仲良くなりましたとは言えず「やりたいこと、やるべきことをしてたかな」と言った。
「それは麻雀部よりも優先度は上なんですか?」
「……うん。そうだな。その用事のおかげで色々と知らないことを知れて、少なくとも最低限やらなきゃいけないことは分かったかな」
「そうですか」
少しむっとしている和に少し申し訳なさそうにしながら、京太郎は部室の窓から体を乗り出した。
掃除をするために開けていた窓からはとても気持ち良い風が京太郎の身体を包み込む。だがアークエンジェルの気配がとても近くにあると京太郎は気づいた。
京太郎はスマホ……いやCOMPを取り出しサーチ機能を実行した。感覚だけでなく機械での確認を行うためだ。
するとやはりサーチ機能にも悪魔の反応は引っ掛かり、自分の感覚は正しいと京太郎に確信させた。
アークエンジェルの目的は京太郎にとって不明だが穏やかなことじゃないのは分かる。
京太郎のことを知りたければ直接会いにこればいいのだ。監視している時点で何か後ろめたいことをしていますよ。と言っているのと同じだ。
送還されている仲魔たちも同じ気持ちなのだろう。各々の悪魔たちも京太郎に警戒を促している。
虚空を睨みつける京太郎に、最初は優希も飛び掛かるなりしてじゃれつきながら怒るつもりだった。
優希からしてみれば大会で負けてへそ曲げたから部活を休んでいるようにしか見えなかった。
なのに、彼女が京太郎に飛び掛かるどころか動くことすらできなかった。
原因は京太郎から発せられる戦いの気だ。
殺気とまでは言わないが京太郎の意思が他者が近づくことを拒絶していた。
京太郎から発せられる気にただ一人咲だけが反応していた。
咲が思い出していたのは県大会決勝で戦った天江衣である。彼女から発せられる気に咲自身怯え戦うと言う気になるまで時間がかかった。
ただ衣の気と違うことがあるとするならば。衣の気が無邪気で惨いなら京太郎は大分禍々しい。
京太郎は深い深呼吸を行い踵を返した。
「すみません! 用事が出来ました!」
「え? それは確かに構わないけれど……」
「本当にごめんなさい!」
京太郎はその場でカバンを開けてベストだけでも制服の上から着て部室から出て行く。
五人は京太郎に声をかけることもできずその背中を見送ることしか出来なかった。
そんな彼女たちが我に返ったのはこの晴天の中に落ちた一つの稲妻だった。
*** ***
誰も居ないことを確認して京太郎が放ったのは電撃魔法ジオである。
電撃はアークエンジェルに当たることなくその横を通り過ぎて行った。
この攻撃は威嚇であり、京太郎は『今は』攻撃を当てる気はない。
「いったい何が目的で俺を見ていた!」
空中で動きが止まったアークエンジェルに対し、仲魔たちを召喚しながら京太郎が叫んだ。
アークエンジェルは翼をはためかせながら地上まで下りてくるとこう言った。
「私に敵対の意思はない。契約者の指示に従ったに過ぎない」
「契約者……? フリン?」
「そうだ。契約者はお前に大きな関心を寄せている。そのため、日常の生活態度を見てきてほしいと言ったのだ」
「……俺の生活態度?」
「契約者はお前の中に光を見た。他者のために行動することができる思いやりも見た。だから知りたかったのだろう。堕落することなく日々を真面目に過ごしているかを」
京太郎は頭が痛くなった。狂人にえらい気に入られていることを認めたくなかったのだ。
というか昨日今日会ったやつに生活態度を気にされるとか気持ち悪くて仕方がない。
「で、結果は?」
気持ち悪いが問いかけるしかない。
ここで堕落判定を受ければきっと戦うことになるからだ。
「今日一日で判断はしにくいが問題はない。幼いころの約束を守るのは良いことだ。恐らく最初は両親に手伝って貰っていたのだろうが今では一人でペットの世話もしている」
思いのほかべた褒めで京太郎が驚いているとアークエンジェルは評価を続ける。
「成績は不明だが授業も真面目に聞いている様だな。だが友を謀っているのは認めがたい。しかしサマナー業を話すわけにはいかん以上仕方がないと思われる。できれば帰ったら数学の復習をすることを勧める」
「……はい」
他人が何をと思わないでもないが、否定できない正論パンチに京太郎は項垂れて頷くことしか出来なかった。
「ではな」
「いや待て待て!」
飛び去ろうとするアークエンジェルを京太郎が呼び止めた。
「なんだ?」
「なんだじゃない。一体何を考えている? 最近この辺りで起きるドリーカドモンを核とした異界発生事件もお前たちの仕業なのか?」
「心外だな。我らはそんなことはしていない」
「それは、あんたたちの神に誓って?」
京太郎の問いかけにアークエンジェルは頷いた。
「もちろんだ。お前の言うとおり我らが主に誓っても良い」
「……トウビョウ」
「信じてもええじゃろ。これからはともかくこれまでの事件ではこいつらは関わっとらん。特に唯一神の名に誓った以上過ったことは言わんよ」
「一応聞くけど、これからすることは言える?」
「それはできない」
やっぱりと思いつつ京太郎は更に問いかける。
「それは俺にとって不都合が起きる?」
「私はお前ではない。答えられない。が、『須賀京太郎』と言う魂の器には被害はないだろう」
「……分かった」
京太郎は戦闘態勢を解き仲魔たちを送還した。
「信じるよ」
「承知した。ではさらばだ、少年よ。近いうちにまた会うこともあるだろう」
飛び去っていくアークエンジェルを京太郎はただ見送るしかなかった。
メシア教が危険だとは理解している。だが、現状理由が見えない中で攻撃したくはないし、できなかった。
*** ***
「それでどうだった? 須賀京太郎は」
龍門渕の客室で寛ぎながら言ったのはフリンである。
机の上には何枚かの紙と『パン』と『赤ワイン』が置かれていた。
フリンの前でアークエンジェルは今日見聞きしたことをフリンへ伝えた。
「勉学は不得意だが授業態度は真面目なようだ。今日に限って言えば挙動不審でもあったがそれは私が見ていたせいだろう」
「サマナーであれば当然感知できるから警戒したんだな。ほかには?」
「友人も多く体を動かすのが得意なようだ。サマナーとしての身体能力もコントロールできている」
「へぇ、そりゃ素晴らしい! 覚醒直後だとコントロールできずに人を潰すことだってあるのに。やはり良いね、彼は」
フリンは机に置かれた紙を手にし読み上げた。
清澄高校1年、麻雀部所属。
誕生日は2月2日であり年齢は15。
サマナーとして活躍したのは3週間ほど前からであり、異界の二つを単独で破壊し依頼により一つ、合計三つの破壊を行っている。
戦闘タイプとしては近接戦を得意とし電撃魔法が使用可能。
フリンが京太郎を軽く調べた限りの情報がそこには書いてある。
「それでいて真面目な人種ではあるようだね。うん、決めた。アークエンジェルよ、彼と共に依頼をこなしてきてほしい」
「依頼を?」
「一時的に彼の仲魔としてね。ただし明日は……分かるね」
「承知した」
フリンとアークエンジェルの付き合いは長い。それこそフリンが覚醒した直後からの付き合いでアークエンジェルは少ない情報からフリンの意思を汲み取ることが出来るほどだ。
「悪魔と仲良くしているのは良くないがあれほどの光だ。我々の話を耳を傾け、修練を積めばテンプルナイトになり、大天使の方々にさえ見初められるほどの存在になるはずさ。そのためにはこの地が邪魔だね」
「神を信じぬ人間が治める地だからこそ……か」
「あぁ。我らが神を信じぬ不浄なる存在の浄化を行う。そのためのカギは既に手に入っている」
フリンは立ち上がり床に転がっているカプセルを開けた。
そこにあるのは龍門渕から受け取った鍵である。これに宿る異能の力があればフリンの、そして彼が信仰する神の望みが叶うと彼は心から信じていた。
「神罰の再現の時が来た。この不浄なる大地を全て洗い流し神聖なる世界への、引いては我らが神への手向けとしよう」
フリンはパンとワインを口に含み天に祈りを捧げる。
神罰と言う名の災厄が来るときは近い。
明日か今日の夜また更新します。
テンポが遅い部分はささっとあげたい。