デビルサマナー 須賀京太郎   作:マグナなんてなかったんや

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ストーリーには関係ないけど裏設定の日程表と書いてるときの俺の日程に差異が発生し地味に修正が発生。
おかげで当初予定していたレベルより京太郎が2、3ぐらい高い。やったな!




『少年に祈りを』

「うーん、いいね。依頼を受けてすぐに解決。良い感じだよ、チミ」

 

 数多くいるモコイの中でリーダー格モコイがそう言った。

 このリーダーと会う前に会話した悪魔とは普通に会話をしていたのになぜこの悪魔だけ口調がおかしいのか。そんなことを思いながら京太郎はガキの肉を手渡した。

 通常悪魔は死ぬと肉体のマグネタイトに分解され何も残らないが時々マグネタイトではなく実態を持つ悪魔が現れる。

 今回の依頼は実態あるガキの肉を一定数集めモコイに渡すというものだった。

 

 ガキはもはや敵ではないが受肉した悪魔は絶対数が少ないのもあり中々手に入らず京太郎を困らせた。

 

「食べなくても良いけどたまあに、食べたくなる時はない? チミも」

「うん。あるね」

「人間食べるとボクら討伐されちゃうから我慢我慢だネ~」

「え? なんて?」

 

 聞き捨てならない言葉を聞いたが京太郎は抑えた。

 実際ここにこうして居て、依頼を出すことを許されているのだから京太郎に手を出す権利はない。

 そんなことを考えながら今にも剣を振り下ろしそうなアークエンジェルの身体を一生懸命抑えていた。

 

 さて、どうしてこんな状況になったのかそれは今から時を遡ること早朝。

 京太郎が先日の様に掃除を行っている時に姿を現したのがアークエンジェルだった。

 彼は主の名で京太郎について回ることになったらしい。実際京太郎宛てに本件に関する依頼も出されているとのこと。

 この勝手な言い分は拒否したかった京太郎だが先日のこともあり、もっと天使のことを知るべきだと考え彼を受け入れた。

  

 今日受けた依頼は三つ。

 一つはモコイに一定量のガキの肉を届けること。もう一つはとある異界の調査であり、これには特典として一定数悪魔を撃破したら報酬が上乗せされることになっていた。最後の三つ目は当然フリンからの依頼だ。

 さて、ここで説明しなければいけないのは悪魔たちからの依頼についてである。

 悪魔からの依頼は決して彼らが勝手に出している訳ではない。

 全ての悪魔が戦う意思を見せている訳ではないのだ。一部とはいえヤタガラスと契約しその庇護下に置かれた悪魔たちは集落で暮らし困りごとがあると時々サマナーに依頼が来る。

 今回のモコイの依頼も異界の一つにある集落の一つから出された依頼と思えばいい。

 

 閑話休題。

 

 こうして京太郎はアークエンジェルを伴い、いつものメンバーと依頼をこなしていった。

 流れとしてはまず二つ目の依頼をこなしてから一つ目の依頼をこなすことにした。ガキの肉の量は既に依頼内容に記載されているからわざわざモコイたちに聞きに行く必要はない。

 では依頼は順調にこなせたかと言えば違った。

 まず戦闘面についてだがアークエンジェルはとても頼りになる存在だ。何せ現パーティは京太郎しか物理攻撃担当が居ないのだ。

 それがアークエンジェルの全体物理攻撃ヒートウェイブを初め、中級火炎魔法アギラオも使用できるため戦力的にはとても頼もしい存在となった。

 なら何が問題かと言えば思考に全く柔軟性が全くなかった。

 

「ま、待って頂戴。ね? ほら仲魔にもなってあげるから命だけは……!」

「知らんな。不浄なる存在め滅せよ」

「わー! ストップストップ! 交渉する、します、させて! 仲魔にする! 合体材料かもだけどごめんな!」

「え、えぇ! 問題ないわ、どんと来いよ!」

 

 契約し送還したことで姿を消したコカクチョウが居た場所にアークエンジェルの刃が通り過ぎた。

 仲魔たちが必死にアークエンジェルを取り押さえようとするも、力のパラメータに差があるため完全に抑えることが出来るのは京太郎のみだ。

 

 と、大変なこともあったが基本的にアークエンジェルは京太郎の指示をきちんと聞き、戦闘においてのみだが柔軟な行動も取る。

 仲魔たちに攻撃が当たる場面では彼らを庇い、他の面子の攻撃後に追撃を行うなど戦闘メンバーとしては文句なしの存在だ。

 が、それだけである。それ以外の、敵対する悪魔に対して一切の慈悲はない。

 

「しかし少年よ。悪魔とは百害あって一利なし。殺す以外にあるまい」

「それをなんとかするのがサマナーだろ!? 確かに命乞いから不意打ちしてくるやつも居るけどそれだけだ。その時殺せばいい」

「しかし」

「しかしもかかしもない! もしそれで死んだら俺の責任だよ。悔いは残るけど文句はないさ。それに……」

 

 京太郎が視線を向けた先に居るのは三体の仲魔たちである。

 それぞれが元気良く頷いており、京太郎は彼らが居れば大丈夫と信頼を寄せているのが一目でわかる

 だがその光景を見たアークエンジェルは別のことを思った。

 

「危険、ですな。あなたはあまりにも魔の存在に近い」

「――そうかも。今なんて人と悪魔はあまり変わらないって考えちゃってるよ。確かに悪魔は俺たち人間に害を与えるけどそれは俺たち人間だって同じだ」

 

 あってはならないはずなのに、殺人事件などの大きな事件はニュースから消えることはない。

 

「悪魔が人を傷つけて、人が人を傷つけるなら、人と悪魔が手を取り合うことだってできるだろ?」

「発想の飛躍に過ぎませんな」

「かもな。でもこんな考え方をする奴もいる。それだけは覚えておいてほしいな」

 

 京太郎はアークエンジェルが自分の考えを早々理解できないだろうと分かっていた。

 アークエンジェルは天使だからか、人間で言う真面目な委員長タイプである。総じてそんなタイプは頭でっかちだ。

 実際アークエンジェルは頷いたものの、その眼は納得していない。それを見た京太郎は。

 

 『人間も悪魔も変わらないけど、天使も変わらないな』そんな結論に至るのだった。

 

 *** ***

 

 アークエンジェルにとって京太郎の様なタイプの人間は初めだった。

 テンプルナイトとなったフリンに従い数年、もはや彼の方がレベルが上で自分はもう戦力にならないにも関わらず彼の傍に居るのはフリンの願いからだ。

 彼にとってアークエンジェルとは唯一無二の友であり『親』の様なものだ。

 幼少期の出来事からメシア教に入信し、騎士候補になった彼を励まし続けたのがアークエンジェルだ。

 そしてアークエンジェルは詳しく知らないが、フリンは『数多の試練』を乗り越えメシア教の中でもトップクラスの力を持つと言われるほどの騎士にまで成長した。

 

 だが須賀京太郎は違う。サマナーとテンプルナイトの違い、そしてメシア教の信者とそうではない人間と言う違いもある。

 

 けれど。

 

 須賀京太郎の瞳にフリンが持っていたが、どこかでなくした懐かしい光をアークエンジェルは見た気がした。

 

 *** ***

 

 そして時は戻る。

 今はモコイの集落でガキの肉を彼らに手渡したところである。

 京太郎は彼らから報酬としてマッカと色々なアイテムとお土産にブーメランをもらった。

 

 その時だ。ピクシーから今まで感じたことがないほどのマグネタイトの奔流が生じた。

 

「うわっ」

 

 マグネタイトの嵐は眩い光となりピクシーを包み込む。京太郎はそれを見ながらついに来たと思った。

 ピクシーのハイレベルアップである。

 光の奔流が治まったときそこに居たのは今までのピクシーではなく少し成長した妖精の姿だった。

 

「じゃじゃーん! レベルアップ! コンゴトモヨロシクね、サマナー」

 

 進化したピクシーの姿を見たときの京太郎の感想は……。

 

「えっと、ポルナレ」

「おっとー! 誰が便所男だぁ!」

 

 ハイピクシーの蹴りを頬に喰らった京太郎は軽く吹っ飛んだ。

 進化したことですべての能力値がピクシーと比べて格段に上昇しているからだ。

 

 ハイピクシーは池の水で自分の顔をというか、髪形を見ると「うわっ」と言った。京太郎の言葉に納得してしまったのである。

 なんとか逆立った髪を水で濡らして降ろすと自信満々に胸を張って。

 

「こ、これが本当の私だから!」

 

 と言った。

 一言で言えば京太郎は蹴られ損だった。

 

 蹴られたとき京太郎が落としたブーメランを拾ってジャックフロストが投げて遊んでいた。

 立ち上がった京太郎はブーメランの軌道を見るが、円を描くようにというより、ある程度進むとある地点で止まったのちに戻ってくるようだ。

 近くの樹に過って当たったとき枝を粉砕した時、少し冷や汗をかいたが悪魔が作ったものなのだからこんなものかと思った。

 

 依頼も終わり一息ついた京太郎はCOMPで時間を確認すると13時だった。

 昼ご飯を食べてからパラケルススの元へ向かおう。そう考えながら京太郎が異界から帰還しようとしたとき、アークエンジェルの剣が煌めいた。

 

 それを察知した京太郎が前に倒れる形で前転しながら問いかけた。

 

「――何のつもりだ?」

「フリンからの指示だ。キミを現世に帰すわけにはいかない」

 

 その一言を聞いた瞬間、京太郎は動いた。

 何を考えているかは分からない。だがアークエンジェルの言葉から嫌な予感はひしひしと感じられた。

 

「ジオンガ!」

 

 京太郎が発動したのはジオの上位魔法であるジオンガだ。

 地面をえぐりながらも進む電撃はアークエンジェルに向かって進むが当たらない。

 空を飛び電撃を避けたのだ。

 そのままアークエンジェルは渾身の力を込めて剣を振るった。

 

 ヒートウェイブ。

 

 剣から発せられた衝撃波が京太郎たちを襲う。

 だがこのダメージでやられる仲魔たちではない。

 

「ヒー! ホー!」

 

 ジャックフロストのブフーラで作られた氷の槍が空中に居る天使に向かって投げ槍の様に飛んでいく。

 ヒートウェイブの反動で動きが散漫となっていた天使の羽を貫き、トウビョウの攻撃で勝負はついた。

 対象の体調を悪くする『パンデミアブーム』である。

 

「ぐ……!」

 

 すべての能力値を下げられた上に気分の悪さが天使の集中力を掻き消す。

 

「アギ―!」

 

 翼を氷の槍に貫かれ墜落する天使に炎を避けるすべはなく、跳躍し自分に向かって短刀を振るう少年もまた飛べる術はなかった。

 

 マグネタイトに分解されるギリギリのところで止めた京太郎はトウビョウにシバブーの魔法を使用するように命じた。

 アークエンジェルには低確率だが生命を失わせる浄化の魔法ハマがある。京太郎はこれを恐れた。

 だがシバブーで縛りつづければその恐怖も問題ない。

 

 そして異界から出た瞬間、京太郎のCOMPから着信音が鳴り響いた。

 京太郎は通話状態にするとCOMPを耳に当てた。

 

『つながった……! ようやくつながりましたわ!』

「その声、龍門渕さんですか?」

『えぇ、えぇ! 須賀さん今までどちらにいらしたんですの!?』

「依頼を受けて異界にいたんです」

『異界に? 納得しましたわ。通信が繋がらないのはお互い異界に居たからですわね……』

 

 COMPは現世と異界でも通信が行える。だが透華が言った通り異界と異界では通信はつながらない。基地局の問題で現世を経由しなければならず通信がどうしても不安定になるからだ。

「それでフリンから受けた依頼の関係でアークエンジェルも連れて行って

『フリン!?』

 

 男の名を聞いた瞬間透華の声色が変わった。

 何事かと思った京太郎だが同時に納得もしていた。これが、アークエンジェルが自分たちを現世に戻したくない理由なのだと。

 

『もしかしてあなたメシア教に……? いえ、そうなら私が情報を掴むはずですしそもそもこの電話に出る理由が……』

「えっと、まず一つ目。俺はメシア教には加入していません! 第二にフリンからの依頼はアークエンジェルを今日一日連れて行ってほしいというものでした」

『アークエンジェルを? 一体なぜ?』

「分かりません。ただアークエンジェルは俺を異界から出したくないようでした。現に後ろから斬りつけられそうになりましたし」

『今その天使はどちらにおりますの?』

「シバブーで縛ってます。事情を知るためにも殺すのはまずいと思って」

『ナイスですわ須賀さん! 須賀さん。まず私から二つ依頼を出させて頂きますわ。一つ目は出来うる限り急いで龍門渕まで来てください。二つ目は情報交換を行いたいですわ』

「分かりました。急いで向かいます」

 

 断る理由もなく京太郎は通話を切ると仲魔たちとアークエンジェルを送還し走り出した。

 本来なら空を飛べる仲間がいればいいのだが、今の京太郎には居ない。

 京太郎は走りながらネットでタクシー会社の電話番号を見つけると急いで電話をかけタクシーを要請した。このまま走った方が早いのだが人に見られてるのはあまりよろしくない。

 電話をしてから五分後、たまたま近くに居たタクシーが京太郎を乗せて龍門渕へと向かった。

 

 *** ***

 

 龍門渕高校近辺までたどり着いた京太郎はその異様な雰囲気に気づいた。

 龍門渕へ向かうまでの道が制服を着た職員が塞いでおり向かうことが出来ないでいるのだ。

 

 その中には京太郎も見知った人々もおり、声をかけてきたのは四人。宮永咲、竹井久、東横桃子、加治木ゆみだ。

 

「京ちゃん!」

「京太郎くん!」

 

 はた、と咲の動きが止まった。

 桃子と京太郎が知り合いだと知らないので驚いていた。

 

「皆どうしてここに?」

「7月に行う合同合宿の打ち合わせを予定していたのよ」

 

 答えたのは久である。彼女も少し驚いているが咲ほどではない。

 京太郎は合宿の話を知らないが思い当たったのは一つ。

 

「あぁ、麻雀の」

「そうだ。だがこの状態でな」

「先に進めないってことですね……」

「龍門さんとも連絡が取れないんすよ。京太郎くんは何かしらないっすか?」

「……それは」

 

 京太郎の顔が曇ったのを見てこの場でただ一人桃子のみが状況を理解した。

 京太郎の様子もそうだが、この異様な雰囲気を桃子は肌で感じたことがあるからだ。

 

「もしかしてこれも」

 

 京太郎は小さく桃子にだけ分かるように頷いた。

 桃子は小さく悲鳴を上げると、京太郎に何かを問いかけようとするができなかった。この場に居るのは何も知らない二人と記憶を失った先輩だからだ。

 記憶を残す時にした約束の問題で質問をすることが出来ないことに桃子がやきもきして、京太郎がこの場をどうやって離れるか思案している時。

 

「みつけたっ!」

 

 メイド服を着た少女、国広一が京太郎たちへと駆け寄ってきた。

 ただその表情に一切の余裕はない。あるのは焦燥感と恐怖である。

 

 肩で息をしながら京太郎たちの近くまで来た一はそこでようやく咲たちの存在に気づいた。

 

「あれ? 清澄と鶴賀も……そっか、今日は合宿の打ち合わせ日だったね……」

「そういうこと。それでこの状況について何か知っているかしら?」

 

 竹井久が問いかけたとき、一の眼が面白いように動いた。

 どうするか迷っているのだ。だが一にとってはその迷いの時間さえ惜しかった。

 

「ごめん! 今事情を説明している時間はないんだ! とにかく彼は借りていくね!」

 

 京太郎の手を掴み走り出した一と京太郎は職員に止められることなく、封鎖された先に向けて走っていく。

 突然の行動に呆気にとられた三人だったが、桃子一人のみが京太郎の無事を祈っていた。

 

「どうかお気をつけてっす……」

 

 風が吹き、桃子の耳につけられたイヤリングの宝石がきらりと輝いた。

 




モコイのガインくん口調って言うんですか?
再現むりっ……! 限界! これが限界……!『う~んとってもテイスティ』とか法則性つかめない!
なおころたんにも同様の現象が発生する模様。

ハイピクシーの髪形彼を思い出すのでライドウやIMAGINEのハイピクシーを参考にした髪形に変更。服装はそのまま、仕方ないね。
あまり関係ない作品のネタを出す気はないけど、ジョジョに関して言えばペルソナ作る際に許可を得に行ったつながりでこれぐらいなら許容範囲ってことにさせてください。

作中で便所男とか書きましたが俺はポルナレフ好きです。とくに五部。

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