デビルサマナー 須賀京太郎   作:マグナなんてなかったんや

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2話が一万文字越えそうだったため切りが良い部分を切り取って更新

感想、評価下さった方ありがとうございます。
モコイさん好きなので出す予定ではいますけど口調がね……復習しときます。
(ピクシーの口調はもはや原型ないけどそんな個体が居てもいいと思ってます)

メジャーで人気な悪魔は仲魔にするかは兎も角出したいなとは思ってます。せっかくの二次創作ですしね。


『ドリーカドモン』

 

 燃え盛るアギを右腕で吹き飛ばしながら駆けガキの腹を蹴飛ばす。

 ぎゃはっという声と共に吹き飛んだガキを更に追撃し手に持った鉄パイプを勢いよく振り下ろした。

 

 頭蓋骨が砕け中の脳が破裂しガキは息絶えた。

 

「運が悪かっただな、ザンだぞ」

 

 笠を被ったカワウソにも似た悪魔、カブソが放つ風の刃がピクシーにより既に体力を削られていたガキの身体に直撃し四肢を切り刻んだ。

 京太郎が倒したガキと二体の仲魔が倒したもう一匹のガキが同時に力尽き、光……マグネタイトへと還った。

 

「理屈はまだよく分からないけどこれでレベルアップか」

 

 悪魔を倒したときに肉体を構成するマグネタイトが分解されるが、これと魂が結びつくことによって、勝者の肉体と魂も強化される。

 この情報は休憩中に悪魔召喚プログラムを弄っている時に見つけた。

 ピクシーを仲間にしてからどれだけの時間が経ったのか不明だが、京太郎のレベルは初期の1から5まで上昇している。

 これにより栄光の運の値『1』から脱出したのである!

 仲魔となったピクシーもレベルが上昇したことで新しくポズムディを取得しているがこの異界ではどうやら毒の異常にしてくる悪魔は居ないようで現状は宝の持ち腐れだ。

 新しく仲間となったのはこの異界でであった悪魔『カブソ』であり出会い頭に鉄パイプで殴打した結果、カブソが命乞いをして仲魔となるように求めたところ契約が成立した。

 

 レベルの上昇と新たな仲魔を加え戦力増強した面々は異界の悪魔特にピクシーとカブソに接触し情報収集を行った。

 その結果この異界に存在する悪魔たちと異界を構成する主の正体が判明した。

 まず主以外の悪魔についてだが、ピクシー、カブソ、ガキ、スライムの四種類の悪魔が存在し交渉が可能なのは前の二体のみである。

 ガキは会話こそできるが京太郎を喰らうため問答無用で攻撃してくるし、スライムはそもそも会話ができない。結果ピクシーとカブソから情報を得てほかの二体は倒し鍛えるという方針に自然となった。

 

 そして異界の主についてだが。

 

「オーガだっけ。ここの異界の主は」

「魔法に弱いからおらたちなら勝てると思うだ。ただ異界の主は能力が上がってるから気をつけなきゃいけないだよ」

 

 寝転がりながらぷかぷかと浮かぶカブソは子供たちに人気になりそうだ。

 カブソ自体ピクシーなどの妖精の様にいたずら好きな悪魔であり、人間にはあまり害はない。

 

「物理アタッカーってことか」

「んだんだ。主さんの電撃と妖精さんの炎とおらの風でいいだよ」

「ほんとはもう一体耐久が高い悪魔がほしいけどこの異界じゃ無理だもんね……」

「なら俺が前線に立つ方がいいな」

「主さんが倒れたら全滅だ。基本はおらが前線にたつだよ。危ないときは主さんに引き受けてもらいたいだが……」

「分かった。ごめん……無理させるな」

「……主さんは変わってるだなぁ」

 

 何が変わってるのか理解できない様子の京太郎を見て二体の悪魔は笑いあった。

 

「そこがサマナーのいいとこだよっ」

「んだな、ほなら頑張るだよ」

 

 最初の出会いこそ京太郎の辻斬りならぬ辻叩きで始まった関係だが、少し次ずつ仲が深まるのを感じていた。

 

 さて、京太郎たちの力量に関してだがピクシーとカブソから得た情報からオーガの討伐も視野に入れてよいほどになっていた。

 レベルは8。近距離に強く魔法や絡め手に弱いという典型的な脳筋タイプの悪魔がオーガだ。

 京太郎たちのレベルはまだ5だが、弱点を突いた戦い方であれば強敵とさえ戦えると思う。というのが二体の悪魔の意見だ。

 よく言えば慣れてきた。悪く言えば少しずつ舐め始めた。救いは油断はしていないことである。

 

 そして、まるで運命に導かれるかのように京太郎たちがたどり着いたのは出口ではなく、異界の最奥、その手前であった。

 

「ピクシー」

「うんうんわかってる」

 

 ディアの光がピクシーを含めた三人にかけられ傷がいやされる。

 異界を舐め始めかけていた京太郎の意識を変えたのは、最奥に居る悪魔の気配を感じたためだ。

 明らかに自分たちよりも格上である。

 奥に居る悪魔の殺気が扉越しに京太郎たちに叩き込まれていた。

 

 二体の仲魔に大丈夫かと問いかける。

 

「だいじょーぶ! いけるいける!」

「おらも大丈夫だよ主さん」

「分かった」

 

 目の前の扉に向かって手を伸ばす。

 ぐちゅりと嫌な音を出しながら扉が開く。

 

 紅く充血した眼が京太郎たちを射抜き、雄々しい雄叫びを叩きつけた。

 

「んっ、な……!」

「雄叫び!? 冗談じゃないよ!」

 

 雄叫びでひるんだ京太郎たちはオーガに先手を取られ一手遅れることになる。

 立ち竦む一人と二体を見て口角を上げながらオーガが突撃。その手に持った鉄棒が京太郎の頭に振り下ろされる。

 

「アギ!」

「ザン!」

 

 真っ先に怯みから解放された二体がそれぞれ魔法を唱える。

 だが狙いはオーガ本体ではない。

 オーガの持つ鉄棒の矛先を逸らすために二つの魔法が発動したのだ。

 アギによりオーガの体制は崩れザンの衝撃で鉄棒が揺れ本来振り下ろされるべき京太郎の頭ではなく、近くの地面に鉄棒は振り下ろされたのだ。

 

「サマナー!」

「しっかりするだよ」

 

 仲魔二人に促されて我を取り戻した京太郎は意を決しオーガに向かってタックルをかました。

 当然大したダメージは与えられないが、レベルアップで上昇した京太郎の力は体勢を崩しているオーガを吹き飛ばすまでに成長している。

 タックルで弾き飛ばされたオーガは何とか踏ん張り壁に激突することは避けられたが、京太郎の目的はパーティとオーガの距離を離すことだ。

 右手を前に突出し電撃の魔法その真名を唱える。

 

「ジオ!」

 

 電撃の魔法の直撃を受けて雄たけびを上げるオーガ。

 先ほどと違うのはその雄たけびから感じるのは雄々しさではなく、痛みによる絶叫。

 京太郎が得たのは確かに自分たちの攻撃は通じるという確信である。

 

「サマナー、ステータスを見てっ」

「え?」

「いいから!」

 

 しびれて動きが鈍い今のうちに攻撃した方がいいのではないかと思った京太郎だが、ピクシーの叫びに従いパソコンに眼を落とす。

 そこには京太郎たちのステータス情報とオーガの状態が記載されているが、異界の主はステータスが秘匿されている。

 そして京太郎たちのステータスを見ると、攻撃と守備が弱体化していた。

 

「さっきの雄たけびもスキルなのよ。オーガの精神力では一度きりだと思うけど覚えておいてね!」

「分かった」

 

 それからは安定した戦いを推し進めた。

 魔法を中心とした攻撃はオーガに確かなダメージを与え、オーガの攻撃は回避に専念するという慎重さで立ち向かった。

 もし、ピクシーの言葉を聞いていなければ予想以上のダメージを受け京太郎かカブソが倒れ戦線が崩壊していたかもしれない。

 

 そして。

 

「ジオ!」の叫び声と共に電撃が放たれオーガの肉体を構成するマグネタイトは分解していった。

 

 肩で息をする三人はその様子を見届け、光が完全に消え去った瞬間。ピクシーは「勝ったよ! やったね、サマナー!」と元気よく飛び跳ねた。

 

「んー」

「どうしたカブソ」

「雄たけびは驚いただが、想像より弱かったのが気になるだ。あれぐらいの力じゃ異界は作れない気がするだよ。それにまだ異界も壊れてないだ」

「オーガは主だけど異界ができた原因じゃないってこと? ちょっとあたりを調べてみるか?」

 

 京太郎たちはオーガが佇んでいた部屋を調べる。が、怪しいと感じさせるのは六芒星の上に置かれた人形のみである。

 

「ドリーカドモンだ。珍しい」

「何それ」

「造魔という存在を生み出すのに使うのよ。そっか、ドリーカドモンに内封されたマグネタイトで異界を作って、オーガがその影響受けたんだ……でもそれって……」

「そんなことができるのか」

「たぶんね。それよりサマナー、ドリーカドモンを六芒星の魔法陣から取り出させば異界を構成する術式が壊れるはずよ」

「それ大丈夫、かな?」

「さぁ?」

 

 いきなりあやふやとなったことを危惧しつつも「『人為』的に作られた異界だから出口ないかもね~」と楽しげに笑うピクシーの言葉に後押しされ、京太郎は六芒星へ向かった。

 

「……まぁやるしかないか」

 

 六芒星の魔法陣に入り、恐る恐るドリーカドモンを手に取り魔法陣から出たその時だった。

 

 ピシという音と共に世界が壊れた。

 

 世界にノイズが走り黒ずんだ世界から光に照らされた闇の世界へと塗り替わっていく。

 警戒は解かず辺りを観察するが、闇とはつまり夜。光とは商店街を照らす照明のようである。

 

 京太郎がスマホを取り出し時間確認すると現在の時刻は22時を回ったところだった。

 体感時間で言えば十時間以上彷徨っていた気がするのだが、実際はそうではなかったらしい。

 おそらくは命をかけた戦いによる緊張感がそれだけ体感速度を加速させたのだろう。

 元の世界に帰ってきたことに安堵するも、自身の両親から何本もの通話が飛んできており、折り返し電話をかけると心配をした両親の叱咤と安堵の言葉が投げかけられた。

 

 命をかけた戦いから一変したそんな日常に、先ほどまでの戦いが夢ではないかと心配になったが、京太郎の近くでたたずむ二体の悪魔と、京太郎の手の中にあるドリーカドモンの熱が現実であったと訴える。

 

 こうして須賀京太郎の非日常は『一旦』の終わりを告げ、日常が返ってきたのである。

 あとは契約を解除しノートパソコンを破壊すれば非日常は遠ざかることができるにも関わらず、京太郎はその手にあるノートパソコンとドリーカドモンを大切にしまいつつ帰路に着いた。

 

 須賀京太郎の非日常はまだ終わりを告げない。

 それは他ならぬ少年自身の意思で決めた選択の一つであった。





どうでもよい設定
一般人のステータスは基本どの値も「1」です。
正しくは小数点にで大小比較されますがプログラム上は誤差のため切り上げられてます。
人間が覚醒した場合この小数点の値に大体10倍することになります。

なので覚醒すると覚醒者のステータスは下記の様になります。
力:0.5⇒5
魔:0.3⇒3

そのため京太郎の運『1』という値は元々『0.1』であったということですね。悲惨。
小数点といえど、0.1と0.5を比べれば五倍の差があるのでそりゃ差は大きいよという話。

デビルサバイバー1にてハーモナイザーというシステムがありますが、
この覚醒時の値をハーモナイザー起動中は適用されるもしくは悪魔側に10で割った値が適用されるイメージです。
ハーモナイザーが出るかは現状不透明ですが、こういうことを考えると楽しいですよね。

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