デビルサマナー 須賀京太郎 作:マグナなんてなかったんや
あれだけ確認したのに予想以上の誤字報告を頂き戦慄しました。
それと第二部は一部と比べて投稿は遅くなります。
登場キャラが多すぎて書けることが多くなったせいで色々と悩みどころ。今回の話も5回ぐらい書き直してます。
あと今風邪ひいてるのも原因ですがさっさと直して執筆したいところ。
インターハイの会場に着いた京太郎たちはここで3つのグループに別れることになる。
開会式が始まるまで会場前で待機する京太郎、衣、透華、ハギヨシ。
試合の抽選を行うために会場へと向かう咲たち清澄麻雀部。
残るは宿泊予定のホテルへ荷物を先に置くためにそのままバスに乗り続ける桃子、ゆみ、一、純、智紀だ。本来は京太郎もホテルへ向かおうとしたのだが、衣たちをよろしくと言われ残ることになった。
さて抽選会の会場は試合会場と同一なのだが、現在会場に入ることが出来るのは出場校のメンバーと引率者だけだ。
そのため同じく清澄高校麻雀部のメンバーである京太郎も会場へ入ることが出来ない。
開会式が始まれば会場へ入ることも可能だが、京太郎は衣たちと観客席へ向かうことになる。
ちなみに会場へ入場するには基本的にはチケットを購入しなければならない。
これは会場費や学生たちの交通費と滞在費を捻出するためと言われている。
「団体戦と個人戦に参加する学生は大体250人ちょっととかなり多いですし、解説にアナウンサーやプロ雀士まで呼びますわ。それに会場の設営などを担当するスタッフに物品と案外お金がかかってますわよ」
と透華は言った。
だがいかに麻雀が人気だからといってそんなに人が来るものか? と京太郎は疑問に思ったのだがこれにも彼女は答えた。
「インターハイ参加者は未来のプロ候補。今の女子プロはアイドルも兼ねている者が多くいますから今のうちに物色している人も多いのでしょう」
「なーんか、若者の青春って感じのが、大人たちの欲望で青から黒になりましたね」
「メリットがなければ大規模な大会を開催なんてしませんから仕方ありませんわね」
「それはまぁ、確かに」
さて。若者の決戦の舞台であり、晴れやかな青春が穢されたところでここは帝都である。
京太郎たちは開会式が始まるまで外で待機している訳だが、会場から彼らと同い年の女子たちがそこそこ出てくるのが見える。
多くの女子が深呼吸をしたり体を伸ばしたりしていることから大分緊張していて、外の風を浴びに来たのだろう。
じっと見ていると変態扱いされるため、京太郎は女学生から目をそむけ周りをきょろきょろと見回した。
インターハイの観客をターゲットにした屋台が既にいくつか出店していた。本番は明日からだが開会式の時点でそこそこ人は来る。
中にはタコス屋があり、後で優希に教えてやろうと京太郎は思った。
「おや?」
少しだけ声の枯れた、けれどしっかりとした印象を受ける女性の声が聞こえた。
その声を聴いた透華と衣は京太郎を隠すように前に出た。
「透華ちゃんと衣ちゃんか。元気そうで何よりだね」
灰色っぽい髪を後ろで団子状に束ねた女性が透華たちに話しかけた。
女性はとてもフレンドリーな様子だが、なぜか彼女たちは警戒している。
「え、えぇ。以前お会いしたのは私たちスポンサーを含めたヤタガラスの集会でしたわよね」
「そうだね。県大会予選に敗けて、さらに龍門渕でメシアンが事件が起こしたと聞いて心配したけど元気そうで何よりだ」
「あの事件は身内の恥のような物ですからお恥ずかしい話ですわ。けれど衣も無事でしたし、いつまでも下を向いていられませんから」
「冬獅郎か……昔は良い男だったんだがね。二人は知らないだろうけど、あれでも落ちぶれかけた龍門渕を立て直した傑物だったんだよ」
京太郎の知る龍門渕冬獅郎とは全く異なる人物像が明らかになった。
時が過ぎるとは良くも悪くも残酷なことなのだと知らしめているようだ。
「そうそう。それであの事件を解決した少年とだね」
「あーあー! 申し訳ありませんわ。私たち行くところがございますの!」
「うむ! 申し訳ないが去らせてもらうぞ!」
と、ハギヨシを伴い京太郎の背中を押してこの場から立ち去ろうとする彼女たちを見た女性は首を傾げ、気づいた。
「待った。あんたが須賀京太郎かい?」
「え、あ、は、はい! そうっす!」
急いでこの場から去ろうとした二人の動きが止まり、京太郎も無理やり背中を押されていたから体制を少し崩していたがこけるほどではなく、女性の方を向いた。
「手紙を出させていただいた熊倉トシです。よろしくね、須賀くん」
「はい。えっと、あー……須賀京太郎です。よろしくお願いします」
『デビルサマナー』と言いかけたが、なんとか押しとどめて挨拶をした。
あまり外でサマナーと名乗るなと仲魔たちから注意されているためだ。
「けれど二人はなんでそんなに警戒してるんだい?」
「東北へ勧誘をしにきたのではないんですの?」
「あぁ! そういうことね。安心しなさい私の目的は違います。もちろん来てくれるのなら嬉しい話だけどね」
納得がいったと微笑むトシはとても若く見えた。
「でも私以外からも連絡が来てるってことかい?」
「はい。ライドウと、鹿児島の霧島神社から」
「なるほどね……」
トシは少し考え込んでから透華と衣に向かって言った。
「二人とも安心なさいな。葛葉ライドウは勧誘目的ではないわ」
「そうなんですの?」
「彼の目的は事前の策さ。須賀くんの様に急に力を得た子はなぜか帝都で悪事を働くことが多いから、念のため人となりを知ろうとしているのでしょう」
「あ、わかりました。それでこいつはダメだってなったら今のうちに天狗の鼻をへし折るんですね」
京太郎としても納得はできた。
悪魔関連でなくてもスポーツなどで、人よりもできる子供が調子に乗ることは得てしてあることだ。
ではなぜ京太郎は天狗にならなかったのかと言えば、ひとえに仲魔の存在とイクティニケ、アマエコロモとの戦いが原因だ。
上には上が居ることを既に身を持って体験し、折れるほどの長い鼻はない。
「私も少し話をしただけだからライドウがどう判断するか分からないけど、大丈夫じゃないかね」
「なら鹿児島の人たちは?」
「間違いなく勧誘さ。本家か分家か判断はできないけど優秀な血を取り入れたいと考えてるだろうね」
「血っすか……」
京太郎には想像できない世界が割と近くにあり空を見上げた。
彼としてはライドウと会うことが最も大変と思っていたが現実は違うらしい。
「鹿児島の子たちみたいに古い家の慣習はどうも抜けないからね。ライドウやキョウジ辺りが相手なら年寄り連中も喜ぶだろうが本人たちが拒絶するだろうしねぇ」
「キョウジ?」
「葛葉キョウジと言ってライドウとは違い各地を転々として悪魔事件を解決してる男さ。以前は実力こそあるが屑男って感じだったんだがこの前会ったときは随分お人よしになったと感じたよ」
「そんなにですの? 私が見かけたときはレイホゥさんと仲良くしていましたけれど」
透華が思い出しているのはヤタガラスに関係した者たちが集まる集会でのことだ。
京太郎の見た目とは違うタイプの軽さというか古さがあったが、穏やかで人のよさそうな男というのが葛葉キョウジに対する透華のイメージだ。
「今はね。昔はレイホゥちゃんから大分相談を受けたけど今はあんなだし時が経って丸くなったのかね?」
「はぁ……って、ん?」
京太郎の体にピリッと痺れる何かが走った瞬間地面が揺れた。
COMPに手を掛けつつ、しゃがみ込みながら状況を確認する。
透華と衣はハギヨシに庇われているが、彼と熊倉トシも京太郎と同じく状況を注意深く見守っていた。
しばらくすると揺れも収まり、京太郎たちは立ち上がった。
「普通の地震だったんですかね?」
「いえ、そうではないでしょう」
京太郎の問いかけに答えたのはハギヨシだ。
彼は辺りを、というより空を見上げながら言った。
「一瞬ですが体に異常はありませんでしたか?」
「ピリッと来た感じは確かにありました」
「原因は不明ですが一瞬何かが我々に干渉しました。恐らくはその影響と思われるのですが」
「分からないね。気になるのは一瞬だけど空が歪んだことかね」
「歪んだ? ……まさか結界に異常が?」
原因追究をしている横で頭を傾げているのは京太郎である。
ピリッときたことは分かっているし、結界のことも言葉としては分かるが状況を理解できていない。
「帝都は四方結界という結界を二重に形成していますわ。これのおかげで最近では帝都で起きる悪魔関連の事件はかなり減ったと聞きますわ」
そんな彼に気づいて説明をしているのは透華だ。
「四方結界?」
「えぇ。四天王と四神と言って分かりますか?」
「四神の方は青竜とかですよね? 四天王は……」
「四天王はビシャモンテンを始めとする鬼神たちのことです。当初帝都に張られていた結界は四天王による四方結界のみでした。ですが霊的防衛能力を上げるために研究を続けた結果、四天王の結界に影響せず四神の四方結界を形成できることが判明しましたの」
「なるほど」と納得していた京太郎だが浮かんだ一つの疑問を透華に問いかけた。
「ビシャモンテンは上杉謙信のお蔭で納得できるんですけど、日本というか帝都に四神ってイメージがないっていうか」
京太郎の中で四神と言えば中国だ。
そのため中国と帝都が結びつかず四神による結界をなぜ構築するに至ったのか分からないでいた。
「え、えっとそれはですわね……」
「勉強不足だな、透華」
しどろもどろになった透華の横から割って入ってきたのは衣だ。
胸を張って透華の代わりに説明を引き継いだ衣は言う。
「確かに四神は中国の神話として有名だが、帝都にも四神の考え方が適用されているんだ」
「帝都にも?」
「うむ。帝都が江戸と呼ばれるようになる時代、徳川家康が南光坊天海と名乗る僧に江戸の設計を依頼したんだ」
「徳川家康ってことはほんと初期の初期に?」
「そうだ。その時に取り入れたのが中国の陰陽五行説にある四神相応の考えだ。四神相応についての細かな説明は省略するぞ」
「そっか。だから四神を元にした四方結界も帝都に取り入れられたと。って不味くないですか? 結界に影響が出たってかなり大事な気が……」
「問題はないだろ。本当に大事ならあの二人がもっと慌ててるからな」
衣が見たのはハギヨシとトシの二人だ。
色々と話し合っているが慌てている様子は見えない。
三人の視線に気づいたハギヨシが会話を辞めると二人の見解を述べた。
「結界についてですが現在のところ異常はないようです。異常があればもっと慌ただしくなるはずですがその様子も見受けられません」
「四天王か龍脈のどちらかに一瞬異常があったんだろうさ、けれどそのための二重結界だ。あとはヤタガラスが調査を進めるよ」
「そうですか……」
左手に持っていたCOMPを懐に戻した京太郎は一息ついた。
ひと月前の慌ただしさを思い出したが、先人たちが大丈夫と言うのであれば信じようと心を落ち着けた。
「念のためこちらでも情報収集はしてみるよ。須賀くん良ければ連絡先を教えてもらえるかい?」
「あ、はい」
京太郎はCOMPを取り出すと熊倉トシと連絡先の交換を行った。
念のため一度トシの電話に着を掛け、問題なく繋がることも確認した。
「ありがとうね。っと、そろそろ抽選の時間だね」
携帯電話の時間を見ながらトシが言った。
「試合の日がこれで決まるだろうから、都合の良い日をあとで教えてもらえるかい?」
「分かりました。今のところは清澄の試合の日以外なら大丈夫だとは思うとだけ」
「分かったよ。それじゃあね、先ほどの異常についても何かわかったら連絡するよ」
京太郎たちは会場へと戻るトシを見送った。
「今の私たちに出来ることはありませんし一息つきましょうか」
ハギヨシは日陰に透華たちを誘導すると持ってきたお茶をカップに注ぎ彼女たちに手渡した。
京太郎も誘われたがお茶よりも、キンキンに冷えた炭酸が飲みたかったのでお断りし近くの日陰におかれた自販機から炭酸飲料を購入した。
「でも52校って凄いっすよね。なんていうか多すぎって感じもします」
炭酸水を仕舞ってからインターハイのパンフレットを開いた京太郎が言った。
抽選会が今日のため、トーナメント表は記載されていないが出場校の簡易的な解説と紹介はされている。
京太郎が見ているのは先ほど会話した熊倉トシが率いる岩手の宮守高校代表のページだ。
簡単なプロフィールから、どういった打ち方が得意なのかとかといった麻雀に関する情報まで記載されており簡易的に知るにはとてもいい資料となっている。
中には当然清澄高校も記載されており京太郎にとってはポンコツな妹分の咲がとてもカッコよく載っているため違和感しかない。
「私たちからすれば少ないと感じますが客観的に見ればそうかもしれませんわね」
「衣さんや透華さんが応援してる学校で他にあったりします?」
ぺらぺらと色々なページを見るが京太郎の眼に止まるところはない。
それも当然で他校に知り合いなんて居ないのだから止まりようがない。ただ、どこかで見たような癖っ毛を見た気がしたが直ぐに忘れてしまった。
「……阿知賀だな」
「阿知賀?」
「咲たち以外で応援するならばそこだな。特に大将が面白いぞ、条件が整えば咲すらも超えるやもしれん」
「咲も? そりゃすごい」
パンフレットに記載された阿知賀に関する内容を読むと最も目立っているのは先鋒の松実玄だ。
団体戦において先鋒はエースであることが多く、彼女の場合ドラを呼び込みやすいのか高めの点数がとにかく派手で記事にはちょうどいいのだろう。
それからパンフレットを閉じた京太郎は衣たちを伴い、軽食を購入後咲たちと合流した。
まだ試合のない開会式とはいえ彼女たちの晴れ舞台まで刻一刻と近づいている。
優希にはタコスを与えれば元気になるが、他のメンバーはそうではない。ご飯さえも喉が通らない可能性がある。それでも飲み物ぐらいはと胃に優しい物を選び手渡した。
その後滞りなく開会式は粛々と行われた。
清澄高校のメンバーが入場した際透華と衣が声を上げて「がんばれ!」と応援したのを見て、京太郎とハギヨシは揃って頭を抱えた。
けれどこれも時が経てばこれも良い思い出になるだろう。
例え、これから京太郎と咲たちがどんな道を歩むことになるとしても。
*** ***
翌日。
京太郎の意識を覚醒させたのは部屋の中の空気が一変したせいだ。
部屋に穴のようなものが形成された瞬間、京太郎は近くに置いてあった『名もなき刀』とCOMPを手に取り構えた。
「失礼いたしました」
穴から出てきたのは恐らく女であると声と体型から京太郎は判断した。
しかしそれが警戒を解く理由には決してならない。
「誰だあんた」
「申し遅れました。私は『超國家機関ヤタガラス』から『デビルサマナー 須賀京太郎』への依頼を伝えるため馳せ参上いたしました」
「ヤタガラスの?」
聞く体制はとりつつも警戒を解かない京太郎を見て、満足そうにうなずいた使者は続けて言った。
「帝都を守護する四方結界の要に異界が発生しました。デビルサマナー須賀京太郎。貴方には要の一つ、瀧黒寺の異界の破壊をお願いしたい」
帝都で始まる長くも短い戦いの舞台の幕が今あがろうとしていた。
補足
瀧黒寺なんて現実にはないぞ
⇒結界ってことで本当はデビルサバイバー1を参考にしたかったが、四天王全員の居場所が分からず断念し真4F側を採用。でもこっちは五色不動だから違う気もする……うーむ。というかシリーズ通して四天王のフットワーク軽いなって思った。
江戸の四神云々
⇒これも諸説あるようですが本作では採用。