デビルサマナー 須賀京太郎   作:マグナなんてなかったんや

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ストーリー構成のためにインターハイの日程を確認してましたけど、二週間近くは流石に長すぎやろと思う次第。

そういえば有珠山高校がキリスト教系の学校なんすよね。だからなんだというわけではないですが。

あと姫様の能力少し勘違いしてた。あの子安全におろせるのが9柱の女神で最悪それ以上おろせるから霧島神宮の九面とは無関係なのね。


『契約』

 帝都で四天王が座する場所は四つある。

 教青院にジコクテン、白乗院にコウモクテン、瀧黒寺にビシャモンテン、南赤寺にゾウチョウテン。

 ヤタガラスの使者いわく、この四つ全てに異界が発生しているとのこと。

 本来帝都での事件はライドウが担当するべきだが、ライドウは一人しか居ない。そのため同時に4カ所に異常が発生している現状ではサマナーに依頼を出すことで早期の解決を図ることにしたようである。

 

 「納得していただけましたか?」と言うヤタガラスの使者に対して京太郎は首を横に振った。

 

「なんで俺なんですか? 信用度で言えば俺ってかなり低いですよね。ライドウが俺に会おうとしていたのは、俺が信用できるかどうかの確認のはずですよね?」

「それはたしかに。ではまず一つ目、貴方が選ばれたのはライドウがあなたを指名したからです」

「俺を? それこそおかしいじゃないですか」

「あなたが龍門渕で起きた事件を解決したことをライドウは知っています」

「そりゃそうでしょうね」

 

 あの事件がなければ京太郎自身の名前は広がらなかったのだから当然だ。

 

「当時のあなたと天江衣。それに龍門渕の関係は深い物ではありません。それにも関わらず危険を覚悟し助けに向かった時点で心根の正しい人間であることもまた理解していたと」

「ん? それならなんで俺と会おうとしてたんですか?」

「最終的な確認と縁を結びたかったのでしょう。実際話さなければ分からないこともあります」

「最終的な確認だった、と?」

「後は発生した異界に住む悪魔の強さが問題です。現状帝都に居るサマナーでも対応できる者は数少ないのです」

「強さが問題? どれぐらいのレベルなんですか?」

「最小限の確認ですが神樹ハオマ、妖鬼フウキの存在を確認してます」

「ハオマにフウキ……。確かフウキは覚えがあります」

 

 京太郎が思い出すのは悪魔合体を行う際にパラケルススから見せられた合体結果だ。

 中には実力が足りず合体できないのも含まれるが、その中にフウキが居るのを覚えていた。

 妖鬼フウキはレベル49の悪魔で、今の京太郎のレベルでは合体を行うことは出来なかった。

 龍門渕異変からレベルが20ほど上昇しているがまだ50の大台には乗っていない。

 本来は50になってもおかしくないペースで異界に潜っていたのだが、事情がありこれ以上のレベルアップは不可能であった。

 

 京太郎は少し考えたあと、この話が本当か裏を取ることにした。

 

「疑って申し訳ないんですが、確認とってもいいですか? 龍門渕の透華さんとハギヨシさんは分かりますか?」

「慎重なのは良いことです。ですが出来れば急いで頂きたい」

「分かりました。えっと……」

 

 COMPから透華を、プライベートの電話機からハギヨシに電話を掛けた。

 1コールが終わることなく電話に出たのはハギヨシである。

 

『須賀くんですか?』

「はい。朝早くすみません。実は……」

 

 自称ヤタガラスの女から伝えられた情報をハギヨシに伝えると、次第に声色が固くなっていくのが分かる。

 ハギヨシは未だ電話に出ない透華を起こしに行くと言い電話を切ると、それから10秒ちょっとの時間が経過しCOMP側の通話が有効になった。

 

『須賀くん。そのヤタガラスの女性と電話を代わって頂けますか? COMPではない電話機を渡してくださいね』

「了解っす」

 

 京太郎は通常の電話機をヤタガラスの女に手渡した。

 COMPからはドタバタと騒がしい音が聞こえてくるが透華が必死に身だしなみを整えているのだろう。

 

『須賀くん、聞こえますか?』

 

 COMPから聞こえる声に「はい」と答えた。

 

『その女性を信用して頂いて構いません。今こちらでも確認を取りましたが確かに四天王が祭られている四つの要に異界が発生しているようです』

「異界があるのが普通って訳じゃないですよね?」

『えぇ。四天王は要に建てられた本堂にいます。そこで結界を維持しているため異界なんて必要ありません』

「分かりました。なら依頼を受けてさっさと異界を……」

『須賀くん』

 

 このままの勢いで電話を切ろうとした京太郎をハギヨシが引き留めた。

 

『結界はあくまで外部からの悪魔の侵入を防ぐものであり、異界が現世に発生するのはおかしな話ではありません。ですが、4カ所同時となれば話は別です』

「やっぱそうですよね」

『今回の件、もしかしたら件のドリーカドモンが関わっている可能性があるのと、もう一つ……須賀くんは人間と戦った経験はまだありませんね?』

「はい」

 

 これまで京太郎が戦ってきたのは悪魔だ。

 フリンや冬獅郎にメシア教団の人間たちとも敵対はしていたと言えるが、それでも戦ったのはハギヨシたちであり京太郎ではない。

 

『ドリーカドモンが原因なら今回の異界発生は人為的なものです。そのことをよく考えてください』

「……分かりました」

 

 ハギヨシの言いたいことは京太郎も理解していた。

 例え京太郎が人を傷つけたり殺したりすることに抵抗があっても、相手がそうであるとは限らない。

 迷っている内に大事なものが傷つけられたり失ったりすることもある。人を相手に戦うと言うことはつまりそういうことだ。

 

『人は時として悪魔よりも恐ろしい存在となります。では、お気をつけて』

 

 京太郎の心に楔を打ったハギヨシは電話を切った。

 いやな汗をかいていると実感している京太郎はCOMPを机に置くとヤタガラスの女に言った。

 

「報酬をお聞きしても?」

「多量のマッカもしくはマグネタイトをご用意しています」

「なら……マッカでお願いします」

 

 依頼の報酬は多くがマッカもしくはマグネタイトで支払われる。

 報酬がアプリや、アイテムの場合もあるがマッカや何かと多用するマグネタイトの方が応用がききやすい。

 中にはパラメータを上昇させるお香といった非売品が報酬の場合もあるが、そんな依頼が多くあるわけがない。

 

「ヤタガラスの依頼をお受けします。なので……一旦外に出ててもらえます?」

 

 女は京太郎の服装を見た。

 半袖のTシャツに短パン。どう考えても寝巻である。

 女性は頷くと風呂場へと移動した。外へ出て行くつもりはないらしい。

 京太郎としても覆面を付けた女を部屋から追い出すつもりはないのでちょうどよかった。

 

 人を殺すことになる可能性を今は頭から追い出して京太郎は身だしなみを整えた。

 何時ものベストとズボンにハンドガンと刀を持った京太郎は、ヤタガラスの女が作った空間の穴を通り瀧黒寺の異界へと向かうのだった。

 

 *** ***

 

 瀧黒寺の異界に足を踏み入れた京太郎はCOMPから仲魔たちを呼び出した。

 京太郎が強くなったように、当然仲魔たちも強化されている。

 

「んー! 久々の異界。がんばろ、サマナー!」

 

 ハイピクシーは女神イシュタルに。

 

「鬼神ビシャモンテンの居る異界か楽しみだな。この破壊神アスラの力試す時が来たか」

 

 ジャックフロストは破壊神アスラに。

 

「ビシャモンテン倒す気かい。結界がぶっ壊れるじゃろ」

 

 トウビョウは魔神プロメテウスに。

 

「禍々しさを感じるな。気を付けろサマナー」

 

 アークエンジェルは天使ドミニオンへとそれぞれ変化している。

 フリンに従っていたのがドミニオンだったため、最初は彼の存在に京太郎も警戒したがそこまで恐ろしいと感じないのは契約の力かはたまた共に戦った時間か。

 他はあまり変わっていないが、アスラがやけに脳筋になってしまい京太郎は困惑している。

 

「禍々しさか。やっぱあのドリーカドモンだと思う?」

「辺りに漂うのは冷たいマグネタイトだ。可能性はある。だが絶対とは言えん」

「まずはビシャモンテンとの接触が優先じゃな。まぁドリーカドモンが原因なら見つけてこわしゃ問題ないんじゃろうが……」

 

 何か歯切れの悪いプロメテウスにどうしたと問いかけた。

 

「よく分からんが上司がつまらん顔で帰ってきての。見込み違いだとかなんとか……」

「んー。よく分かんないけど、こっちに関係ありそう?」

「分からん。びっくりするぐらいフットワーク軽いから関係ある気もするしないような気もするし」

 

 頭を悩ませているプロメテウスにイシュタルが角で突き、じいさんは飛び跳ねた。

 

「なにすんじゃい!」

「今は先進もうよ。止まってても意味ないもん」

「然り。往こうぞ、主よ」

「うん。それもそうだな。なにかわかったら教えてくれよ」

「言えることは、じゃけどな……」

 

 背中を抑えるプロメテウスに余った魔石を使用して癒しながら歩く。

 サマナーになって2か月とはいえ異界の探索は慣れたもので襲い掛かる悪魔たちを薙ぎ払いながら京太郎たちは先へ進む。

 

 プロメテウスのマハラギオンが神樹ハオマを薙ぎ払えば、天使パワーだった時に会得していたジャベリンレインで妖鬼フウキを撃ち倒す。

 京太郎たちは1ヶ月前よりも確実に強くなっていた。

 幻魔クー・フーリンをアクアダインの水圧ですり潰した京太郎は手に持っている名もなき刀を鞘に収めた。

 

「結構広いな。レベルも高いしこれが長野にあればなぁ……!」

「されど我らの敵ではない」

 

 ティタノマキアで妖獣マンティコアを粉砕したアスラが言う。

 

「これだけ合体を繰り返してきたわしらがそう簡単にやられるはずもないからの」

「うんうん! でも強いと感じたのは久々だねー」

 

 京太郎たちの愚痴の原因は異界のレベルについてだ。

 この1か月で多くの異界を踏破してきた京太郎だが全てが全てうまくいったわけではない。

 その理由の一つが発生する異界に住む悪魔たちの強さである。

 

 レベル40まではかなりのハイペースで強くなっていたのだが、それ以上の強さを持つ悪魔の居る異界が中々見つからなかった。

 ハギヨシもこれ以上強くなるには組織が管理する異界でなければならないと言うほどで、龍門渕はそんな異界を保持していないし、組織に属しているわけではない京太郎に教えることもない。

 結局時々出現する異界で戦い続け今の強さになったがこれ以上強くなるのは難しく、今回の異界攻略は京太郎たちとしてもありがたいものだったのは確かだ。

 

 そうしてたどり着いたのは大きな扉の前だ。

 力任せにこじ開けるとそこに居たのは赤い肌に金色の鎧を付けた悪魔、鬼神ビシャモンテンであった。

 

「……サマナーか」

「えぇ。あなたがビシャモンテン?」

「そうだ。我こそ四天王が一人ビシャモンテンぞ」

 

 京太郎の問いかけに答えたビシャモンテンから圧倒的なまでの圧力が京太郎に叩きつけられた。

 かなりの強さに至っている京太郎にも『1人では』敵わないと思わせるほどの力がビシャモンテンにはあった。

 自分に一歩も引かない京太郎を見て楽しそうに笑うも、先ほどまでの覇気はどこへやら。完全にしぼんでいた。

 様子のおかしいビシャモンテンに本物かと疑いを持ったのはプロメテウスだ。

 

「本当にビシャモンテンか? ぬしは」

「言いたいことは理解している。だが四天王と名乗ったところで今の我はただの牙の抜けた飼い犬よ。みてみぃ」

 

 ビシャモンテンが冥界破を放とうと右腕を振りかぶった瞬間、腕がボロボロと崩れ落ちてスキルを打つことは叶わない。

 それを見た京太郎は慌てたようにイシュタルに回復するよう命じると、回復魔法の暖かな光に触れたビシャモンテンの腕が復元した。

 

「今のって……」

「契約でな、この力を人に振るうことは出来んのだ。例外は確かにあるがこのざまよ。昔であればサマナーよ、貴様のような強者の力を試しもしたが……」

「契約でそれも叶わないか」

 

 ドミニオンも今のビシャモンテンの境遇に同情したのか慈悲の念を見せている。

 それがビシャモンテンを傷つける行為だとしても、仕方のない話だ。

 

「……そっか。でもあんたの試練なら受けてみたかったな」

「そう感じる貴様なら楽しいものであったと思うぞ。最初は一体ずつ四天王と戦い最後は我々全員と戦うというものでな」

「へぇ! それはいいな。あんたたちと戦えればもっと強くなれるだろうからなんか惜しいな……」

「一つ問うても良いか?」

「ん?」

「何故力を求む? それだけの力があれば十分ではないのか?」

「んー……」

 

 少し考え込んだ京太郎は思いつく理由をあげていった。

 

「アスラの願いをかなえるためかな」

「仲魔のか?」

「神になりたいって言うから破壊神を選択したんだけどこれじゃない! って。でその悪魔を合体して仲魔にするには俺のレベルが足りない」

「それだけか?」

「この爺さんの本体を呼びたい。強くなったのにまだまだじゃのぅ~ってさ。最後は……」

 

 京太郎が思い出すのはこれまでの戦いだ。

 今ならアマエコロモとも死なずに戦えるだろうが、実際のところあれはまだ全力という訳ではない。少しずつ力を取り戻していたがそれでもまだ上があり話によると京太郎よりもまだ強いという。

 

「だからまだ強くなりたい。理不尽に対してってのもあるけど、もう死にたくないしな」

「そうか」

「そうだ。異界が出来た原因って分からないか? 俺はそれを破壊しに来たんだ」

「そうだな……」

 

 ビシャモンテンは自身の後ろを指差した。

 

「本堂の裏から多量のマグネタイトの塊が存在する。恐らくはそれだろう」

「それが分かっていながら対処しないのは契約が原因?」

「契約に異界の破壊はない」

 

 短いその言葉に現状に対する不満がひしひしとつまっている。

 無理もないと京太郎は思い、それでも最後にひとつだけ問いかけた。

 

「怪しいやつとか見なかった?」

「先日に本堂の裏に集まる多数の人影があった。だが顔などは覚えておらん」

「そっか。十分だ、ありがとな」

 

 頭を下げて礼を言い、京太郎は本堂の裏に向かう。

 そんな京太郎を呼び止めたのはビシャモンテンだ。

 

「先程我らの試練を受けれないのが惜しいと言ったがその言葉に偽りはないな?」

「もちろん」

「そうか……では約束しよう。時が来れば、我はお前と相対し戦うことを。その時のために貴様の名を教えてもらえるか」

 

 思ってもみなかった言葉に驚いた京太郎は笑いながら自身の名を答えた。

 

「長野から来た須賀京太郎だ。その時が来るのを楽しみに待ってるよ」

 

 約束の時なんて来ないだろうと京太郎は思っている。

 試練と言っても四天王との戦いだ。それで万が一四天王が倒されれば結界に異常が出る。そんな危険な行為をヤタガラスが許すはずがないからだ。

 それでも約束をしてしまったのは、ビシャモンテンの現状に同情したからかもしれない。

 走り去っていく京太郎の背を見て、一人残ったビシャモンテンはその場に座り込むと言った。

 

「デビルサマナー須賀京太郎……。安心すると言い、成就の時は近い」

 

 破壊される異界の中で鬼神の言葉は掻き消え、その言葉に反応する者は誰も居なかった。

 

 *** ***

 

 本堂の裏にあった『ドリーカドモン』を破壊した京太郎は仲魔たちを送還をしていた。

 破壊されたドリーカドモンにはやはり子供のミイラが内包されていた。

 1ヶ月前の事件で異界を発生させていたドリーカドモンと同一と見ていいだろう。

 京太郎は瀧黒寺の入り口まで移動した京太郎は入り口で立っているヤタガラスの女に異界の破壊の報告と中の様子を語った。

 

「依頼の完遂を確認した。報酬を受け取ると良い」

 

 女に渡されたのは多量のマッカとソーマと呼ばれる回復アイテムだ。

 「これは?」と問いかけると女は「コンゴトモヨロシク」という意味だ。と答えた。

 

「だがそれだけではない。それだけこの依頼は重要でお前はそれを成しとげた。それだけのことだ」

「そんなものですかね……? 一つだけ良いですか?」

 

 ビシャモンテンが現状の契約に不満を持っていることを女に話した京太郎は、試練を受けることはやはり不可能かと問いかけた。

 女は「当たり前だ」と答え気にかける様子も見せない。

 京太郎は予想通りの答えが返ってきたなと思うぐらいで「そうですか」と言った。

 

 異界も破壊されこの場に留まり続ける理由もなく、女はいつの間にか姿を消していて京太郎も装備をカバンに仕舞った。

 心配しているであろう透華たちに依頼の完遂を報告し壁に背を預け考え事をしていた。

 四天王の四方結界は確かに必要なのだろうが、あれほど自由を奪う契約に今までの事件で感じた理不尽さと似た何かを感じていた。

 考えても答えの出ない問題を打ち切ると京太郎は携帯を取り出して自分の位置を確認した。

 

 現在の時刻は朝の9時。

 起こされてから2時間以上経過しているがまだまだ朝の段階だ。

 清澄の第一試合は8月7日であり、今日と明日に関しては時間が空いており10時から練習をすると連絡を受けている。

 京太郎が練習に出る意味合いは薄く、今日はフリーと言って良い。地図アプリを見ながら自身の宿泊場所へのルートを検索しながら近くの喫茶店へ足を踏み入れるのだった。




物語が進むのは次話ぐらいから
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