デビルサマナー 須賀京太郎   作:マグナなんてなかったんや

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『5日目 最も深き場所』

 

 悪魔たちと談笑する須賀京太郎の姿は咲を除く清澄勢からすればとても気味が悪いものだった。

 彼女たちからすれば悪魔という存在は自分たちに危害を加える存在でしかない。そんな人を襲う悪しき存在と、仲良さそうに語らい合う知り合いの少年が理解できないのも仕方がない話ではある。しかしそれを口に出すか、出さないかは人それぞれであり、口に出すのが原村和という少女であった。

 

「なんでそんな普通に接せるんですか?」

「は?」

「だって、悪魔なんです! 人間を襲ってるんですよ!!」

「悪魔だしなぁ。それに契約でコイツラが人を襲うことはないし、襲わずに人に貢献する悪魔だって居る。千差万別、人それぞれならぬ悪魔それぞれだ」

「でも! 悪魔じゃないですか! 須賀くんだって人を守るために戦って、殺しているのになんで!」

 

 少女の問いかけに首を傾げ、少々悩む様子を見せるが。

 

「何が言いたいのかはわかるけど理解する気はない。大体人を傷つけるやつを殺すのが俺の役割なら俺は人間を殺さなきゃならないって。なんせこの状況を作ったのはヤクザや政治家で、人間なんだから」

「それは! それは、人を殺すのは良くないことですけど、でも全ての人が悪いわけじゃないです!」

「ならすべての悪魔が悪いわけじゃないよなぁ」

「でも、だって!」

 

 二人の感覚の違いは個としてみるか。群として見るかの違いである。

 よくある話ではあるが、何かしらの不都合に人は自分を含もうとしない。

 自分が男であればこれだから女はと簡単に言うだろう。女であればその逆だ。

 人間以外の動植物が人を襲い命を奪えば、絶滅とまではいかないが憎悪を糧として敵対し武力を振るう。原村和の心情もそれに似ていると言える。

 対して須賀京太郎だが彼は悪魔との距離がとても近い。肉体が変異しているのもそうだが、そうでなくても今までの言葉で語り合いわかり合うときもあれば命をかけて戦うという経験を積んできた。そんな違いを知っているのだからそれも当然だ。

 どちらが正しいという話ではなく、どちらかの意思が変わらなければわかり合うことの出来ない問題なのは確かである。

 

 だから、須賀京太郎と原村和がわかり合うことはきっとこれまでも、これからもないだろう。

 かつての憧れは肉体面のことであり内面は含まれていない。そして憧れは理解から最も程遠い感情であるから。

 付け加えるなら京太郎のこの思想を悪魔に近い人々は危険だと考えることだろう。悪魔からの影響を強く受けすぎる可能性があるからだ。

 その事を一番理解しているのが彼の仲魔たちで、セーフティという形で機能しているのがドミニオンだが、現状ではレミエルもその一体である。

 

「話はそこまでにしましょう。人とサマナーでは根本的にわかり合うことは難しい」

「そーそ! そ・れ・に! 後少しすれば切れる繋がりなんてどうでもいいもんね!」

 

 ぽろんぽろんと手に持った白いハープを引きながら楽しそうにローレライが言う。

 

「はぁ? それはどういう意味だじぇ。……ぇ?」

 

「ゆっげぼっ」

 

 それを見て慌てた様子の和が声を出そうとするもうまくしゃべることが出来ない。その理由は優希と同じであった。

 一瞬少女の脳裏に須賀京太郎が悪魔を貶されたことでなにかしたのではないか? 浮かぶが驚きの表情に説明がつかない。

 

「ローレライ! ディアを皆に! でも一体何が」

 

 清澄勢と臨海女子の大人の女性以外同じような現象に襲われている。

 一体何がと周りを見ていると肌にピリピリとした刺激が走っていることに気づく。そして次の瞬間東京国際フォーラムの方角からまばゆい光が放たれた。

 メギドではない。しかし万能の力が放たれていることに気づき、恐ろしいほどの力と天に雲が群がっているのが視える。

 

「そういうことか。あそこから放たれている力が人々に負担を与えとるんじゃな。覚醒していない人の魂が力に耐えれんのだ」

「結界だって張ってるんだぞ? なのにか?」

「つまりあそこにおるのは四天王の力に匹敵する存在という訳じゃ。もしやすれば大天使をも超えうる何かが」

「大天使をも……」

「とはいえこれは天使の力ではありません。似ているのは……かつて、あなたに宿っていた大蛇の呪いでしょうか。そのものではないでしょうが、初出が同じ様に感じると言いますか」

「なんだって良い。とは言えないけど、ここでゆっくりしているわけにはいかないな」

 

 発せられる力に怯えているのか、飛べる悪魔が少しでも力から離れようと逃げている様子を見ることができる。

 

「虎穴に入らずんばだ。行ってみよう」

「ちょっとまって!」

 

 この場を去ろうとする京太郎たちを静止したのはアレクサンドラだった。

 吐血したことが原因かそれとも力を浴び魂に負担がかかったのが原因か。倒れた少女たちを介抱しつつ救いを求める眼で京太郎達を見ている。

 

「あなたは……我らの信徒ですね?」

 

 レミエルの言葉に頷いた。

 

「は? メシア教徒?」

 

 反射的に刀を抜こうとする京太郎に。

 

「待って! 数日前に起きたことを私は知らないの! 本当にっ」

 

 手を前に突き出して必死に押し留めようとする姿を見て、信頼できる天使に処罰を委ねた。

 

「……レミエル」

「嘘であれば私が罰を下しましょう。グレーではありますが黒ではない以上罰するわけにはいきません」

「ふー……。よし、落ち着いた。この人のことは任せるよ」

「ええ。あなたは彼女たちの看病をしてください。結界があるため身の安全は確保できていますし、あの力がなくなりさえすれば体調面も回復に向かうでしょう。幾つか魔石も置いていきます、危険だと判断すればこれを用いて助けてあげてください。よろしいですね?」

「は、はい」

 

 全ての心配が取り除かれたわけではない。むしろ増えた部分もあるのだがそれでも指示をされた分心が休まった部分はある。

 契約をしていないレミエルとセイテンタイセイを残し仲魔たちを送還した京太郎は力の源へ筋斗雲に乗って飛び去り、アレクサンドラはその後姿を見送るのだった。

 

*** ***

 

「ガハッ」

「ヒッ!」

 

 ハギヨシの着る執事服が鮮血に染まる。

 胴体に突き刺さったのは無骨な太刀であった。

 

「なぜ、その剣を……」

 

 口から血を吐き出しながら問いかける。ハギヨシはその太刀を実際に見たことはないが知っていた。

 

「なぜ? おかしなことを言う。これはもとより俺が振るう剣だ当然だろう」

 

 群がった雲が男とハギヨシの力に刺激されたのか雨が降り始めた。

 だが不思議なことに雨は二人の男を避けるように降り注いでおり、二人を濡らすのはハギヨシの血だけだ。

 

「鍛え続けていればいざしらず。執事としての生活を送っていただけのお前が勝てる道理はない」

 

 腹に突き刺さったままの太刀を振るうと、刃が抜け壁に叩きつけられた。

 それでも意識は消えず、男をにらみ続けている辺り例え全盛期より弱くても身体は丈夫である。

 口から血を吹き出し倒れている龍門渕透華を担ぎ上げ男はハギヨシに背を向けた。

 

「護るって意志だけじゃ何も護れない。どんなに世界が変わっても世の理は弱肉強食だ。武力かそれ以外か。手札の誓でしかないってのにそれを捨てちまうんだからくだらねぇな」

「待て!」

 

 筋斗雲から飛び降りた京太郎が声を上げ刀を振るった。

 刀と太刀がぶつかり合い鈍い金属音があたりに響き渡る。そのまま電撃を金属を伝わせダメージを与えようとしたときだ。

 

「おっと。下手な魔法は止めたほうが良い。この娘が死んじまうぜ?」

 

 ハッとした。かつての自分と同じ髪の色をしていた少女が気を失い担がれているのだ。

 

「え。透華さ、うわっ」

 

 刀が弾かれ宙に浮いた京太郎に回し蹴りが繰り出される。

 空を切る低音に合わせて振るった刀が足に突き刺さりダメージを与えるが、京太郎に対しても蹴りの衝撃が襲いかかる。

 

「ぐっ!」

 

 足を振り切ったことで突き刺さった刃が抜け京太郎も吹き飛ばされる。

 壁に叩きつけられるも即座に立ち上がり男へと駆け出す京太郎だが、それを邪魔するように吹き上がる風が襲いかかり吹き飛ばす。

 

「不本意だとは思うが決着はまた後日だ。……葛葉ライドウと共に俺の元に来ることを楽しみにしている」

 

 懐から取り出した櫛を握りしめると男を護るように水がまとわりつき、風が空へと押し上げていく。

 男だけであれば電撃魔法で追撃をかけることも考えるが、龍門渕透華が担がれている。ジオダインなんて放とうものなら彼女の身体が消し炭になるだろう。

 かといってジオや、ジオンガで対抗できるとも思えずただ去っていく水の塊を見送るしかなかった。

 

「くそっ。……ハギヨシさん!」

 

 悔しさから我に返り倒れ伏しているハギヨシを見ると、即座にローレライを召喚し回復するように指示を出した。

 ハギヨシのことは心配であったが、京太郎にはするべき事がまだあるのだ。

 

 目下のところは……。

 

「どっかで見たことあるんだよなぁ」

 

 女の子座りといえばいいか。正座を少し崩した感じに座っている……というより腰が砕けている様に感じる。

 理由は不明だが瞳孔は開ききり、口を魚のようにパクパクと開閉させなにも言うことはない。

 

 いつもの京太郎であれば、逃げている最中にハギヨシと男の戦いを見て驚いたのだろうと結論づけるがそうはならなかった。

 何処かで見たことがある。その事実が京太郎にその選択肢を取らさなかったのだ。

 少しだけ考え、十秒以上の時間が経った後に「あっ」と思い出した。

 

「この人ゲオルグと一緒に居た女の人じゃないか」

 

 安西ミカと名乗っていた暴力団の女である。

 ゲオルグをアニキと呼んでいたことだけを記憶している。そんな女がなぜここに居るのかを考えればこの場を去った男についてきたとしか考えられない。

 そうなるとなぜ置いていったのか分からず、それを問いただすためにミカに近づいていく。

 

「若……若はどこに……」

 

 若。若。若。

 声をかけてもそれしか言わない女にデビルスリープを使い眠らせた。

 優しさからではなく我に返って逃げないようにするためであった。

 スパルナを召喚すると女を見張らせ、スパルナとローレライをこの場に置いて京太郎は立ち去った。

 男の影響で悪魔たちに混乱は与えたがそれでもまだ悪魔たちは存在する。人々を護るために悪魔を駆逐するため行動を開始したのであった。

 

*** ***

 

 事が落ち着いたのは陽も沈み月が頭上に輝く時間帯になってからだ。

 ライドウ、霧島の巫女、ヤタガラスの退魔師、封鎖に巻き込まれ覚醒した人々に京太郎。

 様々な人たちが尽力を尽くし結界に蔓延っていた悪魔たちはあらかた掃討されるに至った。

 

 一先ず訪れた静寂の中で彼らは情報共有を行うために集まっていた。

 京太郎の状況を知らなかったライドウ以外の者たちは驚きの様子を見せるも、この場はそれを含めた共有の場であるためこの場ではなにも言わなかったが、ただ一人石戸霞だけが気まずそうに即座に京太郎から顔を背けた。

 

「さて、今後についてだが」

「まだ悪魔が潜んでいる可能性がある。警戒する必要はあるだろう」

「十六代目の言うこともご尤もだ。だがその役目はお前たちじゃない。他の退魔師たちに任せる」

「では」

「熊倉の婆さんとも話したが、決着は早めに付けたほうが良いという結論に達した。結界が破られたことも龍門渕透華が攫われた件もだが最もでかいのは神代小蒔が限界に近いことだ」

「太陽の日差しっすか? 戻ってきたら一段と暗くなっていて驚いたけど」

「そうだ。このままだと太陽が奪われ影響範囲が封鎖内だけでではなく日本中に及ぶ可能性がある。それは絶対に避けたい」

「時期外れの日食とか荒れそうですもんね。色々と」

「だからこそ問題点の洗い出しをし不確定要素は出来得る限り排除したい」

 

 大沼の眼が京太郎を射抜く。

 

「ここに至ってお前さんが敵であるとは思わねぇ。もしそうなら、好機であると暴れているだろうからな」

「そっすね。ヤタガラスが一番欲している物を持っているのも確かですし」

 

 いたずら小僧の笑みを浮かべながら腰にぶら下げた刀を左手でポンポンと叩いた。

 渋い表情で「それについては全てが済んでからだ」と言い。

 

「それでだ。お前さんになにがあった? あの爆発の後どこに居た?」

「なにが、と言われるとあれですけど。俺が飛ばされた先での影響と言えば良いのか」

「飛ばされた先? 影響?」

「まず、俺が飛ばされたのは人間界の何処かでも天界でもなく魔界です。天界も似たようなものだと聞いたけれど、魔界は高密度のマグネタイトで構築された世界と言えるそうです」

 

 少なくとも大魔王と呼ばれるルシファーを始めとした強大な存在が、普通に暮らすことができるほどにマグネタイトが満ちている世界だと言える。

 天界も同じで、マグネタイトがあるからこそ天使や唯一神も存在し続けることができるのである。

 

「魔界に飛ばされて、緊急展開されたデモニカのおかげで完全に変質することは避けられました。でも多少なりとも魔界の空気、瘴気に浸ったことで肉体が多少ですが影響を受けました。髪の色も変化もそうですし、他にも色々と。プラス面のほうが大きくはあるんですけどね」

「人間の肉体では耐えきれん世界に身体が無理矢理にでも適応した結果。とも言えるかもしれないねぇ」

 

 熊倉トシの言葉に「あっちで会ったとある少年の姿をした何かにも同じようなことを言われました」と返した。

 

「少年の姿をした何か?」

「悪魔の姿よりも人の姿のほうが小回りが効いて良いそうです。まぁ人間界を姿を表すときの姿であるとも言ってましたけど」

「分霊か。んで、誰なんだそいつは?」

「本体の名前は結局聞けませんでした。目覚めた俺に少年はとある名前を名乗りそして飛ばされた場所について教えてくれました」

「場所って、魔界ってか?」

「魔界にも地域についてですね。セントラルとかアイスランドとか色々あって……と、この話は置いといて」

「そういうことか。魔界も広いのか……」

「ですね。それで、少年。タカジョー・ゼットと名乗った緑の少年はこう言いました」

 

 『ようこそ、デビルサマナー。ここに人が来るのは初めてのことだ、誇っていいよ』

 『ここは、お前は誰なんだ?』

 『この姿ではタカジョー・ゼットと名乗らせてもらっている。そしてこの場所は魔界で最も深き場所。大魔王ルシファーにも従わぬ悪魔たちの牢獄』

 『大魔王にも従わない……?』

 『そう、そしてその名は』

 

 ――ディープホールと、言うんだ。





メガテンシリーズでもマイナーなんで補足

・デビルチルドレン
 子供向けのメガテン。なのできちんと真・女神転生の名を背負っている。
 ゲーム・漫画・アニメ化とペルソナシリーズ前に幅広く展開したシリーズでもある。
 アニメの名称はデビチルであり微妙に違う。ストーリーもそれぞれの媒体で異る。
 特に漫画版は児童誌のベルセルクとも呼ばれるほどだが、ゲームとアニメはきちんと子供向け。


・ディープホールについて
 真・女神転生デビルチルドレンに登場する言わばクリア後ダンジョンに該当する。
 とある3兄弟が守護及び管理をしており、強力な悪魔が徘徊している。
 ルシファーの意向に従わない危険な悪魔たちを隔離している場所とも言える。
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