デビルサマナー 須賀京太郎   作:マグナなんてなかったんや

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遅くなりました。
感想、評価、誤字報告いつもありがとうございます。

ウマやらプラモ作ったりしてるとどうにも小説書く時間が取れなくなりますね・・・


『6日目 戦場交替』

 京太郎とルキフグスのアンティクトンとイザナミの雷による衝突は辺り一帯に嵐を巻き起こした。

 正しくいえば嵐ではなく力と力のぶつかり合いで発生した斥力が嵐のように凄まじいほどの力を巻き散らかしている。その影響は遠く、東京の端とも言える結界にぶつかり結界外の周囲で警戒をしていたヤタガラスたちに何事であるかと戦慄させるほどだった。

 しかしつまりそれは。

 

「押しきれないのか!」

 

 これほどの力であればいかにイザナミの魔法であろうとも押しきれるはずだと確信していた京太郎が信じられないとばかりに叫ぶ。

 実際京太郎の感覚は間違いではなかった。本来アンティクトンを超える威力を持つ魔法は数少なく、それこそ大魔王に蝿の王に唯一神といった面々しか操ることが出来ない固有魔法ぐらいだろう。

 だからこそイザナミの雷をアンティクトンは喰らい、イザナミにまで達していたのは事実なのである。

 だがそれでも拮抗しているように見えるのはアンティクトンのダメージは即回復され続けて放たれた雷によりアンティクトンが押し返すほどの力を発揮しているためだった。

 イザナミの傷を癒やしているのは彼女に注がれている数多のマグネタイトである。異界の主がそうであるようにこの場に顕現したイザナミもまた強大なマグネタイトを終始自動回復することさえ可能としていた。

 

「いや、これで良い。アンティクトンは威力も素晴らしいが、その真価は付随効果にこそある! もう一発いくぞサマナーよ!」

「あ、ああ!」

 

 狼狽えながらも即座に頷いてアンティクトンを再び放ち、イザナミもまた合わせたように雷をぶつける。同じことを繰り返せば同様の結果か、もしくは消耗したほうがいずれ倒れることになるがそうはならなかった。

 アンティクトンが雷を跳ね除けイザナミを焼いたのだ。

 

「……タルンダ? いや、ラクンダも? まさかこれは」

 

 雷の威力が弱まっているのを京太郎は感じていた。それだけでなくアンティクトンによってイザナミに与えたダメージもまた上がっているようにも感じ首を傾げた。

 

「うむ。その感覚は間違いではない。アンティクトンには弱体化魔法の効果も持ち合わせておる。 そう、あれは『ランダマイザ』じゃよ」

 

 確信を得ることができなかったのは魔法の結果をCOMPで確認しているためである。

 それでも弱体化魔法の感覚を覚えていたのは強化魔法である『カジャ』。またはその逆に位置する弱体魔法『ンダ』は京太郎のパーティもよく使用しているからだ。そして、ランダマイザはその名の通り弱体魔法に位置づけられており、その効果は全能力の低下だ。

 

「すごいなこれ」

 

 攻防一体の術とはまさにこのことである。

 この術さえあればランダマイザを唱える工程を省き攻勢かもしくはカジャ系魔法でパーティの強化に務める事ができる。戦いにとって一手の優位とは馬鹿に出来ない。故にアンティクトンの強さに京太郎は心強さと共におそれを抱いた。

 それに気づいていないはずはないルキフグスだが。

 

「強力故に消費も絶大じゃが今回ばかりは問題あるまい」

 

 と、サラッと流した。

 

「マグネタイトが今も供給されているからか」

 

 正しく言うのであれば京太郎を経由してルキフグスにマグネタイトが注がれている。

 COMPではなく直接契約をしているためマグネタイト供給のパスが二人には存在しているからこその現象だ。

 

「しかし厄介じゃな。通常であればアンティクトンを使っておれば押し切れたじゃろう。しかしこれは」

 

 イザナミの腐った肉体が焼けてむせ返るような匂いがあたりに漂っている。

 少なくはない命を奪ってきた京太郎だ。ゾンビを焼いたことだってあるしそれ以外の存在も焼いてきた。当然焼いた匂いを何度も体験してきており耐性もついているはずだがそれでも吐き気を催す程の醜悪な匂いだ。

 しかし醜悪という言葉は匂いよりも目の前で起きている現象に言うべきである。

 イザナミの肉体が修復されているのは先程まで語ったとおりだが、その現象を彼らもじっくりとは見ていなかった。

 だからこそ見てしまったことに後悔した。

 イザナミの足元に黒い穴が生み出されたと思えばその穴から蛆やハエが湧いてできたのだ。それがイザナミの身体を覆い彼女の肉となった。

 

「……ぅ。これが黄泉平坂の住人になるってことなのか」

「そりゃイザナギも逃げ惑うわな。最愛の妻がこうまで醜くなれば千年の恋とて枯れ果てるじゃろうて」

 

 【イザナギ】という単語に気づいたのか。頭を抱えてなにやら唸り声を挙げたかと思えば虚空を仰いで叫んだ。「イザナギィィィ!」と。

 

 それを見た京太郎は思った。なんと哀れな姿かと。

 

「それだけ愛していたってことなのかな」

 

 愛憎という言葉があるように愛と憎しみとは表裏一体のものである。

 黄泉平坂の神話。イザナギとイザナミの終わりの物語とは即ち裏切りと別離だ。

 愛する妻を迎えに死後の世界へと降りていった夫が妻との約束を破り、醜悪な妻の姿を見て逃げ帰ったそんな話。裏切られた妻は愛が反転しこうして今日まで呪いを紡ぎ続けているのだろう。

 

「同情も良い。しかしわかっておるな?」

「わかってる。可愛そうだとは思う。でもだからって放っておくことなんてできない。呪言を放置したらそれこそ皆アイツみたいに大切な物を失うことになる。夫婦喧嘩のとばっちりなんてまっぴらごめんだ!」

「カカカ! その通りじゃな! ……ふむ。ここいらで手札交換をしたほうが良さそうじゃな」

「手札……?」

「火力が少々足りん。仲魔さえおればと思うがないものねだりをしても仕方があるまいし時間をかければ押し切ることもできるかもしれん。しかしそれでは被害が大きくなる。それは……彼奴らも気づいておるな」

 

 最大火力はアンティクトンだ。それで押し切ることはできてもそれで生き残るのが京太郎やライドウに巫女たちだけでは意味がないのだ。

 

「それで?」

「わしはイザナミの相手をせねばならん。あの巨体を力で止めることができるのはわしだけじゃからな。そしてイザナミの魔を払うは退魔士の役目よ。」

「でもそれは」

「うむ。主は一人であやつと対峙せねばならんじゃろう。しかし案ずることはないなにせ主は『須賀』京太郎……」

 

 と、なにかしら言葉を続けようとしたルキフグスだが、失笑をした。それは色んな人に取っての理由になるかもしれないが、自分にとっての理由では決して無いことに気づいて馬鹿らしくなったからだ。

 

「主であれば問題はあるまいよ。たった数ヶ月の付き合いじゃが今日までの歩みをずっと見てきた。だからこそ断言できる。わし……ルキフグスの召喚者たる主であれば過去の英雄の打倒なぞ問題ないとな。だから行って、証明してこい。デビルサマナー 須賀京太郎!」

 

 そう言われて出来ないなんて京太郎は、いや、男であれば言えない。

 深呼吸を一つして、助走をつけ京太郎はゆく英雄を打倒するために。 

 

 *** ***

 

 ライドウとスサノオ。二人の戦いもまた拮抗していた。

 スサノオの実力もあるのだが、実際のところで言えばなぜスサノオがこのような自体を容認したのかそれを理解できず対話をしていたのが原因であると言えるだろう。

 

「なぜこの様な事を許したのだ」

「すまねぇな、旦那。だがよ俺は英雄なんだよ」

 

 まるで矛盾する発言をするスサノオに業斗童子は眉をひそめる。

 

「であるならばなおさらだ!」

「旦那は勘違いしてるぜ。俺の英雄って称号は誰にとっての英雄だ? 人の? 神の? 人のだとすれば何時のだ? それは現在ってことはねーはずだぜ。今を生きる人は俺を英雄とは呼ばねぇさ」

「……主も時代を恨んでおるのか」

「そんなことはないさ。神の力を借りずに。いや、借りたこともあったろうがこうして力のない人が強大な力を得るに至ったんだぜ? 俺としては面白いことばかりさ!」

 

 神話に登場するとは思えない無骨な剣、天叢雲剣を振るう。ライドウはそれを受け止めることはせず退魔刀をすべらせるようにいなす。受け止めてしまえば如何にライドウの退魔刀といえど折れてしまう可能性さえある。

 

「でもな。それで納得するのは俺や姉貴たちのようなよっぽど消えそうにない連中だけだ。力は弱まるかも知れないが存在が消えることはない」

 

 神などに興味もない人々であってもアマテラスやスサノオと言った神々の名は知っているはずだ。知った切っ掛けはなんであれ知る機会が多くあるということである。だが……。

 

「人はどうしてもうつろうものだ。神への信仰だっていつしか薄れる時が来ると周りの連中も考えていただろうさ。けどな。実際に信仰が自然や神々から科学へ移り変わり、その影響の結果を知れば恐怖する。なんせ、昨日まで一緒に酒を飲んでいた奴が居なくなって……顔も名前さえ忘れちまうんだ」

 

 時間はうつろっていく。

 それがただ変わっていくだけなら神々も納得したはずだ。しかし現実は異なる。

 八百万と言う言葉があるように数多くの神々が存在する。中には人が神に例えられた者も居れば、自然現象や人が作った物さえ神に例えられることもあった。しかし現代に生きる人々はどれほどの神の名を答えることができるだろうか。

 平成と呼ばれる時代に至るまでにも名前を忘れられた神々は居るのだが昨今はその数が急速に増え始め、その現実に神々は恐怖した。

 

「うつろうものがうつろわざるものになることをも望む連中は居る。人や神も変わらないだろう、旦那。そして俺はそんな奴らの味方になると決めた」

「人の敵になろうとも英雄で有り続ける。か」

「俺みてぇな悪ガキを英雄と呼び慕ってくれてるんだぜ? 裏切ることなんて出来ないさ」

「だがそれを認めることはできない」

 

 力強く、拒絶するように振るわれたライドウの刀をスサノオは払うことなく受け止める。まるで言葉を受け止めるかのように。

 

「その世界は弱き人が生きては行けぬ世界だ」

 

 山や海のように人の手が入り込まない魔境は存在する。

 しかし科学が発達し人の生活範囲を増やすために開発を行った結果、夜であっても都市はネオンの光で輝き田舎であっても数多くの場所が光に照らされて闇と呼ばれる場所の数は減っていった。それは即ち神秘の減少と言っても過言ではないだろう。

 だがスサノオが望んでいる世界はそれから逆行する。夜から灯は消え闇が広がる即ち神秘の拡大である。だがそれは人の危害を加える存在の増加を意味する。

 

「問題はねぇ。俺たち神が人を護る。かつてのようにな」

「詭弁だ! その世界に人の自由などありはしない」

 

 最初は良いかもしれない。しかし、神にもプライドというものが存在する。もし自分たちの管理外の地区に自分の人が移動すれば多少なりとも思うところはできるだろう。そしていつの日か神は人を縛る。かつてのように。

 

 しかしスサノオはライドウの言葉を否定した。

 

「は! 自由? 今でもそうだろう。俺たちの秩序の中で生きるか、それともいま構築されている秩序の中で生きるか。それだけの違いでしかねぇ。そんで俺たちの考えは別々の、水と油だ」

「確かに自由とは秩序の範囲内にしか存在しないのだろう。それを逸脱すれば横暴となる。だが……人々が望まぬ秩序。それもまた横暴だ!」

 

 退魔の刀が神剣を弾きスサノオが退く。話は終わりだと言わんばかりに懐から取り出した拳銃がスサノオを居抜き、懐から取り出した封魔管を用いフツヌシが召喚され操られた剣は左右の腕を切り落とした。

 

「ぐっ……どけぇ!」

 

 放たれた突風がフツヌシとライドウに放たれ、フツヌシはライドウが吹き飛ばされぬように後ろへ移動すると支え、そして消えた。コウリュウを召喚し続けているライドウではフツヌシの召喚の維持ができたなかったのである。

 だがスサノオのダメージは軽いものじゃない。両腕を失った肩からはマグネタイトではなく赤い血を流しており人の身体をもつスサノオにとってみれば致命傷のはずだった。

 受けたダメージの大きさから倒れそうになる彼の身体を光が支えた。光はスサノオの懐から発せられており地面に落ちたそれは櫛だった。

 

「スサノオ!」

 

 緑の装束をまとった女性はスサノオに駆け寄ると落ちた腕を引っ付けて回復魔法を行使した。

 

「クシナダヒメか! 厄介だぞライドウ」

 

 クシナダヒメ。元々はヤマタノオロチの贄であったが、スサノオにより救われ妻と呼べる関係となった女性である。

 彼女一人では厄介とも言えないが問題はスサノオと。というよりは強力な悪魔と組んだ場合である。戦う力は少なくともサポートする力があるのだ。下手に力のある者が加勢に現れるよりも厄介であると言えるだろう。

 厳しい戦いになるかもしれないと気合を入れ直すライドウだが、そんな彼と対象的に焦ったスサノオが叫んだ。

 

「クシナダ! 何故来たんだ!」

「貴方が傷ついているからです」

 

 訴える言葉なぞなんのその。落ちた腕を拾い上げスサノオの肩に近づけるとクシナダヒメは回復魔法を行使する。

 

「こんな事に付き合う必要はない。お前はっ」

「いいえ。貴方に何を言われようとも意思は曲げません。苦楽を共にするのが夫婦でしょう?」

「お前……」

「ですから何を言われようとも私はここから居なくなりません。あの地に行った様にずぅっとお供します」

「……好きにしやがれ!」

 

 苦虫を噛み潰したような顔で、どこか嬉しそうな声をあげてスサノオは立ち上がった。

 

「わりぃなライドウ、旦那。英雄と呼ばれている身だ。一対一で戦うべきなんだろうがそうはいかなくなった」

 

 治った腕で天叢雲剣を構えライドウに向おうとしたした時だった。

 スサノオの視界が少しだけ暗くなり、その原因に気づいた瞬間腕を振り上げた。

 

「くそっ!」

「不意打ちとは卑怯だな! 須賀京太郎!」

「スポーツならともかく戦いにそんなの意味ないだろ」

「はは、違いねぇ!」

 

 振るわれ空中に弾かれた京太郎は追撃を避けるために電撃の壁を自身とスサノオの間に作り上げた。

 スサノオは追撃を諦めると突風を発生させ京太郎を吹き飛ばすが、空中で体制を整えなんとか風から抜け出てライドウの近くに降り立った。

 

「ライドウはあっちの相手を! 俺とルキフグスだけじゃ倒すのに時間がかかりすぎる」

「……! そういうことか」

 

 退魔刀を見て言った事により京太郎の意図を理解したライドウはルキフグスとイザナミの元へ向かおうとしたところで。

 

「ゴウト。須賀くんを頼む」

「む。しかし」

「私は彼の仲魔を借り受ける。だからというわけではないが……。決着は見届けるべきだ」

 

 十四代目の元仲魔であるスサノオとの決着を見届けるべきだと今代のライドウは言っているのだ。

 

「ゴウトに戦う力はない。だが、力になってくれるはずだ。頼めないだろうか」

 

 その頼みを京太郎は受け入れた。

 力強く頷く彼に満足そうに笑うと彼は、ゴウトを京太郎に肩へおき羽織っていた外套を取り外し京太郎に羽織らせた。

 

「ゴウトだけじゃない。君のことも護ってくれるはずだ。健闘を祈る」

「そちらも」

 

 ライドウが去る姿を京太郎は見送りスサノオと改めて対峙した。

 電撃の壁は既に存在しておらず、京太郎たちに攻撃を仕掛けることも出来たはずだが彼はしなかった。

 

「……クシナダを狙うことも出来たのに、そうはしなかった礼さ」

「そっか。でも俺はそれに感謝はしないし、コレ以降は彼女だって狙う」

「それでいい。戦いっていうのはそういうものだからな……さぁ来な! その名通り、俺を終わらせることができると思うな!」

 




下記は雑談

メガテン5はクリアしましたが、3Dマップが一番の敵であった気がします。
魔王城はそこそこ。あまり苦労しなかったですけどどちらかといえば各地区のマップの方がきつかった・・・

ソウルハッカーズ2はどうでしょうね。久々にヤタガラスとかデビルサマナーの世界観に浸れるのはいいと思うのですがうーむ
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