FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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束の間のバカンス

 

 

「海だー‼︎‼︎」

 

「カッカッカ♪………なんで?」

 

 チーム結成していくばくか、フェアリーテイル最強(最凶)チームの面々はリゾート地として名高いアカネビーチに来ていた。白い砂浜、青い海、太陽に照らされる美しい肌。

 なるほど、人はこういったものも好きなのかと現実逃避しながらもカイトはなぜこうなったかを思い出す。

 

 事の発端は先日、週刊ソーサラで上位人気を誇るイケメン、ロキが突然フェアリーテイルを辞めるとだけ言い残して失踪。

 ギルド総出で探し出す中、ルーシィがそれを発見。その際、ロキの正体が星霊であることが発覚。昔、間接的にとはいえ契約者を殺めたロキは星霊界を追われ人間界へ。本来、未契約の星霊が人間界に滞在することはできず、現界するだけで魔力を奪われる。

 

 今まで持ち前の魔力で耐えてきたロキだが、それも限界。そのまま消滅しそうなロキを救ったのがルーシィだ。

 ルーシィはその場に現れた星霊王に打診して、ロキの身を星霊界へと送り返し、その際契約を交わした。後日、彼女たちと行く予定だったというアカネビーチの招待券をお礼として渡してきたらしい。

 

 ちなみに、ロキは偽名であり、本来の名は獅子宮のレオ。なんともまぁ、女性関係の噂が絶えない人物の名前とは思えないカッコよさである。女性関係の厄介事を何度か持ち込まれた身としては腑に落ちないものだ。

 具体的にはダブルブッキングしてしまったので助けてくれや、貴族の娘に手を出して面倒ごとを賜ったので助けてくれなど、どれを思い出しても苦いものしかない。

 

 

 閑話休題(話が逸れたが)

 

 

 以上が移動中に聞いた事の顛末であり、その末の現状である。

 私用で街を出ており、帰ってきた瞬間縄で簀巻きにされた経緯でもある。

 

 なるほど、どうやらエルザはまたも大事な場面にいなかった自身にお怒りのようだ、とどこか他人事のように当たりをつける。諦めている、ともいえるが。

 助けを求めようにも男連中はすでに海の中ではしゃいでいる。救いの手など望むべくもない。

 

「さて、覚悟はできたか?」

 

「唐突だね、エルザ」

 

 悪戯を目論む悪戯っ子のような、ともいうべきか、実に生き生きとした表情のエルザがカイトの前に立つ。このような表情を見るのはいつ以来だろうか。…………いや、よくよく考えてれば頻繁にしていた。主にカイトへの制裁のときや甘いものを食べている時などである。

 

「なに?このままスイカ割りのスイカ役でもさせられるの?それとも砂の中に埋めて放置?」

 

「私をなんだと思ってる」

 

「悪魔も裸足で逃げ去るような暴君女王様♪」

 

 思わず、といった調子でそう告げ、次の瞬間にはカイトの身体は宙を舞っていた。確認するまでもなくエルザの仕業である。

 あの細腕のどこにこんな力があるのやら、と達観した表情を見せながら着水。ドボン、と一際大きな水飛沫があがる。当然だが、簀巻きにされた状態で泳げるはずもなく、そのままカイトは沈んでいく。

 

「ちょ、エルザ⁉︎」

 

「安心しろ、ルーシィ。引き揚げられるように縄は手元にある。10分もすれば仕置きにはいいだろう」

 

「呼吸の限界って知ってる?」

 

 さすがにやり過ぎだろうと側にいたルーシィが慌てて縄を引っ張るが、いくら手繰り寄せてもカイトがあがってくる様子はない。それどころか引き揚げられたのは縄の先だけ。どこかで切れた様子もなく、どうやら縛り方が甘かったようだ。しかし、拘束が解かれたはずの本人の姿はどこにもない。

 

「………ああ、そう言えばカナヅチだったな」

 

「グレイッ!ナツゥ‼︎」

 

「あぁ?」

 

「んん?」

 

 ふと、思い出したようなエルザの呟き。大急ぎで海の中で喧嘩する2人に呼びかけて回収を頼むルーシィ。なんとか回収されたカイトの呼吸が一時的に止まっていたが、腹に溜まった水を押し出してなんとか事なきを得た。

 泣いているのは塩水のせいだとは本人の言である。

 

 

 

 さて、そんなこんなで太陽も沈み、一行はホテルへと。

 部屋で一休みするのもいいが地下にカジノがあるということで、それぞれテーブルで賭け事に励んでいた。

 戦績で表すなら一位は圧倒的な運でポーカーを勝ち上がるエルザ、二位は負けることもなくかと言って大勝ちするほど稼ぎがないグレイ、次点でルーレットテーブルで騒ぐナツとハッピーだろう。ちなみにルーシィは賭け事に興味はなくエルザの戦績にはしゃいでいた。

 

「おや、ここにいたんだ」

 

「あ、カイト。………真っ黒ね」

 

 ふと、声をかけられてそちらを向けばカイトがいた。いるにはいるが、その肌は真っ黒に焼けている。グレイとナツも小麦色に焼けているがそれ以上だ。沈められて以降、ずっと日陰でのんびりしていたのにである。

 

 肌が弱くてね、とは本人の言であるが、実際は種族的な弱点である。本来の姿であれば陽の下に出れば燃え上がるのだが、封印している現在は肌が焼ける程度で済んでいる。

 その焼けた肌も魔法で治癒すればすぐに治るのだが。

 

「む、カイト。お前の方はどうだ?」

 

「カッカッカ♪ やっぱり俺には賭け事は向いてないね♪」

 

 ひらひらと両手を振って何も持ってないことをアピール。開始10分、ブラックジャックで負け越したカイトはその後ずっとブラブラしていただけだ。間違いなく今回の最下位だろう。

 

「そうか。運気が下がるからあまり近寄るなよ」

 

「さすがに酷いよ、エルザ」

 

「ほら、カイト。このチップあげるから、向こうで遊んでて」

 

「ルーシィ、悪ノリはやめようね♪………え、マジなの?」

 

 真ん中に10と書かれたチップをいくつか握らされ、その場を離れるカイト。なんだろう、最近扱いが酷すぎて腑に落ちない。世界が優しくないとも言うのかもしれないが。

 

 嫌われるような事をした覚えはないのだが……。やはり、チーム結成後たびたび私用で抜けているのが悪いのだろうか?私用といっても主に目的地に着くまで迷っているだけなのだが。

 

 顎に手を当ててどうしたものかと考えていればふと、ひとつのテーブルが目についた。

 テーブルに座っているのは1組の男女。片方はグレイだが、首からフェアリーテイルの紋章を下げた彼女は誰だろうか、と頭を悩ませる。少なくともギルドメンバーの誰でもないのだが。

 

「にゃっ⁉︎」

 

 よそ見をしながら歩いていたせいか、人とぶつかってしまった。体格差のせいか、倒れたのは少女の方。ネコミミのようなキャップを被り、頬に髭のペイントをした少女は痛そうに腰をさする。

 

「おっと、ごめんね♪よそ見してたよ♪」

 

「にゃあ。大丈夫、こっちも人探ししてたから」

 

 差し出した手を掴んで立ち上がる少女。

 

「ありがと、おにーさん。元気最強?」

 

「うん?そうだね、最強だね♪」

 

「にゃあ、元気最強!」

 

 そんな身のない会話をしていると、不意に少女がなにかにぴくりと反応する。

 

「………うん、わかった。そっちに向かうね」

 

 念話(テレパシー)の魔法だろうか。少女が小声で会話し、邪魔になるだろうとその場を去ろうとした瞬間、突如として会場が闇に覆われる。

 

「なんっ⁉︎ぐえっ‼︎」

 

 突然の暗闇に反応できず驚愕するだけのカイトの首に何かが巻きつく。反射的にそれを掴めば弾力のある紐状のものーー恐らくはチューブだろう。それが首にきつく巻きつき、カイトの首を締め上げていた。

 

「ごめんね、おにーさん。これもエルちゃんのためだから」

 

 呼吸困難でパニックになるなか、少女の声が嫌によく聞こえた。

 

 

 

 

 

 首を締め上げられて少しして。

 会場に灯りが戻ったころ、カイトはバタつかせていた手足の動きを止める。死んだわけではなく、ただ行動の無意味さを悟った故にだ。

 

(こういう時、この身体であることに感謝するねぇ……)

 

 種族的に呼吸を必要とせず、大気中の魔力を吸うことで活動する生物として呼吸器を潰されることは脅威ではない。せいぜい、声帯が潰れて声が出ないくらいの弊害しか持たないのだ。

 封印しているお陰で人に近い肉体とはいえ、所詮は人外。所詮は人もどきの身体だ。そういった細かいところまでは真似ることはできない。

 

 それを幸運と取るべきか不安と取るべきかはさておき、チューブの影響だろう、チューブを外そうにも魔法が発動できずにいた。

 

 幸いにも封印魔法の方に影響は見られず、突如として本来の姿を晒すことはない。しかし、どうしたものかと目を瞑って考えていれば聴き慣れた声がする。

 

「おい、大丈夫か⁉︎」

 

 声の正体はグレイだ。

 無事を示すように手を挙げて応え、ジェスチャーで首のチューブを外してくれと頼む。瞬間、チューブが凍ったかと思えばパキンと音がして自壊する。

 

「あ゛ー………喉痛い。助かったよ、グレイ」

 

「まさかカイトまでやられてるとはな。あとはナツの野郎か」

 

「おや、ナツまで。そうなるとグレイも?」

 

「ああ。俺は大柄の男にやられかけた。ルーシィはチューブを操る女だ」

 

「俺もルーシィと同じやつにやられたよ。こりゃエルザに大目玉だ」

 

 カラカラと笑うカイト。しかし、妙に深刻な表情のグレイを見て何かエルザの身にあったことを察する。殺された線はないだろう。もしそうだとしたらもっと場も人も荒れているはずだ。

 残る線は誘拐。なるほど、エルちゃんとはエルザのことだったかと当たりをつける。

 

「エルザが拐われるとはねぇ。不意でも突かれたかな?」

 

「らしいな。ルーシィ曰く、エルザの昔の顔馴染みらしい」

 

「それはそれは」

 

 情に厚いエルザのことだ。それはもう効果的面であろう。その情を少しだけでもいいからこちらに回してほしいものだと思考しながらも、どうせ無理だろうと諦める。言葉で言って待遇が改善されるのなら、既に実行しているところだ。

 

「あンの四角野郎ー‼︎‼︎」

 

「ちょ、ナツ!待ちなさいよ!」

 

 事の経緯のすり合わせをしていた2人の横をナツが脇目も振らずに駆けていき、その後ろをルーシィが追う。

 四角野郎はともかく、ナツもやられたらしい。大方、相手を追いに行ったのだろう。こういうとき滅竜魔導士の鼻は役に立つと感心しながら重たい腰を上げた。

 

「さて、相手がどこの誰だかまだよくわかんないけど、囚われの女王様を救いにいきますか」

 

「言い忘れたんだが、ハッピーも捕まってるみたいだぞ」

 

「え、なんで?」

 

「もちろん、ジュビアもついていきます、グレイ様」

 

「え、誰?てか、どこから来たの?」

 

 エルザと比べ締まらない指揮であるが、チームの方針は決まった。ナツ曰く匂いがする方向は海。一行は船を借り出し、下手人一行を追うのであった。

 

 

 

 

 

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