FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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 ぐつぐつと話題を煮込む。

 出来上がるのは成功作か失敗作か。

 それともだだの妄想か。



VS三羽鴉

 

 

「ふむふむ……」

 

 辺りを見渡す。

 石、石、石、と、当然ながら石造りの塔の内部は差異はあれどほとんどが石で作られている。どれもこれもが微力ながら魔力を浴びており、普通の石材ではないことを物語っていた。

 死者復活の魔法のために作られた塔だ、その材質も一般のものではないのは納得するところである。

 

 どのような術式で、どのように行うのか。

 それがわからないこの状況では無闇矢鱈に手は出さない方がいいだろう。

 

「それにしても死者復活、ねぇ……」

 

 そこに愉快不愉快はないが、ただでさえ死ぬために生きる人の生。死者に思いを寄せる暇があるのだろうかと不思議に思うカイト。

 生きながら死んでいるような身になってこそ、その余裕が生まれるのではないかと頭の隅で考えながらも、それも人の(さが)というものだろうと完結させる。

 

 それはともかくとして、目の前にあった階段を登る。登りながらまた別のことを思考する。ここはどこなのだろうと。

 

 このような状態に陥ったのは少し前。

 

 エルザが己の過去を語り終えるとそんなものは嘘だ、と物陰から現れたショウ。本当は正しく魔法を会得できなかったエルザはその力に溺れ、過去を清算するために船を爆発させたのだ、と宣っていた。その裏切りにジェラールが気づかなければ今頃死んでいたとも。

 

 しかし、それを同じ独房仲間のシモンが否定。

 ジェラールの語ったことに真実はないのだと、そう告げた。

 

 悔しがるショウを他所に、突如として壁や天井に無数の口が現れる。口から紡がれる声はジェラールのもの。

 

 そうして告げたのは楽園ゲームの開催。

 

 ルールは簡単。ジェラール側はエルザを生贄とし、ゼレフ復活の儀を行えば勝ち。逆に阻止できたのならフェアリーテイル側の勝ち。

 ジェラール側は新たに加えたという3人の戦士、フェアリーテイル側は8人(ウォーリーとミリアーナはナツが倒したため参加不可)という単純なバトルロワイアル。

 普通と違うのは唯一、時間制限が決められており、この場所に気づいた評議員の攻撃ーーー即ち、衛星魔法陣(サテライトスクエア)からの破壊魔法(エーテリオン)を喰らえばノーゲーム。勝者のいない試合終了である。

 

 騙されていたことに腹がだったのだろう。ショウがエルザを魔法でトランプの中に封じ込めたと思いきや、ジェラールを倒してやると言い残し去ってしまったのだ。

 

 これはこれで面白いのでカイト的にはよかったのだが、このまま放置してエルザ諸共殺されてしまうのは面白くない。もう少し早く気がつけばよかったと後悔しつつも、ショウの捜索兼ナツの捜索兼脱出経路の確保にあたっていたのだ。

 

 無論、楽園ゲームなどに付き合ってやるつもりはない。こちらは脱走できれば後はエーテリオンが片をつけてくれるのだ。

 

「んん?」

 

 ふと、階段を登りきったところで疑問に頭をひねる。

 このゲーム、主催側にまったく旨味がないのだ。

 逃亡されたら負け、儀式を達成できなければ負け。それに加え儀式を達成できたとしてもエーテリオンが落ちれば元も子もない。

 ゼレフの力がどれほどかはわからないが、復活早々エーテリオンを防ぐことはできないだろう。それは最早人の身には収まらないことだ。

 

「何かを狙ってる?この塔の破壊ーーーにしては、歳月かけて作り上げた意味はないだろうし………」

 

 間違いなく何かを狙ってはいるのだろう。

 しかし、それが分からず頭を悩ませながら歩いていると前方に人がいた。

 

 桃色の髪を天辺で結っており、髑髏の書かれた着物を羽織る女性。腰に横にした刀を背負い、高下駄を履いているのに足音ひとつ立てない女性。

 

「カッカッ、迷い込んだ観光客………なんてことはないよねぇ」

 

 両手に混沌ノ鎧を纏い臨戦態勢を整える。

 纏っている雰囲気は強者の者。それに血生臭い、後ろ暗い事を生業としている者特有の匂い。

 油断すればただではすまない、と本能的に理解していた。

 

「道化はんとお見受けしますぅ。うちは斑鳩(イカルガ)、暗殺ギルド髑髏会特別遊撃部隊の隊長を務めてはります。よしなに」

 

「カッカッ。ご丁寧にどうも♪ご存知の通りフェアリーテイルの道化、カイトだよ♪さて、挨拶も済んだし、素直に通してくれるとありがたいねぇ」

 

「そう釣れんこと言わんどいてーな。うちと少し遊んだって文句は言われんよ?」

 

「そりゃ、死んだら文句も何もないだろうねぇ」

 

「ふふ、そう言わはれたらかなん(困る)な〜」

 

 瞬間、同時に走り出した2人の拳と刀が宙空でぶつかる。

 

「知ってはりました?あんさんの首にはなんぼか懸賞金がかけられとるんよ。その首、もろおてよろしゅうおすな?」

 

「カッカッカ、怖い怖い。闇ギルドってのは、やっぱり物騒だねぇ」

 

 言葉をかわす間にも刃と拳の応酬は続いており、ぶつかるたびに衝撃波が通路に響く。

 刃を振るう斑鳩に対して、カイトは防戦に徹する。元々、ナツやグレイのように魔法主体の戦い方をする相手よりも、エルザや斑鳩のように己の技術で戦うタイプは苦手だ。搦手が通用し辛い。

 今も背後から伸ばした影の手がそちらを見ずとも切り裂かれ、隙ができない。

 

(カッ、厄介な相手に出会したねぇ)

 

 3人、と言っていたが、他のメンツは大丈夫だろうか?と思考をそちらに一瞬流れる。

 

「無月流、夜叉閃空」

 

 一瞬の隙を突き、斑鳩の刀がぶれる。刹那、カイトの身体に無数の斬撃が襲った。

 

「あきまへんへ、道化はん。考え事しよはりよったら、勝負なんて一瞬や」

 

 まずい。

 そう直感したカイトは目の前に影の壁を作り出し、即座に回復魔法(白衣)を纏わせる。幸い、どれも深くはないがそれは相手が情けをかけたからだ。油断すれば首と胴体が泣き別れしてもおかしくはない。

 

「準備はよろしゅうおすか?」

 

 その声と共に一閃。影の壁を切り崩すと再び斬りかかる。

 

混沌ノ道化(カオス・クラウン)

 

 全身に魔法を纏い、白く輝く道化衣装に包まれたカイトは腕を交差させ上段から振り下ろされた刃を受け止めた。

 ギチギチと、鋼と鋼が擦り合わさる音が嫌に耳に残る。

 

「その格好、ようやく本気出したみたいどすなぁ」

 

「カッカッカ、手加減してくれたら嬉しいんだけど、ねぇ‼︎」

 

 剣を弾き上げ両手を振るう。その軌跡に沿うように現れた魔法を斑鳩目掛けて飛ばすが、彼女はすでに空中。弾かれた勢いそのまま逃げていたのだ。

 

「無月流、迦楼羅炎」

 

 空気と刃の摩擦によって生まれた炎。魔力を一切浴びていないソレはカイト(悪魔)にとって忌避すべきもの。混沌ノ爪で相殺して事なきを得たが、内心は肝を冷やす。そうでなくても炎にはあまりいい思い出はない。魔力を浴びたものならまだしも、天然物の炎は苦手だ。

 

「あれ。もしかして炎がお嫌いどすか?」

 

 過剰に反応したせいだろう、おまけに弱点がバレてしまった。閉口するカイトを見て確信を得た斑鳩は勝機を見出す。

 裏の世界では名の売れている道化の首だ。その首を取れば今後の依頼も増えるだろうし、何より地位が盤石になる。皮算用にふけり下唇を舐める。

 

「そいじゃ、そろそろ」

 

 不可視の速度で放たれた炎を纏った斬撃。それはカイトの背後と左右を燃やし退路をなくす。

 周囲で燃え盛る炎。ふと、昔の出来事がカイトの脳裏に浮かぶ。

 

 燃える洋風の屋敷。

 

 燃える同族。

 

 それを嗤う人、人、人。

 

 屋敷の屋根が落ちる。

 

 罵声が飛ぶ。

 

 当然の報いだと

 

 ざまあみろと

 

 悲鳴が聞こえる。

 

 助けてと

 

 苦しいと

 

 怨嗟の声が、声が、声がーーー

 

「終わりどす」

 

 一閃。

 物思いにふけたカイトの首に炎を纏う刃が通る。肉と骨を断つ感触が斑鳩の手に伝わり、確実に当たったことを実感させた。宙を舞う首、遅れて倒れる胴体。その首が斑鳩の手に落ちようとした瞬間、どろりと溶ける。

 

「なっ⁉︎」

 

 罠に嵌められた。

 そう思った瞬間構えを取るがすでに遅い。鎧を纏った姿そのまま、カイトは悠々と斑鳩の背後を歩く。

 

「ああ、もう。君のせいだよ。嫌な事思い出させて」

 

 ぱん、と音を立てて両手を合わせる。瞬間、足元で溶けていたカイトの身体が突如として湧き上がり斑鳩を襲う。しかし、その体積は元のサイズではなく、高波のように迫っていた。

 危険、と判断した斑鳩が剣を振るう。しかし、それらは全て効果なし。まるで霞を切っているかのように手応えがない。

 

「ど、うけぇえええええ‼︎」

 

 切断は不可能と判断。ならばと術者であるカイトを斬ろうと背後に振りかぶるが、その剣よりも早く黒い高波は斑鳩を飲み込み、そして何事もなかったかのように斑鳩諸共その姿を消した。

 

千影万化(せんえいばんか)。恨むなら、人のトラウマ刺激した君自身を恨むんだね」

 

 今回はカイト自身と高波に変化させたが、本来であれば如何様にも影を変化させることのできるこの魔法。当然、影の範囲を広げれば広げるほど魔力を消費するのであまり使わない。普段のように各所影を混ぜるよりは威力は出るのだが、と考えたところで階段から誰かが登ってくる。

 

「はぁ、はぁ………っ‼︎」

 

 肩で息をしながら登ってきたのはショウだ。ようやく目的の人物に会えたと一安心するカイトを他所に、ショウは己の武器であるカードを構える。

 

「誰だ、てめぇは‼︎」

 

「誰だって………酷いなぁ」

 

 少しだけとはいえ顔を合わせたというのに既に忘れられたらしい。悲しむフリをしながら、そういえばまだ魔法を纏ったままだったことを思い出す。それを解除すると、目に見えてショウの戦意が落ちた。

 

「あんたは、姉さんの………」

 

「そうだよ♪さて、ちゃんと思い出してもらえたことだし、素直にエルザを渡してくれるとありがたいんだけどねぇ」

 

「それはできねぇ!姉さんはオレが守るんだ」

 

「だよねぇ。ご立派な決意表明をどうも。でも、だからこそ足元を掬われることをお忘れなく」

 

「なっ⁉︎」

 

 右手を上げて見せたのは一枚のカード。見覚えのあるカードを見て慌てて胸ポケットを探る。探していたものは、ある。

 

「そこだね」

 

 カードを捨てたカイトがぱちんと指を鳴らすと足元から伸びた影がショウを殴る。的確に顎にヒットしたショウの脳は揺れ、そのまま受け身も取れずに大の字になって気絶した。

 然して気にすることもなく、カイトは気絶したショウの胸ポケットを探り目的のカードをーーー即ち、エルザが閉じ込められたカードを抜き取った。

 

 カードを破いた瞬間、魔法が解けてその場にエルザが現れる。ショウを気絶させたことに文句を言いたいエルザだが、助けてもらったのは事実だ。ただ素直に「助かった」とだけ伝えて奥の通路に向かおうとする。

 しかし、その直前、通路いっぱいに広がる影の壁がエルザの行先を塞いでしまった。

 

「………なんのつもりだ、カイト」

 

「なんのつもりも何も、見ての通り足止めだよ♪」

 

「ふざけている場合か‼︎」

 

「カッカッカ♪…………そりゃこっちのセリフだよ、エルザ」

 

 瞬間、影から迫り出すのは7つの蛇の頭。そのどれもがエルザに牙を剥き、その肌を傷付けんとする。

 しかし、それらの首を全て切り落とすエルザ。そうして切っ先をカイトに向けようとした時、先程の蛇の首よりも大きなモノがエルザを襲った。

 

「ほうら、前しか向いてないからそうなるんだよ」

 

 壁に押し付けられたエルザの周囲に影が集い、その形を幾千もの刃へと変える。

 

武影百般(ぶえいひゃっぱん)。さぁ、エルザ。大人しく帰ろう。再開果たせずとも、この幕はデウス・エクス・マキナ(エーテリオン)によって終演。幕としては………まぁ、褒められたモノじゃないけど、それでみんな助かるならそれでいいでしょ?」

 

 そう問いかけたカイトはげんなりとした感情を隠さず、肩でため息をする。瞬間、構えた刃と同等の刃がそれらを砕き、その中心にいた天輪の鎧へと換装したエルザの姿が現れる。

 

「………なにが目的だ?」

 

「いつだってフェアリーテイル(みんな)のために、だよ」

 

「これは私の個人的問題だ。手を出すな」

 

「ここまで来てそれで済ますのは無理でしょ」

 

「どうしてもか?」

 

「どうしても、だね」

 

「そうか………」

 

 会話による懐柔は不可能。そう判断したエルザは今度こそ刃をカイトへと向ける。

 

「ならば、押し通らせてもらう」

 

 対するカイトは牽制として足元から影の拳を何本か伸ばし、加えて両手に混沌ノ鎧を纏ってそれをエルザに向けた。

 

「君の強情には、わかってたつもりなんだけどねぇ」

 

 刹那、2人の拳と剣が宙空でぶつかる。

 かくして、エルザvsカイトの戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 





京言葉を調べましたが、難しい。

ここは変だ、というのがございましたらどうかご指摘をお願いします
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