FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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vs.フクロウ

 

 

 

 

「くっ‼︎」

 

 ゴッ、と鈍い音を立てて、自らを閉じ込める檻に体当たりをする。しかし、鉄製の檻が動く様子はなく、逆にぶつかった肩に痛みが走る。

 緊張から気絶した後、ミラジェーンは脱出を試みて檻に体当たりをかましていた。しかし、成果は芳しくなく、何度目になるかわからない衝突に次第にミラジェーンの身体は悲鳴をあげていた。痛みに顔を顰めて、患部に手を添える。痛みは酷いが折れている様子はない。歯を食いしばってもう一度体当たり。

 

「くぅっ‼︎」

 

 当たりどころが悪かったのか、ミラジェーンの口から苦悶の声が漏れた。このまま蹲るのは簡単だ。けれど、膝を突きつつも上半身のバネを使って頭突きをかます。何度か額をぶつけるが、檻は壊れることなく先にミラジェーンの限界が来て仰向けに倒れてしまう。酷く痛む額と肩に顔を顰め、何度か深呼吸をすると立ち上がってまた檻に体当たりをかます。

 

 薄暗がりの中、その狂気にも似た光景を斑鳩は見つめる。

 身体をできる限り縮めて、これ以上傷つかないように、傷つけられないように身体を守る。故にミラジェーンの行動は不可解だった。なぜ自ら傷をつけにいこうとするのか理解できなかった。

 

「もう諦めなんし。あんさんがいくら身体ぶつけても、ここからは逃げらりゃしまへん」

 

 この檻を抜け出しても、その先に待っているのは視界の悪い霧の森に身も凍る吸血鬼。抗う気力さえ湧いてこない。だというのに、気絶から復活した後からミラジェーンは今のように脱出を試みている。斑鳩からすれば正気の沙汰ではない。

 再度仰向けに倒れたミラジェーンは呼吸を荒げ、流石に限界が来たのか今までよりも立ち上がる速度が遅い。それでも檻を手で掴み、足腰を震わせながら立ち上がるともう一度頭突きをかます。

 

「………何があんさんをそこまでさせるんどす?」

 

 暗殺ギルドの一員として、斑鳩は物事に対してドライである。自身と釣り合う強者との戦闘には心躍らされるが、目の前でギルドの仲間が死のうと、依頼主を叩き斬ろうと心動かされることはない。

 自身の命の危機に瀕した時は流石に狼狽するが、もはや諦めを享受した今、ミラジェーンの行動には疑問を抱くばかりだ。最早頭を打ちつける体力さえなくなったミラジェーンはその場にへたり込むと、それでも檻から手を離さずに、脱出の意思だけは折らずに答える。

 

「はぁ、はぁっ………みんなが、待ってるから」

 

 外に待つ仲間がいる、と答えたミラジェーンの言葉に、斑鳩はより一層怪訝そうに顔を歪める。仲間がいるからなんなのだと、そう言葉にしようとしてミラジェーンに遮られた。

 

「助けを待つだけなんて、嫌なの。囚われのお姫様なんて、柄じゃないの。助けようとしてくれるみんなに、合わせる顔がないじゃない」

 

 だから諦めるわけにはいかないと、今度は檻を両手で掴み、渾身の力を持って曲げようとする。当然、そんなことは叶わず、ただ徒に消耗するだけだ。

 

「ええなぁ、あんさんは。助けてくれる仲間がおりはって」

 

「ふぅ、ふぅ…………貴女にも仲間はいるじゃない」

 

「やからこそ、や」

 

 そう言い放つ斑鳩の言葉が理解できず、ミラジェーンは首を傾げる。いい機会だ、と斑鳩はほくそ笑み、そのうちに秘めたモノを話す。

 

「暗殺ギルド髑髏会、その三羽鴉の隊長なんて言われてはりますけど、ウチらの実力はそう変わらんのよ。ウチは一対一(サシ)の勝負が得意やし、そこで寝とるヴィタルダス・タカは多数対一が得意や。そんで、残るフクロウは暗殺そのもんが得意なんよ」

 

「それが……はぁ……どうかしたの?」

 

「あんさん、血ぃ流しすぎて頭働いてないと違います?視界不慮のフィールドに、暗殺が得意な梟があちらさんに付いとる。あんバケモンも恐ろしいけど、ウチがいっとう恐れとるんわフクロウの方や」

 

 ここを逃げ出しても追いつかれる、そう確信めいた斑鳩の言葉。ある意味での仲間への信頼を聞き、それを聞いたミラジェーンは考える素振りなど見せず、再度両腕に力を込めて檻をこじ開けようとする。

 

「聞いてはりました?逃げ出しても無駄どす」

 

「き、いてたわ………!でも、だからって!私がっ、諦めていい、理由にはならない、のっ!」

 

 びくともしない檻をこじ開けようと躍起になるミラジェーン。それを見ながら、こん人はホンマもんのイカれや、と内心愚痴をこぼす。諦めからまた自身の殻に閉じこもろうと頭を下げる斑鳩に、ミラジェーンがそれに、と告げる。

 

「それに!私の、仲間もっ!アナタに負けないくらい、強いんだから!ふんー‼︎」

 

「さよですか。ほんなら、おきばりやす」

 

 くだらないと一蹴して、斑鳩は心を閉ざす。

 薄暗闇の中、ミラジェーンの声だけが嫌に響いていた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 霧の深い森の中、巨体が森の中を疾走する。

 その身体には不釣り合いに思えるフクロウの頭は霧の中を見通し、足音も木々に擦れる音も漏らさずに走り抜く。その腕に掴まれているのはルーシィだ。乱暴に頭を鷲掴みにされ、抵抗しようにも過度のパニック状態で何が起こっているのか理解できていない。

 

 景色が上へ下へ、右へ左へ流れ、状況を確認しようにも掴まれた頭が痛み、そうでなくとも呼吸がうまく行かず脳まで酸素が回らない。せめてもの抵抗として掴まれる頭を必死に外そうとするがうんともすんとも言わず、不意に浮遊感を味わった。宙空に投げ出されたルーシィはそのまま重力に従って地面を転がり、何回転かした後樹木に背を打って止まる。

 

 痛む節々、回らない頭、定まらない呼吸。

 それでも自身を攫った敵の正体は見えた。楽園の塔の際、グレイやナツから聞いた筋骨隆々の身体に鳥類の梟の頭を取ってつけたようなアンバランスさ。間違いなく三羽鴉のフクロウだ。

 

(なんでこんなとこに?反撃しなきゃ。鍵、どこ?身体痛い。頭痛い。呼吸苦しい。あれ、何すればいいんだっけ?手当て。違う。眠りたい。もうやめたい。なんでこんなとこに。誰か、誰か、誰か‼︎)

 

 早まる呼吸、高鳴る心音、合わない焦点。

 そんなものはお構いなしにと、フクロウはゆっくりとルーシィに近づく。人を殺めるのに道具も魔法もいらない。その万力で頭を潰し、首を捻り、心臓目掛けて拳を振るえばそれで終わりだ。命令に忠実に、決して疑うこともなく、痛む心さえ持たずにフクロウは距離を詰める。

 

 無意識の内に鍵を触り、それがきっかけとなったのか、回らない頭でも何をすればいいのか思い出す。

 

「開け、金牛宮の扉‼︎タウロス‼︎」

 

「MOーーー‼︎」

 

 選ばれたのはルーシィの手持ちの中で最もフィジカルの高い星霊、金牛宮のタウロス。2本の脚で立つ牛の星霊はフクロウに負けず劣らずの筋肉で、主人に近づけさせまいとフクロウ相手にがっつり両手を組み合わせて押し返そうとする。

 

「グヌヌ………!ルーシィさんには、近づけさせねっす‼︎」

 

「ホーウ」

 

 普段のルーシィであればタウロスの異常に気がつけただろう。しかし、パニック状態から抜け出せないルーシィには厳しい話。いつもよりも力の衰えが見えるタウロス。それでも必死に主人を守ろうと歯を食いしばるが、フクロウは無感情に、無関心なほどに呟いて、両手を掴んだままタウロスを頭上に持ち上げる。

 驚くタウロスを他所に、そのまま横に振り抜けば、両手から離れたタウロスはルーシィの隣の木に激突。上下逆さまになった状態で、今の一撃で満身創痍だ。

 

「タウ、ロス……」

 

「モ、MO(モゥ)しわけねっす、ルーシィさん………」

 

 そのまま光る泡となり姿を消すタウロス。死んだわけではないが、許容限界を超えた傷を受け、強制的に星霊界へと帰還させられたのだ。遠距離の得意人馬宮のサジタリウスに続き、フィジカルの高いタウロスがダウンとなった今、ルーシィが使えるのは巨蟹宮のキャンサーと宝瓶宮のアクエリアスのふたつ。しかし、方や戦闘能力の低い美容師系星霊。方や戦闘能力は高いが敵味方関係なく巻き込む上、水場がないと呼べない星霊。最早打つ手がない。

 

「ホホーウ」

 

 気がつけば射程範囲内まで近づくフクロウ。腕を大きく振り上げ、拳を振り下ろす。倒壊した樹木が空を飛び、地面には蜘蛛の巣状のヒビが入る。後に残るものはなにもなし。遺体も、悲鳴も、血飛沫も、そこにいたはずの人物の痕跡はなにもない。

 

 けれど、フクロウには見えていた。

 攻撃の直前、回避も間に合わないはずのルーシィの身体が光ったかと思うと、一瞬にして視界から消えたことを。いや、正確にはルーシィの腰にある鍵のひとつが光っていたことを。

 

「女性は絹を扱うように優しく接する。そう教わらなかったのかい?」

 

 声がするのはフクロウの背後。そちらをゆっくりと振り向けば、金髪を逆立て、スーツを着込んだ美丈夫に横抱きにされるルーシィ。

 突然のことで惚けたように口を開けるルーシィは、ようやく思考が追いついたのかその男の名を呼ぶ。

 

「それに、彼女は僕のマスターだ。無粋な輩には触れさせはしないさ」

 

「レオ!」

 

 星霊界を追放された者

 

 光り輝く金色の獅子

 

 黄道十二門のまとめ役

 

 その名は獅子宮のレオ。フェアリーテイルの一員にして、ルーシィとの絆によって罪を許された存在が、そこにいた。

 

「でも、なんで………」

 

「緊急事態だったからね。強制的に開門させてもらったよ」

 

 なんでもない風にいうレオだが、それは星霊にとってかなりのリスクが伴う荒技だ。契約者の魔力を用いて召喚する通常方法とは違い、強制開門は星霊自身の魔力を使う。現界できる時間も、強制開門によって痛む四肢も、ルーシィに不安を与えないために涼しい顔をして誤魔化す。

 

「さぁ、ルーシィ。僕の後ろに」

 

 ルーシィを腕から下ろし、自身の背後へ。そして体勢を整えてフクロウを見据える。

 近接戦闘の得意な星霊として、体格差があるとはいえフクロウとの相性はいいだろう。しかし、強制開門に加え、召喚された場所が悪いと内心冷や汗を流す。

 

 霧の谷は星霊にとっては魔界に等しい。星の光を受け付けない彼の地は、星霊の力を目に見えて激減させる。

 ニコラなどの低級の星霊はさほど影響を受けないが、黄道十二門クラスともなるとその影響をモロに受ける。現界による魔力の消費も早く、まるで泥に沈められたかのように身体が思うように動かない。

 

(それでも、退くわけにはいかない)

 

 自身の後ろにはルーシィが。

 星霊としての役目を果たせずに終わるはずだった我が身を救ってくれた彼女がいる。

 

 それを傷つけるわけにはいかず、そして傷つけようとしたフクロウはなによりも許せない。脚に力を込め、大地を蹴り飛ばす勢いで踏み出す。

 ルーシィの目にはレオの姿が一瞬消えたかと思うと、次の瞬間にはフクロウの頬に拳を突き立てる姿が見えた。

 

「ホーウ」

 

「くっ‼︎」

 

 人は頬を殴られれば多かれ少なかれ多少は怯む。しかし、フクロウは痛痒に感じた様子も見せず、すぐさま反撃の一撃がレオに叩き込まれる。胴体目掛けて放たれた一撃を両腕を交差させてなんとか防ぐが、それでも勢いは殺せずレオの身体が宙に浮く。

 防御にまわした両腕が痺れ、その予想外の攻撃力に驚きを隠せないレオ。そして空中で呆気に取られるレオに、追撃とばかりに両手を握ったフクロウの一撃が頭上から振り下ろされる。

 

「ガハッ‼︎」

 

 肺から酸素が全て抜け出すような衝撃がレオを貫き、そのまま地面に叩きつけられた。攻撃の手を休める様子のないフクロウの踏み潰さんと降ろされるスタンピングを転がってかわし、再度距離を取って一呼吸。

 ゆらり、とそちらを振り向くフクロウの攻撃を逃げるようにしてかわす。

 

「レオ‼︎」

 

 防戦一方の戦闘にやはりレオでもダメなのか、とルーシィの心に不安が過ぎる。

 手助けしようにも自身の戦闘能力は所詮素人に毛が生えた程度。それはルーシィ自身もわかっている。けれど、ピンチに陥る仲間(星霊)を放っておくことができるほどできていない。

 腰にムチがあるとはいえ、自身に出来ることといえば、精々魔力を送る程度。力のない我が身が恨めしく、歯を食いしばりながらせめてものと胸の前で指を絡めて祈るように魔力を送る。

 

(予想以上だ………)

 

 対してのレオは肩で息をしながら冷静に状況を再確認する。

 この場で星霊である自身の力は存分に発揮できないことは理解していた。

 相手とのウエイトの差も頭に入れていた。

 けれど、そのどれもが予想より遥か上だったのだ。自身の力は半減どころではなく9割減。ウエイト差はまだしも、吸血鬼に支配されているフクロウに痛みや怯みという感情はなく、ただただ命令通り目の前の敵を屠る事しか頭にない。

 

(小技は効かない。なら、全力の一撃を叩き込むしか………)

 

 ただでさえ現界に魔力を消費する中、一撃を打ち込むために魔力を節約して防御に回るしかない状況。厄介だ、という言葉を口の中で転がす。

 迫り来る拳の側面に手を当て、力の流れを逸らしながらなぜ吸血鬼(カイト)のためにこんなことをと考える。

 

 思えばロキとして振る舞っていた頃、初めて見た時はカイトには苦手意識があった。それが吸血鬼だからと思えば納得だ。レオ自身が吸血鬼に何をされた、というわけではない。星霊界全体が本能的に吸血鬼を嫌っているのだ。

 

 ハーフだからか、カイト自身に嫌悪感を示すことはないがそれでも苦手意識というものは残る。故に、厄介ごとを丸投げしたり、無茶振りをしたりと思い返せば出るわ出るわの所業。これはきっとその時の報いだろうと心の中で自嘲する。

 

(けれど、彼は嫌な顔をしつつも僕に応えてくれた)

 

 ダブルブッキングした時も、パーティーで記憶に残るような料理を作ってくれと言った時も、依頼でやらかした時も、カイトは渋々といった調子ではあるが応えてくれたのだ。

 ギルドの中でも間違いなく信頼できる人物。普段は気恥ずかしくて言えないが、レオはそう評価していた。

 

(そうでなくとも、彼はフェアリーテイルの仲間だ)

 

 吸血鬼だのなんだのは関係ない。

 フェアリーテイルのカイト。

 道化と呼ばれ、人と戯れ、そしてその仮面(笑顔)の奥で涙を流す、大切な仲間。

 

(だからこそ‼︎)

 

 拳を、蹴りを、膝を、肘を。レオを殲滅せんとする攻撃の悉くを防ぎ、ようやく見せた大振りの隙。

 ルーシィから送られる魔力に乗せられた思い。保身のためではなく、仲間を思う願いの魔力。まったく、自分はいい主人に巡り会えたと内心ほくそ笑み、身体の奥底から湧き上がる魔力を拳に込める。

 

(だからこそ、僕はーーー‼︎)

 

獅子王の輝き(レグルスインパクト)‼︎」

 

「ホキョッ‼︎⁉︎」

 

 文字通り全身全霊の一撃。金色に輝く拳はフクロウの腹を捉え、輝く魔力ごと敵を森の彼方へと押しやる。木々を薙ぎ倒し、地面を転がり、ようやく倒れたフクロウは流石にダメージが大きいのか白目を剥いて起き上がる様子はない。

 

 霧で見えずとも直感でそう感じたレオは安堵のため息をこぼし、全身が光の粒子に包まれた。現界に必要な魔力まで消費した代償だ。今すぐにでも倒れたい気持ちではあるが、それでは格好がつかない。気を抜けば震えそうになる脚に力を入れて、必死に両足を立たせる。

 ルーシィをこの場で孤立させるのは悔いるばかりではあるが、最早自身にはどうしようもない。

 

「レオ‼︎」

 

「大丈夫さ、ルーシィ。星霊界に帰るだけさ」

 

 駆け寄るルーシィを安心させるように笑みを浮かべ、レオを包む光が強くなる。もうすぐ完全に退去してしまうだろう。これから口にすることは仲間に対する裏切りに等しいだろう。

 そう思うとレオの渦中は荒れ狂い、トゲトゲとしたものが喉の奥に突っかかるような錯覚に陥る。それでも、レオは意を決してそれを言葉にする。

 

「ルーシィ、君はここを抜け出したほうがいい。なんだか嫌な予感がするんだ」

 

「でも、カイトが………」

 

「大丈夫。彼は生きてるよ」

 

 少し前の光景を思い出し、暗い影を落とすルーシィにレオはそう言う。実際、十中八九死んでいると予想されるが嘘も方便。星霊を呼べないルーシィをこの場に残すよりはマシだと自分に言い聞かせて、疑問を浮かべるルーシィに言葉を紡ぐ。

 

「彼のしぶとさは僕が保証する。だから、君は一刻もはやくーーー」

 

「逃げないわ」

 

 被せるようにそう言い放つルーシィの言葉に、たじろぐレオ。芯の通った、真っ直ぐな言葉を、レオに向けて放つルーシィの言葉は続く。

 

「あたしが戦力にならないことはあたし自身が1番わかってる。でも、だからってみんなを見捨てて逃げる理由にはならないわ」

 

 確固たる意志を持ってそう言い放つルーシィに一瞬惚けた表情を見せ、そしてやはり彼女が主人となって本当によかったと安堵する。

 例えお荷物になるとわかっていても、仲間を助けるためならば全力を尽くす。そんな彼女だから自身は救われたのだ。そんな彼女だから星霊と強い絆を結べるのだ。

 

 願わくばーーー

 

「それに、レオが思ってるより、あたし強いんだから」

 

「ああ。無用な心配だったね、マイマスター」

 

 ーーー彼女の行く末に光あらんことを

 

 星々に見放された地で、果たして祈りが届くかどうか。それでも星霊界の王、星霊王に届くことを願い光に包まれたレオが消える。残されたルーシィは一瞬仲間がいないことに不安を覚え、心の中にもやもやとしたものが籠るよりも早く自身の頬を叩く。

 

「よし!」

 

 喝を入れ、気持ちを正し、不安を彼方に追いやって前を向く。真っ赤になった頬を携てさぁ、いざ行かんと脚を踏み出したところで、ふとその脚が止まる。

 

「………ここ、どこ?」

 

 静寂が支配する深い濃霧に包まれた森の中、早くもルーシィは絶望感に浸るのであった。

 

 

 

 

 

 

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