FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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戦血

 

 

混沌ノ(カオス)ーーー」

 

戦血(ブラッティ)ーーー」

 

 

(クロー)‼︎」

 

 

 互いの魔法が空中を飛び、ちょうど二人の中間の距離でぶつかり合う。相殺による爆煙が立ち昇るが、次の瞬間には紅い弾丸と黒い杭がそれを突き破り互いを襲う。互いの腕が飛び、脇腹を抉り、頭蓋を吹き飛ばすが瞬時に再生。戦闘は続行される。

 

 吸血鬼同士の戦いは言ってしまえば互いの命を喰らい合う泥試合だ。どちらかが再生の限界を迎えるか、その魂を食われるかでしか決着がつかない醜い争い。本来であれば五分五分の戦いが行われるのだが、今回はレプスの方が有利である。

 

「ふふふ!」

 

 手のひらから生み出した拳大の円盤状の血液を飛ばし、カイトの右腕に傷を入れる。即座にその傷口を抉り再生させるカイトの表情に普段の飄々とした笑みはない。

 レプスの操る魔法は毒に等しい。傷口から侵入を許してしまえばその部位を操られることはおろか、最悪全身を乗っ取られる。故にカイトは少しの傷も許してはならないし、その度に再生しなければならない。

 

(ホント、純血種ってのは厄介だねぇ)

 

 力も、魔力も、再生力も、何もかもがレプスに劣るカイト。半端者と言われるだけはあると心の中で自嘲して、接近してくるレプスから距離を取るために上空から森の中へと逃げる。得意の影魔法も空中では制限されるための措置だ。

 案の定追いかけてきたレプスに影の拳をぶつけるが効果なし。わずわらしいとばかりに一掃された。

 

(ほーんと、厄介だね)

 

 苦戦するカイトだが、意外なことに対するレプスも余裕はない。

 エルザに仕向けた分身体に血液と魔力の半分を用いたのもあるが、それ以上に魔力が減っているのだ。原因はもちろんカイト。その魂が肉体に戻る際についでとばかりに魔力も持ち逃げされたのだ。

 

(あんまり悠長はしてられないわねぇ)

 

 カイトの魔法は微々たるダメージしか受けないが、だからといって食らい続けていいわけではない。周囲に血を撒き散らし、それを吸収した木の根を操りカイトの行手を阻む。なんとかそれを躱すが、躱した先にも獲物を待ち受ける数多の木の根。

 

「かかったわねぇ‼︎」

 

 カイトの反応速度よりも早く、まるで獲物を捉える食虫植物のように繭状になった木の根がカイトを覆い、そして圧縮する。

 鳴り響く肉と骨が潰れる音。木々の隙間から溢れる血液。殺った、と木々を更に圧縮させ、再生さえ許さない。そしてトドメをさそうと繭を開いた瞬間、そこに何もいないことを確認する。血も肉も骨もこびりついているというのに、そこにカイトの姿はない。

 どこに行った、と周囲を見渡そうとした瞬間、少し離れた木の影からカイトが姿を表す。潰れた右腕の再生も後回しに、口内に蓄えられた魔力。

 

混沌ノ息吹(カオス・ワッタス)‼︎

 

 吐き出された白と黒の光の奔流。それは直線上のモノを悉く破壊し、煙が辺りに舞う。滅竜魔導士の真似事でしかない魔法であるが、威力は充分。これで倒れてくれたら御の字だと、焼けた口内と右腕を再生させながら自嘲する。

 

「ふふふふふ‼︎どうしたの、半端者(ダンピール)‼︎この程度なのぉ⁉︎」

 

 煙を羽で吹き飛ばし、五体満足な姿を表すレプス。

 影の中を移動して、右腕までもを潰して不意をついたというのに、まさかの結果にげんなりとするカイト。しかし、それを表に出さず、弱味は見せないとばかりに不敵に笑う。

 

「カッカッ‼︎ うるさいよ、日陰者(ナイトウォーカー)‼︎」

 

 影から大小2本の刀を作り出す。魔法の名は偽・仏斬大刃太刀(ぶつぎりだいばたち)。本来であれば巨大な鋏のそれを振り回しやすいように縮小させただけではあるが、効果は覿面。距離を詰めたレプスの胴体を両断することに成功。しかし、レプスも負けじとばかりに残った右腕がカイトの頭を貫通する。

 互いに致命傷であるが、すぐさま再生。遠くから聞こえる獣のような雄叫びを合図に、再びノーガードの攻撃が互いを傷つける。

 

 

 化け物同士の殺し合いはまだ始まったばかり。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 其は災厄の獣

 

 

 其は破壊の権化

 

 

 其は地を支える者

 

 

 其の名はアトラス

 

 

 咆哮(こえ)はまるで世界を呪い

 

 

 巨腕(うで)はまるで万物を破壊し

 

 

 巨脚(あし)はまるで万象を踏み潰す

 

 

 赤い肌を持ち、人というよりは牛寄りの顔つきの巨人は現世(うつしよ)の全てが敵だとぱかりに鋭い目つきで辺りを見渡し、鬣のような頭髪と側頭部から生える巨大なツノを震わせ召喚者の指示を待つ。

 全長は30m程の巨大。見上げんばかりのその大きさに、フェアリーテイルの面々は言葉を忘れた。巨大なモンスターはそれなりに見てきた筈だが、コレはそのどれをも凌駕している。大きさも、危険度も。

 

「やりなさい、アトラス。眼前の悉くを破壊しなさい」

 

 レプスの指示に叫ぶことで承諾を示すと、その巨大な拳が高く振り上げられる。

 

「ッ‼︎よけろォ‼︎

 

 そう叫ぶや否や、エルザは拳が直撃するであろう場所へと前進し、金剛の鎧へと姿を変える。ナツはともかく、グレイを引きずるルーシィが逃げる時間を稼ぐためだ。

 

「ぐっ、ぉおおぉおおお‼︎」

 

 拳が直撃した刹那、全身の骨が砕かれんばかりの衝撃がエルザの身体を駆け巡り、そして大地がそこを中心にひび割れ、陥没する。

 予想以上の重さと衝撃に一瞬崩れそうになるが、少しでも時間を稼ぐために声を出して奮起する。

 

「エルザ‼︎ぐぇっ⁉︎」

 

「ナツ‼︎」

 

 エルザの助けに入ろうと足を出したナツだが、まるで川の魚を鳥が捕らえるかの如く飛来したレプスがそのマフラー掴んで上昇する。本命はそちらかと自らの行動に苦悶を漏らすエルザだが、それは違う。レプスからすればどちらも本命。自身とは相性の悪いエルザをアトラスに任せ、残ったナツたちを狩る。

 

 空を高く舞うレプスがトドメとばかりにナツの首筋に牙を突き立てようと口を開ける。

 

「なろっ‼︎」

 

 そうはさせないと拳に炎を纏うナツが殴りかかるが、それよりも早くレプスは手を離す。当然、空を飛ぶ術を持たないナツは重力に従い落ちていく。死ぬには絶好の高さ。ナツの耳元で風が次々に上へと流れていき、まるで死へと誘う曲のようにも聞こえる。しかし、ナツに焦りはない。最も信頼している相棒の名を、声高々に叫ぶ。

 

ハッピー‼︎

 

あいさー‼︎

 

 下から飛んできたハッピーがナツの背中を掴むと、そのままレプスへと急接近。ふるった拳がレプスを捉え、大きく突き放す。長い付き合いだからこそできるナツとハッピーの連携。それが疎ましく思え、殴られた腹に手をかざしながら血の射撃をお見舞いする。

 空中で格闘するナツたちを横目で確認し、あちらは大丈夫だとエルザは確信する。ナツたちが負けるとは思っていない。確かな信頼を胸に抱き、こちらを押し潰さんとする拳を支える。浮遊している一対の盾がミシリと嫌な音を立てるが、移動はできない。このままかわせば自身はともかく、まだ逃げきれていないルーシィが危険だからだ。流石に成人男性一人を抱えて早く移動することはできず、また悪くなった足場に四苦八苦しながら後退するルーシィ。

 

 更に音を立てて大きくヒビが入るエルザの盾。これ以上は、と諦めが頭の隅によぎった瞬間、ルーシィの声が響く。

 

「エルザ、こっちは大丈夫‼︎」

 

「だがっ‼︎」

 

 ルーシィの位置は未だ影響の及ぶ範囲内。エルザが支えるのをやめた瞬間、確実に被害を被るだろう。けれど、だからといってルーシィは目の前でピンチに陥るエルザを見ていられなかった。

 

「いいから、早く‼︎」

 

「くっ‼︎………気を付けろ‼︎」

 

 それだけ言うとすぐさま飛翔の鎧に換装。迫り来る拳を持ち前のスピードでかわし、その腕を駆け上る。

 

「ごめん‼︎開け、時計座の扉‼︎ホロロギウム‼︎」

 

 拳が大地に接触する瞬間、召喚されたのは柱時計に手足が生えたような星霊ホロロギウム。本来であるなら世界中の時間を教えてくれる星霊だが、その身体は見た目よりも強固であり、術者を守ることも可能である。それを察してか、召喚されたホロロギウムはすぐさまルーシィとグレイを柱部分に収納し、迫り来る衝撃波から二人を守る。

 

 まるで大地が悲鳴をあげるかのように打ち震え、そして周囲の家屋や木々が耐えきれずに宙を舞う。被害はそれだけにおさまらず、続くように舞い上がった数トン単位の土砂が重力に従い降り注ぐ。文字通りの土砂降り。たった一撃で周囲を更地に変えてしまうその力に、腕の上に逃れたエルザは戦慄する。

 

「ルーシィ‼︎」

 

 思わず叫び安否を確認するが、やはり返事は返ってこない。判断を誤ったことに後悔し、奥歯を噛み締めるエルザの耳に、聞きなれない声が聞こえる。

 

「『あたしなら大丈夫!』と申しております」

 

 土砂の中から這い出たのはホロロギウム。無傷とはいかず、自慢の身体は至る所に傷がついたり凹んだりしているが、それでも柱部分のルーシィたちは無傷である。

 ルーシィが柱部分から出ると同時にホロロギウムの姿は消え、感謝を込めてルーシィはその鍵を抱く。

 

 その姿を見てホッとするのも束の間、突如エルザの頭上に影が差す。腕の上に乗るエルザを潰そうと振り上げたアトラスの掌だ。巨大故にその動きは鈍いが、その巨大さ故に躱すのも一苦労。腕から肩まで駆け上がり事なきを得るが、叩くと同時に巻き上がる爆風に煽られる。

 剣を肩に突き刺してそれに耐え、一先ず注意がこちらに向いていることに安堵。そしてまずは生物の弱点である顔から切り崩そうと駆け上がる。

 

「早く、逃げないと。ん〜っ‼︎」

 

 ここにいてはエルザの迷惑になると移動を再開するが、やはり脱力した男性一人と一緒となるとその労力はかなりのもの。必死にグレイの腕を肩に回して引きずりながら移動するが、やはり遅い。

 それでも少しでも早く、と霧の向こうに視線を向けた時、不意に声がかけられる。

 

「ねぇ、お姉さん。お手伝いしましょうか?」

 

「え?」

 

 いつの間にそこにいたのだろう。ルーシィの背後から現れた、村まで案内してくれた少女。ルーシィとは反対側からグレイの肩を担ぎ、こちらを向いてにこりと笑う少女に思考が奪われるが、エルザが戦う音が聞こえてそれどころではないと思い直す。

 

「ここにいちゃ危ないわ。ほら、早く行きましょ」

 

「う、うん」

 

 そう頷けば少女はより一層笑みを深め、ルーシィと共にまだ無事な森へと向かう。多少なりとも早くなったことで離脱に成功。それを横目で確認したエルザは埃を払うように肩を撫でる掌を飛んで躱し、遂にアトラスの顔へと到達する。

 換装するのは黒羽の鎧。手に持つ剣は銀製のもの。狙うは眼球。

 

「黒羽・月閃」

 

 半月を描くような一撃が生物の弱点に飲み込まれようとした刹那

 

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 

 

 

 ()()()()()()

 

 そう表現するしかない、全身を貫く音の衝撃波。

 全身を叩かれ宙を舞うエルザに、追撃とばかりに振り下ろされるアトラスの手。躱す余裕なく、地面に叩きつけられたエルザの口から鮮血が舞う。鎧の8割が破壊され、流石のエルザも満身創痍。最早一歩も動けないエルザを頭上から無慈悲に、アトラスの巨大な脚が踏み潰すのであった。

 

 

 

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