FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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BOF

 

 

 

「おい、おまえ‼︎」

 

 

 フェアリーテイルの隠れ家のひとつにて。

 

 夕陽が建物の影に沈むのを窓際で確認していると、扉が開かれたと思えば突如として声を投げかけられた。この場はフェアリーテイルが万が一に備えて用意している隠れ家のうち、特に秘匿性の高いもののひとつ。認識阻害の魔法がかけられており、そこに在ると認識していない限り存在を知ることさえ出来ない。

 

 ここに来るのは日に数度、人間世界の常識を教えるためにやってくるマカロフのみ。はて、ではこの子は誰だろうと頭を捻る。人の顔を覚えるのは苦手だが、少なくとも出会った事はないはず。というよりも、ここに連れてこられてから一度も外に出ていないのだからそれが当然だ。

 だと言うのに突如として現れた少年は憤りに満ちた視線をこちらに向けている。しばらくその姿を注視していれば、少しも動じないこちらに物怖じしたのか、たじろいだ少年は気合いを入れ直すように頭を振ると、再び指先をこちらに向ける。

 

 

「じーじはマスターで大変なんだぞ!お前に構ってばっかじゃダメなんだ!」

 

 

 要領を得ない会話。何を伝えたいのかよくわからず、より一層頭を捻り、じーじとはマカロフの事ではないのかと当たりをつける。

 

 

「じーじ……マカロフのこと?つまり、君はマカロフの親族?」

 

 

「しんぞく……?じーじは俺のじーじだ!」

 

 

 どうやら当たりらしい。つまりはマカロフが最近こちらに構ってばかりでつまらないので、それを止ようと乗り込んできたのだろう。面倒なことになったとため息を溢す。少年を害せばマカロフは流石に黙っていないだろうし、そうでなくとも無闇に人を傷つけてはならないとマカロフと魔法契約を結んでいる。破れば即ち死。逆にマカロフには無闇に正体を吹聴してはならないと契約しているのでマカロフがけしかけたと言う線は除外していいだろう。

 しかし、と注意深く少年を見やる。

 

 

「な、なんだよ」

 

 

「………似てる」

 

 

 マカロフの孫、というだけあり、目の前の少年は確かにかの老人に似ている。姿形は似てはいない、けれど、ある種のカリスマと言うのだろうか、惹き寄せられる様な魅力を目の前の少年は持っていた。

 

 

「………君、名前は?」

 

 

「ら、ラクサス……おまえは?」

 

 

 じっと見つめられるのが居心地悪いのか、たじろぐ様にそう答えるラクサス。そしてその問いに少し悩んだ様子を見せ、そして答えた。

 

 

「カイト。ねぇ、ラクサス。良かったら君のお爺ちゃんについて、話を聞かせてもらえるかな?」

 

 

 興味本位にそう問うて、手を差し出す。

 人間社会に溶け込もうと踏み出した一歩。眼前のラクサスはその差し出された手を見つめ、そしてーーー

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「起きろォオ‼︎」

 

 

「げふっ‼︎⁉︎⁇」

 

 

 怒号と共に全身に走る衝撃。くるくると床を転がり、壁にぶつかって止まった痛む身体をゆっくりと起こし辺りを見渡す。

 閑散としたギルド内で異彩を放つステージ上の石像。こちらをあんぐりとした表情で見るマカロフ、ナツ、ハッピー、ガジル。そして普段からは考えもつかないふりふりのゴスロリを着たエルザ。出入口の空間に表示された【残り4人】の文字。

 なるほど、まるで状況が読めないと頭を捻るカイト。

 

 

「さてさて、誰か状況を説明してくれるかな?」

 

 

 そしてマカロフから説明を受けるカイト。

 どうやらミス・フェアリーテイルのコンテスト最中にラクサスを含めた雷神衆が乱入。参加者を人質に街全体を使ったバトルロワイヤルを開催。制限時間3時間以内にラクサスたちを倒さなければゲームオーバー、人質の石像は砂となってしまう。そのためにギルド全体でラクサスたちを探そうとすれば街中に展開されたフリードの術式の罠に掛かり同士討ち。現在残っているのはこの場に残っているナツ、ガジル、エルザ、カイトの4人のみ。

 

 本来であれば意気揚々と参戦するはずのナツであるが、ギルド周囲に張り巡らされた術式【80歳を超える者と石像の出入りを禁止する】というものに何故か引っかかっているとのこと。

 

 人質であったはずのエルザだったが、右眼が義眼だったためかエバーグリーンの魔法“石化眼(ストーンアイズ)”の効力が半減。ナツが熱したお陰か復活を果たしたらしい。

 そして復活したエルザは同じく石になっていたカイトにドロップキックをかまして復活させたのだと言う。復活ではなく破壊して再生したのは言うまでもない。

 

 

「モーニングコールにしては過激すぎない?」

 

 

「起きたではないか」

 

 

 尚、本人に反省の色はない。

 あまりの扱いにさめざめと泣くカイトを他所に、残り人数が4人から5人へと増える。

 

 

「増えた」

 

 

「誰だ⁉︎」

 

 

 一斉にステージの方へと視線を向けるが、誰一人として復活した様子はない。では誰が、と考えたところでエルザがくすりと笑う。

 

 

「どうやら、あの男も参戦を決めたか」

 

 

 少し離れてマグノリア郊外。

 そこに5本の杖を背負った覆面の男がいた。彼こそがフェアリーテイルの最強候補に数えられる1人、ミストガン。

 これならば、と希望が芽生え始めたギルド内。

 

 

「反撃開始じゃ‼︎」

 

 

「行けー‼︎」

 

 

 マカロフの指示を受けて走り出すエルザとカイト。そして街のどこかにいるミストガン。逆襲劇がこれより幕を開けるのであった。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 さて、意気揚々とついつい走り出したカイトではあるが、現在魔法が使えない状況。それに加えいつもの方向音痴ぶりを見事に発揮しており、人探しなどは完全に不向き。聞き込みでもしようにもどうやら街中でフェアリーテイルが暴れていることは知られているらしく、近づくどころか離れていく一方。街中ではあるが、カイトの周囲には空間が出来ていた。

 進展しない状況に肩を落とすがしかし、だからと言って参加しないわけにはいかない。これはギルド内紛争。ラクサスの目論む跡目争い。負ければまず間違いなくフェアリーテイルの殆どは脱退するだろう。

 

 それはいけない。いただけない。

 

 カイトはフェアリーテイルが大好きだ。だからこそこんな馬鹿なことをしでかしたラクサスを止めなければと珍しく使命感に燃えていた。

 

 

(それに、ねぇ………)

 

 

 同世代の中で、ラクサスは一番古い付き合いだ。幼い頃は殴り合ったり、最近は嫌味を言い合う仲ではあるが、それでも大切なギルドメンバーだ。ここまでのことをして元の鞘に収まることはできないだろうが、今すぐ止めれば減刑くらいは聞き入れてもらえるかもしれない。望み薄ではあるが、何もしないよりはマシだろう。

 

 

「さてさて、あの聞かん坊をどう止めますかねぇ♪」

 

 

「ねー」

 

 

「止めなくちゃ」

 

 

「ね〜」

 

 

 ふと、返ってきた声に反応してそちらを見れば、羽の生えた樽のような人形が5体、そこに浮かんでいた。奇怪なそれを確認したや否や、カイトは走り出す。それを追う様に5体から発射された魔力弾を躱しながら壁をよじのぼり、人気の少ない屋上へとたどり着く。

 これで人形を巻けたとは思っていない。すぐさま周囲を見渡して目的の人物を探す。

 

 

「よォ、久しぶりだな」

 

 

 目的の人物はすぐさま見つかった。カイトからは少し離れた玩具屋の屋上。

頭部をボディースーツ、顔の上半分をバイザーで覆った巨漢。罠にかかった獲物を見るように舌なめずりするのは雷神衆の1人、ビックスロー。

 厄介な奴に見つかったと内心冷や汗を流す。しかし、それを悟られない様に陽気な声を出して、不安定ながらも周囲に魔法を張る。

 

 

「やぁ、ビックスロー。久しぶりだねぇ♪再会ついでにラクサスの場所を教えてくれないかな?」

 

 

「ヒャーハッハッハッ‼︎教えるわけねェだろ」

 

 

「だよねぇ」

 

 

 内心舌打ちひとつ。ラクサスの居場所も魔法の展開も進まず、状況は最悪。苦し紛れに両腕に混沌ノ鎧を纏うが、いつもより歪な形でしか展開されない。

 

 

「なんだよ、それ!もしかして体調でも崩したか?だからって手は抜かねェけどな!やっちまいな、ベイビー‼︎」

 

 

 カイトの背後から現れる先ほどの人形。ビックスローの魔法人形憑(ひとつき)は術者の魂を依代に憑依させて操る魔法。飛ばしてくる魔法弾を躱しながら周囲に展開した魔法を発動させる。

 

 

影拳(シャドー・ナックル)‼︎」

 

 

 周囲から現れた影の拳。大小様々で不揃いの歪なものではあるが、人形を破壊するには十分。多少手こずりはしたが5体とも破壊された。しかし、油断はできない。

 破壊したのはあくまで依代。それを操る魂は破壊できず、そしてビックスローの足元の玩具屋は依代の宝庫だ。すぐさま新しい人形が補充され、カイトの前に立ちはだかる。

 

 

「ヘイヘイ、どうしたよカイト‼︎こんな程度だったのか⁉︎」

 

 

「カッカッカ♪ビックスローは強くなったねぇ」

 

 

 最後に会った時よりも確実に上がった人形操作の腕前。それに人形の切り替えも早い。今のままでは確実に負けるだろう。

 仕方がないとため息ひとつ、そして右手に溜めた魔力をビックスローに向けて振るう。

 

 

混沌ノ爪(カオス・クロー)‼︎」

 

 

「無駄だって知ってるだろ‼︎」

 

 

 カイトの放った魔法は人形たちに防がれ、ビックスローには届かない。粉塵が舞う中、どのように攻められても対応できるよう、ビックスローは新たに追加した人形たちを周囲に待機させる。

 そして煙が風で流されて周囲が晴れた頃、ビックスローは目を見開く。

 

 

「いねぇ‼︎⁉︎」

 

 

 まさかまさかの逃亡である。虚仮にされた怒りのまま、周囲を人形たちに探らせる。戦闘の影響で周囲に人はおらず、大通りに逃げたという線は低いだろう。ならば路地裏や小道はと目を光らせるがそこにもいない。

 

 

「ンのヤロォ‼︎どこいきやがった‼︎」

 

 

 怒りそのままに、人形を街中いたるところに徘徊させる。そして人形の一体が路地裏を通り過ぎたのを確認すると、隠れていたゴミ箱の中から顔だけ出して周囲を見渡すカイト。

 魔力が不安定な中、影の中に潜り込むことはできず、こうして原始的な策に出るしかないのだ。屈辱的な気持ちになりつつ、頭に乗ったバナナの皮を捨てて、ゴミ箱から身体を出す。人間、一度見たところは早々に見返したりしないものだ。範囲が広いのなら特に。

 

 

(けど、どうしたもんかねぇ。打てる手立てはないし、救援を待つ余裕もない。せめて魔力が馴染んでくれたら………いや、ないものねだりしてもしょうがないけどね)

 

 

 顎に手を当てて八方塞がりのこの状況をどう打開したものかと考えていれば、ふとゴミ箱の影に蹲っている人影が目に入る。隠れる時は急いでいたので気づかないでいたが、よく見ればグレイである。

 身体中傷だらけで、共闘は難しそうだ。それは兎も角、カイトはグレイの肩を揺すって安否を確認する。

 

 

「おーい、グレイ。生きてるかい?」

 

 

「う………。カ……イト……?」

 

 

「よかった。意識はあるね」

 

 

 傷だらけではあるが、意識も戻ってきたため安堵のため息を溢すカイト。グレイは少し何度かまばたきをして状況を確認すると、突然カイトの肩を掴む。

 

 

「ここはヤベェ‼︎すぐに離れろ‼︎」

 

 

「………はい?」

 

 

「もう遅ぇヨ‼︎」

 

 

 困惑するカイトを他所に、上空から声がかけられる。釣られて見上げれば壁と壁の間をその脚で支えながらビックスローがこちらを見下ろしていた。そして同時に、路地裏から出さないと言わんばかりに術式が張り巡らされる。

 これがラクサスを探すギルドメンバーたちがやられた術式か、とひとり納得するカイト。術式内のプレイヤーが1人にならない限り突破不可能の領域。厄介なものに捕まったと焦る気持ちを抑えて、いつもの様に飄々とした笑みを浮かべてビックスローと対峙する。

 

 

「グレイ、君はそこで寝てな♪すぐにここから出してあげるからさ♪」

 

 

「へェ。さっきより強気じゃねェか。けど、オメェに勝ち目はねェけどな!」

 

 

「待て、カイト‼︎」

 

 

 グレイの静止を無視して、両手に魔法を発動しようとするカイト。だが、苦労して練り上げた魔力は瞬時に霧散し、その効力は発揮されない。驚くカイトを他所に、ビックスローが長い舌を出して嘲笑う。

 

 

「うひゃはははは‼︎バーカ‼︎」

 

 

 ビックスローが馬鹿にするのも無理はない。この術式内では魔法は発動できないルールが刻まれており、遠隔操作系の魔法であるビックスローには何の妨害を受けることなく相手を嬲ることができる。

 それを証明するように、術者の外から現れた人形たちが唖然とするカイトに遠慮なしに魔力弾を放つ。なす術なく魔力弾が直撃し、爆炎が舞い上がる。

 

 

「カイトッ‼︎」

 

 

「お?いたのか、グレイ。てめぇにはさっき殴られた仕返ししてェと思ってたんだよな‼︎」

 

 

 先ほどビックスローに敗退したグレイにBOFに参戦する権利はない。しかし、決着がつく直前に一発殴られた恨みはある。

 

 

「まとめてやっちまいな、ベイビー‼︎」

 

 

「ぐぁああっ‼︎」

 

 

 爆炎に次ぐ爆炎。そうしてグレイの苦痛の声が聞こえなくなった頃、ビックスローは止めを指すべく人形たちを五角形になるように隊列を組ませる。

 

 

「さあ‼︎その魂をラクサスに捧げろ‼︎バリオンフォーメーション‼︎」

 

 

 五角形に並べられた人形。その中心から特大の魔力弾がビックスローを除いた路地裏全域を襲う。高笑いをしながら決着がついた事に酔いしれるビックスローだが、いつまで経っても解除されない術式に疑問を覚えて下を見る。

 

 

「おいおい、アレ喰らって生きてるのかよ」

 

 

 ビックスローの視線の先。また十分に爆炎が晴れていない路地裏で、倒れ伏すグレイを庇う様、カイトが両腕を広げて先ほどの魔力弾を受け止めていた。

 いつもならば回復する筈の傷は術式の影響で回復されず、焦げた様に黒くなったカイト。その身体は倒れていないとはいえ、風が吹けば倒れてしまいそうなほどの重傷。止めは刺さなかったが、結果は上々。嬉々としてもう一度集中砲火の餌食にしようとした瞬間、ゆっくりと顔を上げたカイトと目が合う。

 

 

「混ざったよ♪」

 

 

 一瞬で自身がまな板の鯉である事を理解させられる様な、皮膚が粟立つ様なゾッとする笑み。無意識の内に身体が震え、呼吸が荒くなる。

 ありえない、と頭を振って、恐怖心を外に追いやる。相手は既に死に体。怯える必要はないのだと言い聞かせて、人形たちに指示を出す。

 

 

「ラインフォーメーション‼︎」

 

 

 人形たちが一列に並び、そして斬撃のような魔力弾を放つ技。しかし、人形が列を組んだ瞬間、横合いから飛び出した黒い犬が人形たちを食い破る。大型犬共言うべきその犬は気付けば2匹、そして視線を動かせば3匹。気づけば5匹にと増えて、術式の外からビックスローを睨む。

 

 

災厄影(カラミティ・シャドー)ーーー影犬(ブラックドック)

 

 

 それは影で作られた魔法。普段ののっぺりとした単調な影魔法とは違い、生物の息づかいを感じさせる造形。魔法で作られたものだと知らなければ野犬とも見間違えるそれらはビックスローが新たにこさえた人形を発見するや否や破壊する。

 高度を保とうが壁を跳躍して破壊され、ならばと攻撃しようにも獣ならではの俊敏な動きを捉える事ができず、逆に破壊されてしまう。

 

 

「さぁ、ビックスロー。君はあと何度魂を憑依させられる?10?20?100?いくらでも憑依させるといい。全て壊してあげるよ♪」

 

 

 両手を広げて、さながら舞台役者のように身振り手振りでビックスローを挑発するカイト。その指揮に合わせるように、影犬たちが遠吠えするかのように吠える。

 その光景に思わず身体が震えるが、それを抑えて必死に虚勢だと自身に言い聞かせる。確かに、カイトは魔力を取り戻したのだろう。けれど、この場は魔法が使えない術式の中。当然、外の影犬たちも中には入って来られない。肉弾戦はカイトの方に部があるが、満身創痍の中ビックスローのいるところまで登って来られることはできないだろう。

 

 カイトの気迫に飲まれそうになったが、後は持久戦に持ち込めばビックスローの勝利は確実。そう至ったからこそビックスローの余裕の表情は持ち直される。

 

 

「ひゃはははは‼︎そんな状態でオレに勝つつもりかヨ‼︎ベイビーたちは出せねェけど、オメェももう限界だろ?」

 

 

「カッカッカ♪ ああ、そうだね。俺も限界さ。けれど、君もフェアリーテイルなら知ってるだろう?」

 

 

 だらりと、首から肩にかけて力を抜き、ゆらりと立ちつくすカイト。そしてゆっくりと片足を後ろに下げて、上半身を低く低く構える。まるで狩りをする獣のような動きにビックスローは呑まれかけるが、あり得ないと否定する。否定しなければ、恐怖でどうにかなりそうなのだ。

 

 

フェアリーテイル(俺たち)にとって、限界は越えるもの。そうだろう♪」

 

 

 そしてカイトが脚に力を込めた瞬間、その脚に纏っていた封印が解かれる。吸血鬼としての本来の脚力を戻したカイトの身体は地面を抉ると、一瞬にしてビックスローの眼前にまで移動する。

 唖然とするビックスローに勢いそのまま肘鉄をぶつけ、地面へと押し倒す。落ちた先のゴミ箱を破壊して、砂煙が舞う中ケホケホと咳をしながらカイトが立ち上がる。足元には気絶したビックスロー。そして勝敗が決したお陰で術式が解除される。

 

 

「カッカッカ♪うーん、魔力がみなぎるってのはやっぱりいいねぇ♪」

 

 

 術式が解除されたお陰ですぐさま身体中の傷が回復されるが、それでも有り余る魔力にご満悦のカイト。伸びをひとつして身体をほぐすと倒れたビックスローとグレイの様子を見る。どちらも息はあり、傷もそこまで酷くはない。この調子ならば少し休ませておけば大丈夫だろうと見切りをつけて2人を壁際に寝かせる。

 

 

「さて、これからどうしたものかねぇ」

 

 

 ビックスローにラクサスの居場所を聞く予定だったのだが、流石に気絶した状態で聞き出すことは不可能。歩いて探すのもいいかもしれないが、時間制限がある以上悠長なことは言ってられない。

 そしてふと、途方に暮れて空を見上げた瞬間、目に入ったのは等間隔に並べられた黒い球。マグノリアの街を取り囲むように浮かぶそれを見た瞬間、カイトは近場の建物の屋上によじ登り、足元から影犬を繰り出す。術者の指示を受けた影犬たちはすぐさま街の至る所に分散し、カイトの目となり耳となる。

 

 無論、はじめての試みであるため、影犬の魔法に全神経を集中させなければ維持ができない。街中を影犬たちが駆け回り、流れてくる情報量の多さに頭痛を覚えながら暫く、ようやくカイトは目的地を探りあてた。

 

 

「まったく、あんのおバカ。神鳴殿(かみなりでん)まで持ち出したらダメでしょうに………」

 

 

 愚痴をひとつ零し、カイトは屋根伝いに駆け出す。これは本格的にまずいかもしれないと冷や汗を流し、目的地であるマグノリア大聖堂へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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