FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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推奨挿入曲 : 麻痺/yama



VS.ラクサス

 

 

「やぁ、ラクサス♪元気そうだね」

 

 

 これ見よがしに舌打ちひとつ、目の前に現れたカイトの脇を通り抜けようとすれば、当の本人は先回りしてまたラクサスの正面に立つ。

 つい先ほどラクサスは祖父であるマカロフと喧嘩しており、虫の居所が悪かった。そうでなくとも、何を成しても周囲からは流石はマカロフの孫という評価しかもらえない現状に苛立ちを募らせており、ギルド内でも素行が目立つようになってきていた。

 周囲から人が避けるようになっているのにも関わらず、カイトは初めの頃よりは幾分かマシになった胡散臭い笑みを貼り付けてラクサスの行先の邪魔をする。

 

 

「カッカッカ♪どこへ行く気だい、ラクサス?もうすぐファンタジアだよ?」

 

 

「チッ、うざってぇ」

 

 

「そう邪険しないでおくれよ♪さぁ、共に準備を進めようじゃないか♪」

 

 

 さながら舞台役者のように、大袈裟な身振り手振りで手を差し伸ばすカイト。パン、と乾いた音を立ててその手を弾くと、ラクサスは胸ぐらを掴み上げる。

 

 

「うぜぇって言ってンだよ‼︎ファンタジアなんざ知ったことじゃねぇ‼︎勝手にやってろ‼︎」

 

 

 そう怒鳴ってやれば、一瞬きょとんとした表情を浮かべ、そして察しがついたように掌の上に拳を置くカイト。

 

 

「あー、なるほど。今年は参加しないんだね♪」

 

 

「ッ‼︎」

 

 

 どこか抜けたような発言にラクサスの怒りは臨界点を超え、感情のままに拳を振るう。机を壊し、床に投げ出されたカイトを一瞥すると、不機嫌さを隠さずに歩き出すラクサス。しかし、数歩歩いた所で突如肩を掴まれた。誰の仕業かと反射的にそちらを振り向けば、いつの間にかカイトが拳を振り上げてそこにいた。

 驚きに声をあげる暇なく、カイトの拳がラクサスの頬に刺さり、同じように床に投げ出される。

 

 

「まったく。なんで殴られたのかわからないけど、一発には一発だよね♪」

 

 

「ッ‼︎てめぇ‼︎」

 

 

 すぐさま立ち上がると、お返しとばかりに拳を返す。そして追撃を喰らわせる前に、死角から伸びた影の拳がラクサスを殴る。

 

 

「カッカッカ♪君とおてて繋いで仲良く、なんてものを期待するだけ無駄だったねぇ♪思えば、君に手を握ってもらったことなんてないんだった♪」

 

 

「あ゛ぁ⁉︎上等だ‼︎オレの方が上だって事、わからせてやる‼︎」

 

 

 そこからは乱闘騒ぎの始まり。途中からは大人も混じえた大乱闘へと変わり、最終的にマカロフの仲裁が入る結末に。乱闘の中心とも言える2人は仲良く罰を言い渡される結末に。

 罰を与えられたことに憤りは感じている。けれど、マカロフと喧嘩した時よりもどこかスッキリとしたものがあり、それが何なのかわからず、同じように街のゴミ拾いに精を出すカイトを横目に見て舌打ちを溢す。

 まるで湧き上がった親愛感を打ち消すように。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 マグノリア大聖堂にて

 

 

 BOFも残り10分を切り、終盤が見えて来た頃。ラクサスはそこにいた。

 

 雷神衆も全員倒され残るはラクサスのみだと言うのにも関わらず、彼に焦りの色はない。確かに、エバーグリーンが倒されて人質は解放されたが、それは神鳴殿で対応することにより街全体を人質にすることができた。

 

 時間が経てば雷の魔力が込められた魔水晶(ラクリマ)は、それを思う存分周囲に放出する仕組みとなっており、破壊しようものならば対象に蓄えていた魔力を浴びせる生体リンク魔法のおまけ付き。ひとつでも破壊しようものならば、重症は免れない。

 

 それによってBOFを継続することができているのはいいが、ラクサスはひとつ不可解なことがあった。

 それはギルドマスターであるマカロフが何の反応も見せていないのだ。流石にそろそろ何かしらのアクションを起こすだろうと予想していただけに拍子抜け。それだけエルザやカイト、ミストガンを信頼しているということなのかもしれないが。

 

 

「降参する気はねぇってか………。相変わらずの頑固ジジィめ」

 

 

 呟きひとつ零すと、後ろから聞こえた足音に振り返る。

 

 

「来たか」

 

 

 そこにいたのは5本の杖を背中に携えた、覆面の男ミストガン。目元しか見えないため感情は読めないが、少なくとも降参を告げに来た使者という訳ではないだろう。

 

 

「まさかお前がこのゲームに参加するとは思ってもなかったぜ………いい加減てめぇも出てきたらどうなんだ?」

 

 

 ラクサスが向けた視線の先。ミストガンとは反対方向の影が一瞬揺らいだかと思うと、そこから影が盛り上がりカイトが姿を表す。いつものように飄々とした、内心をひた隠しにする笑みを浮かべて。

 

 

「おやおや、バレちゃったか♪さてさて、フェアリーテイル最強候補のミストガンに、君の手の内を知り尽くしてる俺。降参して神鳴殿を解除してくれると嬉しいんだけどねぇ?」

 

 

「ハッ!とうとうてめぇの脳みそもボケたか?」

 

 

「だよねぇ♪でも、流石に同時に相手することはきびしいんじゃないかな?」

 

 

「テメェらが束になろうが、オレには敵わねぇよ。フェアリーテイル最強はオレだ」

 

 

「それはまた大きく出たねぇ。俺としてはギルダーツを推すけど、ミストガン。君はどうだい?」

 

 

「興味はないが、私もギルダーツを推そう」

 

 

「あいつはダメだ、帰って来ねぇ。同じくエルザもいい線はいってるがまだ弱い」

 

 

「エルザが弱い?とんだ節穴だな、お前の目は」

 

 

 ラクサスの発言を鼻で笑うミストガンに、両手に混沌ノ鎧を纏うカイト。それを見てラクサスも両手に雷を纏う。

 

 

「さて、雁首揃えて和気藹々。このまま大団円といきたいけれど、そうはいかないよね?」

 

 

「ほざいてろ、道化。いや………吸血鬼(ヴァンパイア)って呼んだ方がいいか?」

 

 

 ラクサスの言葉に一瞬目を見開き、そして観念したかのようにため息を溢す。しかし、その瞳はラクサスの背後にいる何かを睨み付けるように、薄く細められていた。

 

 

「………誰から聞いたのかな?」

 

 

「ハッ!化け物が一丁前に怒ってンのかよ。滑稽だな。テメェもそう思うだろう?なぁ、ミストガン。………いや、アナザーーーー」

 

 

 そう言いかけた瞬間、それ以上の言葉は許さないとミストガンが杖を張り、カイトが合わせるように腕を払い、ラクサスがそれらを迎撃する。衝撃波は周囲を襲い、カルディア大聖堂のガラス全てを破壊。キラキラと破片が舞う中、三者三様に睨み合う。

 

 

「後悔するぞ、ラクサス。お前は未だかつて見た事のない魔法を見ることになる」

 

 

「2対1が卑怯だとは言わないでおくれよ?」

 

 

「構うか、来い。格の違いを見せてやる」

 

 

 その瞬間、我先にと踊り出したのはミストガン。背中に携えた5本の杖を扇状に広げ魔法を発動する。

 

 

摩天楼(まてんろう)

 

 

 それはほんの一瞬の出来事。床が突然唸りを上げるようにのたうったかと思うと、光が溢れて出しカルディア大聖堂が内側から爆破された。爆破の衝撃で打ち上げられたラクサスは、まさか一撃で大聖堂を破壊するような魔法を放つとは思っておらず動揺を隠せないでいた。

 そして上空から感じる殺気に振り返れば、空を割って這い出してくる見た事のない化け物。逃げようにもいつのまにか身体にはいくつものベルトが巻かれており、身動きひとつとれはしない。

 

 

「なんだこの魔法は‼︎⁉︎」

 

 

 見た事のない、あり得ない光景に絶叫し、そしてその場にあるもの全ての動きが止まる。続いて聞こえるのはガラスを叩き割ったような音とラクサスの嘲笑。

 

 

「ははははははは‼︎くだらねえなァ‼︎こんな幻覚でオレをどうにかできるかと思ったか⁉︎ミストガン⁉︎」

 

 

 そう。先程の起こった事はすべて幻覚。本来であれば一瞬で決着をつける魔法であるが、実力の近いラクサスには通用しない。そのまま反撃に転じようとするラクサスに、上空から魔法を腕に纏うカイトが待ったをかける。

 

 

混沌ノ(カオス)ーーー‼︎」

 

 

「読めてンだよ‼︎」

 

 

 しかし、それを読んでいたラクサスは振り下ろされた魔法を躱すと、その身体に拳を打ち込む。くの字になったカイトの背中を追撃を喰らわせようとして、突如としてカイトの身体が無数の黒い蝶に変わる。

 

 

災厄影(カラミティ・シャドー)ーーー悪魔蝶(グリム・バタフライ)‼︎」

 

 

 黒い蝶が怪しく光出したかと思えば爆発。ひとつひとつの爆発は小さくとも、数が揃えば大爆発となんら変わりない。寸前のところで雷のような速度で躱すラクサスだが、内心の冷や汗とは裏腹に笑みを凶悪に深める。

 

 そして柱のひとつから覗くカイトの姿を発見した。しかし、すぐに向かう様な真似はしない。明らかなブラフ、見えすいた詐欺。つい先程騙されたばかりであるから、何を仕掛けてくるのかつい身構えてしまったのだ。

 

 

「眠れ。五重魔法陣、御神楽(みかぐら)‼︎」

 

 

 ラクサスの頭上に展開された五枚の魔法陣。最初の一枚から放たれた魔力が次の魔法陣を通過する事に威力を増し、最大威力となる五枚目を通過した魔力がラクサスに直撃した。

 完全に不意を突いた、高威力の一撃。衝撃で舞う煙と暴風から顔を庇いながら2人は行く末を見守る。そしてそれらが落ち着くよりも早く、中心部から稲妻のような速度で飛んできたラクサスが柱に隠れていたカイトに膝の一撃を喰らわせた。

 

 

「はははっ‼︎どうしたよ、カイト‼︎オレがあの程度でくたばるわけねえだろォが‼︎」

 

 

「ぐぇっ‼︎」

 

 

 ラクサスの膝が腹部にめり込み、口から血を吐く。

 魔力が馴染み、魔法を使えるようになったカイトではあるが、それに伴い濃くなった吸血鬼としての血がこの場では枷となっていた。言うまでもなく、悪魔と教会の組み合わせなど最悪であり、純正な吸血鬼ならば近づくことさえできない。前までは足を踏み入れても気だるさを覚える程度のカイトだったが、現在はまるで手足にいくつもの鉄球をぶら下げているかのような倦怠感に見舞われていた。

 

 

(ったく。狙ったワケじゃないだろうけど、厄介なフィールドを用意してくれたものだよ)

 

 

 カイトの正体が人外だと言うことを知っていても、肝心の内容までは知らない。例え弱点を知っていたとしても、敢えてそこを狙わず、自身の力のみで勝利をもぎ取りにいく。ラクサスとはそういう人間なのだ。

 

 

「ッ‼︎ カイト‼︎」

 

 

 ミストガンが助けるように杖のひとつから魔力弾をラクサスに向ける。しかし、呆気なく躱されるどころかカイトを盾にして防いだのだ。

 動揺するミストガンに向けてカイトを投げると、2人して教会の床に転がる。

 

 

「イツツ……ミストガン、無事かい?」

 

 

「くっ……ああ」

 

 

 素早く立ち上がる2人だが、回復するカイトとは違い脇腹を抑えて立ち上がるミストガン。どうやら痛めたらしい。

 

 

(これも原因のひとつだねぇ……)

 

 

 そも、支援や搦手を得意とする2人。正面切って殴り合いなど向いていないのだ。そして互いに同じギルドの仲間ではあるが、精々が顔見知り程度。何ができて何ができないのかが互いにわからないから連携もとれやしない。

 せめて相方がエルザならば、と内心口を零していれば、突然教会の出入り口からふたつの影が現れる。

 

 

「「ラクサス‼︎」」

 

 

 反射的にそちらに視線を向ければ、そこにいたのはエルザとナツ。初めの衝突が合図となり、街を駆け回っていた2人が駆けつけたのだ。

 そしてエルザの姿を確認したミストガンが視線を反らす。それがいけなかった。

 

 

「ハッハア‼︎」

 

 

 ラクサスの手から放たれた一筋の雷。雷が直撃した覆面が焼かれて、その下の素顔が晒された瞬間、エルザの呼吸が止まる。

 

 

「ジェラール………」

 

 

 楽園の塔で散ったはずの、幼き頃苦楽を共にしたかつての友がそこにいた。

 

 

「お?知ってる顔だったのか?」

 

 

「カッカッカ♪どういうことかな?知ってるんだろう、ラクサス?」

 

 

「言ったはずだぜ。オレに勝てたら教えてやるってな」

 

 

「ああ、そうかい‼︎」

 

 

 指をひとつ鳴らして、周囲に展開した魔法陣を発動させる。確かに、ミストガンの正体がジェラールだったのは驚いた。けれど、カイトはすぐさま他人の空似だと察していた。姿形はふり二つ、けれどミストガンからは中身(魔力)が感じられない。所持系(ホルダーけい)魔導師は確かに道具を用いて魔法を扱うが、それでも術者の魔力が無ければ発動は不可能。

 

 

千影万雷(サウザンド・ナックル)‼︎」

 

 

 今は兎も角、ラクサスの方を優先。注意が多少削がれた隙に発動した魔法の数々。四方八方から迫る影の拳たちをラクサスは危なげもなく回避する。

 そして伸ばされた影の間に出来た一瞬の空白を狙い、ラクサスは雷速の速さでカイトに迫る。しかし、カイトは薄く笑う。むしろ待ってましたとばかりに嘲笑う。

 

 

「オレと勝負だ、ラクサス‼︎」

 

 

 横合いから飛び出して炎を纏った脚をラクサスにぶつけたのはナツ。ナツもミストガンの素顔に驚きはしたが、しかしエルザよりも動揺は少なく、かつややこしい事よりもラクサスを優先せねばならないと直感していたのだ。

 視界が悪い中での不意打ち。けれど、ラクサスはナツの一撃を腕一本で防ぐとお返しとばかりに手のひらから雷を放つ。

 

 

「うせろ、ザコが‼︎」

 

 

「させないよ」

 

 

 瞬間、ラクサスの足元から飛び出した影が標準をずらし、攻撃を空へと向ける。忌々しいとばかりに舌打ちひとつ、そしてナツから放たれた拳を躱しながら後退する。

 

 

「だぁー‼︎カイト、邪魔すんじゃねえ‼︎」

 

 

「カッカッカ♪先に戦ってたのはこっちなんだけどねぇ♪ぷげっ⁉︎」

 

 

 ナツに対してそんな軽口を返すカイト。そしてそのカイトの頭を足蹴にして、放心から我に返ったエルザが剣を振るう。それを躱して相対するラクサスにエルザは問う。

 

 

「あの空に浮かんでいるものはなんだ、ラクサス?」

 

 

「神鳴殿………聞いたことくらいのあるだろう?」

 

 

「貴様‼︎」

 

 

 ラクサスが街を破壊するつもりだと理解したエルザの怒りの前蹴り。それを易々と受け止めて、涼しげな表情でラクサスは告げる。神鳴殿発動まで残り2分だと。

 

 

「カイト‼︎」

 

 

「あー、はいはい………と言いたいとこだけど、流石に一人じゃ厳しいよ」

 

 

 エルザの簡素な呼びかけに全てを察したカイトだが、一人では不可能だと告げる。ただでさえ最悪なコンディションの中、無理矢理魔法を行使している現状。少なくとも残り2分で空中に浮かぶいくつもの神鳴殿を破壊するのは無理である。

 

 そうでなくとも、神鳴殿には生体リンク魔法というものが付与されている。これは術者の傷を対象にも負わせる魔法であり、神鳴殿の場合破壊された瞬間、貯蔵してある雷の魔力が対象に降り注ぐ仕掛けとなっているのだ。

 

 

「ハッ!化物にさえ手出しできねえ神鳴殿が300個。どうするつもりだ?」

 

 

「くっ‼︎」

 

 

 ラクサスの雷に飲まれるエルザ。けれど直前に身に纏うのは雷系の魔法を半減させる雷帝の鎧。無傷のまま後退し、ラクサスを睨むエルザだが、痺れを切らしたナツが待ったをかける。

 

 

「なにラクサスとやる気満々になってやがる‼︎こいつはオレがやるんだ‼︎」

 

 

 振り返ったエルザがナツを見据え、そして微笑む。

 

 

「信じていいんだな?」

 

 

「へ?」

 

 

「カイト。ついて来い」

 

 

「ん?ああ、なるほどね。ナツ、後はよろしく」

 

 

「オ、オイ‼︎」

 

 

 突然の事に困惑するナツだが、外に駆け出す2人を見て察する。2人は神鳴殿を止めるつもりなのだと。それはラクサスも察しており、できるはずもないと嘲笑する。

 

 

「ははははっ‼︎無駄だァ‼︎一つ壊すだけでも生死にかかわる‼︎時間ももう無い‼︎」

 

 

「全て同時に破壊する」

 

 

「不可能だ‼︎ できたとしても確実に死ぬ‼︎」

 

 

「おや?俺たちの心配してくれるだなんて、随分優しいんだねぇ♪」

 

 

 そう言って笑うカイトの言葉に上手く返せず、言葉を詰まらせるラクサス。そしてゲームのルールを潰されては堪らないと足を踏み出した瞬間、ナツの咆哮がそれを拒む。

 それを尻目に2人は人気のない通りに入り、エルザは剣を、カイトは影で出来た杭をそれぞれ展開する。

 

「カッカッカ♪にしても、無茶なことを思いつくものだねぇ♪」

 

 

「無茶ではないさ。私とお前ならばいける筈だ」

 

 

「そりゃまた厚い信頼なことで♪」

 

 

 しかし、軽口とは裏腹にそれぞれ展開できたのは2人合わせて200。これ以上増やそうにもエルザは魔力が、カイトは精神的に限界が近づいていた。さらに時間も残り1分を切ってしまっている。

 最早これまでかと諦めがエルザの脳裏を掠めた瞬間、それを押し出すように脳内に声が響く。

 

 

『おい‼︎みんな聴こえるか⁉︎一大事だ‼︎空を見ろ‼︎』

 

 

 頭に直接響く声の主はギルドメンバーであるウォーレン。その魔法は離れた相手とも会話のできる念話(テレパシー)。声は街にいるフェアリーテイル全員に届いており、全員が空を見上げる。

 

 

『あの空に浮かんでる物をありったけの魔力で破壊するんだ‼︎ひとつ残らずだ‼︎あれはこの街を襲うラクサスの魔法だ‼︎時間がねえ‼︎全員でやるんだ‼︎』

 

 

「ウォーレン。おまえ、なぜ神鳴殿のことを……」

 

 

『その声はエルザか⁉︎無事だったか‼︎』

 

 

「グレイ⁉︎そうか、おまえが……」

 

 

 石になっていたはずのエルザが復活していたとわかれば、そのほかのメンツも無事だということが判明し、声の届いている全員が活気づく。

 それはともかくとりあえずは神鳴殿の破壊を、と促すウォーレンに、街中で負けたマックスが毒を吐けば釣られて出るわ出るわの喧嘩腰。それを聴きながらカイトは笑う。可笑しくてしょうがないと涙を流して笑う。

 

 そも、カイトからすれば街の被害などぶっちゃけどうでもいいのだ。ただ、それによってフェアリーテイルの汚名と借金が増えるのを阻止したいだけである。

 人間からすれば危機的状況だということは理解している。だと言うのにフェアリーテイルのメンバーは、カイトの愛すべき人間たちは不満を溢しつつも変わりない。街のため、友のため、ギルドのため。それぞれ違いはあるが誰一人として破壊を拒もうとするものはいない。それが可笑しくて、とても愛おしいのだ。

 

 

「カッカッカ♪さてさて、空を見上げる皆々様方。喧嘩はさておき、狙うは空に浮かぶ神鳴殿。ひとつでも取り流せば被害は甚大。見事破壊できれば拍手喝采といこうじゃないか♪」

 

 

「おい、カイト」

 

 

「止まらないよ、エルザ。こんな状況で手を貸さないメンバーは、うちにはいないさ」

 

 

 そうカイトが答えれば、確かにその通りだとため息を溢す。そして、剣を高々と掲げて合図を上げる。

 

 

「北の200個は私とカイトがやる‼︎皆は南を中心に全部撃破‼︎」

 

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎」」」

 

 

 エルザの合図と共に空に向けて放たれた魔法の数々。一瞬の静寂、次いで街を囲む神鳴殿が全て破壊された。キラキラと舞う破片が月明かりに反射して、まるで花火のようにも見える幻想的な景色の中、撃ち落とした面々は神鳴殿の反撃に沈んでいた。

 

 

「カッカッカ♪」

 

 

 ウォーレンの念話はまだ繋がっており、先ほどの喧嘩は何処へやら。皆健闘を讃えあい、笑い合っている。それがまた可笑しくてカイトも笑う。

 

 

(さてさて、これであの意地っ張りも引けばいいんだけどねぇ)

 

 

 まぁ、それはないかとくつくつ喉奥で笑い、ゆっくりと再生する身体を起こす。今回の件、最早マカロフに懇願してもおもい処罰は免れない。良くてギルド破門、最悪犯罪者として王国騎士団に突き出されるだろう。

 幼い頃から付き合いのある人間がいなくなる。それを考えると胸に空洞が空いたかのような悲しさがカイトを襲う。けれど、2度と会えないわけではない。せめて、この幕の最後には緩やかな終わりをと思いを馳せる。

 

 そして、教会方面から迫る光に目を向ける。

 術者が敵とみなす者を攻撃対象とする超魔法、妖精の法律(フェアリーロウ)。フェアリーテイルが誇る三大魔法のうちのひとつであり、誰でも使えるわけではない。今のギルドを壊し、新たなギルドを作り上げようとするラクサスが使うとは皮肉が効いてる。

 特に抵抗を見せず、光を受け入れ、疲労から意識を手放すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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