FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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筆が乗ったので連日投稿
とはいえ、今回短め

また、今回からサブタイトルを○○○-①、②へと変更



天狼島編
天狼島-①


 

 

「……と言うわけなんですよ、ミラさん‼︎」

 

 

 リサーナの帰還から少しして。お祭り気分もようやく落ち着いてきたこの頃、ギルドのカウンターに座るルーシィが昨夜あったことをミラジェーンに報告していた。

 

 曰く、いつの間にか部屋にいたカナが突然ギルドを辞めようかと悩んでいるのだとか。

 

 確かに一大事やもしれないが、この時期になると決まってカナはそう言い出す。理由は誰も知らず、深掘りしようともしない。きっといつか話してくれるだろうと、皆カナの気持ちに整理がつくまで待っているのだ。

 だからこそ、ミラジェーンは大丈夫だと告げる。どんなことがあろうと、彼女は仲間なのだから。

 

 

「ミラちゃーん、そろそろヘルプ頼むよ♪」

 

 

 カイトの呑気な声とは裏腹に、バーカウンターの隣、依頼受注用のカウンターでは珍しく人で溢れていた。受注の有無は目で確認し、当人に見合った案件かを判断せねばならず、この件に関してはカイトも手作業で行う。

 

 

「仕事仕事ォー‼︎」

 

「あいさー‼︎」

 

「ただいまァ‼︎次ィ‼︎」

 

「受注早くしろや‼︎」

 

「どけ、こいつァオレんだ‼︎」

 

「ンなの知るか‼︎」

 

 

 クエストボードに貼られた依頼を奪い合い、依頼に出かけて帰ってきたかと思えばすぐさま別の仕事へ。チームを組んでいるはずのジェットとドロイでさえ、この時期ばかりは別々に仕事をこなしていた。

 

 鬼気迫る勢いで群がる面々を流石に捌ききれず、やむなく助けを求めるカイト。ミラジェーンがそれに了承すればルーシィを押しのけるように群がり始める。

 

 

「何事なの⁉︎」

 

「直にわかるわよ」

 

 

 あまりの変わり様に危機感を覚え、カウンターの端の方に避難するルーシィ。ギルド全体が慌ただしいかと言われればそうでもなく、離れたテーブルではウェンディ、シャルル、リサーナが談笑を。テーブルや椅子が撤去された空間ではパンサーリリーとエルザによる剣の鍛錬が。

 

 仕事に励む人もいれば全くいつも通りの人もいて何が何だかわからず、ミラジェーンやカイトに聞いても明日になったらわかる、と言わらて答えてもらえず、悶々とすること一夜明け。

 

 その日ギルドにはほとんどのメンバーが集まっていた。事情を知るものは今か今かと待ち侘びて、知らないものは何が起こるのかと不思議そうに辺りを見回す。

 

 

「やっと秘密がわかる」

 

「ジュビア、ドキドキします。……グレイ様を見てると」

 

「あんたもう帰れば?」

 

 

 いつも通りのジュビアに呆れるルーシィ。その時だった。ギルドの正面、壇上に掛けられていたカーテンが勢いよく開き、マカロフ筆頭にエルザ、ミラジェーン、カイト、ギルダーツの5人が現れた。

 

 

「マスター‼︎」

 

「待ってました〜‼︎」

 

「早く発表してくれー‼︎」

 

「今年は誰なんだ⁉︎」

 

 

 騒がしい野次もマカロフの咳払いひとつで静まり返る。それだけ皆このイベントに注視しているのだ。

 

 

「フェアリーテイル古くからのしきたりにより、これよりーーー」

 

 

 

「S級魔導士昇格試験出場者を発表する」

 

 

 

 ギルドが割れんばかりの歓声に包まれるこのイベント。喜ぶのも無理もない。なにせ、この試験に合格すればその名の通りS級魔導士へと昇格できるのだから。

 

 S級魔導士ともなれば受けられる依頼の幅も報酬も跳ね上がり、個人の知名度も知られる。エルザやミラジェーンが良い例だろう。無論、ギルド公認の実力者という面もあり、ナツを始めとした面々は早く昇格して肩を並べたいとウズウズしている。

 

 一度受けたらニ度と受ける事はできないという事はないが、試験は毎年違うため予想はつかず、また内容は一貫してハードなため辞退する例も。

 ここ数日、ギルド内が慌ただしかったのも、全てこの日のため。

 

 

「各々の力、心、魂………ワシはこの一年見極めてきた。参加者は8名」

 

 

 ナツ・ドラグニル

 

 グレイ・フルバスター

 

 ジュビア・ロクサー

 

 エルフマン

 

 カナ・アルベローナ

 

 フリード・ジャスティン

 

 レビィ・マクガーデン

 

 メスト・グライダー

 

 

 以上8名がS級魔導士への昇格権を得た。選ばれなかった者は嘆き落ち込み、選ばれた者は恥じぬ様戦意を燃え上がらせる。

 試験は一週間後、選出された者以外とペアを組み試験に臨む様言い渡されその場は解散となった。

 裏方に戻ったマカロフ筆頭5人は試験内容の最終調整をせねばならない。

 

 

「さて………改めて言っておくが、お主ら。ちゃんと手加減はするんじゃぞ」

 

「わかってるよ、おじいちゃん♪しっかしまぁ、今年は多いねぇ」

 

 

 手元の資料をパラパラとめくりながらカイトは呟く。今回の試験、S級魔導士は道すがら妨害するように言い渡されているのだ。実力で言えば参加者よりも上のため手加減を言い渡されるが、S級には不十分だと判断された暁にはその限りではない。

 その合格ラインは各々が決めて良しとされているため、S級魔導士たちも力がはいる。

 

 

「ナツはハッピーを選ぶとして………他のみんなは誰を選ぶんだろうねぇ」

 

「誰が来ようと構わん。全力で相対するだけだ」

 

「エルザ、手加減の意味知ってる?」

 

「エルザのルートはデスゾーンね」

 

「ミラちゃん、君もエルザに負けず劣らず手加減知らずだからね?」

 

「よっしゃ!S級魔導士昇格祝いだ!カイト、酒とつまみ!」

 

「気が早すぎるよ、ギルダーツ。あと、そろそろツケの期限が近いけど大丈夫なのかい?」

 

「大丈夫じゃろうか………」

 

 

 あまりにも自由なS級魔導士たちに肩を落とすマカロフ。一次審査だけとはいえ、任せて大丈夫だろうかと一抹の不安を覚える。今更になって後悔するがもう遅い。試験まで残り1週間しかないのだ。内容を変更する時間はない。

 

 

 各々の思惑、願いが渦巻き1週間後。

 

 

 海を挟んだ孤島、フェアリーテイルの聖地である天狼島。島の中央から天を衝くように伸びる大樹が特徴的なこの島で今回の試験は行われる。

 一次審査は八つのルートの内ひとつを選び、その先に待ち受ける候補者同士の対決、もしくはS級魔導士との対決を抜けた者が二次審査へと進むことができるのだ。

 

 

 そのうちのひとつ、割り振られたHルートにカイトはいた。既に移動による酔いは覚め、薄暗い洞窟の中いわに腰掛けて誰が来るのかを待ち侘びる。

 

 ペアはナツとハッピーは当然として、カナとルーシィ、フリードとビックスロー、ジュビアとリサーナ、エルフマンとエバーグリーン、メストとウェンディ、レビィとガジル、そして去年から約束していたというグレイとロキと、錚々たるメンツ。

 

 誰が来ても楽しそうだと両手を組んで伸びをすると徐に立ち上がる。そうして仄かな灯りが近づいてくると挑戦者の姿が現れる。

 

 

「ゲッ………テメェかよ」

 

「カッカッカ♪ご挨拶だねぇ、ガジル」

 

 

 ガジルを先頭に、その後ろに控えているレビィ。頭の少し上には実体化したlightの文字。レビィの魔法立体文字(ソリッドスクリプト)だ。あからさまに面倒な奴に当たったとゲンナリするガジルとは別に、レビィの表情は絶望に染まっていた。

 

 

「ケッ、まぁいい。テメェをさっさと倒して火竜(サラマンダー)たちを殴ってやらァ‼︎」

 

「待って、ガジル‼︎」

 

「カッカッカ♪もしかしてみくびられてる?」

 

 

 レビィの静止も聞かず、意気揚々と走り出すガジル。実際、ガジルはこの戦いは比較的に苦戦しないとタカを括っていた。カイトは確かにその手数の多さや何をするかわからない怪しさなど、敵にまわれば厄介だ。

 だが、エルザの例もあるように、速攻や策の通じない程の力押しで攻められたら後手に回るしかないのだと、そう判断していた。

 

 自身の鉄竜の鱗は生半可な攻撃は効かず、その硬さはそのまま攻撃力となる。己を形作る魔法を信頼してこその特攻は、しかし、足元から迫り上がる影に阻まれた。

 

 

「ウオッ⁉︎」

 

 

 足場が崩されるのではなく、足場そのものが持ち上がり、バランスを崩したガジル。そこ狙うように暗闇に紛れた蝶が殺到、そのまま爆発を起こす。だが、ガジルの予想通り攻撃そのものは大した事はなく痛痒にも感じない。爆煙に紛れて反撃を、と思ったところで視界を奪うほどの巨腕がガジルを対面の壁へと弾き飛ばした。

 

「ガッ‼︎」

 

「ガジル‼︎」

 

 

 慌ててかけよるレビィ。その渦中は不安や絶望でいっぱいだ。何せ、閉鎖空間でレビィたちが到着するまでの間、余裕を持って策を練る事のできたカイト。エルザやギルダーツでさえ躊躇するような状況で挑まなければならないのだ。

 

 

「カッカッカ♪どうしたんだい、レビィ。これは君たちの為に用意した劇だよ?主演が踊らなきゃ意味がない」

 

 

 背後に一対の影の巨腕を従えて、カイトは笑う。その姿はさながら悪魔のようで、滑稽な一人芝居のようでーーー

 

 

「さぁ、幕は開かれた。ジャンルは喜劇。題名は、そうだねぇ…………囚われの妖精と鉄竜、なんてのは安着すぎるかな?」

 

 

 ーーーまるで、御伽噺の勇者が挑む魔王のように、そう高らかに告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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