FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜 作:桜大好き野郎
推奨BGM:かくれんぼ/AliA
ラクサスとハデスの戦い。それは両者拮抗した戦いを繰り広げていたが年の功というべきか、ハデスの方が一枚上回っていた。しかしラクサスも負けてはおらず、足元に来るほどのダメージを受けながらも残る全魔力をナツへと譲渡。
ラクサスの雷を喰らい、炎と共に雷を纏う姿はまさしく雷炎竜。底上げされた魔力を全開に、皆の仇を討たんとハデスと戦うナツ。その破壊力は先ほどの比ではなく、炎の後に続く雷の追加攻撃にさしものハデスも後手に回らざるをえない。
「雷炎竜の咆哮ォ‼︎‼︎」
炎と雷が入り混じる咆哮はハデスを直撃し船の外壁を破壊するだけでは止まらず、その直線上の悉くを破壊せしめ仕舞いには島の反対方向まで突き抜ける威力。
後に残るのは直線上に抉れた破壊痕と、その上で大の字に倒れるハデス。そして魔力を使い果たし動けないナツ。動けないながらも安堵と歓喜に沸く面々に水を刺すように、倒れたはずのハデスが声をかける。
「大した若造どもだ。マカロフめ、まったく恐ろしいガキどもを育てたものだ」
ゆっくりと、だが確実に立ち上がるハデス。攻撃が効かなかったわけではない現にハデスの身体にはいくつもの傷が刻まれている。しかし、逆再生のように塞がり、治癒される姿はまさしく化け物。
それほどまでの一撃を受けても尚、魔力で編んだ悪魔の心臓の紋章の入ったマントを羽織る余裕を見せるハデスは間違いなく人外だ。
「悪魔の目、開眼。うぬらには特別に見せてしんぜよう」
眼帯で塞いでいたハデスの右目。それが開かれた刹那に溢れ出す、形容し難い魔力がハデスから湧き上がった。
「魔導の深淵。ここからはうぬらの想像を遥かに超える領域」
今までとは比べ物にならない程の質と量。あり得ないと、信じられないと周囲が絶望する中、カイトはどこか他人事のように絶望を覚えながらも納得した。
ハデスの身から溢れる魔力はハデス自身のものではなく、それこそ魔導の深淵と呼ばれる場所から引き出されているのだと当たりをつける。他よりも絶望が薄いのは一重に、それを扱った経験があるからだろう。
暴走した時の記憶は鮮明には思い出せないが、確かに感じたのだ。自身とは別の、異質な魔力が己の内から湧き上がるのを。それを引き出すことは不可能ではあるが、冷静に物事を見れる事はありがたい。
(人の身でアレに耐え切れるもは思えない。何か裏があるはず………)
少なくともこの場にはない何かを触媒にしており、間違いなくこの船の中にあるはずだとカイトは考えていた。距離が離れれば離れる程、そう言った物は効力が弱くなる性質があるのだ。
(こうなってくると、動力源が怪しいねぇ………)
船の心臓ともいえる動力源。それを触媒に魔力を送り出しているとなんとも腑に落ちるものに。探し出すにしても時間も魔力もなく、ハッピーたちの破壊工作が間に合うのを祈る他ない。
「ゼレフ書第四章十二節より、裏魔法・
左手を上に、右手を下に、弧を描くようにハデスが動かせば足元の瓦礫から産声を上げる悪魔たち。形はそれぞれ違えど、黒い肌膚に青い幾何学模様が入った姿はどれも同じ。驚いたことに魔法で作り出した人形ではなく、生命を生み出したのだ。
「深淵の魔力をもってすれば、土塊から悪魔をも生成できる。悪魔の踊り子にして裁判官、これぞ裏魔法」
一体一体が聖十魔導士に匹敵するほどの魔力量。それが見渡す限りいるのだから手に負えない。それらを殲滅するほどの魔力も、防ぎ切る体力も残っておらず、さしものカイトの脳裏に諦めの文字が過ぎる。だがーーー
「なんだ………こんな近くに仲間がいるじゃねーか」
魔力を使い果たし、動くことさえできないナツ。それを支えるように抱き抱えていたルーシィの腕を握りながら言葉を溢した。
「恐怖は悪ではない。それは己の弱さを知るという事だ」
それはこの島に来てのこと。一次試験でナツたちが選んだルートの先にいたギルダーツに言われた言葉だった。初めは圧倒的な力の差に折れたナツへの慰めの言葉だと思っていた。けれど、ここに来てそれは違うのだと悟った。
「弱さを知れば人は強くも優しくもなれる。オレたちは弱さを知ったんだ。だったら次はどうする?」
魔力不足に加え満身創痍だというのに、それでも立ち上がるのはなぜか。けれども、その姿を、言葉を聞いて素直に諦めを享受するなど以ての外。
「強くなれ‼︎立ち向かうんだ‼︎‼︎1人じゃ怖くてどうしようもないかもしれねーけど、オレたちはこんなに近くにいる。すぐ近くに仲間がいるんだ‼︎」
ナツに鼓舞されて、カイトは笑みを浮かべる。ああ、そうだ。自身は1人ではないのだと、頼れる仲間がすぐ近くにいるのだと、諦めと恐怖を打ち消すように笑う。
「今は恐る事はねえっ‼︎オレたちは1人じゃねえんだ‼︎」
「見上げた虚栄心だ。だが、それもここまで」
ハデスの腕が動き、悪魔たちが臨戦体制を整えるように前のめりになる。けれども傷だらけながらも立ち上がったフェアリーテイルに、恐れの心はない。
「行くぞォ‼︎‼︎」
「「うおおおおおおおおっ‼︎‼︎‼︎」」
ナツの掛け声を合図に、一斉に走り出す一同。何度も転けそうになりながらも、目指す先はハデスの元。
「残らぬ魔力で何ができるものか。踊れ、土塊の悪魔」
ハデスの合図を待ち侘びていたかのように、悪魔たちが攻撃を開始する。その身を捻り、管のように伸びての体当たり。単純ながらも、容易く地面を抉る攻撃は一撃でも受けてはならない。
無理が祟ったのだろう、その最中に転ぶナツ。両サイドを走っていたルーシィとウェンディがその手を掴むと視線だけで会話を。そしてタイミングを合わせてナツを前へと放り投げた。
その先にいるのはエルザとグレイ。2人はナツの存在を把握すると、飛んでくるナツと足裏を合わせて、思い切り蹴り飛ばす。
直線で飛ぶナツは格好の的なのだろう。ナツの標準を合わせて群がる悪魔たち。今ここで止められては終わりだ。先行していたカイトが飛んでくるナツに合わせて走り、腕を掴むと一回転。そのすぐそばを悪魔たちが通り過ぎると遠心力そのままナツを送り出す。
「全てを闇の底へ。日が沈む時だ、フェアリーテイル」
背後に控える悪魔はもういない。けれど、そんなものに頼らずともハデスは戦える。両手に集まる深淵の魔力。確実にナツを仕留められるまで引き寄せると、光と共に弾けた。
船の上部を全て破壊するほどの爆発。暴風と砂煙で視界が塞がれる中、一同が目にしたのはハデスに拳を入れるナツの姿。
「バ、バカな……‼︎裏魔法が効かぬのか⁉︎」
「うぉおぉぉぉおお‼︎」
「ありえん‼︎私の魔法は………‼︎」
ここで手は緩められないと、続け様に放たれるナツのアッパー。混乱の境地に至りながらも、ハデスはひとつの可能性を思い浮かべた。
(まさか………私の心臓を………‼︎⁉︎)
その予想通り、機関室にある船の動力源ーーー即ち、ハデスの心臓はハッピーたちの手によって破壊されていた。心臓が無ければ血液が送り出さられないように、ハデスへの魔力供給も潰える。それを証拠に、二撃目の準備をしていた悪魔たちも消えてしまった。
鬼のような反撃を繰り広げるナツ。それに抗う術を今のハデスは持ち得ない。
「あれ?」
「どうしたの、ウェンディ?」
ふと、船外に視線を移したウェンディ。それに釣られてそちらを向けば、夜の闇に紛れて見えづらいが、間違いなく七眷属のアスマによって倒された天狼樹が元通り荘厳に聳え立つ姿が。
その根本では同じく七眷属のひとり、ウルティアが時のアークを限界まで用いていたのだが、重要なのはそこではない。天狼樹が元に戻った今、加護もまた復活し、失われた魔力がそれぞれの元へ。
(私が………この私が………‼︎マカロフに負けるというのか‼︎⁉︎)
「否ーーーー‼︎‼︎」
一瞬の隙を突いたハデスの反撃。魔力の供給はなくなったとはいえ、なくなったわけではない。勝機はまだあるのだ。
「魔導を進む者の頂にたどり着く日までは、悪魔は眠らないがっ‼︎‼︎」
まずは小煩いナツを仕留めようと魔法を向けようとした瞬間、間に割って入ったのはラクサス。
「行けェ‼︎フェアリーテイル‼︎」
「契約まだだけど………開け‼︎磨羯宮の扉‼︎カプリコーン‼︎」
仲間たちが生み出した勝機を無駄にはしない。ルーシィが呼び出したのは執事服を着た山羊とも言うべき姿の星霊、カプリコーン。かつてルーシィの母親に仕え、ルーシィに継承される前に使用人だったゾルディオに身を乗っ取られていた過去がある。
だが、同じ星霊のレオの助けもあり、呪縛は解けて本来の持ち主の元へと戻ったのだ。
「うぬは………⁉︎」
「ゾルディオではありませんぞ。
その長い手足を活かした徒手格闘でハデスに着実にダメージを与えるカプリコーン。止めとばかりに鞭のようにしなる蹴りをお見舞いすると、今度はウェンディが躍り出る。
「見様見真似‼︎天竜の翼撃‼︎」
両腕に風を纏ったウェンディの一撃。風に巻き上げられ、回転しながら空中を飛ぶハデスに次なる攻撃が襲う。
「カッカッカ‼︎ 悪魔といえど、心臓潰されちゃ終わりだねぇ‼︎」
ハデスの吹き飛ぶ先で待ち構えていたカイト。その両腕に纏うのは黒と白の魔力ではなく、どこまでも深い漆黒。色も相まってのたうつ姿はまるで炎のようで、カイトの心象を表しているように見える。
「死ね、
羽を畳んで急降下。すれ違いざまに10本の鋭利な爪がハデスの身体を引き裂く。血を吐くハデスに隙は与えないと、カイトと変わるように飛び上がるのはグレイ。
「
造形されたのは2本の剣。十字に切り裂く軌跡に合わせて氷の追加攻撃がハデスを襲った。再び地に堕ちようとするハデスに合わせて、天輪の鎧に換装したエルザが剣を振るう。
「天輪・
目にも止まらぬ、五芒星を描くような斬撃。意識朦朧とするハデスに、炎と雷を纏うナツが引導を渡す。
「滅竜奥義・改‼︎
炎と雷の竜巻に飲まれたハデス。最後の声もあげること出来ず、白目を向いて倒れ伏す姿からは復活する様子はない。
「これがオレたちのギルドだぁっ‼︎‼︎」
ナツの勝鬨の声が朝焼けに染まる空に響くのであった。
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