FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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大魔闘演武−⑤

 

 

 大魔闘演武予選から一夜明け。

 

 巨大迷路を攻略した上位8チームが出揃い、いよいよ本戦となった。フェアリーテイルから出場した2チームも無事出場が決まりお祝いムードかと思いきや、そうもいかない。

 

 何せ出場予定であったウェンディが何者かに襲われたのだから。

 

 外傷は特にないが一度に大量の魔力を奪われた為に体力が落ちる魔力欠乏症へと陥ったウェンディ。フェアリーテイル顧問薬剤師のポーリシュカの助けもあり、安静にしておけば問題はない。

 

 

(さて、どうしたものかねぇ)

 

 

 件の下手人を許すつもりはない。フェアリーテイルを狙ったものかはわからないが、この妨害工作の犯人は魔導師であることは容易く推察がつく。だが、この広い王都、それも数多のギルドが集まる中探し出すことは不可能に近い。

 それにジェラールからの依頼もある。圧倒的に手が足りないのだ。

 

 

「それにしても、まさかねぇ」

 

 

 観客席から出場チームを眺める中、一位通過のチームが入場する。フェアリーテイルBチーム。メンバーはミラジェーン、ラクサス、ガジル、ジュビアに加え、なんとミストガンに扮したジェラール。

 なんでも外からの捜査には限界があり、内部からの捜査に踏み切る為だとか。バレた場合間違いなく出場停止を喰らう明確なルール違反。よくマカロフが許したものだと横目で流し見る。そして、その隣にいる人物を見て思わず二度見した。

 

 

「フレーフレー、フェアリーテイル♪」

 

 

 観客席の淵に腰掛けて無邪気に腕と脚を振る金髪の少女。頭の両脇に羽のようなモノが生えた彼女の名はメイビス。他でもないフェアリーテイルの創始者のひとりである。

 ギルドの紋章を持つ者以外見えないとはいえ、突然の登場に驚きを隠せない。

 

 

「………カイト、粗相のないようにな」

 

「カッカッカ♪なんで名指しなのかは聞かないでおくよ♪」

 

 

 観客席にいるメンバーの中で最も動きの読めない相手に釘を刺すマカロフはさておき。

 

 1日に各チーム1名を選出しそれぞれの種目に当たる競技パートと各チーム一対一で戦うバトルパートに別れそれが7日間続く今大会。順位により得られるポイントが代わり、最終的に最多ポイントを獲得していたチームの勝利である。

 出場チームを順位順に紹介すれば

 

 8位フェアリーテイルAチーム

 

 7位四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)

 

 6位人魚の踵(マーメイドヒール)

 

 5位青い天馬

 

 4位蛇姫の鱗

 

 3位大鴉の尻尾(レイヴンテイル)

 

 2位フェアリーテイルBチーム

 

 そして1位はここ数年で頭角を表し、大魔闘演武開催から今まで優勝続きの剣咬の虎(セイバートゥース)

 

 その人気は底知れず、登場しただけで歓声が鳴り止まない。5人の戦闘を歩くのはギルドの双竜の片割れスティング、そしてその後ろをローグが歩く。名声に違わぬ実力派ギルドの中でも五本指に入る実力者。その2人ともが滅竜魔道士と言うのだから嫌でも注目を浴びてしまう。

 

 だが、カイトの視線はそちらにではなく大鴉の尻尾へと。7年前までは闇ギルドと認定されていた、マカロフの実子であるイワンがマスターのギルド。今年に入り認可を貰い、厳しい審査を通過して正規ギルドへとなったようだが何か裏があると考えていた。

 

 現に仮面を被る大柄な人物の肩に乗る猿のような小動物。それが魔法でウェンディの顔に化けたかと思えば倒れた演技をするのだから。下手人は間違いなく彼らであり、そして意図は見えないがフェアリーテイルを狙った妨害を目的としているのは明らか。

 思わず拳に力が入るが、今この場で暴れては皆の努力が無駄になると無理やり気持ちに蓋をする。この怒りは時期がくれば過不足なくお見舞いするのだと、心を落ち着けるカイト。

 

 そうして始まる大会1日目。結果はーーー

 

 

「惨敗、だねぇ」

 

「まだ初日だ。巻き返しは効く」

 

 

 結果としてフェアリーテイルは2チーム並んで8位と7位。競技内での大鴉の尻尾の妨害もありこの順位になってしまった。現在は酒場の2階を貸切にしての反省会。

 といっても、そこに落ち込んだ雰囲気はない。むしろやる気に満ち溢れて騒ぎ出すほどだ。カイトの隣に座るラクサスにも焦りはなく、既に明日の試合に目を向けていた。

 

 それにしても、とカイトは考える。

 

 大鴉の尻尾のフェアリーテイルを狙った妨害は確かに厄介。マカロフはフェアリーテイルの名声を更に貶めるためだと言っていたが、既に嘲笑の対象になっているギルドへの攻撃としては弱い。何か別の目的があるはずだ。

 

 そして、更に厄介なのは剣咬の虎。初日に参加したのはルーファスとオルガという2人。数あるデコイから本物を探し当てる隠密(ヒドゥン)で出場者の全てを記憶し、寸分の狂いもなく攻撃したルーファス。四つ首の猟犬との戦いで相手を黒い雷で秒殺したオルガ。実力派ギルドの名に恥じない、純粋な戦闘能力は間違いなく障害になる。

 

 

「………ラクサス、同じ雷魔法を使う者として、あのオルガっていうのはどう見る?」

 

「オレが負けるわけねェ。………が、面倒な勝負になるだろーな」

 

「だよねぇ………」

 

 

 ラクサスが負けるとはカイトも微塵も思っていない。だが、黒い雷ーーー即ち、神を屠る魔法、滅神魔法の使い手。普通の魔法は勿論、紛い物とはいえ雷の滅竜魔法を操るラクサスの雷でさえ吸収してしまう相性の悪さ。間違いなく面倒だ。

 事前にナツが戦ったという炎の滅神魔道士との話を聞いていなければ対策すら立てられない所である。

 

 どんどんと考えなければいけないことが増えていくとぼやくカイト。その背中をラクサスが叩く。

 

 

「別に勝利だけが目的じゃねェ。オレたちの意地を見せてやるのも、また目的のひとつだ」

 

 

 それに、とラクサスは付け加える。

 

 

「明日からはてめぇも出るんだ。負ける筈がねぇよ」

 

「………ご期待に添えるよう、頑張るよ」

 

 

 苦笑いをこぼしてそう答えるカイト。そう、明日からはジェラールに代わりカイトが出場することになっているのだ。何を隠そう件のジェラール、なんとバトルパートにて蛇姫の鱗のジュラに敗北したのだ。

 

 実力で負けた、ならまだ納得がいくのだがミストガンとして参加している以上自身の天体魔法は使えない。だというのに勝負熱の入ったジェラールは天体魔法を行使しようとしたのだ。寸前のところで外部から見ていたウルティアとメルディに止められて事なきを得たが、続けていたら確実に影武者だとバレていた。

 その咎もあるのか、これ以上の参加は危険だと判断し本来の魔力の捜査へ。カイトはその穴埋めである。

 

 

「あー、でも、スティングとローグには当たりたくないなぁ………」

 

「なんだ、自信ねェのか?」

 

「カッカッカ、いや、策はあるんだけどねぇ。どちらも相性としては最悪。面倒すぎるんだよ」

 

「あれ?でもカイトの魔法ならいけるんじゃないの?」

 

 

 近くで耳に入ったのだろう。会話に入ってきたルーシィに苦笑いを返すカイト。ルーシィの言う魔法とは十中八九混沌魔法のことだ。

 

 

「まぁ、それが一番なんだけどねぇ。少なくとも、今大会では使えないよ」

 

「え、なんで?」

 

「道化の身バレに繋がるからねぇ」

 

 

 カイトが闇ギルドに絡まれた際に使用する道化としての仮面。巷では義賊と謳われているが、やっていることは間違いなく犯罪行為。フェアリーテイルの一員ということは割れているが、個人を特定するような証拠はなく評議院も見逃している状態。ギルド一人一人全て容疑者に挙げるほど評議院も暇ではなく、愚かでもない。

 そんな中、巷の道化がよく使う混沌魔法を披露したとしよう。間違いなく評議院の横槍が入り、良くて牢獄行きは確定である。

 

 それを伝えられたルーシィは納得したような声をあげて虚空を見つめる。夢を壊された虚しさはまだ癒えていないらしい。

 

 

「まぁ、そんな訳だから大会中は影魔法メインで使うしかないね。それじゃあ2人とも、俺は行くよ」

 

「どこにだ?」

 

「決まっているだろう?ウェンディちゃんのお見舞いさ♪」

 

「待て待て待て」

 

 

 そのままふらりと何処かへと消えそうなカイトを引き止めるラクサス。そこから首が締まっただの、迷子になるだの、他愛もない喧嘩(戯れ合い)を繰り広げる2人。呆れたルーシィがどこかに移動しようとしたその時だった。

 

 

「わははははは‼︎ヒック‼︎」

 

 

 高笑いと誰かが倒れたような音、そして動揺の声。振り返ればそこにはガタイの良い中華風の服を着た男が酒を呷る姿。その隣で倒れているのはフェアリーテイルでも三本指に入る酒豪、カナだ。どうやら飲み比べをして負けたようである。

 

 

「あれ?バッカスだ」

 

「知り合い?」

 

「顔見知りだよ。四つ首の猟犬の酔いのバッカス。近接戦闘ならエルザにだって負けない実力者さ」

 

「エルザと互角⁉︎」

 

 

 それよりもカナの介抱しないとねぇ、とラクサスとの喧嘩は一旦中断。互いに引っ張っていた耳を離してカナの元へと。幸いな事にブラジャーを取られただけで他に被害はなく、影から毛布を取り出すと水を飲ませて横向きに寝かせる。件の下手人を見やればエルザに絡んだ後、早々に立ち去ってしまったようだ。

 

 嵐のように去るバッカスを見送り、本当どうなることやらと言葉を溢し2日目へ。

 

 競技パートは“戦車(チャリオット)”。街を旋回するように並べられた戦車の上を走り抜けるレース勝負だ。戦車は常に動いており、足を滑らせて落ちてしまえばタイムロスは免れない。

 

 そんな競技に出場したナツ。戦車と戦うとでも思ったのか、意地でも出場を決定。そして火龍(サラマンダー)が出るのならとガジルが、そして同じく剣咬の虎からスティングが出場。

 案の定ナツは乗り物酔いでグロッキーに。そして残る2人も乗り物に酔っていた。どうやら滅竜魔道士は乗り物酔いするものらしい。

 

 

「………もしかしてラクサス、君も弱かったりする?」

 

「方向音痴に言われたかねェ」

 

「どっちもどっちね」

 

 

 ミラジェーンの言葉が刺さる2人だが、それはさておき。

 

 1位はバッカス出場の四つ首の猟犬、続くように大鴉の尻尾、人魚の踵、蛇姫の鱗、青い天馬と続き残るは滅竜魔道士3人。力が出ない中、必死に前に進むナツとガジルにスティングは問いかける。なぜ大会に参加したのだと。

 

 昔のフェアリーテイルならば世間体など気にしない、他の誰がなんと言おうとも我が道を行くギルドではなかったのかと。

 

 

「仲間のためだ」

 

 

 スティングの問いにそう答えるナツ。

 

 

「7年もずっと、オレたちを待っていた……どんなに苦しくても、悲しくても、バカにされても耐えて耐えて、ギルドを守ってきた」

 

 

 既に疲労がピークに達したのか四つん這いでも尚前に進むナツ。その執念に嘲笑していた民衆も思わず口を閉じた。

 

 

「仲間の為に、オレたちは見せてやるんだ。フェアリーテイルが歩き続けた証を‼︎だから前に進むんだ‼︎‼︎」

 

 

 そうして漸く得たポイント。2ポイントと1ポイントと上位と比べれば微々たるものだが確実に前に進んだのだ。

 

 続くバトルパートでもエルフマンがバッカス相手に大金星。同じくミラジェーンも青い天馬のリザーブ枠からジェニーに勝利し2日目は無事に終わった。

 

 余談であるが、ジェニーから持ちかけた賭けにより負けた方は週間ソーサラーでヌードを撮ることが決まり、その号は飛ぶように売れたのだという。しかし、ジェニーだけに恥はかかせないと一夜が文字通り肌を脱ぎ、購入者を阿鼻叫喚に叩き落としていた。

 

 

 そうして2日目の夜。本来であればウェンディの復帰を祝いに外食する予定であったのだが、カイトに急用が入る。下手な内容なら断るところだが、他でもない初代マスターメイビスからの誘い。マカロフからの厳命もあり、誘われたのは街を一望できる高台。器用に落下防止の柵の上を歩くメイビスの隣を、カイトは言葉もなく歩く。

 

 初代マスターという事もあり、それなりの礼節は持っているカイト。だが、言ってしまえばそれだけだ。敬うことはなく、謙るつもりもない。呼び出された内容はなんだろうかと疑問を持ちながら、メイビスの言葉を待つ。

 そして不意に立ち止まるメイビスがようやく口を開いた。

 

 

「………貴方は吸血鬼だと、マカロフから聞きました」

 

 

 応援席で天真爛漫にはしゃぐなりは潜め、重々しく口を開くメイビス。その表情は幼い見た目からは想像もつかない、冷たく威厳のあるもの。上に立つ者特有のプレッシャーを浴びながらも、お飾りのマスターではないようだと頭の隅でそんな事を考えてしまう。

 そして、質問の内容があまりにも単純過ぎて肩透かしを食らったカイトは肩をすくめながら答えた。

 

 

「そうだよ?なんだい、初代マスター様は人外に偏見がおありかな?」

 

「いいえ、それはありません。ですが……」

 

 

 言葉を濁すメイビスに興味が失せたのか、ため息を溢して再び進み出すカイト。これ以上共に過ごしても時間の無駄だと判断したのだ。さて、帰り道はどちらだろうかと溢すカイトの背に、メイビスが声をかける。

 

 

「…………貴方は、魔王をご存知ですか?」

 

「魔王?御伽噺に出てくるものだろう?数多の魔法を操り、幾多の魔物を総べ、許多の財宝を有し、最後には人間に滅ぼされる存在。それがどうしたの?」

 

「それがもし、実在していたとしたら?」

 

「カッカッカ♪ジョークにしては下手だねぇ。そんなものがいたとしたら、人の世はこれほど繁栄してなかったさ」

 

 

 過去の出来事を警告などを込めて御伽噺にすることはままある事だ。しかし、魔王が存在していたなど荒唐無稽すぎる話である。それだけに物語の中の魔王は絶大な力を持っているのだ。話に尾鰭がついていたのだとしても、である。

 

 

「どうせ誰かの妄想の産物に過ぎないものさ。君くらいのお年頃なら空想と現実を混ぜ込んでしまうのかもしれないけど、あまり口に出すのはオススメしないよ」

 

「むぅ。私はちゃんと大人です!」

 

「カッカッカ♪そうだねぇ、立派なレディだねぇ、うん」

 

「その子供をあやすような言い方やめてください‼︎」

 

 

 真剣な表情から一転。我慢ならなかったのか柵から飛んだメイビスはカイトの肩に乗るとその頭を両手で叩き始める。けれども幽体である彼女の攻撃は通用せず、無駄だとわかりながらも尚を続ける様が微笑ましくてカイトはまた笑う。

 周りから見ればカイトが1人高笑いするものだからドン引きされ、ただでさえ少なかった人が周囲から完全に消えたのだがそれはさておき。

 

 ようやく落ち着いたのかメイビスはカイトの頭に両手を置くと、その上に自身の顎を乗せる。

 

 

「………もし。もしですよ?魔王の力を手にしたとしたら、貴方はどうしますか?人の世を、滅しますか?」

 

「例え話にしても突拍子もないねぇ」

 

「真剣にお願いします」

 

 

 笑って誤魔化そうとするカイトを、メイビスが釘を刺す。その真剣な声に気押されてか、少し言葉を詰まらせたカイトは暫く考えると肩をすくめた。

 

 

「別に、何もしないよ。俺にはフェアリーテイルのみんながいれば、それでいいさ。それ以上は望まないよ」

 

 

 復讐心がないのか、と問われればないとは言い切れない。だが、それよりも優先すべきはフェアリーテイルなのだ。それを聞いたメイビスは「そうですか」とどこか安心したような笑みを浮かべカイトの肩から降りると、そのままカイトとは反対方向、来た道を戻っていく。

 

 結局なんだったのだろうかと疑問を浮かべるカイト。帰り道を案内して貰えばよかったのではないかと思い付いたのはメイビスが完全に見えなくなった後のことである。

 

 さて、このまま歩いても迷うことは確実。どうやって帰ったものかと物思いにふけながら眼下の景色を眺めているとふと、その背中に声がかけられる。

 

 

「ん?カイトか?」

 

「おや、エルザ。食事は終わったのかい?」

 

「いや、私は少し用事があってな。お前は?」

 

「俺は初代様とのお話があってね」

 

「そうか」

 

 

 何の用事かはわからない。だが、その表情に漂う後ろめたさを見るに何かあったのだろうと当たりをつけるカイト。それを聞き出すような真似をせず、2人並んで言葉なく街を眺める。

 エルザにとっても考えを纏める間があるのはありがたいことだ。何せ、久しぶりに再開したミリアーナ。人魚の踵に所属した彼女は自分たちを騙していたジェラールを憎み、その死を願っているなど。どうすれば良いのかわからず、こうして気晴らしに夜景を観に来たのだ。

 

 

「………何も聞かないのだな」

 

「聞いて欲しいなら聞くよ」

 

「いや………今はよそう。お前の方は?」

 

「別に、取り留めもないたらればの話をしただけさ」

 

 

 そうして夜景を眺めること暫く、再びその背中に声がかけられる。

 

 

「エルザにカイト。どうした、こんなトコで」

 

「グレイ」

 

「おや、グレイ。君も宴会に参加しなかったのかな?」

 

「お前らもか?オレはジュビアとリオンの意味わかんねーやりとりに付き合わされてよ」

 

「意味がわからん、だと?その場にいなかった私ですら何となく話の内容はわかるぞ」

 

 

 隣に立つグレイに意味深な視線を送ると、口をへの字に曲げてしまう。それが微笑ましくてつい、エルザは顔を綻ばせておせっかいを焼いてしまった。

 

 

「良い加減ジュビアの気持ちに気づいているだろう?」

 

「う…」

 

「ハッキリしてやらんか」

 

 

 図星を突かれたグレイが耳まで真っ赤にしてそっぽを向く。2人の生暖かい視線に気恥ずかしさが増したのか、話題の転換を。

 

 

「そ、そーゆーカイトはどうなんだよ?」

 

「俺かい?」

 

「そうだな。お前もミラとウェンディの気持ちは知ってるだろうに」

 

「カッカッカ♪うん、そうだね。知ってるよ。でも、応えられるわけがないだろう?彼女たちと俺では、あまりにも違いすぎる」

 

 

 その言葉は散々悩み抜いた末で出した結論なのだろう。その重みが、隠しきれない悲痛が感じられる声であった。「あっ………」と言葉を溢したのはエルザかグレイか。気にしてないよ、と笑顔を貼り付けるカイトはどこか痛々しくも見えた。

 

 

「………夜も遅い。そろそろ宿に戻ろう」

 

「あ、ああ………」

 

「うん、そうだね♪」

 

 

 重くなった空気に耐えきれないとばかりに切り出したエルザ。それに便乗するようにグレイとカイトも続く。その時だった。眼下の景色の一部、剣咬の虎が宿泊する宿が爆発したのは。

 

 

「なんだァ⁉︎」

 

「わからん………だが、行くぞ!」

 

「あいよ、エルザ」

 

 

 すわ緊急事態か、もしくはゼレフに似た魔力の持ち主か。現場へと急行する3人だったが、途中でハッピーを抱えたナツと遭遇。話を聞けば件の下手人が本人であることが判明した。

 

 

「だーっ‼︎あいつら許せねエ‼︎ギルドってのは仲間を大事にするモンだろォが‼︎」

 

 

 そうなのである。本日のバトルパート、人魚の踵vs剣咬の虎で敗北した星霊魔導士のユキノ。彼女はその責任を負われギルドを脱退させられたのだ。それを庇う仲間をおらず、数多さえ大衆の前で全裸にされての土下座まで。それがナツは許せなかったらしい。

 

 

「はぁ………。ナツ、君のその直情的なところは好きだけどさぁ。今回ばかりはねぇ」

 

 

 一歩間違えればルール違反の末、出場は取り消し。最悪、参加権すら奪われることになっていたのかもしれないのだ。今回はあちらが不問にすると言うことで事なきを得たがこの幸運が続くとは思えない。

 

 

「まぁ、気持ちはわかるけどよ。やり過ぎなんだよ、オメェは」

 

「じゃあ無視しとけってことかよ‼︎」

 

「そうは言ってねェだろ。試合で見せつけりゃいいだけだ」

 

 

 グレイの説得に納得がいってないのか、それでもこれ以上暴れたらその機会さえ逃してしまうことはわかったらしく不承不承頷いてはくれた。

 これ以上の厄介ごとは勘弁願いたいところだと、空を見上げて愚痴をこぼすカイトであった。

 

 

 

 

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