FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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大魔闘演武−⑥

 

 大会3日目

 

 ゲストに評議院の強行検束部隊のラハールを迎えられた競技パート。種目名は伏魔殿(パンデモニウム)。用意されたステージ内で魔法により具現化したモンスターと戦う競技だ。

 100体の魔物にはそれぞれポイントが振られており、参加者は対峙する頭数を宣言。中に入ればその頭数を討伐。その強さに応じたポイントが入る仕組みだ。これをモンスターが全て討伐、もしくは参加者全員がリタイアするまで続けられるこの競技。

 

 そんな競技に参加するのはエルザ、ミリアーナ、ノバーリ、ヒビキ、オーブラ、オルガ、ジュラ、そしてカイトの8人。くじ引きではエルザが1番を引き競技はスタートとなった。

 

 

「さて、エルザ。あまり狩り過ぎないでおくれよ。俺の分がなくなってしまう」

 

「いや、悪いが期待には応えられそうにない」

 

 

 前日の憂鬱そうな面影は一旦捨て、用意された教会ステージへと向かうエルザ。その後ろ姿にまさかと予感を立てて、彼女なら言いかねないと笑う。

 

 

「100体全て私が相手する。挑戦権は100だ」

 

 

 その言葉に参加者は勿論、会場全体が言葉を失う。流石だと笑っているのはカイトを含めたらナツとグレイくらいのものである。

 

 

「む、無理ですよ!1人で全滅できるようには設定されていません!」

 

「構わん」

 

 

 マスコット兼進行役のマトーくんの静止も一蹴。そのままステージへと進んだエルザを待ち受けていたのは宣言通りの100体の魔物の群れ。その中には聖十大魔導士でさえ容易に倒せないとされるSクラスの魔物の姿も。

 途中で倒れればAチームのポイントは0。普通ならばプレッシャーに押しつぶされるはずだ。

 

 しかし、流石とも言うべきか。ボロボロになりながらも凛と咲き誇る緋色の花は宣言通り全ての魔物を討伐せしめたのだ。

 

 

【し……しし……信じられません‼︎なんと、たった1人で100体のモンスターを全滅させてしまったーーーっ‼︎‼︎これが7年前最強と言われていたギルドの真の力なのかっ⁉︎】

 

 

 フェアリーテイルここにあり。そう言わんばかりのエルザの姿に会場が湧く。思わずAチームの面々が駆け寄り称賛を送る中、ふと気づいたエルザがカイトに視線を向けて口を開く。歓声に紛れて音は届かずとも伝わった、「次はお前の番だ」という言葉。

 

 元より手を抜くつもりはないが、ここまで激昂されてしまってはより一層力を入れねばなるまい。笑みをこぼしながら肩を回すカイトを含め、残る7チームにも順位をつけることに。

 といっても、同じ内容をもう一度というわけにもいかず、内容は簡単なゲームだ。魔力測定器(マジックパワーファインダー)、通称MPFを使いぶつけた魔力を数値化、その高い順に順位をつけるというわけだ。

 

 

「挑戦する順番は先ほどの順番を引き継ぎます、カポ」

 

「じゃあ私からだね‼︎いっくよー、キトゥンブラスト‼︎」

 

 

 ミリアーナの腕に巻き付いたチューブ。それを操り螺旋を描きながらMPFにぶつかった。そうして表示されるのは365と言う数字。

 これは平均よりも上であり、評議院の部隊であれば部隊長を任せられる数値だ。しかし、彼女の強みは拘束した相手の魔法を封じる事であり、やはり純粋な力勝負では分が悪いのだろう。

 

 

「やっぱりそこらは反映されないのか。うーん、不利だねぇ」

 

「何を謙遜する、カイト殿」

 

「おや、ジュラ。久しぶりだねぇ、元気だったかい?」

 

 

 カイトの呟きに反応したのはジュラ。この7年で髭を生やし、貫禄の出た彼を聖十の末席など誰も言えないだろう。

 

 

「あぁ。遅くなったが、貴殿らの復帰、心より嬉しく思う」

 

「ありがとう♪にしてもこの競技、君みたいなタイプに有利過ぎやしないかい?」

 

「そうかもしれん。だが、それで諦める貴殿ではないだろう?」

 

 

 ジュラの言葉に返答はなく、肩をすくめて笑みをこぼすのみ。不利だと言いつつも自信はあるのだろう。負けてはいられないな、とジュラの方にも熱が入った。

 そうしているうちに競技は進み、ノバーリ124、ヒビキ95、オーブラ4、そして剣咬の虎のオルガはーーー

 

 

「120mm黒雷砲‼︎」

 

 

 歓声の中オルガの両腕から放たれた黒い雷。叩き出された数値は3825。まさかのミリアーナの10倍である。確かに純粋なパワーでは驚嘆に値するが、既にカイトの眼中にはない。視線は迷いなく次のジュラへと。

 

 

鳴動富嶽(めいどうふがく)‼︎」

 

 

 ジュラの繰り出した、大地からの衝撃波。まるで火山が噴火したかのような魔力の奔流はMPFを包み、8544という過去最高値を叩き出した。誰もがオルガの勝利を確信した中でのこの数値。盛り上がらないわけがない。

 そんな状況の中、トリを飾るのはカイト。周囲からも同情と憐れみの声ばかりが溢れる。それはフェアリーテイルの応援席も例外ではない。

 

 

「うーん、カイト兄大丈夫かなぁ」

 

「どーした、ロメオ。何が心配なんだ?」

 

「だってさ、父ちゃん。カイト兄だよ?いっつもエルザ姉に怒られたり、殴られたりしてるカイト兄だよ?強いかもしれないけど、厳しくない?」

 

 

 ロメオの不安に隣のマカオとワカバはあー、と声を漏らす。確かに、普段のギルドの姿しか知らなければカイトは強そうには見えない。戦う時でさえ手数を重視して一撃の重さを二の次にしているカイトには荷が重そうにも見える。

 しかし、2人は知っている。カイトの強さを。敵に回す厄介さを。そして、この競技においてジュラにも引けを取らないことを。

 

 

「まぁ、見てろって。アイツならやるハズさ」

 

「でも」

 

「ロメオ、オメェは知らねェかもしれねェけどな。アイツも間違いなくS級魔導士のひとりだよ」

 

 

 父親とその友人が言うのなら、と不安を胸にしまって競技を眺める。舞台の中央で軽薄な笑みを浮かべるカイトは両手を叩くと注目を集めた。

 

 

「さぁて、ご注目。これなるはフェアリーテイルの復活劇、その一幕。7年間、孤軍奮闘してきた仲間へと送る感謝の一撃」

 

 

 身振り手振りを大袈裟に、さながら舞台に立つ役者のように堂々と宣言するカイト。思わずそちらに視線を向けた観衆がふと、違和感に気がつく。カイトの足元、その影が広がっているのだ。そこから覗くは紅い瞳。ひとつやふたつでは効かない瞳が影の広がりに合わせて増えていく。

 

 それはかつて魔力を暴走させて発動させる魔法。しかし3ヶ月の特訓、そして7年越しの魔力は一部ではあるが操作を可能としたのだ。

 

 舞台の半分まで広がった影はそこで一度動きを止めると、次の瞬間には再び凝縮しカイトの背後はと盛り上がって形を成す。作り上げられたのはアトラスと名付けられた巨人。山のような大きさはないが、それでも会場と変わらぬ背丈。それがゆっくりとではあるが拳を振り上げ狙いを定める。

 

 

「カッカッカ‼︎さぁて、ご笑覧あれ‼︎」

 

 

 

 

巨人の侵攻(アトラス・インヴェイジョン)

 

 

 

 

 カイトの声に合わせて振り下ろされる巨腕。その巨大に見合った呂力はMPFを確実に捉えて、拳が触れるや否やその巨大が全て拳へと収束。地面を陥没させても尚収まらない攻撃はそのまま大地を穿ち、MPFごと地面の底へと消えてしまう。

 

 後に残るは地面に開いた大穴と、その中心に浮かぶ9999という馬鹿げた数字。静寂に包まれる会場はしばらくして状況を飲み込めたのだろう。恭しく礼をするカイトへと爆発的な歓声が浴びせられた。

 

 

【な、なんだこのギルドは⁉︎競技パート1、2フィニッシュ‼︎もう誰もフェアリーテイルを止められないのか⁉︎】

 

 

 くつくつと、喉奥で声を噛み殺しながら控室へと戻るカイト。出迎えてくれたラクサスと鉢合うとそのまま2人はハイタッチ。小気味のいい音を響かせると互いの胸に拳を突きつけ合った。

 

 

「よくやった」

 

「カッカッカ♪君に褒めてもらえるとはねぇ。頑張ったかいがあったよ♪」

 

 

 確かに破壊力はある先ほどの魔法。しかし、実戦ではその展開の遅さと攻撃までのインターバルを考えると使えないものである。今回は派手さを重視した為に使ったが目の前のラクサスやエルザ、ミラジェーンなどの実力者の前には発動した瞬間術者本人を叩きに来ると当たりをつけている。

 

 それはともかく、絡みがないためか喋りかけようとはせずに賞賛の手を叩くジュビアと、いつか絶対に倒してやると密かに闘志を燃やすガジルは面白くなさそうにそっぽを向いて、ミラジェーンは賛辞も拍手もなく会場の方へと目を向けていた。

 それが気になり声をかけようとするがラクサスから「そっとしておいてやれ」と嗜められてはそうもいかず。

 

 カイトは知るよしもないが、ミラジェーンは控室でカイトの活躍をそれは喜んでいた。思わずはしゃいでしまうくらいには。周りが少し引いてしまう程には。

 

 興奮が少し冷めて周りを見てみればハッキリとわかる温度差。そして人前ではしゃぎまくってしまった端なさで恥ずかしくなってしまったのだ。そんな状態でカイトが話しかければどうなるか?まず間違いなく顔を見られたくないから逸らすだろう。それでも尚しつこく迫るカイトに鉄拳が飛ぶのは間違いない。

 控室が惨劇の場にならないで済んだ、ラクサスのファインプレーである。

 

 迎えるバトルパート。

 

 蛇姫vsフェアリーテイルAチームでは戦いを通じて相手方のシェリアと仲を深めたウェンディなど見どころはあったが、何より印象深いのは大鴉の尻尾のアレクセイvsラクサスの試合。

 

 アレクセイの正体はギルドマスターであり、ラクサスの実の父であるイワン。幻術を使い1対1の試合を演出しつつも、裏では参加メンバー全員で行われたラクサスへのリンチ。しかし、ラクサスはそれを返り討ちにし不正の発覚した大鴉の尻尾は大会への出場権を3年間剥奪の上失格となったのだ。

 

 終わった後、ラクサスが何かを考え込んでいるようではあったがカイトはそれは気にしないでいた。相談事であるなら伝えてくれるだろうという信頼の元だ。問題は全く別のところである。

 

 

「ハァ………」

 

「…………すまない」

 

 

 人通りのない路地裏にて。

 カイトの目の前で正座して反省の意を示すのはミストガンに扮したジェラール。ラハールという、かつてフェアリーテイルに潜り込んだ評議院にその正体を明かされそうになったのだ。

 もしバレた場合犯罪者を匿っていたフェアリーテイルは間違いなく大鴉の尻尾よりも重い罰が下される。それはジェラールにもわかっているだろうに、なぜ評議院も顔を出していた日に会場に近づいたのか。元評議院で今大会の審査員の1人、フェアリーテイルと懇意にしているヤジマさんのフォローがなければと思うと背筋が凍る。

 

 お手洗いから戻る途中、迷っていたカイトが現場を目撃し感謝を述べた後、ここへと連れてきたのだ。

 

 

「…………それで?今日は評議院が顔を出すことは知っていただろう?それでも尚、顔を出した理由はなにかな?」

 

「…………本当にすまないと思っている。だが、あの魔力を、ゼレフの魔力を感じたのだ」

 

「それでいてもたってもいられずに登場したと?ハァ……君の存在は爆弾だと理解しているのかい?」

 

 

 カイトの言葉が突き刺さり、覆面の奥でジェラールがくぐもった声を上げる。

 

 

「君を匿うことによって犯人隠匿罪。それも個人ではなくギルド全体で行うとなると、社会的信用の回復なんてこの先見込めない。そうなればフェアリーテイルは解散に追い込まれる。例え解散したとしても、元ギルドメンバーだとわかれば世間の目は冷たいだろうねぇ」

 

 

 カイトの言葉ひとつひとつがジェラールの胸に突き刺さり、遂には倒れ込むジェラール。想像してしまったのだ。もしあのまま自身の正体がバレた場合を。そしてその後エルザがどうなってしまうのかを。

 物乞いか野盗か、それともまさか身体を売るのか。それを幻視してしまったジェラールの傷は深い。

 

 その姿を見て少しは溜飲が下がったのか鼻を鳴らすと、しゃがみ込んでジェラールの顔を覗くカイト。

 

 

「いいかい?君の依頼には協力する。けれど、もし君の存在がバレた場合は俺は迷いなく君たちを切り捨てる。知らぬ存ぜぬを通して、すべての罪を君たちに被せて事なきを得る。そのくらいの危機感を持ってもらえる?」

 

 

 確かにジェラールたちのお陰でナツたちは魔法を取り戻す事ができた。しかし、それはギルドの存続と天秤にかけるほどでもない。カイトの言は本気であるし、迷いなく行う。その結果ギルドから不審を買おうとも辞さない覚悟だ。

 

 それがわかったのだろう。「………わかった。今後は、より一層注意する」と言葉にしたジェラールに満足したのだろう。胡散臭い笑みの仮面を被ったカイトは立ち上がる。

 

 

「さて、俺は戻るとしよう。早く戻らないとエルザから大目玉だ♪」

 

「待ってくれ。その、例の魔力は………」

 

「ああ、それかい?残念だけど、見当たらないよ」

 

 

 その言葉に続くよう、上空からカイトの肩に降り立つ一匹の鴉。大会中に街中を捜索する内の一羽だ。ジェラールの言葉通りならばと方向に目星をつけて探してみたはいいが空振り、その他大勢の魔力に紛れてしまい追う事は不可能だ。

 

 故に気にせず、熱心に捜索することもない。依頼ではあるが、手を抜くことに罪悪感も忌避感もないカイト。そのままジェラールと別れると思いの外話し込んでいたのだろう、夜の帷の落ちた街は昼とはまた別の活気に溢れ、あちらこちらから様々な話題が飛び交う。

 

 中でも耳を引くのは勿論、大魔闘演武の内容。今日はすごかった、明日はどうなる、という話の中でも飛び切り聞こえるのはフェアリーテイルを賞賛する声だ。

 見直したや俺は信じていたなどから始まり、ナツやエルザ、ミラジェーンなど個々人に向けた話題まで。張り切ったかいがあるものだと気をよくしたカイト。鼻歌混じりに歩き出したのは宿とは逆方向。無論、意図したものではなくいつもの迷子である。

 

 魔法を使うなり、人に案内してもらうなりすればいいものを、結局翌朝まで会場周辺をぐるぐると歩き回る羽目になるのであった。

 

 

 

 

 

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